結論
スプリックスは、個別指導塾『森塾』を中心に、学習塾を運営する会社だ。森塾は261校、生徒は5万1,000人。2025年9月期の売上は351億円、営業利益は22億円である。筆者の結論は、少子化とAI家庭教師という逆風を十分に引いても、価値は今の時価総額を上回る、というものだ。
稼ぎの核は森塾にある。売上186億円に対し、事業の利益は48億円。利益率は25%を超える。会社全体の営業利益が22億円なのは、全社の費用などが25億円ほどかかり、基礎学力検定などの先行投資の赤字が12億円あるからだ。
赤字の側は、すでに縮み始めた。2026年9月期の中間は、その他の赤字が前年の6.7億円から2.5億円に減り、営業利益は76%増えた。
財務は堅い。現金65億円に対し、有利子負債は11億円。ただし、事業に伴う負債も大きく、現金の全額が余りとは言えない。
逆風も軽くない。小学生は5年で約49万人減り、AIが授業の中身を代替する圧力も強まる。筆者は、この逆風を数量と単価、資本コストの3か所で引いた。
見るべきは三つだ。森塾の校舎と生徒の伸び、その他の赤字の縮み方、AIの家庭教師の広がりである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、スプリックスは『質の高い稼ぎ頭と、厚い現金を持つのに、市場が先行投資の赤字と少子化を重く見すぎている会社』だ。
事業は10年後も残る。子どもの学力への親の支払いは、景気に左右されにくい。堀、つまり他社がまねできない強みは、成績保証つきの個別指導という型と、校舎網にある。ただし、AIがこの堀をどこまで削るかは、まだ読み切れない。
株主が自由に使える利益は大きい。森塾の利益は48億円で、校舎の増設に要る投資は小さい。
資本の使い方は堅実だ。借入は少なく、買収で価値を壊した形跡もない。先行投資の赤字は、いずれ止める必要がある。
安全域は、現金と森塾の利益率にある。中立の価値は、今の時価総額を大きく上回る。ただし、現金は事業に伴う負債の裏づけでもあり、余りとしては数えていない。
長く持つ株主から見れば、森塾の利益率が10年後も保たれるかが、判断の軸になる。
何で稼ぐ会社か
スプリックスは、学習塾の運営と、検定・教材の事業を持つ。2025年9月期の売上351億円の内訳は、森塾186億円、湘南ゼミナール93億円、河合塾マナビス34億円、その他39億円だ。
森塾は個別指導で、先生1人に生徒2人までの形をとる。成績が伸びなければ授業料を保証する制度もある。2026年3月末で261校、生徒は5万1,063人。校舎は1年で20増えた。
湘南ゼミナールは集団指導で、205校、生徒は約1万9,000人。伸びは小さく、利益も7億円台だ。河合塾マナビスは映像授業で、51校をフランチャイズなどで運営する。
その他には、基礎学力検定TOFAS、プログラミング能力検定、AIタブレット学習、教材が入る。TOFASは累計1,000万人が受けたが、まだ十分には稼いでいない。海外にも広げており、先行投資の赤字が続く。
稼ぎ方は、1人あたり年40万円ほどの授業料を、生徒数に掛けるものだ。校舎は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても払う約束になる。
2025年9月期は、生徒数の増加と授業料の改定で、営業利益がほぼ2倍になった。
優良さと弱いところ
優良さの核は、森塾の高い利益率と、結果で選ばれる商品設計にある。
強みは三つ。第一に、先生1人に生徒2人までという型と、成績保証。保護者が納得して払う仕組みだ。第二に、森塾の利益率。2026年9月期の中間は、森塾の利益が前年比30%増えた。第三に、現金65億円に対し有利子負債11億円という、身軽な財務だ。
弱みも三つある。第一に、利益が森塾に偏る。湘南とマナビスの利益は、2つ合わせて11億円ほどだ。第二に、全社の費用が25億円ほどあり、検定などの先行投資の赤字も大きい。第三に、2023年9月期と2024年9月期は営業利益率が3〜4%に落ち、実績にばらつきがある。
資本効率は高い。過去10年のROEの中央値は15%だ。
筆者は、森塾は本物の稼ぎ頭で、その他の赤字が縮めば全社の利益は大きく動くと見る。ただし、堀、つまり他社がまねできない強みは、AIの普及で試される。
経営の資本の使い方は堅実だ。借入に頼らず、校舎の増設を営業の稼ぎで賄っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
学習塾の市場は、子どもの数が減る中で、1人あたりの単価が上がる構図だ。
小学生は2020年度の630万人から2025年度の581万人に減った。中学生も321万人から311万人に減っている。それでも上場する学習塾6社のうち5社は、増収だった。単価の引き上げと、個別指導への移行が、数の減少を補っている。
筆者は、対象の子どもの数が10年で1割ほど減ると見る。ただし森塾は、校舎の増加とシェアの拡大で、それを上回る生徒数の伸びを続けられる。
競争相手は、明光ネットワークジャパン、リソー教育のTOMAS、ナガセの東進などだ。個別指導は参入が多く、教室の立地と講師の確保が競争の中心になる。
