結論
きんえいは、大阪・阿倍野の天王寺駅前で映画館とテナントビルを営む会社だ。自社のアポロビルと、大阪市の再開発ビル「あべのルシアス」の運営が柱で、近鉄グループが議決権の 6 割余りを握る。
筆者の結論は、割高だ。土地に大きな含み益はあるが、賃料は既に利益に入っている。それを資産として足せば二重に数えてしまう。利益で測ると、今の時価総額の 5 分の 1 にも届かない。
稼ぎの中心は不動産だ。不動産事業の営業利益は 4.5 億円で、映画館の 2.3 億円を上回る。ただし大阪市に毎年 8.8 億円の賃借料を払い、全社の営業利益 3 億円は薄い。
映画館は、作品の当たり外れに左右される。前期の入場者は 13% 増えたが、今期は営業利益を 2.3 億円へ減らす見通しだ。
見直しの契機は親会社の動きだ。土地の価値を株主に届けられるのは、近鉄グループが完全子会社化や再開発に動く時だけである。その確率は小さくないが、確かな兆しはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い土地を持つが、株主の取り分が小さい会社」だ。
土地は本物の資産で、時間とともに価値が上がる。しかし価値が株主に届く道が、はっきりしない。配当性向は 14% と低く、利益は親会社の資金管理に預けられる。再開発や売却の計画もない。
事業の稼ぎで測れば、割高と見る。映画館は作品次第で、貸しビルは固定の賃借料を引くと薄い。営業利益は 3 億円で、物価で人件費や更新費用が増える分、実質では細りやすい。
オーナー利益は、純利益 2 億円よりさらに小さい。建物の更新に使う投資が減価償却を上回るためだ。
安全域は、親会社が動く時にだけ生まれる。親会社が完全子会社化を決めれば、土地の価値を反映した価格が付く可能性はある。ただし、それを前提に値段を払うのは、予想に代金を払うことになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。映画館と、貸しビルだ。
シネマ・アミューズメント事業は、あべのアポロシネマ(9 スクリーン)とゲームセンター 2 店を運営する。2026 年 1 月期の収入は 17 億円で、入場者は 103 万人。このエリア唯一の映画館だ。映画の収入は作品の当たり外れで大きく動き、配給会社へ収入の相当部分を払う。
不動産事業は、きんえいアポロビル(地下 4 階地上 12 階)、駐車場、ヴィアあべのウォーク内の店舗区画を貸す。さらに、大阪市の再開発ビル「あべのルシアス」の保留床 2.9 万平方メートルを一括で借り、テナントに転貸している。収入は 21 億円で、稼働率はアポロビル 91%、ルシアス 98%。
ルシアスの賃借料は年 8.8 億円で、20 年契約のあと 3 年ごとに自動更新される。この固定の約束が、不動産事業の利益を薄くしている。
従業員は 45 人と少ない。映画館の建物の一部は、親会社グループの近鉄不動産から借りている。余った資金は親会社の資金管理に預けている。宝くじ売り場の運営も、不動産事業に含めている。
優良さと弱いところ
堀は、立地だ。天王寺・阿倍野は大阪南部の拠点で、駅前の土地を自社で持っている。映画館はこのエリアで唯一であり、周辺の商業施設と客を分け合える。
良い点は三つある。第一に、土地・建物を自前で持つこと。土地の簿価は 11 億円と低く、実際の価値との差が大きい。第二に、稼働率が高く、不動産の収入が安定していること。第三に、親会社が近鉄グループで、信用が高く、資金繰りの不安が小さいこと。
悪い点も三つある。第一に、大阪市との賃借料が固定で、売上が落ちても減らない。第二に、事業拠点が阿倍野 1 か所に集中し、災害や地域の人気の変化に弱い。第三に、利益の質だ。減価償却が重く、建物の更新費用は建築費の上昇で膨らむ。営業利益率は 8% で、ROE は 7% 台にとどまる。
配当性向が 14% と低いのも、少数株主には弱みである。利益の大半は留保され、親会社の資金管理に預けられる。
筆者は、持ち株会社的な性格をもつ小さな不動産会社と見る。含みは大きいが、取り出す手段は少数株主にはない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
映画館と都心の貸しビルは、どちらも成熟した市場だ。
映画は、コロナ禍で入場者が落ち込んだあと、戻り調子にある。ただし国内の観客数は人口とともに細り、動画配信との競争も続く。映画館の収益は、ヒット作に左右される。ヒット作が出れば前期のように 1 割以上増え、出なければ減る。
貸しビルは、立地の勝負だ。天王寺・阿倍野には、あべのハルカスなどの大型商業施設が集まる。きんえいのビルは築年が古く、トイレや設備の更新が必要で、近隣の新しいビルとの競争がある。
追い風は物価の上昇だ。賃料は契約更新のたびに上がりやすい。ただし建物を直す費用も同じ割合で増える。減価償却は取得時の値段で決まるので、会計上の利益は物価でふくらんで見えるが、更新の投資が追いつかない場合は現金が細る。
