結論
ミダックは浜松に本拠を置く産業廃棄物の処理会社だ。ごみを集め、燃やし、最後に埋める。この一貫体制が稼ぎの土台である。筆者の結論は、事業は優れているが、今の値段にはその質がすでに入っている、というものだ。
稼ぎの中心は最終処分場である。埋め立ての許可は取りにくく、持つ会社は少ない。需要に供給が追いつかず、営業利益率は 4 割に達する。小さな会社でこの利益率は珍しい。奥山の杜クリーンセンターという大きな処分場が 2022 年に開き、受入量も利益も伸びてきた。
成長の鍵は新しい処分場である。福島の郡山と栃木の那須塩原で計画があり、関東の廃棄物を取り込む狙いだ。実現すれば強い。ただ、許可は住民の合意に左右され、島根では反対が出ている。
筆者は新処分場が一つ、計画より遅れて開くと見る。それでも利益は 10 年で 1.7 倍になる。ただし稼ぐほど処分場への投資で資本が厚くなり、ROE は 16% 台から 10% 前後へ下がる。この点を割り引くと、今の時価総額 549 億円はやや高い。総合はやや割高と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、許可つきの処分場は良い資産である。他社が簡単に作れず、需要は続き、値段を決められる。営業利益率 4 割は、その経済性の表れだ。10 年後もこの事業は残る。
問題は、稼いだお金をどう使うかだ。処分場は作るほど資金を食う。利益が増えても、その多くが次の処分場に消える。株主の手元に残る利益は、見かけの利益より小さい。ROE が高いのは自己資本が薄いからで、厚くなれば下がる。
経営は、計画を上回る実績を出してきた。2027 年 3 月期の計画は前倒しで達成に近い。この点は信頼できる。一方、長期目標の経常利益 120 億円は、買収を含んだ強い数字だ。筆者はそこまでは見ない。
安全域は薄い。今の PER は 19 倍で、筆者の中立は 14 倍、10 年で時価総額はおよそ 1.3 倍にしかならない。資本コストで割り戻した価値は今を 25% ほど下回る。事業は好きだが、この値段で持ちたいとは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は三段に分かれる。まず集める。浜松を中心に産廃と一般廃棄物を運ぶ収集運搬がある。次に減らす。焼却や水処理などの中間処理だ。最後に埋める。管理型と安定型の最終処分場である。この三つを自社グループで完結できるのが強みだ。排出する企業は、不法投棄の心配なく任せられる。
売上の大部分は最終処分を含む廃棄物処分で、2025 年 3 月期で約 8 割を占める。収集運搬は約 2 割、仲介管理はごく小さい。許可の数は多い。産廃の収集運搬が 38 件、中間処理が 10 件、最終処分場は 3 か所と開示されている(2024 年時点)。
顧客の中心は製造業、特に医薬品・食品の工場と自治体だ。景気で量が大きく振れにくい顔ぶれである。2015 年に買った三生開発は、浜松で特定有害廃棄物を扱える唯一の処分場を持つ。
近年は買収で処分場を増やしている。2025 年に管理型の大平興産、2026 年に静岡の安定型のエノケン工業を取り込んだ。どちらも後継者のいない会社を引き受ける形で、会社は「支援型 M&A」と呼ぶ。新しく処分場を探すより、許可つきの施設を買う方が早い。
優良さと弱いところ
いちばんの強みは、許可つきの処分場が足りない市場にいることだ。新しく埋め立ての許可を取るには、住民の合意と長い審査が要る。だから既存の処分場に値打ちが出る。利益率が 4 割という数字は、値段を自分で決められている証拠だと筆者は見る。
もう一つの強みは、一貫処理の信頼だ。集めて、燃やして、埋めるまでを自社で完結する。排出する企業は、委託先が不法投棄で摘発されるリスクを避けたい。この信頼が値段を支える。
弱みは三つある。第一に、処分場は埋め立てるほど減る資産で、次の許可を取り続けなければ縮む。第二に、規模が小さく、施設が静岡・愛知の一か所に集まる。災害や許可のつまずきの影響が大きい。第三に、株主の集中だ。上位 2 株主で持ち分が 4 割を超え、取引の流通は薄い。
財務は健全だ。純有利子負債は時価総額の 1 割ほどで、自己資本比率は 4 割台後半である。ただし処分場は投資が重く、買収も続くため、現金が株主に回りにくい。ROE は 16% 台と高いが、これは自己資本がまだ薄いからで、資本が積み上がれば下がっていく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業廃棄物の国内市場は 5 兆円規模で、そのうち約 4 割が関東に集まる。排出量は人口と製造業の縮小で、長い目では横ばいかわずかな減少だ。2023 年度の排出量は前年より 1.8% 減った。量が増える市場ではない。
