結論
スマサポは、賃貸住宅への入居時に生活インフラを取り次ぎ、入居後は管理会社と住人の連絡業務を支援する会社である。筆者の結論は「割高」だ。賃貸管理会社との接点は確かな資産だが、その接点から生まれる利益が10年後も現在と同じ形で残るとは限らない。
主力の「スマサポサンキューコール」は、2025年9月期に約28.5万件の入居者へ接触した。紹介する通信回線やライフラインの組み合わせを改善し、件数が減っても売上を維持してきた。一方、電話による案内と事務処理はAIエージェントによる代替が進みやすい。管理会社が同等の案内を自社のシステムで実行できれば、紹介手数料の取り分は細る。
成長の柱とされる入居者アプリ「totono」も二面性がある。管理会社の現場業務を理解し、問い合わせ履歴を蓄積してきた点には強みがある。しかし、顧客が自社の記録やAIを使って問い合わせを処理できる時代には、操作画面やチャット代行だけで高い料金を取り続けることは難しい。2026年に自社のAIエージェントを提供し始めたことは前進だが、独立した売上実績は確認できない。
さらに、2026年9月には日用雑貨のトレードワンを子会社化した。これにより売上規模は大きくなるが、買収資金の借入と傘下小売会社の赤字が新しい重荷になる。中立の2035年9月期は売上約51億円、営業利益約3億円、純利益約1.9億円を見込む。今より売上が大きくても、その増分には利益率の低い卸売が含まれ、株主に帰属する利益の伸びは限られる。
5つの筋書きに確率を付け、将来の時価総額と還元を資本コストで現在に引き戻すと、現時点の約20.4億円の時価総額に対して大きな不足が生じる。帳簿上の利益成長と株主価値の成長を混同せず、現段階では慎重に評価したい。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初に確かめるべきなのは、この会社が10年後も他社に代えられない形で利益を得ているかという点だ。スマサポには管理会社を通じた営業経路がある。しかし、電話による取次ぎやチャットの一次対応は、技術進歩によって提供者が変わりやすい仕事でもある。顧客接点は残っても、その接点から受け取る手数料が細る可能性を切り離して考えなければならない。
「totono」に蓄積された物件や入居者のデータは価値を生み得る。ただし、管理会社の基幹システムが記録の正本であり続け、スマサポのアプリがその上の操作窓口にとどまるなら、AIが窓口を飛ばす可能性は高い。顧客にとっての便利さと、提供会社にとっての長期的な価格決定力は同じものではない。実際の解約率と継続的な値上げ実績が示されるまでは、強い堀を前提にした評価を控える。
オーナー利益を考える際には、会計上の純利益から、ソフトの機能更新、AI研究、人員確保、卸売の運転資金と借入返済に必要な資金を意識する必要がある。買収した雑貨会社が利益を生んでも、在庫や仕入債務の管理を誤れば現金は株主の手に残らない。2026年の買収は成長の機会であると同時に、経営者の資本配分能力を初めて大きく試す出来事でもある。
中立では10年後の利益率と資本効率が資本コストを大きく上回らず、超過利益を永続的に見込めない。現在の時価総額は、主力事業の利益が残り、さらに異業種買収も成功するという期待を相応に含んでいる。将来の事業が必要とされることは認めるが、今支払う価格には十分な安全域が見つからない。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は「スマサポサンキューコール」である。提携する賃貸管理会社から入居予定者との接点を得て、電話で電気、ガス、通信回線、ウォーターサーバーなどを案内する。サービス提供会社から受け取る取次手数料が売上の源泉であり、その一部を管理会社と分け合う。従って、入居者への電話を何件かけたかだけでなく、1件からいくつの契約が成立し、どれだけの手数料を受け取れるかが収益を決める。
もう一つの柱は入居者アプリ「totono」である。従来型の「totono1.0」は、管理会社が月額料金を払って入居者との連絡機能を利用する業務ソフトである。新しい「totono2.0」は、同じ機能にチャット対応や工事会社への手配などの業務受託を組み合わせている。管理会社の契約数と月額料金、あるいは実際に課金する入居者数と入居者当たり月額料金が売上を決める。入居者がアプリを無料で使うため、最終的な支払者は主として管理会社である。
周辺には、内覧時の鍵管理を省力化するIoTキーボックス、住まいの保証や付帯サービスがある。鍵を物理的に受け渡す業務や保証の引受けは、単なる画面操作とは異なる。ただし、受付、説明、契約確認などの事務部分にはAI代替が及ぶ。