人口は年 0.5% ほど減る。大阪は訪日客の恩恵を受けるが、きんえいの映画館は地元客が中心で、恩恵は限られる。ゲームセンターの収入も、前期は 2 割ほど減った。競争の勝ち負けは、駅前のどの施設が客を集めるかで決まる。映画館とビルの両方が同じ駅前に集中している。
資本政策と M&A
還元は薄い。配当は年 0.3 億円で、配当性向は 14% だ。「安定配当を継続維持する」方針で、増配の意思は見えない。
親会社は近鉄グループホールディングスで、議決権の 63% を握る。近畿日本鉄道も、退職給付信託の株を通じて関係する(開示上の比率は 46.6%)。余った資金は親会社の資金管理に預ける仕組みで、少数株主が資金の使い道を決める余地は小さい。
借入は圧縮方針で、純有利子負債は 2 億円まで減った。今後は設備更新に回し、増配に回る期待は薄い。
土地の含みは大きい。簿価 11 億円の土地は、周辺の地価から見て 80 億円を超えるとみられる(推定)。ただし売却や再開発の計画は開示されていない。10 年以内に買収される確率は、外部の推計で 19% とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
駅前の土地は、周辺の地価から見て時価総額に匹敵する価値を持つ。簿価 11 億円の土地が、実際は 80 億円を超える。時価総額 118 億円は、含みを織り込んだ値段であり、割高とは言えない。
親会社の近鉄グループは、グループの不動産を整理し再開発を進める。天王寺・阿倍野は、あべのハルカスと並ぶ大阪南部の拠点だ。きんえいのビルを建て替えたり、グループが完全子会社化して再開発したりする可能性は十分にある。
物価が上がる世界では、土地の価値と賃料が名目で伸びる。減価償却は取得時の値段のままなので、会計上の利益は改善する。10 年で営業利益は 1.5 倍になっても不思議はない。
映画館もコロナ禍から戻り、前期は入場者が 13% 増えた。唯一の映画館という地位は、競争が少ない強みだ。物価が上がれば入場料や売店の単価も上げられ、固定の設備を持つ会社ほど利益が伸びる。賃料も契約更新のたびに見直せる。親会社の力で、新しい大型テナントを誘致できる点も強みだ。
慎重な見方
含み益は、取り出せなければ価値にならない。賃料は既に利益に入っていて、土地を売らない限り、株主は賃料の残りしか受け取れない。配当性向は 14% で、利益の大半は親会社の資金管理に預けられる。
事業の稼ぎは薄い。営業利益は 3 億円で、今期はさらに 2.3 億円へ減る見通しだ。ルシアスの賃借料 8.8 億円は固定で、テナントが減れば直撃する。
建物は古く、更新費用は建築費の上昇で膨らむ。減価償却を超える投資が必要になれば、現金が減り、借入が増える。
映画館は作品次第で、動画配信との競争が続く。事業拠点は 1 か所に集中し、災害や周辺の人気の変化に弱い。
親会社が完全子会社化に動いたとしても、少数株主に有利な価格が付く保証はない。PER が 59 倍の会社に、買収の期待を織り込んで払うのは危険だ。さらに、阿倍野に 1 か所という立地の集中は、地震や再開発の遅れなど、一つの出来事で価値を損ねる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。土地の含みは事実だが、取り出す手段が少数株主にはなく、利益は薄い。親会社の動きは、楽観側の確率に反映したが、確かな兆しがないので 25% にとどめた。土地の含みは悲観でも簿価を超えて残るが、床には保守的な戻り方を掛けた。事業の力と親会社の意向を分けて見るため、確率は控えめに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,312 円37 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 156 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 792 円22 億円、今との差 −81.3%、 期待の年率 −10.0%(資本コスト 6.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,526 円70 億円 | 466 円13 億円 | −29.4% | −3.4% | 299 円8 億円 |
| やや楽観 | 15% | 1,987 円55 億円 | 215 円6 億円 | −48.0% | −6.3% | 330 円9 億円 |
| 中立 | 38% | 1,547 円43 億円 | 143 円4 億円 | −60.1% | −8.8% | 643 円18 億円 |
| やや悲観 | 27% | 484 円14 億円 | 72 円2 億円 | −86.9% | −18.4% | 150 円4 億円 |
| 悲観 | 10% | 430 円12 億円 | 36 円1 億円 | −89.0% | −19.8% | 47 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,312 円37 億円 | 156 円4 億円 | −65.3% | −10.0% | 1,469 円41 億円 |