それでも処分場の経営が成り立つのは、受け皿が減っているからだ。新設は難しく、既存の処分場は埋まっていく。排出される量より、処分できる量の方が先に細る。このねじれが値段を支える。
競合は地域ごとに分かれる。関西は大栄環境、北陸はTREホールディングスが強い。汚染土壌ではダイセキが有力だ。関東の大手が処分場を増やせば、ミダックが狙う関東では競り合いになる。
循環型経済の流れも逆風だ。再資源化が進めば、埋める量そのものが減る。一方、燃やした灰や処理できない残りかすは必ず出るので、最終処分の需要はなくならない。
人手不足と環境規制の強化は、処分費の上昇に効く。中立では、受入 1 トンあたりの売上は物価並みに上がり、量は新しい処分場が開く分だけ増えると置く。10 年の分かれ目は、許可が取れるか、関東で値段を守れるかの二点である。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長投資を優先する形だ。処分場の増量と新設、水処理施設の新設、買収に現金を回す。配当は増やしているが、配当性向は 2 割弱と低い。自社株買いは見当たらない。
2026 年 6 月に会社は資本コストへの考え方を示した。株主資本コストを 7〜9% と見て、ROE は 15% 以上を重視するという。ROE が高いうちは筋が通るが、処分場を作るほど自己資本が増える。この目標を保てるかは、利益がそれ以上に伸びるかにかかる。
買収は比較的小さな案件を積む形で、価格の非開示が多い。後継者難の会社を許可ごと引き受けるやり方は合理的だ。ただ、価格の妥当性を外から検証しにくい。
会社自身が買収される可能性は小さい。許認可事業で、大株主が集中しているためだ。TOB で動くとすれば、大株主が売る場合に限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
処分場の許可は、取れる会社だけが儲かる。ミダックは奥山の杜を開いて受入量を伸ばし、営業利益率 4 割を維持している。第 1 次中計の目標を前倒しで超え、計画に対する信頼は厚い。大平興産、エノケン工業と許可つきの処分場を買い足し、容量は増え続ける。
関東は国内産廃市場の約 4 割を占める。郡山と那須塩原の二つの処分場が開けば、浜松から運ぶ必要がない自前の受け皿を持てる。関東の処分費は需給が厳しく、物価を超える値上げも通りやすい。
人手不足と規制強化で、不法投棄を避けたい排出企業は信頼できる一貫処理に集まる。長期目標の売上 400 億円・経常利益 120 億円は、買収を含めれば無理のない数字だ。ROE 15% 以上を重視する資本政策も、株主を向いている。許可事業の希少性は 10 年先も変わらない。
足もとの数字も強気を支える。2026 年 3 月期は増収増益で、営業利益は 47 億円に届いた。許可事業は一度軌道に乗ると、固定費を回収したあとの利益が厚い。
慎重な見方
処分場の新設は、計画が公表されてから許可が下りるまでに長い時間がかかる。島根県美郷町の計画には住民の反対が続いている。郡山も那須塩原も、同じ道をたどるおそれがある。許可が取れなければ、利益の伸びは止まる。
関東は大栄環境などの大手が構える市場だ。浜松の処分場から関東への運搬は費用がかさみ、値段競争では不利になる。関東の処分費を物価以上に上げられるとは限らない。
利益率 4 割は、最も稼ぐ処分場が満杯に向かう前の数字でもある。新しい処分場は立ち上げに時間がかかり、減価償却が先に出る。資本も厚くなり、ROE は確実に下がる。
施設が静岡と愛知に集中しているので、災害や事故、許可の取り消しの影響が大きい。上位 2 株主で 4 割を超える持ち分の集中も、少数株主には不利になりうる。今の PER 19 倍は、新処分場がすべて予定どおり開く前提に近い。
加えて、関東向けの運搬は距離がかさむ。浜松の施設の稼働が落ちれば、利益率は一段と下がる。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が勝つ。ただ、強気の筋書きは新処分場の許可に全部がかかっている。許可は住民の合意で止まる例が実際にあり、筆者は慎重な見方を重く取った。新設は一つだけ遅れて開くのを中立とし、確率は中立に 4 割弱を置いた。許可が取れないやや悲観を 2 割強、構造的な負けを 1 割とし、強気側は合わせて 3 割にとどめた。強気でも自己資本が厚くなり ROE が下がる点は変わらず、やや割高の結論になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,138 円868 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 345 円96 億円)。 