最大の構造変化は、AIの家庭教師だ。授業の中身は、AIが安く提供できる。ただし、子どもを教室に来させる仕組み、保護者との対話、成績への責任は、AIでは代替しにくい。筆者は、AIは授業の単価を下げる力として働き、校舎の数量を減らす力は小さいと見る。
政策も効く。東京都の私立高校授業料の実質無償化は、都立志望者を減らし、学究社の減収の主因になった。制度の変更は、塾の数量を動かす。
資本政策と M&A
資本政策は、堅実な財務と安定した配当が柱だ。
現金は65億円、有利子負債は11億円。自己資本比率は2026年3月末で47.7%だ。配当は年6.7億円ほどで、ここ数年は横ばい。2025年9月期の配当性向は62%だった。株主優待は無く、自社株買いも大きくは行っていない。
成長のための投資は、校舎の新設と、検定・AIタブレット学習への先行投資に回る。基礎学力事業は、2023年から2025年に集中投資する方針だった。今後は国ごとに施策に濃淡をつける方針で、いくつかの国で現地法人を設立している。
買収は活発ではない。内部成長が中心で、M&Aで価値を壊すリスクは小さい。
株主還元は、利益が増えた時にどこまで配当を引き上げるかが分かれ目だ。現金が厚く、増配の余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
森塾が、会社全体の利益を引っ張っている。校舎は1年で20増え、生徒は5,000人増えた。利益率は25%を超え、2026年9月期の中間は利益が30%増えた。校舎の増設には大きな投資がいらず、新しい校舎は数年で黒字になる。
その他の赤字は、先行投資の山を越えた。中間の赤字は前年の6.7億円から2.5億円に減った。基礎学力検定は累計1,000万人が受けており、海外で収益化できれば、さらに利益が増える。全社の費用も、売上が増えれば比率が下がる。
少子化は逆風だが、個別指導への移行で、1人あたりの単価は上がっている。上場する学習塾6社のうち5社が増収だったことが、それを示す。
AIは、授業の質を上げる道具になる。AIタブレット学習は、すでにその他の事業で伸びている。
現金65億円と身軽な財務は、景気の波にも強い。
配当も、利益の伸びに合わせて増やす余地が大きい。
競合の明光ネットワークジャパンが減益を見込むなかで、スプリックスだけが利益を伸ばしている。同じ個別指導でも、森塾の型が選ばれている証拠だ。
慎重な見方
少子化は、止まらない。小学生は5年で49万人減り、塾に通う子どもの数は縮む。個別指導は参入が多く、教室の立地と講師の確保で競争が厳しい。講師の人件費は、毎年上がる。
AIの家庭教師は、授業の中身を安く提供できる。成績保証つきの個別指導の価値は、AIが同じ結果を安く出せるようになれば、崩れる。保護者は、月3万円ほどの授業料を、月数千円のAIに置き換えるかもしれない。
利益は森塾に偏る。森塾の利益率が落ちれば、全社の利益はすぐに消える。2023年9月期と2024年9月期は、営業利益率が3〜4%まで落ちた。今の高い利益は、一時的な可能性がある。
その他の赤字は縮み始めたが、基礎学力検定は累計1,000万人が受けても、まだ十分に稼げていない。
校舎は賃借が中心で、売上が落ちても家賃は落ちない。
現金が厚いのは、授業料を先に受け取る商売だからだ。解約が増えれば、その現金は返す側に回る。AIの影響が読めない以上、安全域は見かけより薄い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が強い。森塾の利益率が25%を超えていること、その他の赤字が縮み始めたこと、現金が厚いことが決め手だ。慎重な見方の核はAIの家庭教師と少子化だが、数量と単価、資本コストにすでに引いた。AIで景色が変わる確率は軽く見ず、悲観側に4割を置いた。中立は森塾の校舎が330ほどに増える形で、楽観側を24%、悲観側を40%にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 2,783 円491 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 496 円87 億円)。 今の値に割り戻すと 1,661 円293 億円、今との差 +67.2%、 期待の年率 +12.7%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,794 円1,199 億円 | 765 円135 億円 | +661.2% | +22.5% | 454 円80 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,962 円876 億円 | 669 円118 億円 | +467.0% | +18.9% | 1,013 円179 億円 |
| 中立 | 36% | 3,547 円626 億円 | 567 円100 億円 | +314.2% | +15.3% | 1,481 円261 億円 |
| やや悲観 | 27% | 653 円115 億円 | 397 円70 億円 | +5.7% | +0.6% | 283 円50 億円 |
