結論
中日本興業は、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマと、豊山町のミッドランドシネマ名古屋空港を営む映画興行の会社だ。売上の9割近くを映画館と併設の飲食が占め、看板・広告の事業と小さな賃貸を持つ。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段はかなり高い、というものだ。2026年3月期は大作の当たりで黒字に戻ったが、営業利益は1.6億円にすぎない。過去10年のROE(自己資本利益率)の中央値はほぼ0%で、資本コストに遠く届かない。
株価を支えているのは、映画の優待券だと筆者は見る。100株で年20枚の招待券が届き、額面では利回り3%台になる。ただ会社の負担は配給会社への支払いなど原価の分で、株主が受け取る値打ちは額面より小さい。
資産は厚くない。現金と借入はほぼ同額で、豊田通商などの持ち合い株が10億円ほどあるだけだ。劇場の建物は借りており、家賃は毎年必ず出ていく。
10年で見ると、客の数は配信に押されてゆっくり細り、単価は物価並みに上がる。利益率は普通の年で3%前後にとどまると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社はオーナーとして持ち続けたい事業ではない。稼ぐ力が資本コストに届かず、その差を埋める仕組みも見えないからだ。
映画館は、作品を借りて客を入れる商売だ。作品の力で客は動き、劇場の力では動かない。立地は良いが、ビルは借り物で、家賃は持ち主が決める。過去10年でならすと、会社はほとんど利益を残していない。
資本の使い方は守りに寄っている。安定配当と優待で個人株主をつなぎ止め、利益はわずかずつ自己資本に積まれる。この形が続けば、株主の価値は大きくは増えない。
安全域は見当たらない。自己資本は約36億円あるが、ROEが低い会社では帳簿は床にならない。優待券を額面で数えても、今の時価総額を稼ぐ力で説明するのは難しい。
もし筆者がこの会社に関わるなら、持ち合い株を売って自社株買いに回し、赤字のアドを畳むよう求める。それでも稼ぐ力そのものは大きくは変わらない。
何で稼ぐ会社か
事業は3つある。シネマ、アド、不動産賃貸だ。2026年3月期の売上41億円のうち、シネマが36.5億円、アドが3.4億円、賃貸が1.2億円を占める。
シネマの中心は、名古屋駅前の超高層ビル「ミッドランドスクエア」に入る7スクリーンの劇場だ。松竹マルチプレックスシアターズとの共同事業で、持分は64%。隣にミッドランドスクエアシネマ2があり、県営名古屋空港の商業施設には12スクリーンの劇場を持つ。劇場の建物はどれも借りている。
稼ぎは入場料と、売店・飲食の売上だ。入場料の半分前後は配給会社へ払うので、利益の源は客の数と売店の売上になる。作品の当たり外れで客数は大きく振れる。2026年3月期は『国宝』などの大ヒットで前期から2割増収だった。
アドは、看板の製作と広告代理の小さな事業で、赤字が続く。不動産賃貸は名古屋市内の自社物件を貸すもので、建設中の物件もあり売上は伸びている。従業員は正社員61人と少なく、パートが劇場を回す。
利益の形は単純だ。客が1割増えれば、家賃と人件費はほぼ変わらないので、増えた売上の多くが利益に残る。逆に1割減れば利益はほぼ消える。この振れの大きさが、この会社を読むうえでいちばん大事な点だ。
優良さと弱いところ
事業の質は高くない。理由は3つある。
1つ目は、値段を自分で決められないことだ。入場料は業界でほぼ横並びで、名古屋駅の周りには109シネマズ名古屋、TOHOシネマズ、イオンシネマなどがひしめく。駅前の立地は強みだが、客を囲い込む仕組みはない。
2つ目は、利益が作品しだいで振れることだ。過去12年で最良の営業利益率は4.3%にとどまり、コロナ前の普通の年でも3%台だった。当たり年でようやく資本コストに近づく形である。
3つ目は、家賃という固定費の重さだ。劇場はビルの持ち主から借りているので、客が減っても家賃は減らない。新リース会計基準が始まれば、この約束は負債として見えるようになる。
良い点もある。借金はほぼ現金と同額で、財務はつぶれる形ではない。松竹との共同事業は作品の調達で助けになる。名古屋駅前という立地は、客の数では他の劇場に負けにくい。ただ、それは利益率の高さには結びついていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
映画館の市場は、数量で見ると横ばいから緩やかな減少だ。全国のスクリーン数は約3,700で、観客数はコロナ前の年1.9億人前後に戻りきっていない。2025年は邦画の大作が続いて興行収入が伸びたが、当たり年は毎年は来ない。
入場料は物価に沿って上がってきた。一般料金は物価に沿って上がり、プレミアムシートや大画面の上乗せも広がった。筆者は、10年の入場単価は物価並みに上がると見る。ただし配給会社への支払いも同じ割合で増えるので、利益率は上がりにくい。
脅威は配信だ。新作が早く配信に回るほど、劇場に行く理由は大作と体験型の上映に絞られる。大きな画面と音響を持つシネコンは残るが、客の数はゆっくり細る。
名古屋は人口がほぼ横ばいで、地方の中では恵まれた市場だ。一方でリニア開業を見込んだ駅前の再開発が進み、新しい劇場が出てくれば客を奪い合う。アドの看板事業は、デジタル広告への置き換えが続く市場にいる。