2026年9月に買収したトレードワンは、生活雑貨やアイデア商品を企画し、製造委託、調達、卸売を行う。傘下のワカマツは小売とネット販売を担う。スマサポは入居者アプリを商品の直接販売経路に育てようとしているが、実際の購買率、購入単価、広告費を差し引いた利益はまだ確認できない。デジタルサービスと日用品卸売を安易に一体の高収益事業として評価しないことが大切だ。
会社の会計上の報告区分は買収前には実質的に単一セグメントである。以下では採算の異なるサービスを独立した分析単位として分けている。会社がサービス別の営業利益をすべて公表しているわけではないため、その配賦額は推計と明示している。
優良さと弱いところ
最も評価できる強みは、不動産管理会社の現場を知る経営陣と、管理会社を経由して入居者に接触できる販売経路である。サンキューコールは2025年9月期に接触件数を減らしたが、1件当たり売上は前年の6,552円から7,147円へ上昇した。取引条件の見直しと提案商材の拡充が実際に単価を押し上げた点は、営業上の成果といえる。
ただし、これは独占的な値上げ力とは違う。取次手数料は通信会社や販売提携先の条件に左右される。管理会社が別の取次会社へ切り替えたり、自社でAIによる案内を行ったりする選択肢もある。現に2026年9月期第3四半期累計の接触件数は前年同期を下回り、単価も7,045円にとどまった。値上げだけで数量の衰退を長期間補えるとは考えにくい。
「totono」には、物件属性や問い合わせ内容を蓄積してきた利点がある。会社は問い合わせを数百種類に分類し、入居者対応特化型のAIエージェントも提供し始めた。しかし、年5%未満の解約率、移行に年単位を要する契約、法令上の記録の正本として不可欠な地位、継続的な値上げの実績といった強固な堀の証拠は確認できない。導入時のシステム連携に時間がかかることだけで、他社への乗り換えが困難だとは断定できない。
2025年9月期のROEは約23%と高いが、自己資本が5.7億円と小さいことにも注意したい。2021年と2023年には営業赤字を計上しており、直近数年の高ROEだけを10年先へ延長する根拠は薄い。2026年の異業種買収で負債が増えたため、従来の純現金経営という長所もそのまま維持されるわけではない。堀は弱く、まだ広がっていると断言できない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の借家は2023年時点で約1,946万戸あり、そのうち民営借家は約1,568万戸である。人口減少によって借家の総数が大幅に増える市場ではないが、管理会社の人手不足と業務のデジタル化には需要がある。管理会社向け業務支援の成長は、住宅戸数そのものよりも、紙や電話から外部システムへ切り替わる割合に左右される。
入居者課金サービスの市場規模を、民営借家1,568万戸に月額125円を掛けて機械的に求めると、年間約235億円になる。公営なども含む借家全体なら約292億円である。ただし全戸が同じサービスに加入するという上限に近い概算であり、会社の獲得可能な売上を示すものではない。2026年6月末の「totono2.0」利用者11.1万人は、民営借家総数の約0.7%に相当する。成長余地は残る一方、この比率を単一アプリの市場シェアと呼ぶには、実際に課金対象となる戸数の定義をそろえる必要がある。
管理会社向けでは「いい生活Home」や「GMO賃貸DX」が競合する。いい生活は約23万の有効入居者IDを開示し、GMO側には約220万戸の管理物件規模に関する開示がある。ただし後者はアプリの有料利用者数ではないため、直接のシェア比較には使えない。大東建託グループなど大規模管理会社の自社アプリや社内業務基盤も、実質的な競合になる。スマサポの管理会社向けの優位性は確認できるが、独占に近い地位はない。
サンキューコールの対象となる転居市場は、借家1,946万戸のうち年間10〜20%が入れ替わるという仮定なら、おおむね195万〜389万件になる。この仮定で同社の年28.5万件の接触数を割ると約7〜15%だが、接触数と実際の転居契約数は異なるため、正式なシェアではない。競合するラストワンマイルなどの取次事業者に加え、通信・電力事業者の直販、賃貸ポータル、AIによる手続き代行が顧客接点を奪い合う。
日用雑貨はこれとは全く別の競争市場である。国内約5,500万世帯が対象商品群に年2万円を支出するという仮定なら、小売段階の市場は約1.1兆円となるが、商品範囲を広く取った推計であり、卸売売上と直接比較できない。トレードワンの個別商品別販売数量や正確な市場シェアは未開示で、100円ショップ、量販店、ネット通販の仕入業者との価格競争がある。10年後は住宅需要の大幅拡大ではなく、販売経路を確保しながら1件当たりの採算を守れるかが問われる。