| 悲観 | 13% | 227 円40 億円 | 142 円25 億円 | −62.9% | −9.4% | 48 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,783 円491 億円 | 496 円87 億円 | +230.2% | +12.7% | 3,279 円579 億円 |
今の株価時価総額 993 円175 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 森塾が校舎を大きく増やし、その他も黒字になる 利益 56 億円 · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 6,794 円1,199 億円
森塾が全国に校舎を増やし、10年後には450校を超える。生徒は7万6,000人まで増える。AIタブレット学習が授業を補い、成績保証つきの型が広がる。単価は物価並みに上がる。
森塾の利益率は26%を保ち、その他は海外の基礎学力検定が収益を生んで黒字になる。全社の営業利益は95億円ほどだ。
湘南とマナビスも小幅に伸びる。会社が現金を使って買収に動く可能性もあるが、この筋書きでは内部成長だけで足りる。
10年の間、少子化の逆風は個別指導への移行で吸収される。採用した講師の質も上がり、成績保証の費用は小さいままだ。株主には、利益の伸びと増配の両方が還元される。
全社の費用の比率は、売上の増加で下がる。
- 森塾(個別指導):数量 76.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 5.42(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 412 億円・営業利益 107 億円。森塾が校舎を大きく増やし、生徒は7万6,000人
- 湘南ゼミナール(集団指導):数量 19.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.74(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 13 億円。湘南は小幅に増える
- 河合塾マナビス(映像授業):数量 9.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.93(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 9 億円。マナビスが伸びる
- その他(検定・AI学習・教材):数量 80.0(実質の取扱高(億円・今の値段))× 価格 1.34(価格指数(今=1.0・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 11 億円。検定とAI学習が黒字に
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.6 倍。全体の PER 20.56 倍、時価総額 1,153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:森塾の増収増益が続き、AIで質が上がる筋書きだ。実績は強いが、数量の見立ては幅が大きい。そこで楽観は6%にとどめた。
やや楽観 18% 森塾が伸び続け、その他の赤字が縮む 利益 42 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 4,962 円876 億円
森塾が校舎を増やし、10年後は400校ほど、生徒は6万9,000人になる。単価は物価に少し届かない。AIの安い代替が、授業料の伸びを少し抑える。
森塾の利益率は25%にとどまる。その他の赤字は縮み、小さな黒字になる。全社の営業利益は70億円ほどだ。
配当は利益の伸びに合わせて増える。現金は、校舎の新設と検定への投資に回る。
校舎の新設は年20校前後のペースを保ち、閉鎖は少ない。講師の確保は課題だが、給与の上昇は授業料の改定で吸収できる。株主には、緩やかな増配が続く。
競合の個別指導が値引きに動いても、成績保証つきの型は価格の優位を保つ。湘南ゼミナールは少子化で生徒が減るが、小学生向けコンテンツの拡充で下げ幅は小さい。
- 森塾(個別指導):数量 69.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 5.31(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 366 億円・営業利益 92 億円。森塾は400校ほど、生徒は6万9,000人
- 湘南ゼミナール(集団指導):数量 18.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.74(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 121 億円・営業利益 11 億円。湘南は横ばい
