結論
ライドオンエクスプレスは宅配寿司「銀のさら」と宅配御膳「釜寅」を全国に約350拠点で営む会社だ。1つの拠点で複数のブランドを併売し、自前の配達員が届ける。筆者の結論は「やや割高」だ。手元の現金と出資先の株は時価総額の半分を超えるが、本業の稼ぐ力が細っている。
逆風は2つある。1つは宅配アプリの普及だ。回転寿司や地元の店の寿司も家に届くようになり、宅配の専業である強みが薄れた。もう1つは原価で、マグロや容器、配達員の人件費が上がっている。拠点はこの2年で1割近く減り、今期の営業利益は7.5億円と前期を下回る見込みだ。
下支えは財務だ。純現金は約49億円あり、10億円の自社株買いも進めている。ただ創業者側が4分の1強を持ち、現金の一部はCVCへの出資に回る。現金がすべて株主に戻るとは限らない。
10年で見ると、本業の利益は物価並みに増えるのがやっとだ。値段の半分は手元の資産が支え、残りの半分を細る本業が支える形になる。筆者は、その本業の部分にいまの値段ほどの価値は無いと見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い名前を持つが、堀が狭まっている事業」だ。家族の行事に宅配寿司を頼む習慣は残る。だが、その注文を受けるのが「銀のさら」である必要は、10年前より薄い。
株主のものになる利益は、見た目より少ない。営業利益は8億円前後で、閉店の損失や減損が毎年のように出る。CVCの運用益は年によって振れ、事業の稼ぎとは呼べない。
安全域は手元の資産にある。純現金と出資先の株は、時価総額の半分を超える。ただ、それを株主に戻すか、出資や買い取りに使うかは経営が決める。今回の自社株買いは良い兆しだが、一度で判断はできない。筆者は、本業の利益率が4%台を保てるかを見てから考えても遅くないと見る。
経営の資本の使い方にも注目したい。現金を本業の外の出資に回すのか、株主に戻すのか。今回の自社株買いが続くなら、評価は一段上がる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は2つある。1つは直営店で、注文を受けて寿司や釜めしを作り、自前の配達員が届ける。もう1つはFC本部で、加盟店に食材と容器を卸し、売上に応じたロイヤルティを受け取る。拠点は直営93、FC259で、FCの方が多い。
強みは、1つの拠点で「銀のさら」「釜寅」「すし上等!」を併売する仕組みだ。厨房と配達員を共有するので、ブランドごとに店を出すより費用が軽い。年末年始やお盆、誕生日など家族が集まる日の注文が多く、売上は12月と1月に大きく偏る。
注文の入口は、電話と自社サイト、それに宅配アプリだ。自社の電子ポイント「デリポイント」で常連客を囲い、テレビCMで年末の需要を取りにいく。ほかにレストランの宅配代行「ファインダイン」も営む。高齢者向けには、釜めしや御膳の品ぞろえを厚くしている。
本業の外では、CVCファンドを通じてスタートアップに出資している。2026年3月期は、その運用益5.9億円が経常利益を押し上げた。本業の稼ぎと投資の利益は分けて見る必要がある。筆者の計算では、本業の利益は投資の利益を除いた6割ほどだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、宅配寿司という小さな市場での首位の名前と、拠点の網だ。寿司を作って30分ほどで届ける仕組みは、単独の店には作りにくい。併売で費用を分け合う形も、同業が少ない理由になっている。
ただ、この堀は狭まりつつある。宅配アプリが配達を肩代わりし、どの店も自前の配達員なしに料理を届けられるようになった。スシローやくら寿司の持ち帰りも、値段の安さで客を奪う。2021年3月期に9.5%あった営業利益率は、直近は3〜4%台に沈んだ。
資本効率は、現金と出資を除けば悪くない。それでも過去10年のROEの中央値は11.7%で、ここ3年は5〜8%だ。創業者が経営を担い、拠点の整理には素早く手を打ってきた。2026年10月のサイバー攻撃で注文の仕組みが止まったことは、事業の弱点がシステムにもあることを示した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
宅配寿司の市場は、コロナ禍の特需のあと縮んでいる。在宅の時間が戻り、外食や持ち帰りに需要が移った。宅配寿司の専業は数が少なく、「銀のさら」は首位だが、競争の相手は同業ではなくなった。
今の相手は宅配アプリと回転寿司だ。出前館やUber Eatsは、地元の寿司店や回転寿司の寿司を家に届ける。スシローやくら寿司の持ち帰りは、1皿の安さで勝負する。どちらも「家で寿司を食べる」需要を、宅配専業から奪う方向に働く。
原価の面でも厳しい。マグロやサーモンは世界の需要増と円安で値上がりし、2026年は中東情勢による原油高で容器と物流費も上がった。配達員の人手も取り合いで、時給は物価以上に上がる。値上げで転嫁はできているが、上げるほど注文の回数が減る。
