結論
日本エマージェンシーアシスタンス(EAJ)は、海外旅行中にけがや病気をした日本人を、現地の病院につなぎ、治療と帰国まで手配する会社だ。主な取引先は損害保険会社で、海外旅行保険に付く「24 時間の日本語窓口」を代わりに運営する。筆者は、今の値段は事業の稼ぐ力に対してやや高く、10 年先の価値は今を下回ると見る。
理由は利益の薄さと不安定さだ。売上は 37 億円ほどあるが、営業利益は 1 億円前後しかない。2022 年に営業利益が 7 億円まで跳ねたのは、厚生労働省のコロナ関連の受託があったからで、終われば元の水準に戻った。本業の力は、営業利益率でいえば 2〜5% である。
良い点は、現金が時価総額の半分近くあること、そして足元の勢いだ。2026 年の中間決算は営業利益が 2.7 倍になり、海外大手損保からの新しい受注と値上げが効いた。
ただし AI が電話窓口・翻訳・手配の事務を安くする。取引先の損保が少数に集まっているため、価格を上げにくい。10 年後の営業利益は 3 億円弱で、時価総額は今を割る形になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益が読みにくい小さな運営会社」だ。10 年後も事業は残るが、今より強いという根拠が見つからない。
オーナー利益で見ると、設備投資は小さく、利益の大半が現金になる。この点は魅力だ。しかし利益そのものが薄く、2 年に 1 回は「特需」「感染症」「受託の入れ替わり」で数字が大きく動く。わかりにくい業績の会社に、高い値段は払いたくない。
資本配分は穏当だが、積極的でない。現金が時価総額の半分近くあるのに、配当性向は 2〜3 割にとどまる。経営が資本効率を意識すると中期計画に書いたのは前進だが、実績で示すのはこれからだ。
安全域は、現金が支えるため悲観でも半値にはなりにくい。ただ、楽観でも利益の質が上がる保証が小さく、見合いとしては割高と見る。もし配当と自社株買いで余った現金が着実に戻るなら、評価は変わりうる。
何で稼ぐ会社か
売上の中心は医療アシスタンス事業で、全体の 8 割ほどを占める。旅行者から保険会社の窓口に電話が入ると、EAJ の担当者が現地の病院を探し、治療費の支払いを保険会社と調整し、必要なら搬送や帰国の手配までする。保険会社から受け取る料金は、案件ごとの手数料と窓口の運営費の組み合わせである。
もう 1 つの柱がライフ・ノンメディカルで、クレジットカード会員向けのコンシェルジュ(レストランの予約や交通の手配)などを請け負う。売上は 5 億円弱で、規模は小さい。
3 つ目は訪日外国人向けの医療ツーリズムの手配で、売上はまだ 1 億円に届かない。中期経営計画では 2027 年に 10 億円まで増やす目標を掲げているが、2024 年の実績は 1.6 億円だった。
もう 1 つ、厚生労働省から災害時の医療情報システム(EMIS)の運用を請け負っている。2024 年 8 月に受託し、2025 年 3 月に令和 7 年度分も落札した。入札で決まる仕事なので、毎年の継続は保証されない。
設備はほとんど要らず、費用の大半は人件費だ。そのため、業績は案件の件数と窓口の稼働率でほぼ決まる。
優良さと弱いところ
優良さは「専門性は本物だが、堀は浅く、利益は薄い」と見る。
強みは、24 時間の日本語対応という運営の蓄積だ。世界各地の病院と取引の関係を築き、保険会社の大手が使い続ける実績がある。新規の参入者が一から同じ網を作るのは時間がかかる。
弱みは 3 つある。第 1 に、取引先が損保に偏り、料金の交渉力が相手側にある。第 2 に、収益が旅行需要の変動に連動する。コロナ禍の 2020 年は営業利益がほぼゼロまで落ちた。第 3 に、利益が一時の特需に左右される。2022 年の営業利益 7 億円は、コロナ関連の受託で稼いだもので、続かなかった。
資本効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 7% 台で、2022 年の突出した年を除くと 5% 前後だ。経営は中期計画で ROE を 10% まで上げる目標を示すが、2025 年の営業利益は計画の 160 百万円を下回った(実績は 96 百万円)。売上は計画を超えたが、利益の質が伴っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
海外医療アシスタンスの需要は、出国する日本人の数と、海外での医療費の水準で決まる。日本人の出国者数は、コロナ前の 2019 年の約 2,000 万人から、2025 年は 1,400 万人ほどで、まだ戻りきっていない。円安と物価高で海外旅行が割高になっており、人口も減るため、10 年で 2019 年の水準を超えるとは見にくい。
一方で、1 件あたりの医療費は上がり続ける。特に米国やアジアの医療費の上昇は速い。保険会社にとって、高額な事故を現地で管理する価値は上がるので、アシスタンスの料金は物価並みには上がりうる。
競合は、保険会社が自社で持つ窓口や、東京海上日動のようなグループ内の会社、海外の大手アシスタンス会社(ヨーロッパ系)などだ。取引先の保険会社が窓口を内製に戻す動きが、いちばんの脅威になる。
技術の変化は両刃である。翻訳と電話応対の AI が進むと、窓口の人手が減って費用は下がる。しかし、保険会社はその分の値下げを求める。EAJ の中期計画も、生成 AI で業務の効率化を進める方針で、利益率の改善と料金の下落のどちらが勝つかが焦点だ。
資本政策と M&A
株主への還元は小さい。配当は年 1 回で、2025 年 12 月期は前の期より少し増えた。配当性向の目標は 20〜30% で、自社株買いは直近 2 年は行っていない。QUO カードの株主優待があるが、費用は年 1 億円に満たず、価値の計算には影響しない。