今の値に割り戻すと 1,802 円498 億円、今との差 −7.6%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,898 円1,632 億円 | 542 円150 億円 | +230.2% | +12.7% | 515 円143 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,530 円1,253 億円 | 434 円120 億円 | +154.6% | +9.8% | 1,092 円302 億円 |
| 中立 | 37% | 3,406 円942 億円 | 361 円100 億円 | +93.2% | +6.8% | 1,394 円386 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,592 円440 億円 | 253 円70 億円 | −5.4% | −0.6% | 424 円117 億円 |
| 悲観 | 10% | 434 円120 億円 | 145 円40 億円 | −70.3% | −11.4% | 58 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,138 円868 億円 | 345 円96 億円 | +78.6% | +6.0% | 3,483 円964 億円 |
今の株価時価総額 1,950 円539 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 関東に二つの処分場が開き、東海と関東をまたぐ処分企業になる10年 利益 86 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 5,898 円1,632 億円
郡山と那須塩原の処分場が予定どおり許可を得て開く。関東の企業が出す産廃の受け皿として、浜松の既存施設と合わせて受入量は 10 年で 2 倍に近づく。処分場の希少性が効いて、受入 1 トンあたりの売上は物価を上回って上がる。大平興産の増量も加わり、埋立容量は今の 3 倍近くになる。中間処理の自前化で運搬費も下がり、利益率は 5 割を保つ。経常利益 120 億円という長期目標の道筋が、時期は遅れても現実に近づく。株主への還元も増え、ROE は 15% 近くまで戻る。会社にとって最良の 10 年だが、設備投資の重さは変わらない。
- 廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理):数量 120(処分の受入量(万トン、推定))× 価格 2.32(受入 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 278 億円・営業利益 145 億円。受入120万t×1tあたり売上2.32万円(10年1.45倍。希少性で物価超え)。関東の二つの新処分場が稼働
- 収集運搬・仲介管理:数量 110(運搬量(万トン、推定))× 価格 0.42(運搬 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 46 億円・営業利益 6 億円。運搬110万t×0.42万円。自前の処分場への運搬が増える
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍。全体の PER 18.91 倍、時価総額 1,630 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:郡山と那須塩原の許可、関東の受入先の確保、価格の強気の維持が全部そろう必要がある。許可は住民の合意に左右され、島根の計画のように止まる例もあるため、1 割に届かない確率にとどめた。
やや楽観 22% 新処分場が一つ開き、東海での強みと関東の入口を両方取る10年 利益 66 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 4,530 円1,253 億円
関東向けの処分場のうち一つが 2030 年前後に開き、東海の既存施設も稼働率が上がる。受入量は 10 年で 1.7 倍になり、価格は物価をやや上回る。大平興産とエノケン工業の取り込みで、静岡の安定型の埋立でも地位が厚くなる。新しい処分場の立ち上げ期は減価償却が先に出るので、利益率は今より少し下がる。それでも営業利益は 100 億円を超え、増配も続く。許可事業は固定費を回収したあとの利益が厚く、立ち上げの重さは数年で和らぐ。長期目標の売上 400 億円には届かないが、許可事業としての成長はしっかり続く、堅実な 10 年である。
