結論
スタジオアリスは、七五三やお宮参りなど、子どもの節目の写真を撮る全国最大手の写真館チェーンだ。筆者の結論は、今の値段は事業の価値を大きく上回る、というものだ。
事業の力は、細っている。2026年2月期の売上は329億円で前期より7.5%減り、営業利益は21億円と3割減った。2022年2月期の営業利益60億円から、4年で3分の1になった。直近の月次では、撮影件数が前年の9割前後に落ち、1件あたりの単価を1割ほど上げて補っている。
強みは、財務の厚さだ。現金は178億円あり、時価総額の6割近い。借入に頼らず、自己資本比率は78.7%。ただ、ROEは3.8%と低く、現金は配当で少しずつ戻る以外には使われていない。
10年後の中立は、売上が約354億円、営業利益が約28億円、ROEは5.5%。強気は成人式とスクールフォトで客数の減りを止める姿、弱気は出生数の減少と客離れが続く姿だ。確率を重ねた価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
事業の質と、持つ現金を分けて見る。
事業の質は、悪くなかった。子どもの節目の写真という、親が惜しまない需要を、全国の店舗網で取っていた。2022年2月期には営業利益60億円、営業利益率15%を出した。
ただ、需要の土台が細っている。出生数は10年連続で下がり、撮影件数は毎年1割近く減る。値上げで売上を保つのにも限りがある。減価償却が営業利益の1.6倍あり、店舗を維持するだけで利益が出ない。10年の中立でも、ROEは5.5%と、資本コストに届かない。
現金は資産としては厚いが、使い道がない。178億円のうち、季節資金やリースに必要な分を除いても、90億円ほどは余る。ただ、会社は返す約束も、使う計画も示していない。10年間そのままなら、現金の価値は目減りする。
安全域は、現金がある分、下値は固い。ただし、時価総額310億円は、現金178億円を除くと、事業に約130億円の値を付けている。筆者の評価では、事業はその前後で、現金の目減りを考えると、合計は時価総額に届かない。筆者が見たいのは、撮影件数の減りが止まるかと、現金の使い道が決まるかだ。
何で稼ぐ会社か
スタジオアリスは、「こども写真城 スタジオアリス」を中心に、子どもの写真館を全国に展開する会社だ。2026年2月期の売上329億円のうち、写真事業が99.6%を占める。残りは、撮影用の衣装を作る子会社が1.3億円だ。
店舗は期末で407。直営が398、フランチャイズが9で、関東が173と4割を占める。ショッピングセンターの中が69%、路面が31%。2026年2月期は7店を出し、14店を閉じ、70店を改装した。
撮影の中心は、七五三、お宮参り、百日、マタニティ、赤ちゃんの撮影だ。衣装を着て撮り、撮影料に加えて写真の商品を売る形だ。成人式の振袖を貸して前撮りもする「ふりホ」が、成長分野だ。ほかに、ペット、大人向けの「HALULU」、赤ちゃん専門の「Baby!」、学校向けのスクールフォトに広げている。ウォルト・ディズニー・ジャパンとは包括契約を結んでいる。
七五三は10月と11月に集中し、年間売上の4分の1ほどになる。このため、上半期は赤字になりやすく、下半期に稼ぐ。2026年2月期の中間は、営業損失が4.6億円だった。
費用の中心は、店舗の家賃と減価償却、人件費、広告だ。減価償却は34億円と営業利益の1.6倍、広告宣伝費は20億円、給料手当は12億円。連結の従業員は1,257名で、臨時雇用者が年平均で約2,000名いる。
優良さと弱いところ
堀は、全国の店舗網と、ブランド、ディズニーとの契約にある。ただ、堀は浅くなっている。
全国に407店を持つ子ども写真館は、規模で並ぶ会社が少ない。ショッピングセンターに出店し、子連れの家族が来る場所を押さえている。ディズニー契約は、衣装と背景の魅力を支える。ただ、契約は1年ごとの更新で、会社自身がリスクに挙げている。
値決めの力は、ある程度ある。2026年4月の撮影件数は前年の9割前後に落ちたが、単価は9%上がった。撮影料も、2026年3月に税込5千5百円に改定した。ただ、客数が減る中の値上げは、続けるほど客離れを招く。スマートフォンでの自撮りや、出張カメラマンも代わりになる。
資本効率は低い。2026年2月期のROEは3.8%、営業利益率は6.4%で、10年のROE中央値は7.7%だ。会社は総資本経常利益率20%以上を目標にするが、実績は5.4%にとどまる。2022年2月期は営業利益率が14.8%まで上がったが、そこから戻っていない。
経営は、守りに入っている。店舗の統廃合、京丹後の縫製工場の閉鎖など、費用の削減が中心だ。2026年2月期の経常利益は、会社予想の28.7億円を25%下回った。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、子どもの数が決める。2025年の出生数は約67万1千人で、前年から2%減り、過去最少だった。合計特殊出生率は1.14で、10年連続で下がった。ただ、減り方は近年の5%台より緩やかになり、婚姻件数は2年続けて増えた。