人手の面では、劇場はパートとアルバイトに頼る。最低賃金が年3%前後で上がる世界では、人件費の上昇を単価で取り戻せるかが利益率を決める。券売機やネット予約で人を減らす余地はあるが、売店の接客は残る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、1株あたり同じ額の安定配当を続けている。総額は年0.3億円ほどで、自社株買いの実績はほとんどない。
もう1つの還元は株主優待だ。100株で年20枚の映画招待券とカフェ券が届き、500株まではほぼ株数に比例して増える。株主2,944人のうち個人が2,890人で、優待目当ての個人が株主の大半を占める。
筆者は、優待の会社の負担を年0.5億円前後と見積もった。額面は年1.5億円規模になるが、使われない券があり、会社の負担は配給会社への支払いが中心だからだ。配当より大きい還元として、10年の還元に足して数えた。
大株主はトヨタ不動産(7.5%)と松竹(3.8%)で、親会社はいない。豊田通商・松竹の株を持ち合っている。買収の話は出ていないが、株主が分散した小さな会社なので、劇場の運営会社に買われる道は残る。
政策保有株の縮減や、資本コストを意識した経営の開示は目立たない。名証の小さな会社で、市場の圧力が届きにくいことも還元が厚くならない理由だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中日本興業の劇場は、名古屋でいちばん人が集まる駅前にある。ミッドランドスクエアは高級店が並ぶビルで、大人の客が多い。席の単価を上げやすい客層だ。名古屋空港の劇場も12スクリーンあり、郊外の家族客を押さえている。
映画館の市場は、ここ数年で姿を変えた。大作のアニメと邦画が続き、2025年は興行収入が伸びた。入場料は物価に沿って上がり、プレミアムシートや大画面の上乗せも定着しつつある。客数が少し減っても、単価で売上は保てる。
財務はつぶれない。現金と借入はほぼ同額で、持ち合い株が10億円ある。安定配当と優待を続ける余力はある。
松竹との共同事業は作品の調達で強みになる。株主が分散した小さな会社なので、劇場の運営会社が名古屋の拠点を欲しがれば、買われる道もある。
コロナの3年間の赤字は特別な出来事で、普通の年なら黒字は保てる。名古屋という恵まれた市場で、駅前の一等地に劇場を持ち続けること自体が、他社にはまねしにくい資産だ。
慎重な見方
当たり年の数字に目を奪われてはいけない。過去10年のROEの中央値はほぼ0%で、赤字の年が5回ある。営業利益率は良い年でも4%台で、普通の年は1〜3%だ。
映画館は作品を借りて客を入れる商売で、値段も客も作品が決める。入場料の半分前後は配給会社に払い、家賃も払う。単価が上がっても、配給会社と家主の取り分も同じように増える。
劇場は借り物で、家賃の約束は客が減っても残る。配信が広がり、新作が早く手元のテレビで見られるようになれば、客はゆっくり細る。
今の時価総額は、普通の年の純利益の50倍を超える。株価を支えているのは優待券で、事業の稼ぎではない。優待の会社の負担は小さく、株主が受け取る本当の値打ちも額面ほどはない。
資産の床も薄い。持ち合い株は売る方針がなく、賃貸不動産は小さい。自己資本36億円は、ROEが低い会社では本当の価値の床にならない。アドの赤字も長く続いており、畳む決断が出ていないこと自体が、資本の使い方の甘さを物語る。
どちらに重みを置いたか
立地と財務の堅さについては、強気の言い分が正しい。ただ、10年の価値を決めるのは普通の年の稼ぐ力で、それは資本コストに遠く届かない。当たり年の利益を続くものとは見ず、確率は中立と慎重な見方に寄せた。持ち合い株と優待は数えたが、それでも今の値段との差は大きい。買収で高く売れる道は残るが、それは事業の価値ではなく、買い手の都合で決まる値段だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,376 円18 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,469 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 2,470 円13 億円、今との差 −77.4%、 期待の年率 −7.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,201 円33 億円 | 1,885 円10 億円 | −26.2% | −3.0% | 647 円3 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,637 円25 億円 | 1,696 円9 億円 | −42.2% | −5.3% | 1,267 円7 億円 |
| 中立 | 37% | 3,694 円20 億円 | 1,602 円9 億円 | −51.6% | −7.0% | 1,960 円10 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,885 円10 億円 | 1,310 円7 億円 | −70.8% | −11.6% | 703 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,319 円7 億円 | 754 円4 億円 | −81.1% | −15.3% | 270 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,376 円18 億円 | 1,469 円8 億円 | −55.7% | −7.8% | 4,845 円26 億円 |
