結論
アシロは、法律問題を抱える人と弁護士を結ぶ「ベンナビ」を中核に、転職関連の成果報酬広告、人材紹介、弁護士費用保険を営む会社である。筆者の結論は「割高」だ。法律事務所との顧客関係には確かな価値があるが、集客を外部の検索エンジンに頼る弱さがあり、10年後の稼ぐ力を現在の高収益期から素直に伸ばすことはできない。
強みは、弁護士の広告を事件分野と地域に分け、月額定額の掲載料を得る仕組みにある。2025年10月末の有料掲載枠は3,332枠、掲載顧客は1,191件に達した。弁護士には継続的な集客需要があり、利用者には専門分野に合う弁護士を探す需要がある。法律上の制約も、一定の参入障壁になる。
ただし、2025年10月期の好業績は高単価広告商品の寄与が大きい。2026年10月期第3四半期累計では増収ながら営業減益となり、高単価商品の反動と新規事業費用が表面化した。2025年の利益率を恒久的な実力とみなすのは危険である。さらに、検索AIが利用者の質問に直接答え、弁護士の比較や相談先選定まで担うようになれば、法律情報サイトへの訪問自体が減る可能性がある。
10年後も弁護士紹介の需要は残ると考える。しかし、需要が残ることと、アシロが現在の広告単価と利益率を維持できることは別の話だ。2026年の還元強化と財務の余裕は評価するものの、AI代替と顧客集中を反映した本質価値は約60億円、現在の時価総額約107億円を約44%下回る。現在の価格では、事業の成功と高収益の持続に対して十分な安全域を確保できない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に確かめるべきことは、10年後にも顧客がこの会社へ継続してお金を払う理由である。アシロの場合、法律事務所が新しい顧客を必要とすることは間違いない。専門分野に合う相談案件を継続的に届けられる限り、ベンナビの広告枠には価値がある。弁護士との契約関係を一つずつ築いた営業努力は、簡単には複製できない。
しかし、広告媒体の所有と顧客接点の所有は違う。利用者がGoogleから一度訪れて去るだけなら、その利用者との関係は検索エンジンの側にある。AIエージェントが検索から比較、候補選定まで引き受ける時代には、優良なコンテンツを大量に保有していても収益が守られるとは限らない。広告主が最終的に見るのは問合せの質と獲得単価であり、媒体の歴史ではない。
資本効率についても直近のROEだけを評価しない。2023年には成長投資で利益がほぼ消え、2025年には高単価広告が利益を押し上げた。保険事業には買収から数年を経ても継続的な損失がある。再投資による増分ROICが資本コストを上回ると断定できる実績は、現時点では十分でない。高いROEが毎年続く企業として扱うべきではない。
良い点は、広告媒体そのものに大規模な設備投資が必要なく、利益が現金になりやすいことだ。財務に余裕があり、2026年には配当と自己株式取得を強めた。今後も事業投資を厳選し、稼いだ現金を株主に戻す姿勢が定着すれば、価値は大きく改善する。
それでも、十分に理解できない将来の検索経路には高い値段を払えない。法律事務所との顧客関係という資産を評価しながらも、10年後の利益率と集客力には大きな幅を認める必要がある。筆者は事業の存続を疑っていないが、現在の値段で10年間保有するための安全域には慎重である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は法律事務所から受け取る広告掲載料である。ベンナビは離婚、交通事故、相続、労働問題、刑事事件など8つの法律分野で専門サイトを運営する。法律事務所は事件分野と地域を選んで広告を掲載し、その掲載枠数に応じて月額料金を支払う。利用者から相談のたびに紹介料を取る仕組みではない。2025年10月期のリーガルメディア売上収益は37.85億円、営業利益は15.59億円だった。
第二の柱が派生メディアである。「キャリズム」は転職希望者を人材紹介会社へ送客し、「浮気調査ナビ」などは探偵への相談需要を集める。顧客からの報酬は、所定の条件を満たした問合せに応じて発生する。2025年10月期には主要サイトで10万5,447件の問合せがあり、売上収益は24.58億円だった。法律メディアと同じ集客技術を使えるが、需要と広告効率によって売上が動くフロー型である。
HR事業は「NO-LIMIT」「BEET AGENT」などを通じ、弁護士、会計士、税理士、企業の管理部門人材を紹介する。採用が成立した時点で紹介手数料を受け取る。2025年10月期の新規登録者は5,794件、売上収益は3.35億円である。人材派遣子会社ヒトタスは2025年4月に売却され、現在の中心は有料職業紹介となった。
保険事業は2022年に買収した少額短期保険会社を通じて運営する。2025年には法人向け弁護士費用保険「bonobo」を開始し、法務関連サービス「Legal Base」も育成している。保険売上は2025年10月期で0.69億円、セグメント営業損失は1.60億円だった。法律相談への送客だけでなく、相談前の予防、保険、企業法務にも接点を広げる戦略だが、現時点では新事業の収益貢献は小さい。
2025年10月期の全社営業利益14.19億円に対し、メディア事業の利益は20.35億円だった。HRと保険を合算した利益は赤字ではないものの、保険の先行損失と本社費約5.27億円が全社利益を押し下げている。実態は、利益の大部分を二つの広告メディアが生み出し、その現金で新事業と株主還元を支える会社である。
優良さと弱いところ
アシロの堀、つまり競争相手が容易に奪えない強みは、特定の法律問題に対応する広告商品と法律事務所の顧客基盤にある。弁護士法第72条による法律事件の有償周旋の制約があるため、成果報酬型の弁護士紹介を自由に展開することは難しい。月額定額で広告掲載契約を獲得し、事件分野と地域を組み合わせて運営する営業力には蓄積がある。