大株主に支配株主はおらず、海外の投資会社が 7% 台を持つ。M&A の実績は乏しく、買収で稼ぐ会社ではない。現金は 23 億円ほどあるが、一部は保険会社に請求する前の医療費の立替に使われている。
筆者は、この会社の現金を満額で評価しない。現金のうち立替金を賄う分は事業に必要だからだ。残りの 4 億円ほどは余剰だが、配当性向 20〜30% という方針では、株主に戻るのはゆっくりだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
訪日客の増加と円安で、海外医療の需要は構造的に伸びる。2026 年の中間決算は営業利益が 2.7 倍になり、海外大手損保からの新規受注と価格改定が効いた。中期計画の目標(2027 年に売上 50 億円・営業利益 3.5 億円)は、2025 年の売上が計画を超えた勢いを見れば届く範囲にある。
生成 AI を窓口業務に入れれば、人手の費用が下がり、利益率は 7% に近づく。インバウンドの医療ツーリズムは、アジアの富裕層の増加で 10 倍にもなりうる市場だ。
さらに、厚生労働省の EMIS のような公共の仕事を取れる実力が示された。ライフ事業も、カード会員向けの代行を別の用途に広げれば、安定した収益源になる。値上げの実績もすでに出ている。現金が時価総額の半分あり、悲観でも大きく崩れない。経営が ROE 10% を掲げた以上、配当の増額や自社株買いも期待できる。窓口の運営は、一度信頼を得た保険会社との関係が長く続きやすい。
慎重な見方
営業利益は 2022 年の 7 億円から 1 億円前後まで戻っており、本業の稼ぐ力は営業利益率 2〜5% にとどまる。2025 年は売上が計画を超えたのに、営業利益は計画の 6 割だった。売上が増えても利益が付いてこない。
取引先は損害保険会社に偏り、窓口を内製に戻されれば売上は大きく減る。生成 AI は窓口の効率化より先に、保険会社が値下げを求める口実になる。EMIS は入札で決まり、価格だけで負けかねない。
出国者数はコロナ前を戻しておらず、円安で海外旅行は割高だ。インバウンド医療は 2024 年の実績が 1.6 億円で、計画の 10 億円との距離は大きい。現金の一部は立替金に使われており、余った現金は見かけの半分ほどだ。そもそも会社の利益は、保険会社の都合と国の入札に左右され、自力で伸ばせる部分が小さい。値上げが通った実績も、まだ 1 年に満たない。生成 AI も、窓口の効率化で得た利益を取引先に吸い上げられる側に回りやすい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢だ。利益の薄さと取引先の偏りは、事業の構造の問題で、1 年や 2 年で変わらない。ただし 2026 年中間の勢いと現金の厚さは本物で、悲観でも半値にはなりにくい。そのため、中立を 38% に置き、やや悲観を 26%、悲観を 10% とした。楽観は、インバウンド医療が計画どおり花開く筋書きで 6% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,015 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 130 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 525 円13 億円、今との差 −46.7%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,543 円64 億円 | 310 円8 億円 | +189.7% | +11.2% | 171 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,638 円41 億円 | 210 円5 億円 | +87.6% | +6.5% | 370 円9 億円 |
| 中立 | 38% | 1,129 円28 億円 | 143 円4 億円 | +29.1% | +2.6% | 483 円12 億円 |
| やや悲観 | 26% | 350 円9 億円 | 60 円2 億円 | −58.5% | −8.4% | 106 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 155 円4 億円 | 0 円0 億円 | −84.3% | −16.9% | 15 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,015 円26 億円 | 130 円3 億円 | +16.3% | +1.5% | 1,146 円29 億円 |
今の株価時価総額 985 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:インバウンド医療と官公庁が育つ 利益 4 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 2,543 円64 億円
訪日客の医療ニーズが膨らみ、インバウンド医療ツーリズムの手配が今の 8 倍の 6,000 件に届く。官公庁の受託は EMIS に加え、別の公共案件を取り、2.5 件分に増える。海外旅行の回復と医療費の上昇で、出国者 1 人あたりの売上は物価並みに上がり、保険会社との料金改定も通る。生成 AI の導入で窓口の人手の費用が下がり、営業利益率は 8% を超える。会社は配当性向を 3 割に上げ、自社株買いも始める。売上は 70 億円近くまで育ち、中期計画の目標を大きく超える。取引先の保険会社は海外の医療費を抑える手段として、同社の現地ネットワークを頼り続ける。
- 医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け):数量 1,850(日本人の出国者数(万人))× 価格 0.02(出国者 1 万人あたりの売上(億円))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。出国 1,850 万人・料金 1.34 倍