今の株価時価総額 10,950 円58 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 大作が続き、駅前の劇場が客を集め続ける 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,201 円33 億円
筆者が描く上振れは、当たり年が普通の年になる姿だ。邦画とアニメの大作が毎年続き、来場者数は2026年3月期の水準を保つ。プレミアムシートや大画面の上乗せが広がり、1人あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。
家賃は物価並みに上がるが、客数が保たれるので固定費が薄まり、シネマの利益率は5%に乗る。建設中の賃貸物件が完成し、賃料は物価並みに上がる。賃貸の建物の償却は建てた時の値段のままなので、賃料の伸びがそのまま利益に残る。
還元は配当を年1億円近くまで増やし、優待も続く。ROEは5%台に上がるが、資本コストにはまだ届かない。劇場の運営会社に買われる道もここに含まれる。
- シネマ(映画興行・飲食):数量 150(年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 3,400(来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。来場者を保ち、単価は物価超え
- アド(看板製作・広告代理):数量 1,200(年間の受注件数(件、推定))× 価格 40(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。小さな黒字
- 不動産賃貸:数量 4.3(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 4.82(年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。新物件で面積増。償却は据え置き
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 33 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:当たり年の水準が10年続き、物価以上の値上げも通る筋書き。過去12年で営業利益率4%台は2回しかなく、1割に届かない確率とした。
やや楽観 20% 客数は少し減るが、値上げと賃貸で利益を保つ 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,637 円25 億円
大作の年と不作の年が交互に来て、来場者数は当たり年の9割強で落ち着く。入場料と売店の単価は物価よりやや速く上がる。大画面や音響の上乗せ料金が定着するからだ。
シネマの利益率は3.8%と、コロナ前の良い年の水準に戻る。アドは赤字を止め、ほぼ収支が合う。賃貸は新しい物件が加わり、賃料は物価並みに上がる。
本社の費用は物価並みに増える。営業利益は2.3億円、純利益は1.7億円ほどだ。還元は配当を少し増やし、優待を続けて10年で9億円になる。それでもROEは4%弱にとどまり、資本コストとの差は埋まらない。
- シネマ(映画興行・飲食):数量 140(年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 3,300(来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。当たり年の9割強
- アド(看板製作・広告代理):数量 1,150(年間の受注件数(件、推定))× 価格 40(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。収支が合う
- 不動産賃貸:数量 4.1(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 4.82(年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。新物件・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コロナ後の回復と値上げの定着は実績がある。客数が当たり年の9割強を保てば成り立つので、上振れの中心として2割。
中立 37% 客は緩やかに細り、利益率は普通の年の3% 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,694 円20 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、普通の年の姿が続くことだ。来場者数は当たり年から1割ほど減り、配信の広がりでさらに少し細る。名古屋の人口はほぼ横ばいなので、全国より減り方は緩い。