値決め力の実績もある。2025年10月期には掲載枠数が前年末比5.9%増えた一方、リーガルメディア売上は53.8%増えた。高単価商品の販売がその大きな要因である。ただし、これは恒久的な値上げ力を証明するものではない。2026年10月期第1四半期には高単価商品の売上構成比が前年同期の35.2%から20.6%へ下がり、その後も反動が利益を圧迫している。
顧客集中も見逃せない。2025年10月期の主要顧客であるフォーイット、アディーレ法律事務所、オープンの3社向け売上は合計約31億円で、全社売上の約47%に達する。掲載枠数が増えても、大口顧客が出稿を減らせば全体の単価と利益率が急落しうる。顧客数だけでは堀の強さを測れない。
財務は比較的健全だ。2025年10月期には純現金が21.2億円あり、2026年7月末も借入金控除後で約14.9億円の純現金を保つ。ただし、同時点の総資産には約11.4億円ののれんが含まれる。純資産全額を換金可能な資産と考えるべきではない。
筆者は堀を「普通」と評価する。法律事務所との取引関係には一定の粘着性があるが、顧客の契約を維持できるかは結局、広告の費用対効果に左右される。検索エンジンへの依存とAIによる比較・情報提供の代替を考えると、価格を自由に引き上げられる強いプラットフォームとはまだ言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
法律相談の需要がなくなる可能性は低い。離婚、相続、事故、労働紛争、債務整理などの問題は、人口が減っても一定数発生する。弁護士人口は2024年3月に4万5,808人で、法律事務所間の顧客獲得競争は続く。アシロが提供する専門分野別の広告商品には、今後も顧客需要が残るだろう。
会社資料では弁護士広告市場を約1,600億~1,800億円としている。2025年10月期の同社リーガルメディア売上37.85億円は、この推計市場の約2.1~2.4%に相当する。一方、掲載顧客数1,191件を国内法律事務所数の約1.8万~2万件と比較すれば、顧客基盤の浸透率は約6~7%となる。市場の分母が異なるため、売上シェアと顧客シェアは区別する必要がある。
有力な競争相手は「弁護士ドットコム」と「ココナラ法律相談」である。弁護士ドットコムは2026年3月末時点で有料登録弁護士約1万4,700人を擁し、アシロより広い弁護士ネットワークを持つ。ただし、登録弁護士数とアシロの有料広告掲載事務所数は異なる指標である。広告収入の厳密な市場シェアについて、競合各社で統一した開示はない。
派生メディアが属するアフィリエイト広告市場は、会社資料の2024年時点の目安で約4,116億円とされる。アシロの売上を単純に比較すると約0.6%だが、広告流通総額と媒体側の認識売上は完全には一致しない。転職領域にはリクルート、マイナビ、パーソル、ビズリーチなど大きな顧客基盤を持つ競合がいる。比較サイトや送客媒体は、GoogleやMetaへの広告費配分の変化にも左右される。
最も大きな構造変化はAI検索とAIエージェントである。従来は法律問題を検索し、解説記事を読み、弁護士を比較する流れだった。今後はAIが相談内容を整理し、資格や専門分野を確認し、依頼先を提案する可能性がある。米国のPew Research Centerの2025年調査では、AIによる検索要約が表示された検索では外部サイトへのクリック率が低い傾向が確認されている。日本の弁護士紹介市場に同じ割合が当てはまるとは限らないが、方向性を示す材料である。
法律業務には資格と規制があるため、AIが弁護士の代理行為を全面的に置き換えるとは考えない。しかし、弁護士にたどり着く前の情報検索や候補比較は代替されやすい。10年後の競争は広告枠の数よりも、信頼できる相談案件をどれだけ低い費用で届けられるかへ移ると考える。
資本政策と M&A
資本配分は改善している。2022年に少額短期保険会社を買収し、保険を新たな収益源に育てようとしたが、2025年10月期時点でも年間約1.6億円の営業損失が続いた。2023年に立ち上げた人材派遣子会社ヒトタスも2025年4月に売却した。これは成長領域への投資が必ずしも高い増分利益を生むわけではないことを示す。同時に、見込みの弱い事業から撤退する判断ができたことは評価できる。
2023~2025年10月期の中期経営計画は投資と成長を重視し、最終年度には売上収益66.5億円、営業利益14.2億円を実現した。会社はその先の目標として2027年10月期の売上収益100億円、営業利益20億円前後、2030年10月期の売上収益200億円を掲げている。ROEについては10%以上を目標としている。ただし、長期売上目標に対応する資本利益率や増分投下資本利益率を保証するものではない。
2026年3月には配当方針を変更し、従来の配当性向30%目安から40%以上へ引き上げた。発動条件は自己資本比率40%以上と、配当後も純資産が増加することである。同時に中間配当を導入し、2026年10月期の年間配当予想を65円とした。2026年には自己株式取得と消却も行っている。DOEや総還元性向について、恒久的な具体的数値の約束は確認できない。
新規事業への投資と株主還元の両立は今後の課題だ。筆者は、保険や法務ソフトへの投資が資本コストを超える利益を生むまでは、追加投資の規模を慎重にするべきだと考える。支配的な買収者による公開買付けや上場廃止の決定は確認できない。創業者保有株と外部株主の影響力は大きいが、TOBの可能性を本質価値に上乗せすることはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アシロは単なる法律解説サイトではない。法律事務所との契約関係、地域と事件分野を組み合わせた広告商品、営業組織、相談需要に関する知見を持つ。2025年末の有料掲載枠は3,300枠を超え、掲載顧客も1,100件を超えた。国内の法律事務所全体に対する浸透率はまだ低く、競合からシェアを取る余地がある。