資本政策と M&A
資本配分で最大の転換点は、2026年9月7日に完了したトレードワンの子会社化である。株式取得対価は7.42億円、付随費用を含む概算総額は7.86億円で、みずほ銀行から7.42億円を借り入れた。返済期限は2033年8月末の予定で、金利は変動型である。買収対価は2025年9月期のスマサポの自己資本を上回るため、単なる小規模な事業提携ではない。
買収先の2026年2月期の営業利益は1.26億円だったが、前期は0.29億円にとどまり、純損失も計上した。傘下のワカマツは2026年2月期に営業損失0.68億円を出している。トレードワンの純資産4.04億円と株式取得対価との差は約3.38億円に達する。実際の取得原価配分によってのれんの額は変わるが、将来の償却・減損と小売赤字の改善は必ず追跡すべきである。
会社の2026年9月期計画には、売上31.5億円、営業利益2.3億円、純利益1.55億円という数字がある。成長計画では「totono2.0」の期末利用者約20.2万人と月額単価113円を目標にしていたが、2026年6月末の実績は約11.1万人だった。ROEの複数年目標や配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額については数字の約束を確認できない。
2025年までの現金配当と自社株買いは乏しく、2025年9月期からQUOカードの株主優待が始まった。300株以上の株主には年間4,000円相当、600株以上には年間16,000円相当が贈られる。対象株主数と実際の原価が未開示のため、通常の筋書きでは10年間の優待費用相当を約0.45億円と推計した。上位10株主の保有割合は約72%であり、利益を積み上げても少数株主へ速やかに戻るとは限らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スマサポの本当の価値は、賃貸管理会社を経由して入居者と継続的につながれることにある。入居者が引っ越し、暮らし、設備を修理し、退去するまでの情報を把握できれば、単発の通信回線取次ぎに頼る必要はなくなる。サンキューコールで培った管理会社との関係を生かし、「totono」を住まいの総合窓口へ育てる道は残っている。
実際にサンキューコールでは、接触件数が減っても提案商材の改善で単価を引き上げてきた。「totono2.0」も2026年6月末まで利用者が増え、入居者当たり単価は会社の当初目標を超えている。AIエージェントの投入は競争上の脅威であると同時に、自社のチャット処理原価を引き下げる手段にもなる。蓄積された問い合わせ分類と管理会社ごとの業務手順を生かせれば、外部の汎用AIとの差別化が可能だ。
トレードワン買収には明確な商流上の狙いがある。転居直後の入居者へ生活雑貨や防災用品を紹介できれば、卸売の既存販路に新たな直販経路を加えられる。小売子会社の赤字が解消し、仕入れと物流が効率化すれば、買収前の利益水準を超える貢献も可能だ。売上規模が拡大し、借入を返済できるだけの現金を生み出せば、2035年には現在よりはるかに収益基盤の広い企業になる。
ただし、良い筋書きでもAI自体の新規売上を無条件には加えない。成長の源泉は既にある顧客経路、実際の取次単価、買収先の物理的な商品販売に求める。これらの改善が同時に起きた時に初めて、現在の企業価値を十分に上回る将来価値が生まれる。
慎重な見方
事業の弱さは、現在の収益の大部分が、他社のサービスを紹介したり、人に代わって連絡したりする仕事から生まれている点にある。賃貸管理会社がAIエージェントを自社の基幹システムにつなげれば、入居予定者への連絡、ライフラインの手配、設備不具合への回答は自動化できる。スマサポが業務改善に成功しても、その改善の利益を管理会社や外部のAI提供者が受け取る可能性がある。
「totono」のデータは有用だが、独占的な記録の正本であることまでは証明されていない。入居者が自分の使う汎用AIから問い合わせを行うようになれば、個別アプリの操作画面は存在感を失う。2026年の会社説明でも、新規導入には基幹システムとの接続時間がかかり、利用者数の拡大が計画に届いていない。営業先はあっても、導入、利用定着、課金の各段階で取りこぼしが生じる。
経営面では、2026年の買収が最大の懸念だ。トレードワンは前期に多額の純損失を出しており、傘下のワカマツの赤字も続いている。買収資金の借入には2033年の返済期限があり、生活雑貨は価格競争と在庫負担が重い。買収による売上増加だけを成功の証拠とすることはできない。のれんの減損と追加の運転資金需要が重なれば、買収前に蓄えた現金も失われる。