入場料と売店の単価は物価並みに上がる。配給会社への支払いと人件費、家賃も同じように上がるので、シネマの利益率は3%にとどまる。アドは収支がとんとんだ。賃貸は新しい物件が加わり、利益は0.6億円になる。
営業利益は1.7億円、純利益は1.3億円だ。還元は安定配当と優待の負担で10年に8.5億円になる。ROEは3%にとどまり、利益は少しずつ自己資本に積まれていく。
- シネマ(映画興行・飲食):数量 128(年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 3,264(来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。客は1割強減・単価は物価並み
- アド(看板製作・広告代理):数量 1,100(年間の受注件数(件、推定))× 価格 40(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。とんとん
- 不動産賃貸:数量 4.1(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 4.82(年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。新物件・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コロナ前の普通の年の利益率は3%台で、観客数は全国でも横ばいから減少。今の形が続く最も自然な筋書きとして4割弱。
やや悲観 22% 配信に客を取られ、家賃が利益を食う 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,885 円10 億円
新作が劇場公開から短い期間で配信に回るようになり、劇場に足を運ぶのは大作のときだけになる。リニア開業を見込んだ駅前の再開発で新しい劇場ができ、客の取り合いも起きる。来場者数は今より4分の1減る。
単価は物価ほどには上がらない。客を呼ぶために割引を増やすからだ。一方で家賃と人件費は物価並みに上がるので、シネマの利益率は0.5%まで削られる。アドは赤字が続き、賃貸の利益で全社がかろうじて黒字を保つ。
配当は安定配当の方針で続くが、優待は枚数を絞る。価値は稼ぐ力より、持ち合い株と賃貸不動産の売れる値で決まる。
- シネマ(映画興行・飲食):数量 112(年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 3,150(来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。客は4分の1減
- アド(看板製作・広告代理):数量 950(年間の受注件数(件、推定))× 価格 38(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。赤字が続く
- 不動産賃貸:数量 3.8(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 4.50(年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。空室が増える
倍率:純利益0.2億円の稼ぐ力は年金で見ても3億円ほど。価値は床の資産(持ち合い株と賃貸不動産の手取りの半分)で測り、今の自己資本36億円に0.278倍をかけた約10億円とする。
確率:新作の配信までの期間が縮み、駅前に新しい劇場が出れば客数は2割以上減る。どちらも起こりうるので2割強。
悲観 13% 客離れと家賃で赤字が続き、資産を食いつぶす 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,319 円7 億円
配信が映画を見る主な場所になり、劇場の来場者数は今の6割まで落ちる。大作も配信を前提に作られ、劇場で見る理由は薄れる。入場料の値上げは客離れを早めるだけになる。
家賃は契約で決まっているので減らない。シネマは営業赤字に転じ、アドも縮む。全社で年1億円を超える赤字が続き、現金は持ち合い株の売却で埋めることになる。
会社は清算されず、少数株主は資産の使い道を決められない。優待は大きく縮み、配当も減らす。床は、残った持ち合い株と賃貸不動産の手取りの半分とみる。10年後に劇場を畳むか、運営会社に安く売るかの選択を迫られる。
- シネマ(映画興行・飲食):数量 90.0(年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定))× 価格 3,000(来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 −2 億円。客は4割減・家賃が残る
- アド(看板製作・広告代理):数量 700(年間の受注件数(件、推定))× 価格 36(1件あたりの売上(万円、推定))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。縮む
- 不動産賃貸:数量 3.4(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 4.20(年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料が伸びない