弁護士の数が増えるほど、各事務所にとって新規依頼者を獲得する負担は重くなる。顧客が広告の成果を実感している限り、掲載枠を維持し、追加の専門分野や地域へ出稿する合理性がある。弁護士法による規制も、成果報酬型の仲介サービスが無秩序に参入することを防ぐ。継続的な契約収入と高い限界利益率には価値がある。
AIの発達は必ずしも一方的な逆風ではない。法律問題の初期整理が容易になれば、これまで弁護士に相談しなかった利用者が専門家へアクセスする可能性もある。アシロが弁護士の実在性、得意分野、対応地域を確認し、確度の高い案件を届ける媒体であり続ければ、集客の形が変わっても生き残れる。ただし、AIが自社の売上を押し上げる具体的な金額はまだ確認できないため、この期待は利益の中心にしない。
派生メディアには転職と探偵調査の需要があり、法人向け保険も巨大な未開拓市場を持つ。保険は現在の損失が解消するだけでも利益の改善につながる。2026年の還元強化によって余剰資本の蓄積にも歯止めがかかり、オーナー利益の株主への帰属が明確になっている。大型買収で価値を壊さず、既存の広告事業から得る資金を慎重に配分できれば、十分な長期価値を生み出せる。
慎重な見方
最も大きな弱点は、顧客接点を実質的にGoogleなどの検索サービスに握られていることだ。法律情報を調べる利用者は、同じ媒体に繰り返し訪れるとは限らない。AIの回答で疑問が解決し、AIエージェントが弁護士の候補まで提示するなら、法律情報サイトの広告枠は利用者に見られなくなる。顧客である法律事務所も、相談件数が減れば掲載料を見直す。
利益の質にも疑問がある。2025年10月期のリーガルメディア売上は大きく伸びたが、2026年には高単価商品の反動が出た。広告費を増やして獲得した顧客の採算が恒久的に高いとは限らない。主要3顧客で売上の約47%を占めるという集中度は、プラットフォームの競争力に比べて収益の安定性が低いことを示している。
派生メディアの成果報酬広告も安全ではない。検索流入や有料広告の獲得単価が悪化すると、問合せ件数と利益率が同時に下がる。HR事業では、AIによる候補者探索、職務経歴の評価、企業との直接マッチングが仲介作業を減らす。規制のある保険はAIに完全代替されにくいが、保険会社としての引受判断や販売費用には別の難しさがある。
買収した保険事業が継続的な損失を出し、人材派遣事業から撤退した事実は、経営陣が新しい市場へ入れば高い利回りで再投資できるという見方を弱める。純現金はあるものの、自己株式取得と配当で減少しており、のれんの換金価値も低い。10年後に広告収益が大きく縮小した場合、現在の営業利益率を維持できる理由は乏しい。株主が十分な価値を得るには、現在の値段がまだ高い。
どちらに重みを置いたか
法律事務所の顧客基盤と資本効率の高さは評価する。しかし、2026年に既に高単価広告の反動が出ていること、売上の顧客集中が大きいこと、検索AIによる流入減少が事業の中心を脅かすことを重視する。確率は楽観側27%に対し、やや悲観・悲観を41%として下へ14ポイント寄せた。これは同じAIリスクを資本コストに重ねたものではなく、顧客集中と新規事業の収益化の不確実性による筋書きの重みづけである。中立でも法律媒体が消滅するとは考えないが、現在の利益水準が長期に維持されるとは考えない。株主還元を含めた本質価値は時価総額を大きく下回り、判断は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/10 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,095 円77 億円(+ 還元の換算額還元の合計 480 円34 億円)。 今の値に割り戻すと 850 円60 億円、今との差 −41.7%、 期待の年率 +0.9%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,776 円195 億円 | 925 円65 億円 | +153.8% | +11.6% | 296 円21 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,060 円145 億円 | 783 円55 億円 | +95.0% | +8.3% | 540 円38 億円 |
| 中立 | 32% | 1,156 円81 億円 | 569 円40 億円 | +18.3% | +2.1% | 552 円39 億円 |
| やや悲観 | 25% | 363 円26 億円 | 256 円18 億円 | −57.5% | −9.9% | 155 円11 億円 |
| 悲観 | 16% | 130 円9 億円 | 71 円5 億円 | −86.2% | −20.2% | 32 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,095 円77 億円 | 480 円34 億円 | +8.0% | +0.9% | 1,575 円111 億円 |
今の株価時価総額 1,458 円102 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 専門媒体の地位を守り、法人向け新事業が黒字化 利益 14 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,776 円195 億円
ベンナビは検索AIへの変化に適応し、専門分野別の弁護士情報と実際の相談導線を維持する。弁護士との契約管理、広告運用、相談者の適切な振り分けに強みを残し、弁護士ドットコムやココナラ法律相談との競争でも十分な存在感を保つ。掲載枠数は現在と同程度にとどまるが、顧客に届く相談の質が改善し、物価に近い単価上昇を実現する。