- 廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理):数量 100(処分の受入量(万トン、推定))× 価格 2.21(受入 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 221 億円・営業利益 113 億円。受入100万t×1tあたり売上2.21万円(10年1.38倍)。新処分場一つが稼働
- 収集運搬・仲介管理:数量 100(運搬量(万トン、推定))× 価格 0.41(運搬 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。運搬100万t×0.405万円
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.2% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.57 倍、時価総額 1,216 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:許可を取った実績が既にあり、中計の最初の目標も上回っている。新処分場が一つ開く筋書きは十分ありうるため、強気の次の段として 2 割強に置いた。
中立 37% 既存の処分場が満杯に近づき、新処分場が一つ遅れて開く10年 利益 49 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 3,406 円942 億円
浜松の既存施設は、奥山の杜を中心に受入量が少しずつ増える。新しい処分場は一つだけ、計画より数年遅れて開く。受入量は 10 年で 1.35 倍ほど、価格は物価並みの 1.34 倍に収まる。利益率は 5 割から下がって新設分の償却を吸収する。収集運搬は地味に伸びる。営業利益は 80 億円前後になり、今のおよそ 1.7 倍である。自己資本は新処分場の投資と利益の積み上げで厚くなり、ROE は 10% 前後まで下がる。事業の質は高いままだが、資本を増やしながら稼ぐ事業になっていく。会社の長期目標には届かないが、安定した成長は続く。
- 廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理):数量 80.0(処分の受入量(万トン、推定))× 価格 2.14(受入 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 172 億円・営業利益 86 億円。受入80万t×1tあたり売上2.14万円(10年1.34倍)。新処分場一つが遅れて稼働
- 収集運搬・仲介管理:数量 90.0(運搬量(万トン、推定))× 価格 0.40(運搬 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。運搬90万t×0.40万円
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.03 倍、時価総額 884 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:希少な処分場と一貫処理の強みは本物だが、新設は住民の合意と許可に時間がかかる。会社計画より緩やかに進み、利益は物価と数量の伸びにとどまる筋書きに、いちばん重い確率を置いた。
やや悲観 23% 新処分場の許可が下りず、関東の値段競争にも巻き込まれる10年 利益 27 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 1,592 円440 億円
新しい処分場の許可が下りない。大平興産の増量や既存施設の工夫で受入量は 10 年で 1 割ほどしか伸びない。関東の企業の産廃は、近くの大手と取り合いになり、値段は物価に届かない。固定費の重い処分場は稼働率が少し落ちるだけで利益率が下がる。営業利益率は 3 割台前半に落ち、利益は今の 1 割増ほどにとどまる。それでも許可を持つ処分場の価値は残り、赤字にはならない。新設を前提にした投資や買収の一部は、回収に時間がかかる。配当は据え置きに近くなる。投資の回収が遅れ、ROE が資本コストを割り込む、成長の止まる 10 年である。