倍率:赤字が続き、稼ぐ力では測れない。価値は床の資産で測り、今の自己資本36億円に0.194倍をかけた約7億円とする。
確率:観客数が全国で構造的に落ち、駅前の劇場の家賃が重荷になる深い筋書き。赤字の年が多い会社だが財務はつぶれないので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シネマ(映画興行・飲食)
名古屋駅前と名古屋空港のシネコン、劇場併設のカフェ・飲食店。
| 数量年間の来場者数(万人、売上から逆算した推定) | 価格来場者1人あたりの売上(円。入場料・売店・飲食を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 2,436 | 37 | 2 |
| 10 年後 中立 | 128 | 3,264 | 42 | 1 |
取り方:2026年3月期のシネマの売上36.54億円、営業利益1.74億円(有報)。来場者数の開示はないので、1人あたり売上を入場料と売店の目安から置き、売上から割り戻した推定。
アド(看板製作・広告代理)
看板の製作・施工と広告代理。
| 数量年間の受注件数(件、推定) | 価格1件あたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,150 | 30 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 40 | 4 | 0 |
取り方:2026年3月期のアドの売上3.44億円、営業損失0.35億円(有報)。件数は開示がなく、1件30万円で割り戻した推定。
不動産賃貸
名古屋市内の自社物件の賃貸。建設中の物件がある。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格年間の平均賃料(万円/平方メートル、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.4 | 3.60 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 4.82 | 2 | 1 |
取り方:2026年3月期の不動産賃貸の売上1.24億円、利益0.26億円(有報)。面積は開示がなく、月0.3万円/平方メートルの賃料で割り戻した推定。建設仮勘定2.5億円の物件が完成すれば面積が増える。
リスクと懸念
作品の当たり外れ
客数は作品しだいで2割以上振れる。2026年3月期は大ヒットが続いた当たり年で、会社の2027年3月期の予想は純利益0.5億円と大きく落ちる。普通の年の稼ぐ力は当たり年の半分ほどだと見ておく必要がある。
配信による客離れ
新作が早く配信に回るほど、劇場に行く理由は大作と体験型の上映に絞られる。全国の観客数はコロナ前に戻りきっておらず、10年で客がゆっくり細る筋は十分にありうる。
借りた劇場と家賃
劇場の建物はどれも借りており、家賃は客が減っても減らない固定の約束だ。ミッドランドスクエアの契約条件や更新が変われば、利益は大きく動く。新リース会計基準では、この約束が負債として貸借対照表に載る。
2拠点への集中
稼ぎは名古屋駅前と名古屋空港の2拠点に集まる。駅前の再開発で新しい劇場ができる、空港の商業施設の客足が落ちる、といった1つの出来事で全社の利益が崩れる。大地震の影響も1つの地域に集まる。
優待の縮小と株主の構成
株主の大半は優待目当ての個人だ。業績が悪化して招待券の枚数を減らせば、個人株主が離れる。優待は会社の負担としては年0.5億円前後と小さいが、株主が受け取る値打ちの大きな部分を占める。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想どおり0.5億円前後に落ちる
- 当たり年の反動で、普通の年の稼ぐ力が中立の筋書きの通りだと確かめられる。
- 2年続けてシネマの営業利益率が4%を超える
- 単価の上乗せが定着している。中立の利益率を引き上げ、確率を上振れに寄せる。
- 名古屋駅周辺で新しいシネコンの開業が決まる
- 客の取り合いが始まる。来場者数の中立を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 持ち合い株を売り、自社株買いや増配に回す
- 資産が株主に向く。持ち合い株の戻り方を0.75〜1.0に見直す。
- 劇場の運営会社などから買収の提案が出る
- 提案の値段と、稼ぐ力で測った本質価値を比べる。今の時価総額は本質価値を大きく上回るので、提案は割安には見えにくい。
見ておくもの
- シネマの売上と営業利益率(当たり年の反動の大きさ)
- 全国の興行収入と観客数
- 名古屋駅周辺の劇場の出店・閉館
- 株主優待の枚数の変更
- 持ち合い株の売却と還元
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8.5%を下回るため、式の上限1÷k=11.8倍を基準に置き、中立は8割の9.4倍とした。今の株価・PER・PBRは見ていない。優待は会社の負担の年0.5億円で還元に足し、額面では数えない。新リース会計基準で劇場の家賃が負債に載っても、10年後の数字は今と同じく家賃を費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。