結論
JPホールディングスは、認可保育所を軸に学童クラブや児童館を全国で 345 施設運営する民間の大手だ。収入の大半は国の公定価格に基づく自治体の委託料で、景気の波は小さい。2026 年 3 月期の営業利益は過去最高の 65 億円、営業利益率は 15% に乗った。
筆者の結論は「事業は堅いが、今の値段はやや割高」だ。理由は 2 つある。1 つは、出生数が 67 万人まで細り、保育の需要が長い目で縮むこと。もう 1 つは、今の高い利益率が補助金の拡充に押し上げられたもので、10 年先まで続くとは見にくいことだ。
強みは財務にある。純現金は 173 億円で、時価総額の 3 割に当たる。学童は利用希望が過去最多を更新中で、会社は施設数を 200 まで倍増させる構えだ。
ただ、現金は株主に戻りにくい。ダスキンが 3 割強を握り、配当性向は 25% にとどまる。M&A に使えば価値を生むことも壊すこともある。
分かれ目は 3 つだ。公定価格が人件費の上昇に追いつくか。学童がどこまで増えるか。そして、たまる現金が何に化けるかである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の質は「良いが、永遠ではない」と見る。収入は国の制度に支えられ、景気に強い。だが、値段を自分で決められない。利益の大きさも、制度が許す範囲に収まる。堀が浅いので、利益率が今の高さを保つことには慎重になる。
資本の使い方は評価が割れる。園を借りて営む軽い事業なのに、現金は自社の中にたまる一方だ。使い道が M&A なら、買う値段次第で価値を壊す。配当性向 25% では、株主が現金の恩恵を受けにくい。支配株主がいる会社では、少数株主の取り分はさらに後回しにされやすい。
安全域はある。現金を除けば、事業の利益は今の時価総額の 7 割ほどで買える計算になる。ただ、10 年先を見ると、子どもの数の減少と利益率の正常化が重なる。その結果、本質価値は今の値段を 15% ほど下回る。悪い会社ではない。今の値段が先を織り込みすぎているだけだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、預かる子どもの数と、子ども 1 人にいくら払われるか、の 2 つだ。認可保育所は自治体が委託料を払い、認証保育所や民間の学童は保護者の保育料が加わる。横浜市が売上の 12%、川崎市が 10% を占める。首都圏に集中していることは強みだが、自治体の方針に左右される弱みでもある。
2026 年 3 月末の施設は、保育園 203、認定こども園 6、学童クラブ 118、児童館 16、交流館 2 の計 345 だ。売上の 8 割ほどを保育園とこども園が占めると見る(開示は無く推定)。学童・児童館は 15% ほど。残りは保育士の紹介派遣、不動産の仲介、給食、外国語指導助手(ALT)などだ。
費用の中心は人件費である。保育士の人数は国の基準で決まり、給与の上昇は人事院勧告に沿った公定価格の引き上げで賄われる。人件費が上がれば収入も上がる仕組みだ。そのうえで利益を分けるのは、園児が定員まで集まるかどうかと、運営の巧拙である。
中期計画は、保育で磨いた運営力と人材を、学童、英語教育、紹介派遣、東南アジアへ広げる絵を描く。ダスキンとの業務提携もその一部だ。子育て家庭を一生の顧客にしたいダスキンと、販路を広げたい当社の思惑が重なっている。
優良さと弱いところ
堀(他社がまねしにくい強み)は、あるにはあるが浅い。強いのは運営の実績と人の確保力だ。認可保育所は自治体の公募で選ばれ、横浜・川崎で長く園を持つ信用が次の受託につながる。保育士を採って育てる力は、人手不足の業界で数少ない武器になる。
一方、値段は国が決める。公定価格が上がれば全社に効き、下がれば全社に響く。競合のグローバルキッズ COMPANY は 209 施設、学研ホールディングスなども同じ市場にいる。自治体や社会福祉法人が運営する園も多く、価格で差をつけられない。
資本効率は高い。園は借りて営むため設備投資が軽く、純現金が積み上がる。ただ ROE は、使い道のない現金で薄まっていく。借りた園の家賃は毎年の固定の約束で、現金の厚さを額面どおりには受け取れない。
経営については、数年前に創業者と当時の経営陣が争い、総会で社長の再任案が否決される騒ぎがあった(報道)。今は、2023 年に学研から株を引き継いだダスキンが 31.5% を持つ。支配株主がいるため、TOB による非上場化もあり得る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
保育の需要は、量では頭打ちから縮小へ向かう。2025 年の出生数は 67.1 万人で、10 年連続の過去最少だった。待機児童はほぼ解消し、定員を増やす局面は終わった。これからは、減る子どもを取り合う時代になる。