それでも、撮影の件数は出生数より速く減っている。2025年6月は前年の86%、2026年4月は既存店で92%だった。理由として、七五三を祝う習慣の薄れ、スマートフォンでの自前の撮影、出張撮影の増加などが考えられるが、会社は数字で示していない。
競争は三層だ。一つ目は同業のチェーンや地域の写真館。二つ目が、出張撮影のカメラマンとマッチングのアプリ。三つ目が、家族自身のスマートフォンの撮影だ。写真館の価値は、衣装と背景と、プロの撮影の特別感に絞られる。
数量の物差しは、撮影件数とする。件数の絶対数は開示されていないので、2026年2月期を100とした指数で置く。10年後の中立は78で、年に2.4%ほど減る。成人式の前撮りやスクールフォトなどの新しい需要を足しても、出生数の減少には追いつかない。単価は物価で1.34倍になるところ、値上げが客数に響くので1.38倍と置いた。
資本政策と M&A
還元は、配当が中心だ。目標配当性向は33.3%だが、実際は2025年2月期が62%、2026年2月期が73%と、目標を大きく上回る。2027年2月期の配当も同額の予想で、性向は68%にあたる。自社株買いの方針は示されていない。
財務は強い。現金は178億円、自己資本比率は78.7%で、借入は季節資金の短期借入とリース債務だけだ。ただ、毎年の営業キャッシュフロー49億円は、店舗の設備投資25億円、リースの返済16億円、配当8.5億円でほぼ使い切られる。現金が増える勢いは、ない。
大株主は、トーランス・ジャパンが23.3%、富士フイルムが20.3%を持つ。この2社で4割を超え、市場で流通する株は少ない。会社は、富士フイルムの株式を18.7億円分持つ。
希薄化の期は、確認できる範囲でない。投資の中心は店舗の改装で、70店を改装した。減損損失は2026年2月期に2.5億円を計上した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、値上げの浸透と、新しい需要の広がりに頼る。
単価は伸びている。2026年4月の既存店の単価は前年の109%で、撮影料も2026年3月に改定した。客数が減っても、単価が上がれば売上は保てる。会社は2027年2月期に、営業利益を21億円から24.5億円へ戻すと予想する。
新しい需要もある。成人式の振袖と前撮りを組み合わせた「ふりホ」は、10代後半の客層を取り込む成長分野だ。スクールフォト、マタニティ、赤ちゃん撮影、大人向けの「HALULU」も加わる。店舗を統廃合して固定費を削れば、営業利益率は2022年2月期の15%に近づく。
財務の面も下値を支える。現金は178億円で、時価総額の6割近い。株主還元を強めたり、資本効率の改善に動いたりすれば、評価は見直される。
10年後、撮影件数の減りが年1%ほどに収まり、営業利益率が12%に達すれば、営業利益は52億円になる。この筋書きの確率は5%とした。
慎重な見方
慎重な見方は、客数の減りが構造的で、値上げでは補えない点を指摘する。
出生数は10年連続で下がり、2025年は約67万人と過去最少だった。撮影件数は、2025年6月に前年の86%、2026年4月に既存店で92%と、毎年1割近く減っている。会社も、七五三の慣習の薄れを、リスクに挙げている。
値上げにも限りがある。単価を1割上げて補うのは、数年は続けられても、10年は続かない。客数がさらに離れれば、店舗の固定費が重く残る。減価償却は営業利益の1.6倍で、客数が減るほど利益が早く減る。
資本の面でも、期待は持ちにくい。ROEは3.8%と低く、会社が掲げる総資本経常利益率20%には遠い。現金178億円は返す約束も使う計画もなく、配当で少しずつ減るだけだ。
ディズニーとの契約は1年ごとの更新で、外れれば売上の柱の一つが欠ける。2026年2月期の経常利益が会社予想を25%下回ったように、回復の計画は繰り返し外れてきた。2027年2月期の営業利益予想24.5億円も、同じ道をたどるおそれがある。
どちらに重みを置いたか
結論は、今の値段は高い、というものだ。確率を重ねた価値は約178億円で、時価総額310億円を4割ほど下回る。
この会社の価値は、現金と事業に分かれる。現金178億円のうち、季節資金やリースに要る分を除いた約90億円が余るが、返す約束がなく、10年そのままなら価値は目減りする。事業は、客数の減りが続く中で、10年の中立でもROEが5.5%と、資本コストに届かない。
安全域は、現金の分だけある。悲観の筋書きでも、売れる資産の価値は約126億円と、時価総額の4割。一方、最も良い筋書きでも、価値は310億円ほどで、今の時価総額と同じ水準にとどまる。幅の割に、期待値が低い。