2025年9月期の高いROEは小さな自己資本から生じた面があり、2021年と2023年の赤字を忘れてはならない。現金配当の実績がなく、大株主の保有比率も高い。利益が出ても少数株主へ戻る保証は弱いため、帳簿上の資産や利益に額面どおりの価値を付けることは危険だ。
どちらに重みを置いたか
事業機会は存在するが、長期の価値判断では慎重な見方が優勢である。AIエージェント代替の影響は、中立の接触件数、利用社数、利用者数、単価と10年後以降の成長率に反映した。確率を下に寄せる理由は、それとは別の会社固有の事情にある。2026年9月期第3四半期の減収減益、新型サービスの導入遅延、借入を伴う異業種買収、ワカマツの赤字である。楽観とやや楽観の合計を25%、やや悲観と悲観の合計を42%とした。規模の拡大よりも、資本コストを超える利益が実際に株主へ帰属するかを重視した結論である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 1,016 円24 億円(+ 還元の換算額還元の合計 28 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 479 円12 億円、今との差 −40.9%、 期待の年率 +2.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,592 円62 億円 | 104 円3 億円 | +232.8% | +13.1% | 216 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,865 円45 億円 | 50 円1 億円 | +136.4% | +9.1% | 326 円8 億円 |
| 中立 | 33% | 1,114 円27 億円 | 19 円0 億円 | +39.9% | +3.4% | 374 円9 億円 |
| やや悲観 | 27% | 329 円8 億円 | 12 円0 億円 | −57.9% | −8.4% | 92 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 237 円6 億円 | 8 円0 億円 | −69.7% | −11.4% | 37 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,016 円24 億円 | 28 円1 億円 | +28.9% | +2.6% | 1,044 円25 億円 |
今の株価時価総額 810 円19 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 顧客接点を守り、雑貨販売の相乗効果も実現 利益 5 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,592 円62 億円
サンキューコールは管理会社との取引を大きく失わず、2035年も年間27万件の入居者接点を維持する。通信・電力・生活サービスの提案を改善し、1件当たり売上は物価に近い上昇を続ける。人による電話案内の割合は下がるものの、手続きの確実な完了や商品提案の取りまとめに対して、紹介元と販売先の双方が対価を払う。
「totono1.0」は契約社数を少し減らしながら、残った大口顧客で収益を維持する。「totono2.0」は自社AIでチャット原価を下げるが、その効果は主に利益率に表れる。AIの新しい独立売上は未確認であるため、利用者が際限なく増える筋書きにはしない。管理会社の業務とアプリの連携が進み、残存する課金利用者から安定した料金を受け取る。
買収先では商品開発と物流の効率化が進み、ネット販売の不採算拠点も整理できる。入居者向けの直接販売は既存の卸売を補完する収益源になり、販売個数と商品構成の改善が営業利益を押し上げる。借入返済が進み、小規模ながら現金配当も始まる。これらの条件がそろえば、2035年の全社営業利益は7億円を超える。
- スマサポサンキューコール:数量 270,000(入居者への年間コンタクト数(件))× 価格 9,300(1コンタクト当たりの売上(円))→ 売上 25 億円・営業利益 3 億円。接触件数は2025年の約95%、単価は約1.30倍。商品提案改善で利益率11%。
- 入居者アプリtotono1.0:数量 79.0(月額契約する管理会社数(社))× 価格 535,000(1管理会社当たり月額売上(円/社/月))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。大口管理会社との契約を維持し、追加機能で月額を確保する。