人口が減る国内で、家族の行事の需要は細っていく。一方で高齢者の世帯は増え、家に届く食事への需要は底堅い。釜めしや御膳のような高齢者向けの品ぞろえが、10年の数量を下支えする。ただ、その需要にも総菜の宅配や生協、ネットスーパーが手を伸ばしており、取り合いは避けられない。
資本政策と M&A
還元は、ここにきて厚くなった。2026年8月に、発行済み株式の12.8%にあたる125万株・10億円を上限とする自社株買いを決めた。9月末までに約1.5億円を取得した。配当は年1.5億円前後で、配当性向は利益の振れで2〜4割を行き来する。
株主優待は家族向けの食事券か魚沼産のコシヒカリで、会社の費用は年約2億円とみる。10年で約20億円が、配当とは別に株主に渡る形だ。
手元の現金は、本業の外の出資にも使われる。CVCファンドの運用益は2026年3月期に5.9億円出たが、評価損も同じ年に出た。創業者側の持株は4分の1強で、外からの買収は起こりにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
「銀のさら」は宅配寿司で唯一の全国ブランドだ。家族の集まりや年末の注文は、安さより「間違いのない寿司が時間どおりに届く」ことで選ばれる。回転寿司の持ち帰りは自分で取りに行く必要があり、客層は重ならない。
経営の手も早い。採算の悪い拠点を2年で約20閉じ、2025年の価格改定では客数を大きく落とさずに単価を上げた。閉店の一巡で本部費が軽くなり、原価高が落ち着けば利益率は5%前後に戻る。
財務は時価総額の半分を超える現金と出資で守られている。10億円の自社株買いは株数の1割超にあたり、1株あたりの価値をはっきり押し上げる。CVCの出資先が上場すれば、運用益がさらに出る。高齢者の世帯が増えるほど、家に届く御膳の需要は伸びる。今の値段は、本業の縮小を織り込みすぎている。
配達の仕組みそのものにも伸びしろがある。注文の多い年末年始に向けて、受注と配達の割り振りをシステムで効率化すれば、1件あたりの費用は下がる。店を閉じた地域でも、残った拠点が配達の範囲を広げれば、客を取りこぼさずに済む。
慎重な見方
堀は狭まる一方だ。宅配アプリが配達を誰にでも開いたことで、自前の配達網という強みは価値を失った。スシローやくら寿司の寿司が、アプリで家に届く時代になった。宅配寿司の専業を選ぶ理由は、年末の大皿くらいしか残らない。
数字もそれを示す。営業利益率は2021年3月期の9.5%から3%台に下がった。拠点は2年で1割近く減り、今期も営業赤字の四半期から始まった。マグロ・容器・配達員の費用は物価以上に上がり、値上げのたびに注文の回数が減る。
現金があっても、株主のものとは言い切れない。CVCへの出資は運用益と評価損が同じ年に出る不安定なもので、本業と関係の薄い使い道だ。創業者側が4分の1強を持ち、還元の方針も弱い。10月のサイバー攻撃で個人情報が漏れていれば、常連客の信頼も揺らぐ。
高齢者の需要に期待する声もあるが、そこには生協の宅配やネットスーパー、冷凍の総菜が並ぶ。寿司と釜めしだけで取り合いに勝てる保証は無い。
どちらに重みを置いたか
事業の見立てでは、慎重な見方に分がある。宅配アプリの普及で専業の強みが削られる流れは、10年では戻らない。一方で手元の資産と自社株買いは確かな下支えで、悲観でも価値が消えるわけではない。確率は中立を中心に、やや悲観をやや楽観より厚くした。結果は今の値段をやや下回る。手元の資産を足しても、本業の縮みを打ち消すには足りないという判断だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,154 円112 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 424 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 839 円81 億円、今との差 −16.0%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,409 円233 億円 | 538 円52 億円 | +194.9% | +11.4% | 236 円23 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,793 円173 億円 | 496 円48 億円 | +129.1% | +8.6% | 458 円44 億円 |
| 中立 | 36% | 1,258 円122 億円 | 465 円45 億円 | +72.5% | +5.6% | 620 円60 億円 |
| やや悲観 | 22% | 455 円44 億円 | 362 円35 億円 | −18.2% | −2.0% | 180 円17 億円 |
| 悲観 | 14% | 357 円35 億円 | 248 円24 億円 | −39.5% | −4.9% | 85 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,154 円112 億円 | 424 円41 億円 | +58.0% | +4.7% | 1,578 円153 億円 |