- 河合塾マナビス(映像授業):数量 8.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.93(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 7 億円。マナビスが増える
- その他(検定・AI学習・教材):数量 60.0(実質の取扱高(億円・今の値段))× 価格 1.30(価格指数(今=1.0・名目))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。赤字が縮み、小さな黒字
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍。全体の PER 19.85 倍、時価総額 842 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:森塾の増収増益は直近の実績に近い。その他の赤字も縮み始めており、この筋書きは実績の延長にあたる。そこで18%とした。
中立 36% 森塾が330校ほどに増え、赤字は止まる 利益 32 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 3,547 円626 億円
森塾は校舎を330ほどに増やし、生徒は6万2,000人になる。1校あたりの生徒数は横ばいで、増収の中心は校舎の数だ。単価は物価に届かず、10年で1.3倍にとどまる。
森塾の利益率は24%に下がる。湘南は少子化で生徒が減り、利益は横ばいだ。その他の赤字は止まり、損益はほぼゼロになる。
全社の費用は、物価と事業の拡大で40億円ほどに増える。営業利益は53億円ほどだ。配当は利益の半分ほどを払う。
10年を通して、新設の校舎は数年で黒字になる。ただし少子化で1校あたりの生徒は増えず、AIの安い代替が授業料の上限を決める。大きな成功も失敗もない、堅実な拡大の姿だ。
- 森塾(個別指導):数量 62.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 5.26(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 326 億円・営業利益 78 億円。森塾は330校ほど、生徒は6万2,000人
- 湘南ゼミナール(集団指導):数量 17.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.60(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 9 億円。湘南は少子化で生徒が減る
- 河合塾マナビス(映像授業):数量 7.5(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.72(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 6 億円。マナビスは小幅に増える
- その他(検定・AI学習・教材):数量 50.0(実質の取扱高(億円・今の値段))× 価格 1.30(価格指数(今=1.0・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。赤字が止まり、ほぼ損益ゼロ
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍。全体の PER 18.89 倍、時価総額 599 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:森塾の増収増益と、その他の赤字の縮小が続く筋書きだ。少子化とAIの逆風も織り込み、最大の36%とした。
やや悲観 27% AIの安い代替と少子化で、森塾の単価と生徒が伸び悩む 利益 11 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 653 円115 億円
AIの家庭教師が普及し、個別指導の単価は物価に追いつかない。森塾は校舎を減らしながら、生徒は5万2,000人にとどまる。
森塾の利益率は19%に下がり、湘南とマナビスも利益が細る。その他の赤字は続く。全社の費用は、削っても36億円ほど残る。営業利益は17億円ほどで、今より小さい。
配当は利益に合わせて減る。現金は厚いが、成長の手が止まる。
新設の校舎は黒字化が遅れ、閉鎖が増える。講師の確保も難しくなり、人件費だけが重くなる。基礎学力検定の海外展開は、国を絞って縮小する。
湘南ゼミナールも生徒が減り、利益が細る。競合の個別指導が値引きに動き、森塾の授業料の改定は通りにくくなる。
- 森塾(個別指導):数量 52.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 4.88(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 254 億円・営業利益 48 億円。森塾の生徒は5万2,000人、単価が伸び悩む