- 入居者アプリtotono2.0・チャット代行:数量 111,000(月額課金の対象入居者数(人))× 価格 140(課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。利用者数は2026年6月の実績をほぼ維持。AIによる原価低減を利益率に反映。
- 内覧用IoT・保証・その他住まいサービス:数量 12,500(年間契約・販売件数相当(件、推計))× 価格 36,000(1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。鍵管理・保証関連の取扱いが増え、営業利益率10%。
- トレードワン・日用雑貨企画卸売:数量 8,400,000(日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計))× 価格 440(1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。卸売数量の増加、商品構成の改善、小売赤字の解消が進む。
倍率:2035年ROEは約13.7%で資本コスト8.25%を上回るが、堀は弱く、残る超過利益の割合は3分の1とする。AIエージェント代替を踏まえた10年より先の名目成長率g_longは0%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷8.25%=12.12倍。現行の市場PERは参照していない。
確率:賃貸管理会社との関係維持、紹介単価の改善、トレードワンの利益率向上、ワカマツの赤字解消が重なる必要がある。自社AIの売上実績を根拠にした上振れは認めていないため、成功確率は8%にとどめる。
やや楽観 17% 既存顧客を維持し、買収先の採算が改善 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,865 円45 億円
サンキューコールの接触件数は徐々に減るが、紹介する商材の選別と管理会社との契約見直しが単価を支える。2035年には24.5万件の接触を維持し、電話を使う顧客を中心に取次事業が存続する。管理会社の内製化とAIによる手続き代行は進むものの、複数サービスの契約完了をまとめて支援する需要は残る。
「totono1.0」の契約社数は減少するが、利用継続する管理会社から一定の月額収入を確保する。「totono2.0」はチャット業務の一部自動化によって採算を改善する。利用者数の拡大を自社AIの新規収益とは数えず、2026年6月に確認された利用者基盤をおおむね守る。入居者との接点を守ることが、他の生活サービスへの販売にもつながる。
トレードワンは既存の卸売先を維持しながら、アプリ経由の直販を小規模に育てる。雑貨の値引き競争は続くものの、物流費と在庫の管理が改善するため利益率は上向く。小売子会社の損失が縮み、買収のための借入も返済可能な範囲に収まる。株主への現金還元は限定的だが、事業が成熟してから増配する余地が生まれる。
- スマサポサンキューコール:数量 245,000(入居者への年間コンタクト数(件))× 価格 9,000(1コンタクト当たりの売上(円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。数量は2025年の0.86倍、単価は1.26倍。利益率10%。
- 入居者アプリtotono1.0:数量 74.0(月額契約する管理会社数(社))× 価格 525,000(1管理会社当たり月額売上(円/社/月))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。契約社数減を月額単価と低い追加開発費で一部補う。
- 入居者アプリtotono2.0・チャット代行:数量 105,000(月額課金の対象入居者数(人))× 価格 135(課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。2026年6月の利用者数をほぼ維持し、AIでチャット対応費を下げる。
- 内覧用IoT・保証・その他住まいサービス:数量 11,000(年間契約・販売件数相当(件、推計))× 価格 34,000(1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。管理会社への販売経路を使い、物理的なサービスを拡販する。
- トレードワン・日用雑貨企画卸売:数量 7,500,000(日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計))× 価格 415(1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。卸売数量は2026年推計の約1.10倍。雑貨の粗利と商品構成が改善。