見るべき点は三つ。撮影件数の減りが止まるか、営業利益率が8%を超えるか、そして現金の使い道が株主還元に向くかだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,518 円258 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 687 円117 億円)。 今の値に割り戻すと 1,170 円199 億円、今との差 −36.1%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,175 円539 億円 | 942 円160 億円 | +124.8% | +8.4% | 206 円35 億円 |
| やや楽観 | 15% | 2,353 円400 億円 | 883 円150 億円 | +76.8% | +5.9% | 485 円82 億円 |
| 中立 | 38% | 1,696 円288 億円 | 795 円135 億円 | +36.0% | +3.1% | 946 円161 億円 |
| やや悲観 | 30% | 910 円154 億円 | 589 円100 億円 | −18.2% | −2.0% | 450 円76 億円 |
| 悲観 | 12% | 742 円126 億円 | 236 円40 億円 | −46.6% | −6.1% | 117 円20 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,518 円258 億円 | 687 円117 億円 | +20.4% | +1.9% | 2,205 円374 億円 |
今の株価時価総額 1,831 円311 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 新しい需要が客数の減りを止め、利益率は12%に 利益 32 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 3,175 円539 億円
成人式の前撮り、スクールフォト、マタニティが育ち、客数の減りが緩やかになる。撮影件数は10年で1割減にとどまり、単価は物価を上回って1.45倍になる。
店舗の統廃合で固定費が下がり、営業利益率は12%に上がる。減価償却の負担も、改装を終えて軽くなる。余った現金は、株主への還元に向かい、10年の還元は160億円に達する。
営業利益は約52億円、純利益は約32億円で、ROEは8.9%。会社が掲げる総資本経常利益率20%には遠いが、2022年2月期のような水準に近づく。ただ、出生数の減少の中で客数を守る条件が要る。
- こども写真館:数量 90.0(撮影件数の指数(2026年2月期=100))× 価格 4.78(指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 430 億円・営業利益 52 億円。撮影件数90、単価+45%、利益率12%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 14.66 倍、時価総額 539 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出生数が減る中で客数の減りを止めるには、新しい需要が大きく育つ必要がある。直近は毎年1割近く減っている。5%に置いた。
やや楽観 15% 客数の減りが和らぎ、営業利益率は10%に戻る 利益 24 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 2,353 円400 億円
新しい需要が客数の減りを和らげる。撮影件数は10年で16%減り、単価は1.42倍。値上げが客離れを招きすぎない、ほどよい姿だ。ふりホとスクールフォトが売上の1割ほどを占め、七五三の集中を和らげる。
営業利益率は10%に戻る。2020年代前半の高い時期に近い水準だ。店舗は350前後に減るが、1店あたりの売上が上がり、減価償却の負担も軽くなる。
営業利益は約39億円、純利益は約24億円で、ROEは7.3%。資本コストに近づくが、まだ届かない。還元は150億円になる。会社の総資本経常利益率の目標には届かないが、2023年2月期ごろの水準には戻る。
- こども写真館:数量 84.0(撮影件数の指数(2026年2月期=100))× 価格 4.68(指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 393 億円・営業利益 39 億円。撮影件数84、単価+42%、利益率10%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 13.56 倍、時価総額 400 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと新しい需要で、客数の減りが緩やかになる姿はありうる。ただ、直近は客数が大きく減り、利益も戻っていない。15%に置いた。