- 湘南ゼミナール(集団指導):数量 15.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.20(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。湘南は少子化で減る
- 河合塾マナビス(映像授業):数量 6.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 6.23(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。マナビスは利益が細る
- その他(検定・AI学習・教材):数量 40.0(実質の取扱高(億円・今の値段))× 価格 1.20(価格指数(今=1.0・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 −2 億円。赤字が続く
倍率:ROE7.8%は資本コスト7.75%を少し上回る程度で、稼ぎ(RONIC)は約7.7%。成長が止まる姿なので、式の上限(13.7倍)の7割ほどの10.0倍に置いた。
確率:AIの家庭教師が授業の単価を押し下げる筋書きだ。森塾の利益率が2023年9月期のように落ちる可能性も考え、27%とした。
悲観 13% AIが授業を代替し、個別指導の価値が崩れる 利益 −10 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 227 円40 億円
AIの家庭教師が、個別指導の価値を崩す。保護者は月謝の高い塾から、AIと自習に移る。森塾の生徒は3万8,000人に減り、単価は物価を大きく下回る。
森塾の利益率は10%まで下がり、湘南とマナビスは赤字に近づく。全社の費用は削っても26億円ほど残り、家賃も重い。営業利益は赤字になる。
配当は大きく減る。校舎の整理で減損が出る。
残る生徒は、地方の校舎と受験指導に限られる。基礎学力検定などの先行投資は打ち切られ、全社の費用の圧縮に追われる。株主に残る価値は、現金と森塾の残った利益になる。
湘南ゼミナールとマナビスも生徒を失い、校舎を減らす。授業料の値下げ競争になり、成績保証の費用も重くなる。
- 森塾(個別指導):数量 38.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 4.34(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 17 億円。森塾の生徒は3万8,000人、利益率10%
- 湘南ゼミナール(集団指導):数量 12.0(期中の平均生徒数(千人))× 価格 5.73(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 0 億円。湘南は赤字に近い
- 河合塾マナビス(映像授業):数量 4.5(期中の平均生徒数(千人))× 価格 5.54(1人あたり年売上(億円/千人・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。マナビスは小幅な赤字
- その他(検定・AI学習・教材):数量 30.0(実質の取扱高(億円・今の値段))× 価格 1.10(価格指数(今=1.0・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。赤字が続く
倍率:赤字なのでPERは当てない。今の自己資本99.8億円に0.4倍を掛けた。純現金53億円は、授業料の前受けと家賃の約束を考えると、全額は残らない。
確率:AIの家庭教師が成績保証つきの個別指導の価値を崩す、構造的な負けの筋書きだ。速さは読み切れず、13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
森塾(個別指導)
先生1人に生徒2人までの個別指導塾。成績保証つき。2026年3月末で261校。
| 数量期中の平均生徒数(千人) | 価格1人あたり年売上(億円/千人・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 46.0 | 4.04 | 186 | 48 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 5.26 | 326 | 78 |
取り方:売上186億円を、期中の平均生徒数(推定4万6,000人。2025年3月末の4万5,777人と同水準)で割り、1人あたり年約40万円と置いた。校舎は2026年3月末で261。営業利益は事業の利益47.8億円。
湘南ゼミナール(集団指導)
神奈川を中心とする集団指導塾。205校。
| 数量期中の平均生徒数(千人) | 価格1人あたり年売上(億円/千人・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 18.5 | 5.03 | 93 | 7 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 6.60 | 112 | 9 |
