結論
マーチャント・バンカーズは、八王子のマンションなど 23 の賃貸物件を持ち、家賃と物件の売却益で稼ぐ小さな投資会社だ。筆者の結論ははっきりしている。今の時価総額は、この会社が 10 年かけて稼げる力に比べて大きく高い。
一番の理由は借金だ。物件の簿価は 127 億円、借入は 105 億円で、自己資本は 45 億円しかない。家賃から経費と償却を引いた利益の多くが、利払いに消える。金利が上がる世界では、借り換えのたびに利払いは膨らむ。
売却益は年によって大きく振れる。2025 年 10 月期は計画した 8 物件のうち 6 物件しか売れず、最終赤字に沈んだ。売却益に頼る利益に、高い値は付けにくい。
筆者の見立てでは、10 年後の純利益は 1 億円台にとどまり、資本コストに届かない。今の値段は、その稼ぐ力の 5 倍を超える。
物件を売り切れば借入を返して少し残る計算だが、大株主が議決権の 6 割強を握り、少数株主にはその道を選べない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「借りたお金で薄い利ざやを取る事業」だ。持ち続けたいと思える理由が見つからない。
賃貸の家賃は安定して入る。だが簿価に対する稼ぎは 4% ほどで、借入の金利を払うとほとんど残らない。利益の上振れは物件の売却益頼みで、売れる年と売れない年の差が大きい。予測できない利益には、高い値を払えない。
資本の配分にも不安がある。増資で集めたお金で自社株を買い、すぐに売り直す。株主の持ち分を守る姿勢より、資金繰りを優先しているように見える。
筆者は、帳簿の物件を売り切れば借入を返して少し残るとみる。だが少数株主には売り切る力がない。払う値段に安全域はなく、逆に大きな上乗せが付いている。
家賃が物価で上がり、償却が取得した時の値段で止まる点は、長く持つ株主に少しだけ有利に働く。それでも利払いの膨らみを埋めるには足りない。
何で稼ぐ会社か
事業は単一のセグメントだが、中身は 2 つに分かれる。1 つは賃貸だ。東京・八王子のマンション「コスモリード八王子」をはじめ、関東と中部・関西に 23 の物件を持つ。ホテルの建物を運営会社に貸す案件もあり、売上の 1 割はホテルの運営会社から入る。家賃などの収入は年 10 億円ほどだ。
もう 1 つは物件の売買だ。古い物件を安く買い、手を入れて貸し、利回りの付いた物件として売る。2025 年 10 月期は 6 物件を 23 億円で売った。売上の 7 割はこの売却で、利益の出方は年ごとにまるで違う。株式や売掛金を担保にした貸付、再生可能エネルギーへの投資も手掛けるが、規模は小さい。
会社の人員は連結で 2 名と、きわめて少ない。物件の管理は外に任せ、少数の幹部が案件を探して資金を付ける形だ。資金は銀行借入が中心で、足りない分は第三者割当の増資と新株予約権で集めてきた。2025 年には香港の会社に新株と新株予約権を割り当て、2026 年には自社株を買ってすぐ第三者に売り直している。
売上の上位には不動産の売買の相手が並ぶ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。物件は郊外の住宅や地方の商業ビルが多く、立地で家賃を上げられる資産ではない。似た商売をする不動産会社は無数にあり、良い物件ほど大手や海外の資金と取り合いになる。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2% で、赤字の年が 4 回ある。家賃の利回りは簿価に対して 8% ほどあるが、管理費と償却を引くと 4% 前後に縮み、そこから借入の金利を払う。利ざやは薄く、金利が上がれば消える。
経営は案件を回す力に頼る。上位 3 株主が議決権の 6 割強を握り、増資と自社株買いを短い間隔で行き来する。少数株主から見ると、資本の使い方が読みにくい。
強みを挙げるなら、人員が少なく固定費が軽いことと、小さな案件を素早く拾える身軽さだ。ただ、それは利益の振れを小さくする力ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸不動産の世界は、金利が上がる局面に入った。10 年国債が 3% の前提では、物件の期待利回りは 4〜5.5% が目安になる。金利が上がれば物件の値段は下がりやすく、売却益を稼ぐ会社には逆風だ。一方で、建築費は資材高と人手不足で上がり続け、新しい物件が出にくい。古い物件の家賃と値段には下支えになる。
この会社が持つのは郊外の住宅と地方の建物が中心だ。都心のオフィスのように家賃が物価以上に上がる立地ではない。人口が減る地方では、空室が増える方向に働く。家賃は物価並みには上がりにくいと筆者は見る。
借り手としての立場も弱い。大手の不動産会社は格付けを持ち、金利の上乗せが小さい。この会社のように自己資本が薄く利益が振れる借り手は、銀行から高い金利を求められる。2008 年の不動産不況では、この会社も 100 億円の最終赤字を出し、株価は 99% 下げた。金利と物件の値段が同時に逆に回る局面の怖さを、この会社はすでに一度経験している。