今の株価時価総額 999 円97 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 値上げが通り、拠点の目減りが止まる 利益 13 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,409 円233 億円
「銀のさら」の値上げが物価を少し上回って通り、注文件数も今の水準を保つ。年末年始の需要は家族の集まりの定番として残る。FC加盟店の採算が上向き、拠点数は10年で横ばいに戻る。本部は食材の一括仕入れと配達の効率化で、原価と人件費の上昇を吸収する。CVCファンドの出資先から1〜2社が上場し、投資の果実も手元に入る。営業利益率は5.5%と、この10年の中ほどまで戻る。それでも宅配アプリとの競争は続き、利益率はコロナ前の6〜7%台には届かない。手元の現金は自社株買いで株主に戻り、株数は1割ほど減る。年末年始の大皿の需要は、家族の行事の定番として10年後も残る。
- 直営店(宅配寿司・宅配御膳):数量 244(注文件数(万件・年、推定))× 価格 6,300(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 154 億円・営業利益 10 億円。注文件数 1.00 倍 × 客単価 1.40 倍、営業利益率 6.5%
- FC本部(食材の供給・ロイヤルティ):数量 259(FC 拠点数(拠点))× 価格 0.70(1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 19 億円。FC 拠点数 1.00 倍 × 1 拠点の本部売上 1.42 倍、営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 16.46 倍、時価総額 233 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと販促で既存店が伸び、閉店も止まる筋書き。2021年3月期の営業利益率9.5%は巣ごもりの特需で、再現の根拠は弱い。確率は低めにした。
やや楽観 20% 閉店が一巡し、値上げで稼ぐ 利益 10 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 1,793 円173 億円
採算の悪い拠点を閉じる動きは2026年3月期で一巡する。その後は1割ほどの目減りにとどまり、残った拠点で注文件数を守る。価格は物価をやや上回って改定され、テレビCMとポイントで注文の機会を作る。マグロなどの食材高は数年かけて値段に転嫁でき、営業利益率は4.7%まで戻る。株主優待と配当は続き、自社株買いも方針として定着する。宅配アプリとは競いながらも、アプリ経由の注文を自社の厨房で受けて、配達の空き時間を埋める使い方が広がる。高齢者向けの御膳の注文も、少しずつ厚みを増す。それでも宅配寿司という市場の小ささは変わらず、大きな伸びは望めない。
- 直営店(宅配寿司・宅配御膳):数量 224(注文件数(万件・年、推定))× 価格 6,165(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 8 億円。注文件数 0.92 倍 × 客単価 1.37 倍、営業利益率 6.0%
- FC本部(食材の供給・ロイヤルティ):数量 246(FC 拠点数(拠点))× 価格 0.69(1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目))→ 売上 171 億円・営業利益 17 億円。FC 拠点数 0.95 倍 × 1 拠点の本部売上 1.40 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 15.39 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:閉店の整理が一巡し、価格改定で1件あたりの売上が伸びる筋書き。2025年の価格改定は客数を大きく減らさなかった実績があり、確率を中立の次に置いた。
中立 36% 細りながら値上げでつなぐ 利益 7 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,258 円122 億円
直営とFCの拠点は10年で1割強減る。宅配アプリで回転寿司や地元の店の寿司が届くようになり、宅配寿司という専業の強みが薄れるからだ。一方で「銀のさら」の名前と年末年始の需要は残り、値上げはほぼ物価並みに通る。原価と配達員の人件費も物価で上がるので、利益率は3.8%と大きくは変わらない。手元の現金は自社株買いとCVCへの出資に分かれて使われる。株主優待は続く。年末年始の大皿の需要は残るが、平日の注文は宅配アプリの店に少しずつ流れる。拠点の閉店で浮く本部費は、システムと販促の費用に消える。ROEは資本コストをわずかに上回る程度で、手元の資産と細る本業の合わせ技で値段がつく。