派生メディアでも転職と調査の成約率を高め、問合せ件数を大きく失わずに済む。AIは社内の作業効率を改善するが、新しいAIサービスの未確認売上を成長要因には加えない。HR事業は専門人材との関係を武器に仲介需要を守る。
法人向け弁護士費用保険が中小企業の法務リスク対策として普及し、保険契約相当件数は1万件規模へ拡大する。引受損益も改善し、保険事業は小幅な黒字へ転換する。買収を無理に拡大せず、2026年からの配当強化と機動的な自社株買いを継続できる。高い投下資本効率を保ちつつ、法律媒体以外の事業にも利益源が生まれる10年となる。
- リーガルメディア:数量 3,332(年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数))× 価格 0.01(有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目))→ 売上 49 億円・営業利益 20 億円。掲載枠数は2025年と同水準。平均収益は約1.29倍。利益率40%は2025年実績に近く、顧客維持と広告効率の改善が必要。
- リーガルアライアンス・派生メディア:数量 105,000(主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数))× 価格 0.00(問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目))→ 売上 33 億円・営業利益 8 億円。問合せ数は2025年実績とほぼ同水準。単価は約1.33倍。広告費を抑えられる成功ケース。
- HR事業・有料職業紹介:数量 5,794(有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件))× 価格 0.00(新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。登録者数は現在と同水準、登録者当たり紹介収益は約1.31倍。専門人材の成約率維持を想定。
- リーガルプロテクト・保険:数量 10,000(年換算の保険契約相当件数(件、推計))× 価格 0.00(保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。法人保険の成功により契約相当件数1万件、保険料相当単価4.4万円。保険事業が小幅黒字化。
倍率:資本コストk=7.75%、長期成長率g_long=0.5%。2036年の自己資本79億円から余剰現金15億円を外し、純利益から現金利息0.21億円を除いた事業ROEは約21.5%。moat=normalで超過利益の残存割合1/2を使い、RONIC=7.75%+0.5×(21.5%-7.75%)=約14.65%。正当化PER=(1-0.005/0.1465)/(0.0775-0.005)=約13.32倍。上限から手で割り引かない。余剰現金15億円には戻り方0.75を適用する。
確率:弁護士との顧客関係を維持しながら、検索AIへの対応、高単価広告の安定化、保険事業の黒字化を同時に達成する必要がある。法人保険市場には伸びしろがあるが、現時点で規模を証明する契約実績は乏しい。楽観として成立するものの、複数の成功条件が重なるため8%に限定する。
やや楽観 19% 弁護士広告は安定し、周辺事業が採算改善 利益 10 億円 · PER 13.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,060 円145 億円
法律事務所がベンナビに広告を掲載する理由は残る。弁護士を必要とする利用者は一定数おり、検索AIが普及しても実際に弁護士へ依頼する段階では専門分野、地域、対応方針の確認が必要だからだ。掲載枠数はやや減るが、顧客層が分散し、現実的な範囲で広告単価を引き上げることができる。
派生メディアではAIによる検索流入減少が発生するものの、広告効率の改善と利用者導線の変更によって一定の問合せ件数を確保する。HR事業は事務作業の自動化を進め、専門人材の相談対応に人員を集中することで利益を維持する。
保険事業は法人向け契約を徐々に増やすが、利益の大きな柱にはまだならない。新規事業への投資規模を抑え、費用負担を軽減する。経営は大型買収より既存顧客から得られる売上と利益を重視し、配当と自己株式取得を継続する。全社売上は名目で伸びるものの、10年前の高収益性を大幅に超えるわけではない。
- リーガルメディア:数量 3,200(年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数))× 価格 0.01(有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目))→ 売上 46 億円・営業利益 17 億円。掲載枠数0.96倍、単価1.26倍。通常商品を中心に継続率を高め、営業利益率37%。
- リーガルアライアンス・派生メディア:数量 95,000(主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数))× 価格 0.00(問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目))→ 売上 27 億円・営業利益 5 億円。問合せ数0.90倍、単価1.23倍。成果報酬単価を維持し、広告費を最適化。
- HR事業・有料職業紹介:数量 5,100(有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件))× 価格 0.00(新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。登録者数0.88倍。紹介成果単価は約1.21倍、利益率15%。