- 廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理):数量 62.0(処分の受入量(万トン、推定))× 価格 2.03(受入 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 126 億円・営業利益 53 億円。受入62万t×1tあたり売上2.03万円(10年1.27倍。競り合いで物価に届かない)
- 収集運搬・仲介管理:数量 80.0(運搬量(万トン、推定))× 価格 0.36(運搬 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。運搬80万t×0.36万円
倍率:ROE が k 7.25% を下回るので、ためた利益は額面ほどの価値を持たない。正当化 PER は (ROE − g)÷(k − g)÷ROE ≒ 13 倍が上限で、新設が止まる筋書きなので 14.1 倍に置いた(引き上げはしない)。稼ぐ力(純利益 ÷ k)から置いた。
確率:管理型処分場は住民の反対で計画が止まる例が多く、島根の計画も反対を受けている。関東は大栄環境などとの競り合いになりやすい。この筋書きは中立の次に重く置いた。
悲観 10% 許可の更新と新設がつまずき、受入先としての地位を失う10年 利益 10 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 434 円120 億円
新設計画が全部止まり、既存の埋立容量だけで勝負することになる。関東の大手が処分場を増やして値段を下げ、東海の受入量も減る。受入量は 10 年で 1 割ほど減り、価格は物価に届かず 1.1 倍にとどまる。固定費が重いので、利益率は 3 割まで落ちる。収集運搬は赤字すれすれになる。減損も出て自己資本は目減りし、営業利益は今の 4 割に縮む。許可を持つ処分場という価値は残るが、経営は縮小の管理に回り、配当の余力も細る。買収で積んだのれんの減損も避けられない。成長企業ではなくなる。浜松の施設の稼働が落ちた分、固定費の重さが利益を直撃する。
- 廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理):数量 50.0(処分の受入量(万トン、推定))× 価格 1.76(受入 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 88 億円・営業利益 26 億円。受入50万t×1tあたり売上1.76万円(10年1.10倍)。新設が全部止まる
- 収集運搬・仲介管理:数量 70.0(運搬量(万トン、推定))× 価格 0.33(運搬 1 トンあたり売上(万円、推定))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。運搬70万t×0.33万円
倍率:ROE が k を大きく下回る。価値は稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k = 約 140 億円)で測り、PER 12 倍は 1÷k の 13.8 倍を下回る。許可を持つ処分場の価値は残るが、利益は構造的に縮むとみた。
確率:管理型処分場は許可の取り消しや事故、住民との訴訟で事業が止まる例がある。単一地域に施設が集中しているので、1 割の確率で構造的な負けを置いた。quality の理由とは重ねていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
廃棄物処分(最終処分・焼却などの中間処理)
管理型・安定型の最終処分場と焼却などの中間処理。奥山の杜クリーンセンターが中心。
| 数量処分の受入量(万トン、推定) | 価格受入 1 トンあたり売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 59.0 | 1.60 | 94 | 51 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 2.14 | 172 | 86 |
取り方:処分は 2025 年 3 月期の売上の 78.8%(約 89 億円)で、2026 年 3 月期は 3 四半期の累計が前年同期比 9.8% 増。通期で約 94 億円と置いた。受入量は開示がないため、管理型の処分と焼却と安定型の混ざりで 1 トンあたり約 1.6 万円と見て、約 59 万トンと逆算した推定。利益は 3 四半期累計の利益率 55% から、本社費を除く前の値を 51 億円とした。
収集運搬・仲介管理
浜松を中心に産廃・一般廃棄物を集めて運ぶ。仲介管理は小さい。