倍率:ROEは約11.4%、kは8.25%。弱い堀として超過ROEが長期に残る割合を3分の1とし、AIエージェント代替を受けたg_longは0%とする。利益からの正当化PER上限は12.12倍で、追加の任意割引は行わない。
確率:管理会社向け事業の競争力を保ち、卸売の営業利益率を改善することは可能だが、両方の成功を確実視できるほどの受注・利益の証拠はない。
中立 33% 取次・SaaSは細り、買収卸売が売上を補う 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,114 円27 億円
入居者の転居時に必要な手続きは残るが、人が電話で案内する件数は減少する。サンキューコールは2035年に年間19.5万件となり、単価の改善で減少の一部を埋める。管理会社の内製化、賃貸ポータルとの直接連携、外部AIによる手続き代行が進むため、かつての接触件数には戻らない。それでも複雑な契約や複数商材の紹介には需要が残り、事業が消滅するわけではない。
「totono1.0」は従来型の月額契約が減り、2035年の契約社数は66社となる。「totono2.0」は2026年6月末の約11.1万人から9万5,000人へ減少する一方、チャットの自動化で採算を保つ。操作画面だけの価値は弱まるが、管理会社と入居者の連絡履歴をまとめる機能は存続する。自社AIが他社のAI基盤を押しのけるという前提は採用しない。
日用雑貨卸売は、2026年の買収時点で存在していた販売経路を維持する。2035年の卸売数量は推計640万個、平均売上は390円となる。価格上昇で名目売上は増えるが、仕入原価、物流費、返品、在庫の負担も続く。傘下小売会社の赤字やのれん償却を加味すると、買収による売上増加ほど純利益は伸びない。
この結果、全社売上は約50.7億円となるが、営業利益は約3億円、純利益は約1.9億円にとどまる。高いROEを永続的に維持する企業というより、取次、業務ソフト、低利益率の卸売を束ねる中小サービス企業に近い姿になる。
- スマサポサンキューコール:数量 195,000(入居者への年間コンタクト数(件))× 価格 8,750(1コンタクト当たりの売上(円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を踏まえ数量は2025年の0.683倍。単価は1.224倍。
- 入居者アプリtotono1.0:数量 66.0(月額契約する管理会社数(社))× 価格 515,000(1管理会社当たり月額売上(円/社/月))→ 売上 4 億円・営業利益 1 億円。旧型SaaSの契約数0.795倍、月額単価1.099倍。
- 入居者アプリtotono2.0・チャット代行:数量 95,000(月額課金の対象入居者数(人))× 価格 132(課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。最新の2026年6月利用者数の0.854倍。月額単価は同時点の1.056倍。
- 内覧用IoT・保証・その他住まいサービス:数量 9,600(年間契約・販売件数相当(件、推計))× 価格 32,000(1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。鍵管理・保証など、物理的なサービスの取扱件数を小幅に伸ばす。
- トレードワン・日用雑貨企画卸売:数量 6,400,000(日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計))× 価格 390(1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。2026年推計数量の約0.94倍、単価1.30倍。既存卸売の利益率は5.5%。
倍率:2035年のROEは約9.0%、資本コストは8.25%であり、超過利益は小さい。弱い堀の継続係数を3分の1とし、RONICは約8.5%。AIエージェント代替によりg_long=0%としたため、正当化PER=(1−0÷RONIC)÷(0.0825−0)=12.12倍となる。ROEが資本コストに近いため、成長に高い価値を付けない。
確率:人口と住宅ストックが大きく伸びない中で、電話取次はAIに代替され、既存SaaS契約も一部減少する。雑貨卸は物価上昇と既存販路で売上を維持するが、傘下小売の赤字と買収借入の負担を残す、最も説明可能な中心の筋書き。