- リーガルプロテクト・保険:数量 6,000(年換算の保険契約相当件数(件、推計))× 価格 0.00(保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。法人向け契約の販売は進むが、販管費と保険金負担が残り小幅赤字。
倍率:k=7.75%、g_long=0.5%。余剰現金18億円の利息0.252億円を控除し、自己資本73億円から余剰現金を外すと事業ROEは約18.0%。普通の堀の残存割合1/2でRONICは約12.87%。正当化PER=(1-0.005/0.1287)/(0.0775-0.005)=約13.26倍。倍率に市場PERを用いず、余剰現金は別に戻り方0.75で評価する。
確率:弁護士広告の定額契約は比較的維持しやすく、専門法律分野での集客需要も消えない。高単価商品の反動を吸収し、派生メディアの広告効率を一定程度改善することは可能と判断する。ただし、保険の拡大と広告の回復が同時に進む必要があり、最頻の中立より低い19%とする。
中立 32% 検索AIで流入が減り、法律広告の収益性が平常化 利益 6 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,156 円81 億円
ベンナビは10年後も法律事務所に広告商品を提供している。しかし、法律情報の検索と相談先の比較はAIによる案内へ徐々に移り、外部検索からの流入が細る。大手法律事務所は広告効果をより厳しく測るようになり、高単価商品には継続的な価格下落圧力がかかる。掲載枠数は現在の約9割となり、名目の単価上昇も物価上昇を下回る。
派生メディアはより大きく影響を受ける。転職や探偵サービスへの問合せをAIエージェントが直接整理し、従来の比較サイトを介さず広告主に送る場合が増える。問合せ件数は減るが、残った利用者の成果報酬単価は一定程度維持される。人材紹介ではAIによる候補者探索の自動化が進み、登録者数は減少する。
法人向け保険は市場認知の改善によって契約が増える。しかし、法務SaaSの競争と販売費が利益を圧迫し、事業全体では赤字が続く。経営は採算の悪い商品を縮小し、過度の買収を避ける。本社費は物価上昇に伴って増えるため、全社営業利益率は2025年の水準から低下する。広告媒体としての価値は残るが、成長企業から成熟した専門媒体へ変化する10年となる。
- リーガルメディア:数量 2,950(年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数))× 価格 0.01(有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 13 億円。掲載枠数0.89倍、平均単価1.18倍。物価1.34倍を下回るのはAI検索による集客価値の低下と高単価商品縮小を反映。
- リーガルアライアンス・派生メディア:数量 78,000(主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数))× 価格 0.00(問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。問合せ数0.74倍、単価1.15倍。広告の流入減少と成果報酬単価への圧力を反映。
- HR事業・有料職業紹介:数量 4,300(有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件))× 価格 0.00(新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。登録者数0.74倍、実現紹介収益1.21倍。AIエージェント代替を数量に反映し、値上がりは物価以下。
- リーガルプロテクト・保険:数量 4,000(年換算の保険契約相当件数(件、推計))× 価格 0.00(保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 −1 億円。法人向け保険の契約相当件数は増えるが、保険金・販売費・法務サービス維持費の負担が残る。
倍率:k=7.75%、g_long=0.5%。純利益5.55億円から余剰現金15億円の税後受取利息相当0.21億円を除いた事業利益は5.34億円。自己資本60億円から余剰現金15億円を除いた事業資本45億円に対するROEは約11.87%。moat=normalの残存割合1/2によるRONICは約9.81%。正当化PER=(1-0.005/0.0981)/(0.0775-0.005)=13.09倍。利益の質はkとmoatに織り込んでおり、追加の任意割引は行わない。
確率:2026年の高単価商品減少を出発点に、法律事務所との契約基盤は残るがAI検索によって問合せの獲得経路が変化する筋書き。派生メディアは流入減少と広告競争の影響を強く受ける。HRはAIによる事務工程代替、保険は緩やかな販売拡大を想定し、最もありそうな32%を配分する。
やや悲観 25% 広告主の離脱が進み、利益率が一桁へ低下 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 363 円26 億円
検索AIの利用が一般化し、法律情報サイトへの訪問が減る。利用者はAIに自分の事情を説明し、弁護士の候補を直接提示してもらうようになる。ベンナビは一部の専門分野で集客力を残すが、大口の法律事務所が出稿を削り、掲載枠数は現在の4分の3まで減少する。単価は名目でわずかに上がるものの、実質では大幅な値下がりとなる。
派生メディアでも検索広告の獲得単価が悪化する。転職関連の問合せはAIエージェントと大手の人材プラットフォームに移り、件数は4割以上減る。HR事業は登録者数が減り、紹介料の返金や採用停滞で利益率が下がる。法人向け保険の販売は伸びず、引受体制と法務サービスの固定費が収益を圧迫する。