今の株価時価総額 4,235 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が物価以上に上がり、償却の軽さが利益を押し上げる 利益 4 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,526 円70 億円
天王寺・阿倍野の集客が高水準を保ち、賃料は契約更新のたびに物価以上に上がる。稼働率は 96% を保つ。
映画館は唯一の映画館という強みで入場者を保ち、客単価も物価に近い 1.32 倍まで上げる。
減価償却は取得時の値段のままなので利益が改善する一方、建物の更新費用は膨らむ。営業利益は 6 億円台になり、配当性向も 3 割へ上がる。
親会社の動きは織り込まない。それでも事業の力だけで、利益は今の 1.4 倍に増える。土地の含みを現金化する再編は、この筋書きにも織り込んでいない。実現するには、賃料と稼働の両方が揃う必要がある。映画館の唯一性と立地の強さが、最も良い形で出た姿である。
- シネマ・アミューズメント事業:数量 100(年間の入場者数(万人))× 価格 2.20(1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。入場者 100 万人(0.97 倍)× 1 人 2.20 千円(1.32 倍)、営業利益率 14%
- 不動産事業:数量 4.7(稼働している賃貸面積(万平方メートル))× 価格 5.90(1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む))→ 売上 28 億円・営業利益 8 億円。賃貸面積 4.7 万平方メートル(横ばい)× 年 5.9 万円(1.35 倍)、営業利益率 27%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 6.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.27 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新の投資が嵩んでも賃料の伸びが上回り、営業利益が今の 2 倍になる筋書き。実現には賃料交渉と稼働の両方がうまくいく必要があるので 10%。
やや楽観 15% 賃料は物価並みに上がり、利益が今の 1.6 倍に増える 利益 3 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 1,987 円55 億円
賃料は契約更新で物価の 9 割ほど上がり、稼働率は高水準を保つ。映画館は当たり外れを均せば、入場者は微減にとどまる。
営業利益は 5 億円ほどに増える。ルシアスの賃借料は 3 年ごとの更新で緩やかに上がるが、売上の伸びが上回る。
配当性向は 2 割へ上がる程度で、利益の大半は留保される。親会社の資金管理への預入が積み上がる。事業の安定感は増すが、株主の取り分は大きくは変わらない。映画は当たり外れを均して微減、貸しビルは物価に近い伸びが続く。大きな投資の判断は親会社の意向に左右され、増配にもなりにくい。
- シネマ・アミューズメント事業:数量 98.0(年間の入場者数(万人))× 価格 2.12(1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。入場者 98 万人(0.95 倍)× 1 人 2.12 千円(1.27 倍)、営業利益率 12.5%
- 不動産事業:数量 4.7(稼働している賃貸面積(万平方メートル))× 価格 5.70(1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 7 億円。賃貸面積 4.7 万平方メートル(横ばい)× 年 5.7 万円(1.30 倍)、営業利益率 25.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 6.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.41 倍、時価総額 49 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働が安定し、賃料の更新が物価に追いつく筋書き。親会社が動かない前提の、ほどほどの強気。
中立 38% 賃料は物価に少し遅れて上がり、利益は微増にとどまる 利益 3 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 1,547 円43 億円
映画の入場者は人口とともに 1 割弱減り、客単価は、動画配信との競争で物価ほど上げられず 1.23 倍にとどまる(入場料の引き上げは観客離れを招く)。賃料は更新で 1.28 倍まで上がる。
ルシアスの賃借料は 3 年ごとの更新で緩やかに上がり、営業費用は物価に近い伸びを示す。減価償却は取得時の値段が基本だが、更新の投資が積み上がり償却も増える。