ただ、都市部と共働きの増加が、減少をいくらか和らげる。働く親は増え、0〜2 歳の預け先が広がるためだ。当社が強い首都圏は、全国よりも減り方が緩やかだと見る。2026 年度からは、親が就労していなくても預けられる乳児等通園支援も始まった。
価格は国が決める。公定価格の人件費単価は 2025 年度に 5.3% 上がり、2026 年度も同水準が続く見込みだ。賃金の上昇に連動するため、10 年で見れば物価並みには上がると置ける。配置基準の改善は人件費を増やすが、加算で補われる。ただ、国の財政が苦しくなれば、この連動が崩れる心配は残る。
学童は別の市場だ。2026 年 5 月の利用希望は 160 万人で、過去最多を更新した。待機児童は 1.5 万人弱で、2 年連続で減ったが、なお残っている。小学生の数は減るのに、共働きの増加で利用率が上がる。民間の受け皿が求められる成長領域だ。
10 年後に見ておくべきは、補助金頼みの高い利益率が続くかどうかだ。自治体の財政、保育士の賃金、新規参入の動きが分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。2026 年 3 月期の配当性向は 25% で、2027 年 3 月期も増配の予定である。自社株買いはしておらず、2026 年 7 月に行ったのは役員報酬としての自己株の処分だった。株主優待は 500 株以上へのクオカードだ。
現金は 1 年で 50 億円ほど積み上がった。営業キャッシュフローは 63 億円で、還元は 11 億円にすぎない。使い道の本命は M&A で、中期計画は「積極的に進める」と明言する。2024 年に外国人材の紹介会社ワンズウィルを買い、2025 年にテレビ熊本などと九州の合弁を作った。金額は小さい。
資本政策のカギを握るのはダスキンだ。31.5% を持つ筆頭株主で、当社は持分法の関連会社になっている。ダスキンが持分を高めれば TOB(株式公開買い付け)もあり得る。逆に、少数株主へ現金が戻る道は細い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保育は、なくならない社会インフラだ。待機児童が解消しても、預ける親は増え続ける。0〜2 歳の利用は伸び、乳児等通園支援という新しい需要も生まれた。首都圏は人口の流入が続き、減少の影響が小さい。
公定価格は人事院勧告に連動して 5% 超の引き上げが続き、処遇改善の補助も厚くなった。2026 年 3 月期は、乳児の増加と学童の新設が重なり、営業利益が 1 割以上伸びた。中期計画の最終年度の利益目標は、2 年早く達成している。
学童の伸びしろは大きい。利用希望は 160 万人で、待機児童が残る自治体は多い。保育園で信頼を得た親が、そのまま学童に来る。施設数を 200 に倍増させれば、安定収入の柱がもう 1 本立つ。英語教育や ALT の派遣、東南アジアも芽が出てきた。
財務は鉄壁だ。純現金は 173 億円で、借金はない。これを M&A に使えば、小さな園運営会社を束ねて規模の利益を出せる。ダスキンとの連携で、子育て家庭への販路も開ける。
慎重な見方
子どもの数は、構造的に減る。出生数は 67 万人で、10 年前の 3 分の 2 だ。需要のピークは過ぎ、都市部でも定員割れの園が出始めている。取り合いが始まれば、受託の入札は厳しくなる。
今の利益は、制度が追い風になった時のものだ。営業利益率は 15% と、過去の中央値の倍近い。公定価格は国の財政次第で、いつでも抑えられる。2027 年 3 月期の会社予想は、利益がほぼ横ばいで、伸びが止まる兆しがある。
保育士の確保は年々難しくなる。給与を上げても、公定価格の引き上げは後追いになる。自治体の補助が削られれば、利益は一気に薄くなる。東京都の保育料無償化の拡大は、財源の持続性が不透明だ。
現金は、使い方を間違えれば価値を壊す。M&A は高値づかみになりやすい。ダスキンが 3 割強を握るため、少数株主への還元は後回しにされがちだ。配当性向は 25% と低く、1 年で 50 億円も積み上がった現金は、会社の中で眠っている。
競争も強まる。保育園運営は参入しやすく、グローバルキッズなど同規模の会社や、学研のような大手も保育や学童を広げている。受託の公募では、実績が同じなら安い提案が勝つ。いずれ利益率は、制度が許す水準から、競争が決める水準へ下がっていく。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さと財務の強さは、強気の見方が優勢だ。だが、10 年の需要の減少と、補助金で膨らんだ利益率の正常化は、慎重な見方のほうが筋が通る。そこで確率は、中立の 36% を中心に、やや楽観に 22%、やや悲観に 22% と置いた。悲観は 12%、楽観は 8% である。