取り方:売上93億円を、期中の平均生徒数(推定1万8,500人。2026年3月末は1万8,919人)で割り、1人あたり年約50万円と置いた。集団指導で、森塾より単価が高い。営業利益は7.4億円。
河合塾マナビス(映像授業)
映像授業と大学受験指導。フランチャイズ中心で51校。
| 数量期中の平均生徒数(千人) | 価格1人あたり年売上(億円/千人・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 6.5 | 5.17 | 34 | 4 |
| 10 年後 中立 | 7.5 | 6.72 | 50 | 6 |
取り方:売上34億円を、期中の平均生徒数(推定6,500人。2026年3月末は6,858人)で割り、1人あたり年約52万円と置いた。フランチャイズの収入を含むので、単純な授業料ではない。営業利益は4.0億円。
その他(検定・AI学習・教材)
基礎学力検定TOFAS、プログラミング能力検定、AIタブレット学習、教材。先行投資で赤字。
| 数量実質の取扱高(億円・今の値段) | 価格価格指数(今=1.0・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 39.1 | 1.00 | 39 | −12 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 1.30 | 65 | 0 |
取り方:基礎学力検定・プログラミング検定・AIタブレット学習・教材の売上39億円を、実質の取扱高(今の値段)と置いた。利用者数の開示が無く、推定である。価格の欄は値段の指数で、今を1.0とする。営業損失は12.1億円。
リスクと懸念
AIエージェントによる授業の代替
AIの家庭教師は、授業の中身を安く出せる。成績保証つきの個別指導の価値が崩れれば、単価が下がり、生徒が減る。筆者は数量・単価・資本コストに織り込んだが、速さは読み切れない。
少子化と政策の変更
小学生は5年で49万人減った。東京都の私立高校授業料の実質無償化のように、制度が変われば受験の数量が動く。学究社の減収は、その例だ。
森塾への利益の偏り
利益は森塾に集中する。森塾の利益率が下がれば、全社の利益はすぐ消える。2023年9月期と2024年9月期は、営業利益率が3〜4%に落ちた。
先行投資の赤字が続く
基礎学力検定などの赤字は、2025年9月期で12億円あった。縮み始めたが、海外の収益化が遅れれば、赤字は続く。全社の費用の25億円も固定的だ。
講師の確保と人件費
個別指導は、講師が品質の中心だ。講師の確保と給与の上昇で、利益率が削られる。校舎が増えるほど、採用の負担が増える。
家賃の固定費
校舎は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても払う約束になる。校舎が500を超えるので、年数十億円規模の固定費と見られる(内訳は未確認)。悲観では、これが利益を消す。
今後の分かれ目
- 森塾の利益率が25%を超えて保たれ、校舎が増え続ける
- 稼ぎ頭が伸び続ける形で、楽観の筋書きに近づく。価値は大きく上がる。
- その他の赤字が1年で半減する
- 先行投資の山を越えた証拠になる。全社の営業利益は、森塾の増益に重なって大きく伸びる。
- AIの家庭教師が、個別指導の月謝の半額で普及する
- 森塾の単価が下がり、生徒が流出する。悲観の筋書きに近づく。
- 校舎の新設で、1校あたりの生徒数が急に減る
- 出店の質が落ちている。森塾の利益率が下がる前触れとなる。
- 配当を大きく引き上げる
- 会社が現金を余りと見ている証拠になる。株主還元の見方が変わる。
- 海外の基礎学力検定が収益を生み始める
- その他の黒字化が早まり、中立の筋書きを上回る。
見ておくもの
- 森塾の校舎数・生徒数・利益率
- その他セグメントの赤字の額
- 全社の費用の増減
- 授業料の改定と生徒数の動き
- AIタブレット学習の売上
- 現金・有利子負債と配当
- 2026年11月13日の本決算
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の中立のROE(約15%)と資本コスト7.75%から、式の上限(約18倍)の7.5割にあたる13.8倍と置いた。AIの代替と少子化への不安は、数量・単価・資本コスト・確率の4か所に分けて入れ、倍率では引き直していない。今の株価や過去のPER、同業の倍率は見ていない。10年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。新リース会計は2028年9月期から適用され、営業利益は少し増え、借入に見える負債が増えるが、その形は使っていない。校舎の内装などの償却は、取得時の値段のままで、新設の分だけ新しい値段で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.9→20.56 倍・やや楽観 PER 15.4→19.85 倍・中立 PER 13.8→18.89 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。