中立 38% 客数は年2%減り、値上げと統廃合で利益率は8% 利益 17 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,696 円288 億円
出生数の減少で、撮影件数は10年で22%減る。年に2.4%ほどの減り方で、直近の毎年1割近い減少よりは緩やかになる。成人式とスクールフォトなどの新しい需要が、一部を補う。
単価は物価の1.34倍より少し上の1.38倍に上がる。値上げの余地は残るが、客数に響くので限られる。店舗の統廃合で営業利益率は8%に戻る。
営業利益は約28億円、純利益は約17億円で、ROEは5.5%。資本コストに届かない。還元は純利益の8割ほどの135億円で、余った現金は積み上がったままだ。堅実だが、先細りの筋書きである。現金は大きく動かず、配当を払いながら、事業が静かに縮む。
- こども写真館:数量 78.0(撮影件数の指数(2026年2月期=100))× 価格 4.54(指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 354 億円・営業利益 28 億円。撮影件数78、単価+38%、利益率8%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 288 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出生数の減少が撮影件数の減りを決め、値上げと統廃合が利益を支える。直近の悪さよりは緩やかな姿を、中立として38%に置いた。
やや悲観 30% 客数の減りが続き、名目の営業利益は10年で縮む 利益 10 億円 · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 910 円154 億円
客数の減りが直近のペースに近く続き、撮影件数は10年で28%減る。値上げの余地も狭まり、単価は1.30倍にとどまる。
店舗の統廃合は進むが、売上の減りに追いつかない。営業利益率は5.5%と、足元より低い。減価償却の負担も重く残る。広告費を減らしても客数は戻らず、費用の削減は限られる。
営業利益は約17億円、純利益は約10億円で、ROEは3.1%。配当も純利益を超えて減り、還元は100億円にとどまる。余った現金は、配当に充てられて目減りする。ディズニー契約は維持されるが、更新のたびに条件が厳しくなり、会社の取り分は減る。
- こども写真館:数量 72.0(撮影件数の指数(2026年2月期=100))× 価格 4.28(指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 308 億円・営業利益 17 億円。撮影件数72、単価+30%、利益率5.5%
倍率:事業の純利益は9億円、事業のROEは3.6%で資本コストを大きく下回る。上限は逆数の約11.8倍。利益が薄く先細りなので、上限の8割弱にあたる9.63倍に置き、余った現金は谷で食う分として0.75倍の68億円を足した。
確率:客数の減りが直近のペースに近く続き、利益が足元よりさらに落ちる姿は十分ありうる。足元の悪化が続いているので、30%とした。
悲観 12% 習慣の薄れと契約の喪失で、利益が消える 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 742 円126 億円
構造的に負ける。出生数の減少と習慣の薄れで、撮影件数は10年で4割近く減る。値上げは客離れを招き、単価は1.15倍にとどまる。
ディズニー契約の更新が途切れ、衣装の魅力も落ちる。店舗の減損が続き、営業利益はゼロに近づく。純利益は赤字になり、自己資本は約20億円削られる。上半期の赤字を下半期の七五三で埋められなくなり、通期の赤字が常態になる。
配当は減らされ、還元は40億円にとどまる。残る価値は、現金と売れる資産が負債を上回る分だ。事業そのものの稼ぎは、ほとんど評価されない。店舗は大きく減り、残るのは主要な商業施設の数十店だけになる。
- こども写真館:数量 62.0(撮影件数の指数(2026年2月期=100))× 価格 3.79(指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準))→ 売上 235 億円・営業利益 0 億円。撮影件数62、単価+15%、利益率ゼロ
倍率:稼ぐ力は赤字で、評価できない。一方、売れる資産の税後の価値は約126億円で、こちらを置いた。今の自己資本に対しては0.42倍にあたる。
確率:需要は残るので全てが崩れる可能性は低い。ただ、出生数、習慣の薄れ、ディズニー契約の更新が重なる姿は否定できない。12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
こども写真館
七五三、お宮参り、百日、マタニティ、赤ちゃん、成人式の前撮り、スクールフォトなどの撮影と写真商品の販売。衣装製造の子会社(売上の0.4%)を含む。