経営は人員や広告費を減らして費用を圧縮するが、顧客対応、システム運用、法令対応、本社管理費は急には消えない。過去の高い利益率は戻らない。積極的な株主還元も縮小するが、借入依存が低いため事業の存続自体は可能である。顧客基盤の一部は残るものの、高収益の成長企業という評価は失う。
- リーガルメディア:数量 2,500(年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数))× 価格 0.01(有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 9 億円。掲載枠数0.75倍、単価1.10倍。高単価商品の継続減少と主要顧客の出稿縮小。
- リーガルアライアンス・派生メディア:数量 60,000(主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数))× 価格 0.00(問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。問合せ件数0.57倍。単価上昇はほぼなく、広告費と競争の圧力が続く。
- HR事業・有料職業紹介:数量 3,200(有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件))× 価格 0.00(新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。登録者数0.55倍。AIによるマッチング自動化と大手人材会社の競争により規模が縮小。
- リーガルプロテクト・保険:数量 2,000(年換算の保険契約相当件数(件、推計))× 価格 0.00(保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 −1 億円。保険契約相当件数は増えず、法務サービス維持費を含む営業赤字が継続。
倍率:事業の競争力が弱まり、ROEは資本コスト7.75%を大きく下回る。資本コストを超えない利益の正当化倍率は1/k=12.90倍を上限とする。やや悲観では顧客の離脱と再投資効率の低下が残るため、収益が維持される期間を限定した稼ぐ力として10.5倍を採用する。純利益から余剰現金10億円の利息相当0.14億円を除き、残る現金は戻り方0.75で評価する。
確率:主要広告主の契約見直しとAI検索による訪問減少が重なる可能性が高い。2026年の高単価商品減少はその初期兆候とも解釈できる。保険事業の赤字改善も遅れる場合を考え、やや悲観に25%を配分する。
悲観 16% AIによる集客経路の転換と顧客喪失で構造的に敗れる 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 130 円9 億円
法律相談の需要そのものは残るが、相談先を探す方法が変わる。検索AIと専門家紹介エージェントが利用者の事情を整理し、法律事務所を直接提示する。法律事務所は従来の検索型広告を削減し、ベンナビの掲載枠はほぼ半減する。アシロが蓄積した記事や広告商品は、かつての集客価値を取り戻せない。
派生メディアは転職や探偵サービスの比較導線を失い、問合せ数が大幅に減る。広告掲載単価にも値下げ圧力がかかり、収益の大きな部分が消える。HR事業は大手プラットフォームとAIによる直接採用に押され、従来の仲介手数料を十分に確保できなくなる。保険事業は法人向けの契約拡大に失敗し、残存顧客の維持費だけが残る。
経営は人件費、広告費、本社費を削るが、システム保守や保険の法令対応などの固定費をすべてなくすことはできない。営業赤字が続き、のれん約11.4億円にも減損が生じる。過去に蓄積した現金の一部を損失補填に使い、株主還元を停止する。事業は小さく存続するものの、10年前の広告プラットフォームとしての優良さを失い、価値の中心は残った換金可能資産になる。
- リーガルメディア:数量 1,700(年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数))× 価格 0.01(有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。掲載枠数0.51倍、単価約0.99倍。名目単価さえ維持できず、規模の利益も失う。
- リーガルアライアンス・派生メディア:数量 46,000(主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数))× 価格 0.00(問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。問合せ数0.44倍、単価約0.99倍。広告費と維持費を回収できない。
- HR事業・有料職業紹介:数量 2,100(有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件))× 価格 0.00(新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。登録者数0.36倍、紹介収益単価は約1.04倍。固定費負担により赤字。
- リーガルプロテクト・保険:数量 1,000(年換算の保険契約相当件数(件、推計))× 価格 0.00(保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。法人保険への転換が失敗し、事業規模が縮小。損失は契約維持・清算対応の費用を反映。
倍率:事業の純利益がマイナスのため、永続的なPERによる評価は採用しない。現時点の自己資本31.3億円に対して、売却可能資産を中心とする約9億円の価値に相当するPBR約0.29倍を適用する。悲観の2036年自己資本12億円に0.29倍を掛けていない。のれん等の減損を含み、稼ぐ力と床の大きい方を超えない。