現金が戻りにくい点を割り引くと、10 年後の中立の時価総額は今を上回るが、資本コストで割り戻すと、今の値段には届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,120 円960 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 171 円147 億円)。 今の値に割り戻すと 636 円544 億円、今との差 +0.7%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,852 円1,587 億円 | 228 円195 億円 | +229.6% | +12.7% | 166 円143 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,538 円1,318 億円 | 190 円163 億円 | +173.9% | +10.6% | 380 円326 億円 |
| 中立 | 36% | 1,318 円1,129 億円 | 168 円144 億円 | +135.5% | +8.9% | 535 円458 億円 |
| やや悲観 | 22% | 580 円497 億円 | 151 円129 億円 | +15.8% | +1.5% | 161 円138 億円 |
| 悲観 | 12% | 261 円224 億円 | 148 円127 億円 | −35.2% | −4.2% | 49 円42 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,120 円960 億円 | 171 円147 億円 | +104.7% | +7.4% | 1,292 円1,107 億円 |
今の株価時価総額 631 円541 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 公定価格の追い風と学童の倍増が続く10年 利益 75 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 1,852 円1,587 億円
学童が 200 施設を超え、保育園の園児数も新設と M&A で増える。公定価格は賃金の上昇を上回って引き上げられ、補助金の拡充が続く。営業利益率は 15% を保つ。ALT の派遣と紹介派遣は、東南アジアでの展開とともに事業の柱に育つ。ダスキンとの協業で、子育て家庭への販路が開ける。たまる現金は M&A で規模を取る方向に使われ、運営会社を束ねる効果が利益を押し上げる。国の保育予算が拡大し、出生数の減少を 0〜2 歳の利用の増加が打ち消す、最も恵まれた 10 年になる。会社が掲げる姿が、ほぼ実現した世界だ。海外の展開も小さな黒字を出し、新しい柱の候補として市場に認められる。
- 保育園・認定こども園:数量 19,350(園児数(人、推定))× 価格 277(園児 1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 536 億円・営業利益 83 億円。園児数×1 人あたり年間売上
- 学童クラブ・児童館:数量 210(施設数(学童・児童館))× 価格 0.68(1 施設あたり年間売上(億円))→ 売上 143 億円・営業利益 19 億円。施設数×1 施設あたり年間売上
- 紹介派遣・ALT・不動産・その他:数量 1,500(稼働・成約換算の人数(人、推定))× 価格 0.03(1 人あたり年間売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 6 億円。稼働人数×1 人あたり年間売上
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)254 億円。全体の PER 18.87 倍、時価総額 1,587 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年の間に、制度の追い風、学童の倍増、M&A の成功がそろう必要があり、実現すれば大きいが、重なる確度は高くない。
やや楽観 22% 計画どおり堅実に伸びる10年 利益 63 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 1,538 円1,318 億円
学童は 190 施設ほどに増え、保育園は園数をほぼ保ちつつ園児数が少し増える。公定価格は物価をやや上回って上がり、営業利益率は 13% 台を保つ。紹介派遣と ALT が小さな収益源になり、海外はごく一部にとどまる。M&A は小粒で、現金は配当と手元資金にあてて残る。保育士の採用は難しいが、公定価格の引き上げがその分を補い、受託の公募でも横浜・川崎の実績が生きて、既存の園は着実に更新される。出生数の減少は首都圏の共働きの増加で和らぎ、需要は大きくは崩れない。会社の計画に近い、堅実な 10 年だ。派手さはなくても、利益は物価を上回って増え、現金は配当と小さな投資に回る。