小さな会社が生き残る道は、大手が手を出さない小さな物件を拾い、手を入れて売ることだ。ただ、その回転も金利と銀行の姿勢に左右される。
資本政策と M&A
配当の総額は年 0.6 億円ほどだ。2026 年 10 月期の配当は、資本準備金を取り崩す議案が通ることを条件にしている。利益で配当を賄えていない年がある。
資本の出し入れは激しい。2025 年 7 月に香港の会社へ新株 232 万株と、920 万株分の新株予約権(行使価額は今の株価の 1.4 倍)を割り当てた。2026 年には 8.2 億円の自社株買いを決め、7.9 億円分を買ったが、そのうち 148 万株はすぐ第三者に売り直した。新株予約権は 820 万株分ほどが残る。
株主優待は 10 月末に 300 株以上を 1 年以上持つ株主に QUO カード、4 月末に大口の株主へ宿泊券を出す。会社の負担は年 0.5 億円未満とみられ、価値への影響は小さい。
上位 3 株主が議決権の 6 割強を持つので、TOB で少数株主に高い値が付く道筋も見えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
家賃は毎年 10 億円ほど安定して入る。物件の多くは住宅で、景気が悪くても空室は急には増えない。建築費が上がり続けるので、古い物件の値段と家賃には下支えがある。
売却も軌道に乗りつつある。2026 年 10 月期は営業利益 5.8 億円と、前の期の 2 倍を会社は見込む。物件を安く買い、手を入れて利回りを付けて売る回転がうまく回れば、年 3〜5 億円の売却益は無理な数字ではない。
償却は取得した時の値段のままなので、家賃が物価で上がれば利益率は少しずつ良くなる。借入を売却代金で返していけば、利払いも減る。
資金の出し手もいる。香港の会社が新株と新株予約権を引き受け、自社株買いもした。行使価額は今の株価の 1.4 倍で、出し手は今より高い値を見ている。
人員が 2 名なので、固定費は軽い。案件が 1 つ当たれば、利益は大きく跳ねる。
大株主が議決権の 6 割強を持つことも、見方を変えれば強みだ。意思決定が速く、良い案件に素早く資金を付けられる。
慎重な見方
利払いが稼ぎを食う構図は変わらない。借入は 105 億円で、自己資本は 45 億円しかない。今は 2% 台の金利で借りているが、借り換えのたびに 4〜5% へ上がる。利払いは年 2.4 億円から 4 億円近くに膨らみ、家賃の利益の大半が消える。
売却益は当てにならない。2025 年 10 月期は計画の 8 物件のうち 6 物件しか売れず、最終赤字だった。2026 年 10 月期も 9 か月の経常利益は 700 万円にすぎない。金利が上がれば買い手の求める利回りも上がり、物件は安くしか売れない。
資本政策も危うい。増資と新株予約権で株を増やし、自社株を買ってはすぐ売り直す。少数株主の持ち分は、行使のたびに薄まる。
2008 年には 100 億円の赤字を出し、株価は 99% 下げた。同じことが起きない保証はない。
家賃の利回りも見かけほど高くない。郊外と地方の物件は、人口が減れば空室が増え、家賃は物価に追いつかない。償却は取得した時の値段で止まっても、古い建物の修繕費は建築費とともに膨らむ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。家賃が安定していることは認めるが、借入の金利が上がれば利益はほとんど残らない。売却益の振れも、2025 年 10 月期の赤字で示された。大株主の支配と資本の出し入れも、少数株主には不利に働く。確率はやや悲観と悲観を厚くした。物件の売却が 2 期続けて計画どおりに進み、借入が 80 億円を下回れば、確率を楽観の側へ移す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した株価時価総額 47 円14 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 16 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 28 円9 億円、今との差 −88.9%、 期待の年率 −13.0%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 145 円45 億円 | 29 円9 億円 | −31.8% | −3.8% | 10 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 85 円26 億円 | 23 円7 億円 | −57.8% | −8.3% | 18 円6 億円 |
| 中立 | 40% | 41 円13 億円 | 20 円6 億円 | −76.2% | −13.4% | 24 円7 億円 |