| 数量運搬量(万トン、推定) | 価格運搬 1 トンあたり売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 0.31 | 24 | 3 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.40 | 36 | 4 |
取り方:売上 118 億円から処分を引いた残り約 24 億円(2025 年 3 月期は収集運搬 17.9%・仲介管理 1.4%)。運搬量は開示がなく、1 トンあたり約 0.3 万円の推定で約 80 万トンとした。利益は開示がなく、運搬の薄い利益率から 3 億円と推定。全社の営業利益 47 億円との差は本社費(調整 −7 億円)。
リスクと懸念
新処分場の許可が下りない
成長の大半は郡山・那須塩原などの新設にかかる。管理型の処分場は住民の合意と長い審査が要り、島根県美郷町の計画のように反対で止まる例がある。許可が取れなければ受入量の伸びは止まり、10 年の利益は計画を大きく下回る。
既存の処分場が埋まる
処分場は埋め立てるほど容量が減る資産である。奥山の杜は約 30 年の計画だが、既存施設の残りは限られる。次の許可を取り続けなければ、利益の源が縮んでいく。買収で増やしてもその分の価格負担が重い。
関東での値段競争
関東は国内産廃の約 4 割が集まる大市場だが、大栄環境などの大手が処分場を増やしている。浜松から関東へ運ぶ費用もかかり、値段で不利になりうる。関東で物価並みの値上げを通せるかが問われる。
施設の地域集中と事故
主力の処分場が静岡と愛知に集まる。災害、浸出水の事故、許可の取り消しが起きると、売上の大半が一度に止まる。小さな会社なので分散の余地も小さい。
投資が重く現金が残らない
処分場と水処理施設の投資が続き、買収も重なる。利益が増えても株主に回る現金は少なく、自己資本が厚くなって ROE が下がる。配当性向が 2 割弱なのも、投資を優先する姿勢の裏返しである。
株主の集中
上位 2 株主で持ち分が 4 割を超える。流通する株が薄く、大株主の動きで需給が大きく変わる。経営への牽制は効きにくく、少数株主の意見が通りにくい面もある。
今後の分かれ目
- 郡山または那須塩原の処分場が予定どおり許可を得る
- 受入量の伸びが確かになり、強気側の筋書きに近づく。関東の自前の受け皿を持つ意味は大きい。
- 新設の計画が住民の反対や許可の遅れで止まる
- 成長の柱が欠け、やや悲観・悲観の確率が上がる。既存施設だけでは利益は物価並みにしか伸びない。
- 関東の大手が処分場を増やして処分費が下がる
- 関東進出の採算が悪くなり、利益率が下がる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 大平興産の増量や新しい買収で埋立容量が大きく増える
- 許可を取る手間を買収で省けたことになり、中立から強気側の筋書きに寄る。買収価格の妥当性も確かめる。
- 自社株買いや配当性向の引き上げなど、株主還元が大きく強まる
- ROE の低下が緩やかになり、利益の質が上がって倍率の上限に近づく。
- 既存処分場で事故や許可上の問題が起きる
- 収入源が止まる悲観の筋書きが現実に近づく。施設が集中しているぶん影響が大きい。
見ておくもの
- 郡山・那須塩原の処分場の許可の進み方と住民との合意
- 受入量(受託量)と売上の伸び、営業利益率が 4 割を保てるか
- 大平興産の増量計画の開始時期と投資額
- 関東での処分費の動き(大栄環境などの大手との競り合い)
- 配当性向・自社株買いなど株主還元と、自己資本の積み上がり(ROE の低下ペース)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。今の PER 19 倍・PBR 3 倍弱は使っていない。自己資本は今の値に純利益を足して還元を引く流れで置き、ROE は結果として 10% 前後に下がった。k は基本 7.5% に quality −0.25%(同じ領域の大栄環境と同じ 7.25%)を足した。ミダックは利益率が高いが、堀は処分場の許可による普通の堀として残る割合 1/2 とし、強い堀とは見なしていない。倍率は上限の 7〜9 割に置き、悲観側は稼ぐ力から置いた。ROE が高い今の姿をそのまま先に延ばしていない。新リース会計への対応は、処分場の用地が多くは自社保有のため、影響は小さいと見て同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17→18.91 倍・やや楽観 PER 15.5→18.57 倍・中立 PER 14.2→18.03 倍・やや悲観 PER 12→14.1 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.25% を足して 7.25%。