- 保育園・認定こども園:数量 18,270(園児数(人、推定))× 価格 271(園児 1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 495 億円・営業利益 69 億円。園児数×1 人あたり年間売上
- 学童クラブ・児童館:数量 190(施設数(学童・児童館))× 価格 0.66(1 施設あたり年間売上(億円))→ 売上 125 億円・営業利益 15 億円。施設数×1 施設あたり年間売上
- 紹介派遣・ALT・不動産・その他:数量 1,000(稼働・成約換算の人数(人、推定))× 価格 0.03(1 人あたり年間売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 4 億円。稼働人数×1 人あたり年間売上
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)252 億円。全体の PER 18.44 倍、時価総額 1,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計の延長線上で、制度の追い風が少し続く。実現の確度は中立に次いで高い。
中立 36% 売上は伸びるが利益はほぼ横ばいの10年 利益 53 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 1,318 円1,129 億円
園児数は少子化で 5% ほど減る。新設と M&A が減少の大半を補うが、全体では横ばいから微減になる。学童は 170 施設ほどに増え、全体を支える。公定価格は賃金に連動して物価並みに上がるが、補助金で膨らんだ利益率は 12% 台まで正常化する。現金は少しずつ積み上がり、M&A は小粒にとどまる。配当性向は 30% まで引き上がる。大きな失敗も成功もなく、売上は伸びるのに利益はあまり伸びない 10 年になる。会社が掲げる営業利益の目標(年 2% 前後の成長)に近く、筆者はこれを最も確度の高い姿と見る。
- 保育園・認定こども園:数量 17,100(園児数(人、推定))× 価格 265(園児 1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 453 億円・営業利益 59 億円。園児数×1 人あたり年間売上
- 学童クラブ・児童館:数量 172(施設数(学童・児童館))× 価格 0.65(1 施設あたり年間売上(億円))→ 売上 112 億円・営業利益 12 億円。施設数×1 施設あたり年間売上
- 紹介派遣・ALT・不動産・その他:数量 800(稼働・成約換算の人数(人、推定))× 価格 0.03(1 人あたり年間売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 3 億円。稼働人数×1 人あたり年間売上
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)251 億円。全体の PER 18.1 倍、時価総額 1,129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:子どもの数の減少と値上げが相殺し、利益率が正常化へ向かう。最も重みを置く筋書き。
やや悲観 22% 園児が減り補助金も細る10年 利益 31 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 580 円497 億円
出生数の減少が首都圏にも及び、定員割れの園が増える。園児数は 15% 減る。公定価格は賃金に追いつかず、自治体の補助も削られて、営業利益率は 8% 台に下がる。学童は 150 施設で止まる。新規施設の開設は慎重になり、M&A は高値づかみに終わる。ALT と紹介派遣は黒字化に時間がかかる。家賃は固定費のまま残るため、売上の減少が利益を大きく削る。現金は一部が運営の穴埋めに使われる。ダスキンとの提携も、期待したほどの収益にはつながらない。減る子どもを競合と奪い合い、値上げの余地も乏しい、苦しい 10 年だ。
- 保育園・認定こども園:数量 15,300(園児数(人、推定))× 価格 257(園児 1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 393 億円・営業利益 35 億円。園児数×1 人あたり年間売上
- 学童クラブ・児童館:数量 150(施設数(学童・児童館))× 価格 0.62(1 施設あたり年間売上(億円))→ 売上 93 億円・営業利益 7 億円。施設数×1 施設あたり年間売上