| やや悲観 | 24% | 28 円9 億円 | 10 円3 億円 | −85.4% | −17.5% | 9 円3 億円 |
| 悲観 | 13% | 7 円2 億円 | 3 円1 億円 | −96.2% | −27.9% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 47 円14 億円 | 16 円5 億円 | −75.2% | −13.0% | 63 円19 億円 |
今の株価時価総額 256 円79 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:物件を 27 件に増やし、売却益も年 5 億円を超える 利益 4 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 145 円45 億円
物件の入れ替えがうまく回る。安く買った古い物件に手を入れ、利回りを付けて年 8 件を売る。売却益は売却額の 12% に乗り、年 5 億円を超える。賃貸の物件も 27 件に増え、家賃は物価に近い 1.38 倍まで上がる。
償却は取得した時の値段のまま残り、新しく買った物件の分だけ増えて年 4 億円になる。家賃が上がるほど、利益率は良くなる。借入は売却代金で返し、金利が上がっても営業外の負担は年 2.5 億円に収まる。
純利益は 4 億円台に乗るが、ROE は 7% で資本コストに届かない。配当は少しずつ増え、10 年で 9 億円を株主に返す。新株予約権の行使価額は筋書きの株価より上で、株は増えない。
- 賃貸(住宅・商業・ホテルの建物):数量 27.0(持っている賃貸物件の数(件))× 価格 0.62(1 物件あたりの年の賃料収入(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 7 億円。物件 1.17 倍、1 件あたり 1.38 倍。償却 4 億円
- 物件と投資の売却:数量 8.0(年の物件の売却件数(件))× 価格 5.50(1 件あたりの売却額(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。8 件、1 件 1.41 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 45 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物件の回転と借入の圧縮が同時に進む筋書き。過去 10 年で営業利益が 5 億円を超えた年は無く、金利の上がる世界で売却益を厚くするのは難しいので 1 割に満たない。
やや楽観 17% やや楽観:会社の計画に近い売却が続き、純利益 2.6 億円 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 85 円26 億円
売却は年 7 件のペースで続き、売却益は売却額の 11% に乗る。会社が 2026 年 10 月期に見込む稼ぎに近い姿が、物価で膨らみながら続く。賃貸は 25 件に増え、家賃は 1.30 倍になる。
償却は年 3.6 億円で、物価ほどは増えない。本社の費用は物価で 3.3 億円に増える。借入は 90 億円前後で、借り換えで金利が上がり、営業外の負担は年 2.8 億円になる。
純利益は 2.6 億円で、ROE は 4.6% にとどまる。配当は今の年 0.6 億円から少し増え、10 年で 7 億円になる。家賃は安定するが、資本コストを超える稼ぎには届かない。
- 賃貸(住宅・商業・ホテルの建物):数量 25.0(持っている賃貸物件の数(件))× 価格 0.59(1 物件あたりの年の賃料収入(億円))→ 売上 15 億円・営業利益 6 億円。物件 1.09 倍、1 件あたり 1.30 倍。償却 3.6 億円
- 物件と投資の売却:数量 7.0(年の物件の売却件数(件))× 価格 5.24(1 件あたりの売却額(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。7 件、1 件 1.34 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 10 月期の会社の計画(営業利益 5.8 億円)に近い稼ぎが 10 年続く筋書き。計画の達成は 2025 年 10 月期に崩れた実績があり、2 割に届かない。
中立 40% 中立:家賃は残るが利払いが膨らみ、純利益は 1 億円台 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 41 円13 億円
物件の数は 23 件のまま、入れ替えを続ける。郊外と地方の物件が多いので、家賃は物価ほどは上がらず 1.25 倍にとどまる。償却は取得した時の値段のまま年 3.3 億円で、家賃の利益率は 39% に少し上がる。
売却は年 6 件で、売却益は売却額の 10% ほどだ。本社の費用は物価で 3.3 億円に増える。営業利益は 5 億円弱になる。