営業利益は 4 億円弱と、今より少し増えるにとどまる。配当性向は低いまま、利益の大半が留保される。
土地の含みは膨らむが、利益には現れない。更新が遅れれば、競争力は静かに落ちていく。賃借料の更新があっても、大幅な引き上げにはならない前提である。ルシアスの稼働が高いことが、ここでの支えだ。映画の観客と賃料の双方が緩やかに細る、静かな後退が続く。
- シネマ・アミューズメント事業:数量 94.0(年間の入場者数(万人))× 価格 2.05(1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。入場者 94 万人(0.91 倍)× 1 人 2.05 千円(1.23 倍)、営業利益率 11%
- 不動産事業:数量 4.7(稼働している賃貸面積(万平方メートル))× 価格 5.60(1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む))→ 売上 26 億円・営業利益 6 億円。賃貸面積 4.7 万平方メートル(横ばい)× 年 5.6 万円(1.28 倍)、営業利益率 24%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 6.80% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.71 倍、時価総額 37 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人口減で映画の観客が細り、賃料は物価にやや遅れて上がる。もっとも自然な筋書き。
やや悲観 27% テナントが抜け、映画の観客が細り、固定の賃借料が重くなる 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 484 円14 億円
近隣の新しいビルにテナントを奪われ、賃貸面積の稼働が 4.5 万平方メートルまで落ちる。賃料も物価に追いつかない。
映画は動画配信に押され、入場者は 2 割近く減る。客単価も上げにくい。
大阪市への賃借料は減らないので、営業利益は 1.6 億円まで細る。配当は維持するが、更新の投資は借入で賄う。
価値は事業の稼ぎより、土地・建物の簿価を土台にした床に近づく。映画館の設備と古い建物は減損の対象になる。親会社への預入が増えるため、少数株主への配当は変わらず、価値の改善は見込みにくい。賃料の下落を、固定の賃借料が増幅する。
- シネマ・アミューズメント事業:数量 85.0(年間の入場者数(万人))× 価格 1.95(1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。入場者 85 万人(0.83 倍)× 1 人 1.95 千円(1.17 倍)、営業利益率 7%
- 不動産事業:数量 4.5(稼働している賃貸面積(万平方メートル))× 価格 5.40(1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。賃貸面積 4.5 万平方メートル(稼働低下)× 年 5.4 万円(1.23 倍)、営業利益率 20%
倍率:ROE 2.8% で k を大きく下回る。稼ぐ力では床を下回るので、純資産の床を使い、今の自己資本 27.6 億円に PBR 0.49 倍(約 13.5 億円)を掛けた。映画館の設備と古い建物の減損 10 億円で、自己資本は今の水準にとどまる。
確率:稼働率の低下と映画の観客減が重なる筋書き。築年の古いビルの競争力低下は既に進む変化で、27% と厚めにした。
悲観 10% 映画館が閉じ、ビルの稼働が落ち、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 430 円12 億円
動画配信で入場者は半減し、映画館は赤字が常態になる。ビルの稼働も 8 割台まで下がり、賃料は物価に追いつかない。
大阪市への賃借料 8.8 億円は減らず、営業損益は 3 億円の赤字になる。配当は止まり、借入が増える。
親会社は事業の整理を迫られる。価値は簿価の土地・建物を床とし、売却を前提にした額に近づく。株主に残るのは、整理後の資産の一部である。ルシアスの賃借の解約条件や、従業員 45 人の整理費用も重い。映画館の閉鎖は、地域の集客にも響く。残るテナントの退去を招く悪循環も起こりうる。赤字のなかで、親会社の資金管理からの借入が頼りになる。
- シネマ・アミューズメント事業:数量 55.0(年間の入場者数(万人))× 価格 1.80(1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。入場者 55 万人(0.54 倍)× 1 人 1.80 千円(1.08 倍)、営業利益率 −10%
- 不動産事業:数量 3.9(稼働している賃貸面積(万平方メートル))× 価格 5.00(1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。賃貸面積 3.9 万平方メートル(稼働低下)× 年 5.0 万円(1.14 倍)、営業利益率 10%