- 紹介派遣・ALT・不動産・その他:数量 600(稼働・成約換算の人数(人、推定))× 価格 0.03(1 人あたり年間売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。稼働人数×1 人あたり年間売上
倍率:事業の ROE 10.8% は k 8% をわずかに上回る。RONIC = 9.3%、g 4% から正当化 PER = 15.1 倍。利益率が下がり成長も弱いので、上限の 8 割(12.1 倍)に置いた。
確率:出生数の減少に補助金の見直しが重なり、利益率が過去の平均へ戻る筋書き。起きる確度は中立の次に高い。
悲観 12% 少子化と制度の逆風が重なる10年 利益 14 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 261 円224 億円
出生数が急減し、都市部でも定員割れが常態になる。園児数は 3 割近く減り、公定価格の引き上げは人件費の上昇に追いつかず、自治体は補助金を削る。営業利益率は 5% を割り込む。家賃は下がらず、不採算の園の閉鎖と減損が相次ぐ。学童は競合の参入で受託が伸びない。M&A で買った会社はのれんを減損する。現金は赤字の補填と失敗した買収に使われて細り、ダスキンの持分が高まっても少数株主への還元は乏しい。もはや安定した成長企業ではなくなっている。ダスキンとの提携の効果も限られ、会社の説明は「足場固め」から「立て直し」へ変わる。
- 保育園・認定こども園:数量 13,050(園児数(人、推定))× 価格 237(園児 1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 310 億円・営業利益 16 億円。園児数×1 人あたり年間売上
- 学童クラブ・児童館:数量 125(施設数(学童・児童館))× 価格 0.56(1 施設あたり年間売上(億円))→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。施設数×1 施設あたり年間売上
- 紹介派遣・ALT・不動産・その他:数量 300(稼働・成約換算の人数(人、推定))× 価格 0.02(1 人あたり年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。稼働人数×1 人あたり年間売上
倍率:事業の ROE 4.8% は k 8% 以下なので PER は 1÷k = 12.9 倍まで。構造的に負けた筋書きで、稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k)の約 8 割(9.95 倍)に置いた。純現金は減っており、床は帳簿でなく稼ぐ力と手元の現金で測る。
確率:少子化の加速、公定価格の抑制、M&A の失敗が同時に来る構造的な負けで、確度は低いが、起きれば打撃が大きい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
保育園・認定こども園
認可保育所と認定こども園 209 園の運営。自治体の委託料と公定価格が収入。
| 数量園児数(人、推定) | 価格園児 1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18,000 | 198 | 356 | 56 |
| 10 年後 中立 | 17,100 | 265 | 453 | 59 |
取り方:認可保育所・認定こども園の 209 園で、1 園 85 人ほどとして園児約 1.8 万人(開示は無く推定)、1 人あたり年間売上 約 198 万円で売上 356 億円。数量は園児の数(実質)で、物価の分は 1 人あたり売上に入れた。中立は園児数が少子化と M&A・新設で 0.95 倍、1 人あたり売上は公定価格が賃金に連動して 10 年で 1.34 倍。
学童クラブ・児童館
学童クラブ 118 と児童館 16 の運営。自治体の委託料・保護者の利用料が収入。
| 数量施設数(学童・児童館) | 価格1 施設あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 134 | 0.49 | 65 | 8 |
| 10 年後 中立 | 172 | 0.65 | 112 | 12 |
取り方:学童クラブ 118 と児童館 16 の計 134 施設で売上 65 億円とみて(推定)、1 施設あたり 0.485 億円。数量は施設数で、学童の需要は伸びるため中立で 172 施設まで増える。委託費は人件費に連動するので 1 施設あたり売上は 10 年で 1.34 倍。
紹介派遣・ALT・不動産・その他
保育士の紹介派遣、外国語指導助手(ALT)、不動産の仲介、給食、海外などの周辺事業。