- 官公庁の受託(EMIS 運用など):数量 2.5(受託している案件の数)× 価格 4.69(1 案件あたりの年間売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。案件 2.5 件分
- インバウンド医療ツーリズム:数量 6,000(手配の件数)× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。手配 6000 件
- ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど):数量 98.0(対応件数(千件))× 価格 0.07(1 千件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。対応 98 千件
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.9% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 13.94 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:インバウンド医療が計画どおり育ち、官公庁の受託も増える筋書きは、現在の実績からは遠く、6% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:中期計画の利益率 7% に届く 利益 3 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,638 円41 億円
出国者は緩やかに戻り、今の 1.2 倍になる。保険会社との新規受注と料金改定が定着し、1 人あたりの売上は物価に少し足りない程度で伸びる。官公庁は EMIS を維持し、インバウンド医療が 3,500 件まで育つ。生成 AI で費用を抑え、営業利益率は中期計画の 7% で定着する。配当性向は 28% を保ち、現金は引き続き厚い。窓口の人手は AI で補われ、人件費の上昇も料金でほぼ吸収できる。出国者の回復と医療費の上昇が重なり、案件の単価も上がる。会社は計画を上回る売上の増え方を維持する。株価に効く新しい大型の買収などはない。計画のうち、利益の達成が 1 年遅れる程度の姿だ。
- 医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け):数量 1,700(日本人の出国者数(万人))× 価格 0.02(出国者 1 万人あたりの売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。出国 1,700 万人
- 官公庁の受託(EMIS 運用など):数量 2.0(受託している案件の数)× 価格 4.48(1 案件あたりの年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 1 億円。案件 2.0 件分
- インバウンド医療ツーリズム:数量 3,500(手配の件数)× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。手配 3500 件
- ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど):数量 90.0(対応件数(千件))× 価格 0.07(1 千件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。対応 90 千件
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 12.83 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年中間の勢いと中期計画を前提にすれば届く筋書きで、2 割とした。
中立 38% 中立:営業利益率 6% 弱で、数量は緩やかに回復 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,129 円28 億円
出国者は 10 年で今の 1.15 倍の 1,610 万人まで回復する。海外の医療費は上がるが、生成 AI の導入で窓口の費用が下がるぶん、保険会社が料金を物価ほどは上げさせず、1 人あたりの売上は 1.15 倍にとどまる。官公庁は入札で毎年の確保が揺れ、今の 8 割の規模で落ち着く。インバウンド医療は 2,000 件まで育つが、計画の 10 億円には届かない。ライフは AI の影響で件数が 2 割減る。営業利益率は 6% 弱で、中期計画の 7% には届かない。官公庁の価格は公共の予算で決まり、物価ほどは上がらない(今の 1.2 倍)。配当性向は 25% で、現金は少しずつ積み上がる。
- 医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け):数量 1,610(日本人の出国者数(万人))× 価格 0.02(出国者 1 万人あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。出国 1,610 万人(1.15 倍)
- 官公庁の受託(EMIS 運用など):数量 1.6(受託している案件の数)× 価格 4.20(1 案件あたりの年間売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。案件 1.6 件分
- インバウンド医療ツーリズム:数量 2,000(手配の件数)× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。手配 2000 件
- ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど):数量 78.0(対応件数(千件))× 価格 0.06(1 千件あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。対応 78 千件
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.75 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年中間の勢いで足元は上向くが、取引先の偏りと入札の不確実さがあり、中心を 4 割弱に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:官公庁が半減し、料金も伸びない 利益 1 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 350 円9 億円
出国者はほとんど増えず、今と同じ 1,400 万人にとどまる。保険会社が AI を理由に値下げを求め、1 人あたりの売上は物価よりずっと低い 1.05 倍にしか上がらない。官公庁は EMIS を一部失い、案件は 1 件分に縮む。インバウンド医療は伸びず、ライフも半端に縮む。営業利益率は 2〜3% で、人件費の上昇に料金が追いつかない。配当性向は 20% に下がる。一部の損保は窓口業務を値下げの材料にし、更新のたびに条件が厳しくなる。人員を絞って費用を抑えるが、質の低下で受注がさらに細る悪循環も一部に出る。官公庁の案件も入札のたびに価格競争が強まる。コロナ関連の受託が終わった時のような急落が、また起きる。その時、手元の現金は慎重に守られ、株主還元は後回しになる。
- 医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け):数量 1,400(日本人の出国者数(万人))× 価格 0.02(出国者 1 万人あたりの売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。出国 1,400 万人・料金 1.05 倍
- 官公庁の受託(EMIS 運用など):数量 1.0(受託している案件の数)× 価格 3.85(1 案件あたりの年間売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。案件 1.0 件分
- インバウンド医療ツーリズム:数量 700(手配の件数)× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。手配 700 件
- ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど):数量 60.0(対応件数(千件))× 価格 0.06(1 千件あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。対応 60 千件
倍率:事業の ROE 2.2%(事業の純利益÷事業の自己資本)、k 8.75%。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k=11.1 倍。上限の 7.0 割に置いて 7.8 倍。余った現金 3.0 億円は利息分を事業の利益から外し、戻り方 0.75 を掛けて足した。利益の質が落ちる筋書きで、上限の 7 割に置いた。
確率:取引先が少数で、入札で決まる売上もあるため、悪い方向に振れやすい。やや悲観を 26% と重めに置いた。
悲観 10% 悲観:大手損保が窓口を取り戻し、EMIS も失う 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 155 円4 億円
主要な損保が窓口を自社に戻し、または別のアシスタンス会社に乗り換え、医療アシスタンスの売上が 3 割減る。EMIS も入札で失い、官公庁の売上は消える。AI により窓口の単価は下がり続け、1 人あたりの売上は物価に追いつかない。会社は人員を絞るが、窓口の固定の人件費は残る。24 時間体制を保つ最低限の人数は減らせず、案件が減るほど 1 件あたりの費用は重くなる。保険会社との再契約は難航し、料金の下げも続く。営業利益は赤字に沈み、時価総額は事業の稼ぐ力でなく、純現金のうち立替金などを除いた分で値が付く。
- 医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け):数量 980(日本人の出国者数(万人))× 価格 0.02(出国者 1 万人あたりの売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。出国 980 万人(7 割)
- 官公庁の受託(EMIS 運用など):数量 0.0(受託している案件の数)× 価格 3.50(1 案件あたりの年間売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。案件 0.0 件分
- インバウンド医療ツーリズム:数量 300(手配の件数)× 価格 0.00(1 件あたりの売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。手配 300 件
- ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど):数量 40.0(対応件数(千件))× 価格 0.05(1 千件あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。対応 40 千件
倍率:床の資産(純現金から立替金の賄いを引いた分)で値が付く筋書き。今の自己資本に床の PBR を掛けた。