確率:検索AIによる外部サイト流入の大幅減、主要顧客の契約喪失、派生メディアの採算崩壊、保険事業の失敗が複合する事態を想定する。すべてが同時に発生するとは限らないが、同じ検索環境に依存する事業が多いためリスクは独立でなく、16%を配分する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リーガルメディア
ベンナビの事件分野別・地域別の有料広告枠。法律事務所から月額固定料金を受け取り、掲載枠数と単価が売上を決める。
| 数量年度末の有料広告掲載枠数(枠、実数) | 価格有料掲載1枠当たり年間認識売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 3,332 | 0.01 | 38 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2,950 | 0.01 | 40 | 13 |
取り方:2025年10月期有価証券報告書による掲載枠数3,332枠、リーガルメディア売上収益37.8456億円を使用。年間収益÷年度末掲載枠数で年間1枠当たり約113.6万円、月額換算約9.46万円となる。ただし年度末枠数は年間平均枠数ではなく、高単価商品も含むため、実際の標準契約単価ではない。2026年の高単価商品減少を考慮し、将来の単価はこの高収益期から大幅に伸ばさない。2025年の国内弁護士広告市場は会社資料の推計約1,600億~1,800億円で、売上シェアは約2.1~2.4%。AI分類は自社媒体・プラットフォーム広告枠型。ただし独立した利用者基盤の証拠は十分でなく、記録の正本型には分類しない。
リーガルアライアンス・派生メディア
キャリズム、浮気調査ナビ、人探しの窓口などの成果報酬広告。転職紹介会社や探偵事務所へ有効な問合せを届けて収益を得る。
| 数量主要派生メディアの年間問合せ件数(件、実数) | 価格問合せ1件当たり認識広告収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 105,447 | 0.00 | 25 | 5 |
| 10 年後 中立 | 78,000 | 0.00 | 21 | 3 |
取り方:有報の主要3サイト年間問合せ数105,447件と派生メディア売上24.5807億円から、1件当たり約2.33万円を算出。主要サイト以外の収入も含むため、契約ごとの厳密な成果報酬単価ではない。メディア全体のセグメント利益20.3459億円からリーガルメディア利益15.5885億円を差し引いて利益を推定した。2024年の国内アフィリエイト広告市場約4,116億円という会社資料の目安に対して約0.6%の規模だが、市場流通額と媒体認識売上の違いに注意する。AI分類は自社媒体の成果広告型であり、検索流入と広告主への送客をエージェントが代替する危険が高い。
HR事業・有料職業紹介
法律事務所や企業への弁護士、会計士、税理士、管理部門人材の紹介。求職者が入社した際に紹介手数料が発生する。
| 数量有料職業紹介サービスの年間新規求職者登録数(件) | 価格新規登録者1件当たり実現紹介収益(億円、成約率と紹介単価の積) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 5,794 | 0.00 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 4,300 | 0.00 | 3 | 0 |
取り方:2025年10月期有報の年間新規登録者5,794件と人材紹介売上3.353億円を使用。登録者当たり約5.79万円の実現売上であり、実際の採用1件当たり手数料ではない。成約人数と個別成約単価が未開示のため、登録から採用までの成約率を含めた単価として数量×価格を表す。人材派遣子会社ヒトタスは2025年4月に売却され、対象から除外した。AI分類は人の探索・照合・事務工程の自動化を受ける人的サービス型。中立の登録数量は10年で約0.74倍とし、単価上昇も物価未満に抑える。
リーガルプロテクト・保険
法人向け弁護士費用保険bonobo、従来の個人向け保険、Legal Base等の法務サービス。保険料収入を中心とし、新サービスの開発費を負担する。
| 数量年換算の保険契約相当件数(件、推計) | 価格保険契約相当1件当たり年間認識収益(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 2,000 | 0.00 | 1 | −2 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 0.00 | 2 | −1 |
取り方:2025年10月期の保険事業売上0.6944億円と営業損失1.5956億円は有報の実績。2024年10月期末の旧個人向け保険保有契約2,000件を比較基準とし、2025年の認識収益を2,000件で割った約3.47万円を契約相当単価とした。2025年に個人向けから法人向けへ商品を切り替えたため、2,000件は2025年末の実際の保有契約数ではなく推計用の換算数量である。法人向け保険の新規契約実数は未確認。AI分類では保険引受・保険金支払は規制付き事業で直接のエージェント代替対象外。ただしLegal Base等の操作型法務ソフトは席課金SaaS型の代替対象であり、独立売上が確認できない段階ではAI関連の上乗せ売上を計上しない。
リスクと懸念
AI エージェント代替
最大の構造リスクである。法律情報の検索、弁護士候補の比較、転職希望者のマッチング、法務ソフトの画面操作は、いずれもAIエージェントが代替しやすい。特にベンナビと派生メディアは検索流入への依存が強く、外部サイトを訪れる利用者が減れば広告効果も低下する。10年の中立では掲載枠、問合せ数、人材登録数の縮小をそれぞれ反映し、長期成長率にも制限を掛けた。
主要広告主への依存