| 数量稼働・成約換算の人数(人、推定) | 価格1 人あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 500 | 0.02 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.03 | 26 | 3 |
取り方:人材紹介・派遣、不動産の仲介、給食、ALT(外国語指導助手)、海外などの売上 約 12 億円を、稼働・成約換算で約 500 人(推定)で割り、1 人あたり 245 万円とした。ALT と紹介派遣が伸びるので中立で 800 人。1 人あたり売上は賃金に連動して 10 年で 1.34 倍。 数量は実物(稼働・成約換算の人数)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
リスクと懸念
公定価格と補助金の見直し
収入の大半は国が決める公定価格と自治体の補助金で、利益率の上限も制度が決める。2026 年 3 月期の営業利益率 15% は補助金の拡充で押し上げられた水準で、財政が苦しくなれば引き締められる。制度が変われば、全社の利益が一度に動く。
少子化の加速
出生数は 2025 年に 67.1 万人と 10 年連続で過去最少になった。首都圏は減り方が緩やかだが、定員割れは都市部にも広がりかねない。園児が定員に届かなければ、固定費の重い園は利益が急に薄くなる。
保育士の確保と人件費
保育士の不足は続き、給与の引き上げ競争が起きている。公定価格の引き上げは賃金の後を追う形になるため、上昇のタイミングで利益が圧迫される。人が集まらなければ、受け入れ人数を減らすしかない。
自治体への依存
売上の 12% が横浜市、10% が川崎市だ。自治体が委託先を見直したり、補助金の配分を変えたりすると、影響は大きい。公募で選ばれ続けられるかが、足もとの収益を左右する。
M&A と現金の使い道
積極的な M&A を掲げるが、買収の金額も成果もほとんど開示されない。小粒でも高値づかみを重ねれば、現金の価値は削られる。のれんの減損も起こり得る。
支配株主と少数株主
ダスキンが 31.5% を持つ筆頭株主で、持分法の関連会社になっている。数年前には創業者と経営陣の対立も報じられた。少数株主への還元や、TOB の条件が株主にとって有利になる保証はない。
家賃という固定の約束
園の多くは借りて運営しており、家賃は園児が減っても減らない。新リース会計基準が 2028 年 3 月期から入ると、リース負債が貸借対照表に載り、純現金の見かけが変わる。強い財務は家賃の約束を差し引いて見る必要がある。
今後の分かれ目
- 公定価格の人件費単価が、賃金の上昇を下回る改定になる
- 利益率が下がり、10 年のやや悲観・悲観の確度が上がる。
- 学童クラブ・児童館が 200 施設に届き、1 施設あたりの利益も保たれる
- 安定収入の柱が増え、10 年のやや楽観・楽観の確度が上がる。
- ダスキンが持分を引き上げる、または TOB を提案する
- 少数株主には、買い付け価格しだいで時価総額の見直しが起きる。ただ、価値の水準は事業の稼ぐ力で決まる。
- まとまった規模の M&A を、事業に見合う値段で実行する
- 現金が価値に変わり、戻り方の評価が上がる。
- 首都圏の保育所で定員割れが続き、閉園が増える
- 固定費の重さが利益に出て、10 年の悲観側に近づく。
- 自社株買いや配当性向の大幅な引き上げが発表される
- たまった現金が株主に戻る道が開き、現金の評価が上がる。
見ておくもの
- 自治体ごとの 4 月 1 日時点の定員と利用児童数(東京・神奈川の定員割れ)
- 公定価格の人件費単価の改定率と、処遇改善等加算の制度変更
- 学童クラブ・児童館の施設数(200 施設への進み具合)
- 営業利益率(15% の高さが続くか)
- M&A の金額とのれん、配当性向、自社株買い
- ダスキンの持分と協業検討委員会の成果
倍率と資本コストの決め方
自己資本は今の値に、期間の純利益を足して還元を引いて流し、たまった現金は事業と分けて、戻り方 0.5 で足した。倍率は、事業の ROE と資本コスト 8%(基本 7.5% に、4 つの目安で +0.25%)から、正当化 PER を出し、楽観で 9 割、やや楽観で 8 割、中立で 7.5 割に置いた。今の PER 13 倍や PBR 2.4 倍は使っていない。同じ領域のダスキンやオリエンタルランドの倍率も根拠にしていない。新リース会計基準で営業利益や純負債の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.1→18.87 倍・やや楽観 PER 15.7→18.44 倍・中立 PER 14.4→18.1 倍・悲観 PER 10.3→9.95 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。