倍率:ROE がマイナスで稼ぐ力は付けられない。今の自己資本 27.6 億円に PBR 0.435 倍を掛け、純資産の床約 12 億円に置いた。
確率:映画館の収益が構造的に成り立たなくなり、ビルも空室が増える。固定の賃借料で赤字が続く筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シネマ・アミューズメント事業
あべのアポロシネマ(9 スクリーン)とゲームセンター 2 店。入場料、売店、娯楽場の収入。
| 数量年間の入場者数(万人) | 価格1 人あたりの収入(千円。娯楽場を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 103 | 1.67 | 17 | 2 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 2.05 | 19 | 2 |
取り方:入場者 102.8 万人(有報)。収入 17.12 億円を割った 1 人あたり 1.665 千円(劇場 15.80 億円と娯楽場 1.32 億円の合計)。営業利益 2.25 億円はセグメント開示。
不動産事業
きんえいアポロビルと駐車場、ヴィアあべのウォーク店舗の賃貸、あべのルシアスの転貸・運営。
| 数量稼働している賃貸面積(万平方メートル) | 価格1 平方メートルあたりの年収入(万円。駐車場・共益費を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 4.7 | 4.38 | 21 | 4 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 5.60 | 26 | 6 |
取り方:収入 20.59 億円(賃貸 14.0、駐車場 2.38、共益費 3.91ほか)。面積はルシアス保留床 2.86 万平方メートルとアポロビル約 2 万平方メートルの推定に稼働率 96% を掛けた約 4.7 万平方メートルで、開示ではなく推定。営業利益 4.46 億円はセグメント開示。全社の共通費(営業利益との差 −3.7 億円)は調整に置く。
リスクと懸念
含み益が株主に届かない
土地の含み益は大きいが、売却や再開発の計画がなく、配当性向も 14% と低い。親会社が動かなければ、価値は株主に出てこない。
大阪市への固定の賃借料
ルシアスの保留床の賃借料は年 8.8 億円で、売上が落ちても減らない。テナントの入れ替わりで稼働率が下がれば、不動産事業の利益は一気に薄くなる。
映画興行の振れ
収入は作品の当たり外れで大きく動く。今期は営業利益が減る見通しで、前期の入場者増は続かない。動画配信との競争も続く。
建物の更新費用
アポロビルは築年が古く、更新は建築費の上昇で膨らむ。減価償却を超える投資が続けば、現金が細り、借入が増える。
拠点の集中
事業拠点は阿倍野 1 か所に集中する。大規模災害や、周辺の人気の変化の影響を直接受ける。
親会社の意向
親会社が議決権の 63% を握り、余った資金も親会社の資金管理に預けられる。少数株主に不利な資金の使い方や再編がありうる。
今後の分かれ目
- 親会社が完全子会社化や再開発を発表する
- 買付価格が土地の含みをどこまで反映するかが焦点になる。楽観側の確率を上げて見る。
- 土地・建物の売却、または再開発の計画が開示される
- 含み益が実現する可能性が出るので、余り資産として足す方向で見直す。
- 配当性向を 30% 以上へ引き上げる
- 利益の留保が株主に戻る確度が上がり、中立の倍率を引き上げて見る。
- アポロビルの稼働率が 85% を下回る
- 固定の賃借料の重さが表に出る。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ルシアスの賃貸借契約の条件が見直される
- 固定費の水準が変わる。不動産事業の利益率を見直す。
見ておくもの
- アポロビルとルシアスの稼働率
- 映画の入場者数と劇場収入
- 配当性向と親会社の資金管理への預入額
- 土地・建物の売却や再開発に関する開示
倍率と資本コストの決め方
賃料は既に利益に入っているので、土地の含み益は余り資産に足していない(二重を避けた)。倍率は ROE が k 6.8% を下回るため、式の約 9 割の 10 倍に置き、市場の PER や PBR は使っていない。減価償却は物価で増やさず、更新の投資は建築費の上昇分だけ重くした。含みは悲観の床にだけ、簿価に戻り方 0.5 を掛けて使った。新リース会計基準でルシアスの賃借料が使用権資産として貸借対照表に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→16.27 倍・やや楽観 PER 10.8→15.41 倍・中立 PER 10→14.71 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。