| 数量撮影件数の指数(2026年2月期=100) | 価格指数1あたりの売上(億円。1件あたり売上に撮影件数の1%分をかけたもの。物価で10年に1.34倍が中立の基準) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 100 | 3.29 | 329 | 21 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 4.54 | 354 | 28 |
取り方:2026年2月期の実績。売上329.3億円、営業利益21.0億円(利益率6.4%)。撮影件数の絶対数は開示されないので、2026年2月期を100とした指数にした。売上を100で割った3.293億円が、指数1あたりの売上になる。月次の撮影件数は、2025年6月に前年の86%、2026年4月に既存店で92%だった。
リスクと懸念
客数の減りが止まらない
2025年6月の撮影件数は前年の86%、2026年4月は既存店で92%だった。出生数は10年連続で下がり、七五三を祝う習慣も薄れている。客数が毎年1割近く減り続ければ、単価の引き上げでは補えない。
店舗の固定費
減価償却は2026年2月期に34億円と、営業利益の1.6倍だった。家賃も固定の約束だ。客数が減っても費用は減らず、店舗の統廃合に費用と時間がかかる。減損損失は2026年2月期に2.5億円出た。
ディズニー契約の更新
ウォルト・ディズニー・ジャパンとの包括契約は、2027年2月28日までで、1年ごとの更新だ。更新されないと、衣装や背景の魅力が落ち、売上に影響する。
季節性と天候・感染症
七五三が集中する10月と11月で、年間売上の4分の1ほどを稼ぐ。この時期に感染症や自然災害が起きると、通期の利益に響く。上半期は赤字になりやすく、見通しも立てにくい。
ショッピングセンターへの依存
店舗の69%が、ショッピングセンターの中にある。ディベロッパーの経営悪化や、施設の閉鎖、賃料の改定の影響を受ける。
現金の使い道と大株主
現金178億円は、返す約束がない。トーランス・ジャパンと富士フイルムで4割を超える大株主がいて、少数株主の要求が通りにくい。使い道が決まらなければ、資本効率は低いままだ。
今後の分かれ目
- 撮影件数が前年を上回る月が、続けて現れた
- 客数の減りが止まった合図だ。強気の確率を上げ、数量の置き方を見直す。
- 営業利益率が、2年続けて8%を超えた
- 店舗の統廃合と値上げが実を結んだ証拠だ。中立と強気の確率を上げる。
- 自社株買いや特別配当で、現金178億円を株主に返す発表があった
- 余った現金の価値が株主に届く。余剰現金の戻り方の置き方を上げ、価値を引き上げる。
- 撮影件数が前年の8割台に落ちる月が続いた
- 客離れが加速した合図だ。慎重な筋書きの確率を上げる。
- ディズニー契約が更新されないと発表された
- 売上の柱が欠ける。弱気の確率を上げ、数量と単価を見直す。
- 大株主による公開買付けや、経営統合の話が出た
- 価格が付く可能性がある。ただし、価格が現金と事業の価値を反映しているかを確かめる。
見ておくもの
- 月次の撮影件数と単価(前年比)
- 営業利益率と、店舗の統廃合の進み
- ふりホ・スクールフォトなど新規需要の売上
- 現金の残高と、株主還元の方針
- ディズニー契約の更新
- 出生数と、七五三の撮影の動き
倍率と資本コストの決め方
本稿は時価から出発していない。起点は2026年2月期の実績で、売上329億円、営業利益21億円、純利益12億円だ。会社の2027年2月期の予想(営業利益24.5億円)は、中間期が赤字になりやすく通期でも未達が続いたので、起点に置かなかった。10年後の中立は営業利益28億円と、予想の延長に近い。
倍率は、収益から決めた。ROEが資本コストを下回る筋書きでは、式の上限の8割から9割に置いた。他社や過去の倍率は、判断に使っていない。
資本コストは8%とした。同じ領域の済んだ会社はない。サービス業の他社の多くは8%台で、こちらは少子化による寿命の短さを0.5ポイント足した。
撮影件数の絶対数は開示されていないので、2026年2月期を100とした指数で置いた。余った現金90億円は、現金178億円から季節資金とリースの備えとして約88億円を残した推定で、確かな額ではない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→14.66 倍・やや楽観 PER 11.2→13.56 倍・中立 PER 9.8→12.5 倍・やや悲観 PER 9→9.63 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 1.0% を足した。ディズニー契約の更新や店舗の減損など個別の事情は、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。