- 直営店(宅配寿司・宅配御膳):数量 207(注文件数(万件・年、推定))× 価格 6,030(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 7 億円。注文件数 0.85 倍 × 客単価 1.34 倍、営業利益率 5.5%
- FC本部(食材の供給・ロイヤルティ):数量 233(FC 拠点数(拠点))× 価格 0.68(1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目))→ 売上 159 億円・営業利益 15 億円。FC 拠点数 0.90 倍 × 1 拠点の本部売上 1.38 倍、営業利益率 9.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 13.85 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:拠点の目減りと値上げが打ち消し合い、利益率がここ数年の水準にとどまる筋書きを中心に置いた。過去10年の売上の伸びと、直近の閉店・原価高の両方に合う。
やや悲観 22% 宅配アプリに注文を奪われる 利益 2 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 455 円44 億円
宅配アプリの手数料が下がり、回転寿司や地元の寿司店がアプリで手軽に届くようになる。専業の「銀のさら」を選ぶ理由が細り、拠点は10年で2割強減る。マグロや容器の値上がりを価格に移しきれず、営業利益率は2%を割る。FC加盟店の採算が悪化し、加盟店からの店の買い取りと閉店の損失が続く。配当は細り、株主優待は内容が縮む。CVCの出資先も評価損が続き、手元の資産は少しずつ目減りする。年末年始の需要だけでは、1年の固定費をまかなえない拠点が増える。株価は本業の稼ぎより手元の資産で決まるようになり、自己資本の4割強まで下がる。
- 直営店(宅配寿司・宅配御膳):数量 183(注文件数(万件・年、推定))× 価格 5,850(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 4 億円。注文件数 0.75 倍 × 客単価 1.30 倍、営業利益率 4.0%
- FC本部(食材の供給・ロイヤルティ):数量 207(FC 拠点数(拠点))× 価格 0.66(1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 12 億円。FC 拠点数 0.80 倍 × 1 拠点の本部売上 1.34 倍、営業利益率 8.5%
倍率:事業の ROE 2.7% と k を大きく下回り、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。閉店と原価高が続く筋書きなので 9.37 倍に下げた。余った現金は谷で食う分を見て 0.75 倍の 37.5 億円に戻り方 0.75。
確率:宅配アプリと回転寿司の持ち帰りに注文が流れ、閉店が続く筋書き。2024〜2026年に拠点が約1割減った実績があり、悪い方に振れる余地は大きいとみた。
悲観 14% 宅配寿司という業態が縮む 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 357 円35 億円
宅配アプリと持ち帰りの総菜に需要が流れ、宅配寿司の注文件数は10年で4割超減る。FC加盟店の撤退が相次ぎ、本部が店を買い取って閉じる損失が重なる。直営店は家賃と人件費が固定費として残り、赤字が続く。顧客の個人情報の流出が確認されれば、信頼の回復にも時間がかかる。価値を支えるのは手元の現金と出資先の株だけになる。ただ、それも赤字の穴埋めとCVCへの追加出資に使われ、株主には半分ほどしか戻らない。株主優待も配当も大きく縮む。創業者側の持株が厚く、外からの買収で資産の価値が表に出る道も開かない。株価は自己資本の4割ほどに沈む。
- 直営店(宅配寿司・宅配御膳):数量 134(注文件数(万件・年、推定))× 価格 5,490(1件あたりの客単価(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 0 億円。注文件数 0.55 倍 × 客単価 1.22 倍、営業利益率 0.0%
- FC本部(食材の供給・ロイヤルティ):数量 161(FC 拠点数(拠点))× 価格 0.62(1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 6 億円。FC 拠点数 0.62 倍 × 1 拠点の本部売上 1.25 倍、営業利益率 6.0%
倍率:赤字で利益の倍率は使えない。床は運転資金とポイント・優待の約束を除いた現金に戻り方 0.5、出資先の株の税後の半分を足した額(floor_assets_oku)。今の自己資本 87 億円に 0.3966 倍を掛けて同じ額。