確率:取引先の内製化と入札の喪失が重なる構造的な負けで、1 割に置いた。取引先の偏りと入札型の売上があり、起きうる筋書きだ。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
医療アシスタンス(海外旅行保険の付帯・企業向け)
海外で病気やけがをした日本人の医療手配と帰国支援。損保の保険付帯の窓口を受託する。
| 数量日本人の出国者数(万人) | 価格出国者 1 万人あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,400 | 0.02 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,610 | 0.02 | 32 | 2 |
取り方:2025 年の日本人出国者を約 1,400 万人(JNTO 系の報道)とし、全社売上 37.1 億円から官公庁受託・インバウンド・ライフを引いた約 24.5 億円を割った推定。セグメント別の利益は開示が細かくなく、全社営業利益 0.96 億円を見て推定した。
官公庁の受託(EMIS 運用など)
厚生労働省の災害時医療情報システム(EMIS)の運用など、入札で決まる公共の受託。
| 数量受託している案件の数 | 価格1 案件あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 3.50 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 4.20 | 7 | 1 |
取り方:2025 年 12 月期の増収の理由が「海外旅行保険付帯の受託と EMIS 関連受託」と説明されたことから、増収分 8 億円のうち官公庁の分を約 7 億円と推定した。案件数と単価は開示がない推定(2 案件 × 3.5 億円)。
インバウンド医療ツーリズム
訪日外国人の医療機関の受診・健診の手配。
| 数量手配の件数 | 価格1 件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 700 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:2024 年の売上が 1.62 億円、利益はわずかな赤字だったが、足元の規模は 1 億円未満とみて約 0.7 億円と推定した。件数と単価は開示がなく、1 件 10 万円とした推定。
ライフ・ノンメディカル(コンシェルジュなど)
クレジットカード会員向けの予約・手配などの代行。
| 数量対応件数(千件) | 価格1 千件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 98.0 | 0.05 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.06 | 5 | 0 |
取り方:2024 年の実績 4.49 億円を、足元で少し増えたとみて約 4.9 億円に置いた。件数は 1 件 5 千円の推定で逆算した(開示なし)。
リスクと懸念
取引先の損保が窓口を内製に戻す
売上の大半は少数の損害保険会社に頼る。保険会社が窓口を自社に戻す、または別のアシスタンス会社に切り替えると、売上は一度に減る。
AI による値下げ圧力
翻訳・電話応対・手配の AI が進むと、保険会社は「人手が要らなくなった分」の値下げを求める。会社の費用が下がっても、料金も下がれば利益は増えない。
公共の受託の入れ替わり
EMIS は入札で決まる。落札できなければ売上が数億円単位で消え、コロナ関連の受託が終わった 2023 年の再現になる。
旅行需要の変動
感染症・戦争・円安などで出国者が減れば、案件数も減る。コロナ禍の 2020 年は営業利益がほぼゼロになった。
計画と実績の差
2025 年は売上が計画を超えたが、営業利益は計画の 6 割だった。中期計画の 2027 年の利益率 7% は、費用の抑えが伴わなければ届かない。
今後の分かれ目
- 海外大手損保との新規取引が通年で寄与し、営業利益率が 5% を超えて定着したら
- やや楽観の確率を上げる。
- 主要な損保が窓口を内製に戻す、または契約の更新を見送ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 令和 8 年度の EMIS を落札できなかったら
- 官公庁の数量を下げ、中立の売上を 1 割ほど下げる。
- インバウンド医療の売上が 3 億円を超えたら
- 楽観・やや楽観の数量を上げる。
- 配当性向の目標が上がる、または自社株買いが実施されたら
- 余った現金の戻り方を 0.75 から上げてよい。
見ておくもの
- 損保大手との契約の更新と新規受注
- 営業利益率(四半期)
- EMIS の入札結果
- 日本人の出国者数
- インバウンド医療の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k から式で出した。ROE が資本コストを超えにくい会社なので PER の上限は 1÷k で、中立は上限の 8.5 割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。数量は出国者の緩やかな回復、価格は AI による値下げ圧力で物価より低めに置いた。コロナ関連の特需(2022 年の営業利益 7 億円)は利益の基準にしていない。新リース会計基準は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.94 倍・やや楽観 PER 10.3→12.83 倍・中立 PER 9.4→11.75 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。