2025年10月期の主要3顧客向け売上は約31億円で、全社売上の約47%を占めた。特に大口の法律事務所や広告代理店が契約を縮小した場合、掲載枠数や問合せ単価の小幅な改善では穴埋めできない。高単価商品の需要が変わるだけで全社利益率が大きく揺れるため、顧客数の増加だけで収益の安定性を判断してはならない。
検索アルゴリズムと広告獲得費
Googleの検索結果や広告配信の変更は、派生メディアの問合せ件数と獲得単価に直接影響する。自然検索からの訪問減少をリスティング広告で補う場合、売上が保たれても広告費が増えて利益率は下がる。検索AIの普及によって自然検索の重要性そのものが下がれば、従来のSEO運営技術だけでは競争力を維持できなくなる。
弁護士法と広告規制
弁護士法第72条は報酬を得る目的での法律事件の周旋を制限している。現在の月額固定広告モデルはこの規制を前提に設計されているが、規制の解釈や広告指針が変われば、商品の設計や販売方法を見直す必要がある。利用者情報の管理、不適切な広告表示、掲載弁護士の懲戒問題なども、媒体への信頼を傷つける可能性がある。
保険・法務サービスの投資回収
2022年に参入した保険事業は、2025年10月期にも営業損失約1.6億円を計上した。法人向け商品は潜在市場が大きいが、販売チャネル、契約継続、保険金支払率、管理費が想定どおりになる保証はない。Legal Base等の法務ソフトにもAI代替の可能性がある。新事業へ継続して資金を投入すれば、広告事業の現金創出力が株主に還元されない危険がある。
財務の見かけと余剰現金の減少
2026年7月末には純現金約14.9億円を保つが、2025年10月期末の約21.2億円からは減少した。還元による減少は株主にとって必ずしも悪くないものの、事業悪化時の緩衝材は薄くなる。総資産には約11.4億円ののれんが含まれ、収益力を失った場合の換金価値は限られる。保険関連負債やリース債務もあるため、純現金だけで安全性を過大評価しない。
今後の分かれ目
- ベンナビの掲載顧客数が増え、通常広告商品の売上が複数年にわたり安定成長したら
- 高単価商品への依存低下と顧客基盤の強化が確認できる。中立の掲載枠数と営業利益率を上方修正し、堀の評価も見直す。ただし値上げと顧客維持の両方を確かめる。
- 高単価商品の減少が続き、リーガルメディアの実質単価と掲載枠数が同時に低下したら
- 広告効果の構造的な低下と判断し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。直近の最高利益率に戻るという前提は採用しない。
- 派生メディアの問合せ件数が検索AI普及後も維持され、獲得費用が下がったら
- AIによる利用者流出を一部相殺できている証拠となる。派生メディアの数量と営業利益率を引き上げるが、AI関連の独立した売上が確認できない限り長期成長率を安易には高めない。
- 法人向け保険の契約件数、継続率、損害率が開示され、営業黒字が定着したら
- 保険事業の損失補填が不要になり、広告事業から生まれる現金をより多く株主へ戻せる。成功の持続性を確認してから、楽観側の数量と利益率を引き上げる。
- 配当性向40%以上を維持したまま自己株式取得を継続し、余剰現金が明確に還元されたら
- 余剰現金の株主帰属を高く評価できる。還元の実績が累積で十分な水準に達すればexcess_cash_returnを0.75から1.0へ変更し、資本配分の規律を再評価する。
- 売上の上位3顧客への依存度が大幅に下がり、代わりに中小法律事務所の契約数が増えたら
- 売上の集中による変動リスクが低下する。広告単価の上振れよりも、継続的な顧客基盤の分散を重視して、中立の確率と利益率の安定性を引き上げる。
見ておくもの
- リーガルメディアの四半期掲載枠数と掲載顧客数、特に高単価商品を除いた通常広告の売上成長率
- リーガルメディアの解約率、顧客当たり掲載枠数、広告費用対効果の開示
- 派生メディアの年間・四半期問合せ件数と1件当たり認識売上、広告獲得費
- GoogleのAI検索表示拡大と、ベンナビの自然検索・有料広告・直接流入の構成比
- フォーイット、アディーレ法律事務所、オープンなど主要顧客の売上集中度
- 法人向け弁護士費用保険bonoboの保有契約件数、継続率、保険金支払率、営業損益
- Legal Baseなど新サービスの独立売上、契約数、解約率、営業損益
- 2027年10月期の営業利益20億円前後と2030年10月期売上200億円の目標に対する進捗
- 配当性向40%以上の条件の維持、自己株式取得額、純現金残高、のれんの減損
- 弁護士広告規制、AIによる弁護士候補推薦、法務SaaSの自動化に関する制度変更
倍率と資本コストの決め方
事業価値は2025年10月期の実績数量を起点に、法律広告の掲載枠数、派生メディアの問合せ件数、HRの求職登録数、保険契約相当件数と、それぞれの認識単価から積み上げた。2026年の高単価商品の反動を重視し、AI検索による数量縮小と物価未満の単価上昇を中立に反映した。倍率は現在・過去・競合のPERやPBRを使わず、k7.75%、g_long0.5%、事業ROEと残存割合1/2から求める正当化PERを楽観から中立の上限そのものに適用した。やや悲観は稼ぐ力、悲観は現在の換金可能資産による床を採用した。悲観で2036年の自己資本に過去のPBRの底を掛けていない。IFRS適用会社であり使用権資産とリース負債は既に認識されている。現在の時価総額約107億円は評価の最後にだけ比較した。5つの筋書きの割引現在価値は約59.7億円、差は約-44%であり、結論と整合する。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の基本7.5%に、事業の循環と純現金によるquality+0.25%を加える。広告主集中、AI代替、買収の失敗などの個別リスクは資本コストに追加せず、数量、利益率、確率に反映する。