確率:業態そのものが縮み、赤字が続く筋書き。2026年10月のサイバー攻撃のような一度の事故が客離れを早める恐れもあり、確率は小さくない値にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(宅配寿司・宅配御膳)
「銀のさら」「釜寅」「すし上等!」を1つの拠点で併売する直営店。電話・自社サイト・宅配アプリで注文を受け、自前の配達員が届ける。
| 数量注文件数(万件・年、推定) | 価格1件あたりの客単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 244 | 4,500 | 110 | 6 |
| 10 年後 中立 | 207 | 6,030 | 125 | 7 |
取り方:事業は宅配の1区分で、直営とFCの内訳は開示が無いので推定。直営93拠点の売上を約110億円と置き、宅配寿司の客単価の目安(1件四千五百円)で割って約244万件とした。営業利益は拠点の利益の目安で割り振った推定。
FC本部(食材の供給・ロイヤルティ)
FC加盟店259拠点に食材・容器を卸し、売上に応じたロイヤルティを受け取る。メニュー開発・販促・注文システムを本部が担う。
| 数量FC 拠点数(拠点) | 価格1 拠点あたりの本部の売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 259 | 0.50 | 128 | 12 |
| 10 年後 中立 | 233 | 0.68 | 159 | 15 |
取り方:2026年3月末のFC拠点259を数量にした。連結売上238億円から直営の推定分を引いた約128億円を拠点数で割り、1拠点あたり約0.5億円とした。営業利益は推定で、本部費(約8.7億円)は adjust に分けた。
リスクと懸念
宅配アプリによる業態の侵食
出前館やUber Eatsで、回転寿司や地元の寿司店の寿司も家に届く。自前の配達網という強みが薄れ、注文が分散する。拠点の閉店が続く主な理由だ。
食材と容器の値上がり
マグロ・サーモンは世界の需要と円安で上がり、2026年は原油高で容器と物流費も上がった。値上げで転嫁すると注文の回数が減るので、利益率が先に削られる。
サイバー攻撃と個人情報
2026年10月、子会社のサーバーへの不正アクセスでシステムが止まった。個人情報の漏えいの範囲は特定中だ。流出が確認されれば、常連客の離反と対応の費用が出る。
配達員の人手と人件費
配達員は宅配アプリや物流会社と取り合いになっている。時給の上昇は物価を上回りやすく、年末年始の繁忙期に人が集まらなければ注文を取りこぼす。
CVC投資の振れ
CVCファンドの運用益は2026年3月期に5.9億円出たが、評価損も同じ年に出た。出資先の多くは未上場で、価値の見通しが立てにくい。本業の外の損益が利益を振らす。
家賃という固定の約束
直営93拠点の家賃は、売上が落ちても毎年払う固定の約束だ。2028年3月期から新リース会計で負債としてBSに載る。純現金の厚さを見かけほど強いと見てはいけない。
今後の分かれ目
- 2028年3月期までに営業利益率が5%に戻る
- 値上げと閉店の効果が出たとみて、やや楽観の確率を上げる。
- サイバー攻撃で個人情報の流出が確認される
- 常連客の離反と費用を見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 10億円の自社株買いを使い切り、追加の還元方針を出す
- 現金が株主に戻る道が見えたとみて、戻り方を1.0に近づける。
- FC拠点の減少が年5%を超える
- 加盟店の採算が崩れたとみて、悲観側に寄せる。
- CVCの出資先が上場して売却益が出る
- 投資の価値が現金に変わったとみて、余った現金を見直す。
見ておくもの
- 既存店の注文件数と客単価
- FC拠点数と閉店の数
- 売上原価率(マグロ・容器の価格)
- 自社株買いの進み具合
- サイバー攻撃の調査結果
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROE(余った現金50億円を除く)と資本コスト7.75%から決めた。中立はROEがkをわずかに上回るので、下限の1÷kの12.5倍。楽観側は正当化PERの9〜9.5割。今のPERやPBRは使っていない。余った現金は純現金の一部と出資先の株を半分に割り引いた額で、創業者が経営しCVCに回す傾向から戻り方0.75。2028年3月期から新リース会計で直営店の家賃が負債に載るが、10年後も家賃を営業費用に入れた今の形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.76→16.46 倍・やや楽観 PER 13.1→15.39 倍・中立 PER 12.5→13.85 倍・やや悲観 PER 9→9.37 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。