一方で、借入の金利は借り換えのたびに 4〜5% へ上がる。売却代金で借入を 80 億円前後まで減らしても、営業外の負担は年 3 億円になる。純利益は 1.3 億円で、ROE は 2.5% だ。配当は年 0.6 億円が続き、10 年で 6 億円ほどを返す。
- 賃貸(住宅・商業・ホテルの建物):数量 23.0(持っている賃貸物件の数(件))× 価格 0.57(1 物件あたりの年の賃料収入(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 5 億円。物件横ばい、1 件あたり 1.25 倍。償却 3.3 億円
- 物件と投資の売却:数量 6.0(年の物件の売却件数(件))× 価格 5.24(1 件あたりの売却額(億円))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。6 件、1 件 1.34 倍
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.5% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 13 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家賃は物価よりやや鈍く上がり、売却は今のペースで続く姿。過去 10 年の ROE の中央値 2% に近く、実績の延長として一番厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:物件が売れず、利払いで赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 28 円9 億円
金利が上がり、物件の買い手は高い利回りを求める。売却は年 4 件に減り、利益はほとんど出ない。家賃は 1.15 倍しか上がらず、空室も増えて物件は 22 件に減る。
借入は 100 億円前後のまま残り、借り換えで金利は 4% 台に乗る。営業外の負担は年 3.8 億円に膨らみ、本業の利益を上回る。最終赤字が続き、配当は途中で止まる。
赤字の会社に PER は付かない。価値は物件を売って借入を返した後に残る分で測る。簿価を 15% 引いて売ると、借入を返して現金を足した残りは 17 億円だ。少数株主には売り切る力がないので、その半分が値段の上限になる。
- 賃貸(住宅・商業・ホテルの建物):数量 22.0(持っている賃貸物件の数(件))× 価格 0.52(1 物件あたりの年の賃料収入(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。物件 0.96 倍、1 件あたり 1.15 倍。償却 3.1 億円
- 物件と投資の売却:数量 4.0(年の物件の売却件数(件))× 価格 4.69(1 件あたりの売却額(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。4 件、1 件 1.2 倍
倍率:PBR 0.188 倍を今の自己資本 45.3 億円に掛けた。稼ぐ力は赤字で、価値は売れる資産の床 8.5 億円で測る。EV ÷ 営業利益は 85 倍で、利益では値段を説明できず床の資産で測る。
確率:2025 年 10 月期の売却の遅れと経常赤字が続く姿。実績に根拠があり、金利が上がる世界では起きやすいので楽観側より厚くした。
悲観 13% 悲観:不動産不況で投げ売りし、自己資本の大半を失う 利益 −6 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 7 円2 億円
金利の上昇と景気の後退が重なり、物件の値段が下がる。銀行は返済を求め、会社は物件を簿価を割って売る。売却は損を出し、家賃も空室で伸びない。物件は 20 件に減る。
借り換えの金利は 5% を超え、営業外の負担は年 4.5 億円になる。本業も赤字に落ち、最終赤字が毎年続く。配当は早い時期に止まる。2008 年の不動産不況で、この会社は 100 億円の赤字を出した。同じ構図が、規模を小さくして繰り返される。
簿価を 3 割引いて売ると、借入を返した後にはほとんど何も残らない。値段は、立ち直りに賭ける小さな選択の価値だけになる。
- 賃貸(住宅・商業・ホテルの建物):数量 20.0(持っている賃貸物件の数(件))× 価格 0.48(1 物件あたりの年の賃料収入(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。物件 0.87 倍、1 件あたり 1.05 倍。償却 3.0 億円
- 物件と投資の売却:数量 3.0(年の物件の売却件数(件))× 価格 3.91(1 件あたりの売却額(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。3 件、簿価割れの売却
倍率:PBR 0.044 倍を今の自己資本 45.3 億円に掛けた。床の資産は借入を返すとほぼゼロで、残るのは立ち直りに賭ける価値だけ。営業赤字で EV の倍率は意味を持たない。
確率:金利の上昇と不動産の下落が重なり、借入の返済のために物件を安く売る筋書き。2009 年 3 月期に 100 億円の赤字と株価 99% 下げの実績があり、借金の重さからも 1 割を超えて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸(住宅・商業・ホテルの建物)
八王子のマンションなど 23 物件の家賃と、ホテルの建物の賃料。
| 数量持っている賃貸物件の数(件) | 価格1 物件あたりの年の賃料収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 23.0 | 0.45 | 10 | 4 |
| 10 年後 中立 | 23.0 | 0.57 | 13 | 5 |
取り方:単一セグメントで内訳の開示が無い。売上 33.83 億円から物件の売却 23.45 億円(有報:6 物件)を引いた 10.4 億円を賃料などとした推定。物件数 23 は有報の主要な設備(コスモリード八王子 他 22 か所)。利益は推定で、償却 2.82 億円を含む費用を引いた 40%。
物件と投資の売却
手を入れた物件を利回りの付いた物件として売る。株式などの投資の売却も含む。
| 数量年の物件の売却件数(件) | 価格1 件あたりの売却額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 6.0 | 3.91 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.0 | 5.24 | 31 | 3 |
取り方:有報:計画 8 物件に対し 6 物件・23.45 億円を売却。利益は推定で、売却額の 5%(営業利益 2.85 億円から賃貸の推定と本社費を引いた残り)。
リスクと懸念
借り換えの金利
借入は 105 億円で、今の利払いは年 2.4 億円だ。借り換えのたびに金利は 4〜5% へ上がり、利払いは年 4 億円近くに膨らむ。家賃の利益の大半が利払いに消える。
売却益の振れ
利益の多くは物件の売却益で、2025 年 10 月期は計画の 8 物件のうち 6 物件しか売れず最終赤字になった。金利が上がれば買い手の利回りの要求も上がり、売値は下がる。
株の希薄化
2025 年に割り当てた新株予約権が 820 万株分ほど残り、行使されれば今の株数の 27% にあたる。増資と自社株買いを短い間隔で行き来し、少数株主の持ち分は読みにくい。
少数の人に頼る経営
連結の人員は 2 名だ。案件を探し、資金を付ける力は少数の幹部に頼る。人が抜ければ、事業はそのまま止まりかねない。
大株主の支配
上位 3 株主が議決権の 6 割強を持つ。資本の使い方も TOB の可否も大株主が決め、少数株主の意見は届きにくい。
銀行の財務制限
借入には財務の条件が付く。赤字が続いて条件に触れれば、返済を早く求められ、物件を安く売らざるを得なくなる。
今後の分かれ目
- 物件の売却が 2 期続けて会社の計画どおりに進む
- 売却の件数と利益率を上げ、確率をやや楽観の側へ移す。
- 借入が 80 億円を下回る
- 利払いの負担を軽くし、中立の純利益を上げる。
- 新株予約権が大きく行使される
- 株数の増える分を holder_share として取り分を下げる。払い込みの現金は借入の返済に回るとみる。
- 経常赤字が 2 期続く
- やや悲観の確率を上げ、床の資産で値段を測る。
- 大株主が全株の取得を提案する
- 買付けの値段と、物件を売り切った時の価値を比べる。
見ておくもの
- 物件の売却件数と売却益(年 6〜8 件が会社の計画)
- 借入の残高と平均の金利
- 経常利益(2026 年 10 月期の会社予想 3.0 億円)
- 新株予約権の行使と自社株の処分
- 大株主の持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k(10%)から決めた。どの筋書きも ROE が k に届かないので、PER の上限は 1÷k=10 倍で、利益の質(売却益の割合)で 8〜9.5 倍に置いた。赤字のやや悲観と悲観は、物件を売って借入を返した残りの床で測った。今の PBR 1.7 倍は見ていない。台帳の株数 1,321 万株は誤りで、開示の 3,075 万株に直した。新リース会計基準の影響は小さい(借りる側でなく貸す側)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10 倍・やや楽観 PER 9→10 倍・中立 PER 8→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 2.5% = 10.0%。同じ領域の済み会社は無い。