やや悲観 27% AI代替が進み、卸売の固定費が重くなる 利益 1 億円 · PER 8.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 329 円8 億円
管理会社の自社AIと賃貸ポータルの自動連携が広がり、サンキューコールの接触件数は年間15.5万件まで減る。提案商材を増やしても1件当たりの単価が伸びず、管理会社との手数料分配条件も厳しくなる。電話案内を必要とする顧客が残るため事業は続くが、成長事業としての地位を失う。
「totono1.0」の契約社数は53社となり、新型へ移った顧客の一部は外部の業務システムに吸収される。「totono2.0」は顧客のAI基盤と直接接続する競合に押され、課金利用者が7万7,000人に減る。自動応答によって処理原価は下がるものの、その改善分の多くは管理会社への料金引下げに回る。ソフトの開発費と顧客ごとの運用費を十分に回収できない。
日用雑貨卸売は販売個数が縮み、値上げも仕入原価を補う程度にとどまる。小売会社の赤字解消が遅れ、在庫処分と倉庫費用が収益を圧迫する。借入の返済や借換えには利益と運転資金の双方を割かなければならない。2035年の全社営業利益は1億円強、純利益は0.65億円に低下し、株主還元も優待中心の小規模なものになる。
- スマサポサンキューコール:数量 155,000(入居者への年間コンタクト数(件))× 価格 7,700(1コンタクト当たりの売上(円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。取次件数は2025年の約54%まで減少し、単価上昇も限定的。
- 入居者アプリtotono1.0:数量 53.0(月額契約する管理会社数(社))× 価格 490,000(1管理会社当たり月額売上(円/社/月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。顧客の内製化と他システムへの移行で契約減少。
- 入居者アプリtotono2.0・チャット代行:数量 77,000(月額課金の対象入居者数(人))× 価格 115(課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。外部AIとの競争で利用者と月額単価がともに低下。
- 内覧用IoT・保証・その他住まいサービス:数量 7,900(年間契約・販売件数相当(件、推計))× 価格 29,500(1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。機器販売と保証商品の採算が悪化する。
- トレードワン・日用雑貨企画卸売:数量 5,200,000(日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計))× 価格 355(1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。卸売数量が減り、小売赤字と連結調整を吸収しきれない。
倍率:ROE約4.3%はk8.25%未満で、成長による価値創出を見込めない。稼ぐ力の上限1÷k=12.12倍を出発点とし、収益の再縮小と買収資産への再投資負担を踏まえ、上限より低い8.9倍とする。現金を別建てで足していないため利益との二重計上はない。
確率:下に寄せる理由:2026年9月期第3四半期の減収減益、totono2.0の導入遅延、借入を伴う異業種買収、ワカマツの継続赤字という会社固有の事実がある。AIによる数量縮小は中立に既に入れ、ここでは買収の採算悪化と顧客獲得の失速を追加する。
悲観 15% 取次の地位を失い、買収資産の減損が起きる 利益 −2 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 237 円6 億円
AIエージェントが賃貸管理会社の基幹システムに組み込まれ、入居者への連絡や通信契約の取次ぎが大きく自動化される。サンキューコールの接触数は年間10万件まで減り、取次手数料も下落する。固定的な営業要員とコールセンターの維持費を十分に賄えず、主力事業は赤字になる。
「totono1.0」は更新契約の減少に歯止めがかからない。「totono2.0」も外部AIによって画面操作とチャット代行が代替され、課金利用者は4万8,000人となる。データを蓄積していても、他社の基幹システムが正本である限り高い切替障壁にはならない。ソフトの維持・開発費が残り、事業の資本効率は悪化する。
トレードワンでは卸売数量が減り、値引きと在庫処分が続く。ワカマツの小売赤字も改善せず、買収のれんに減損が発生する。2033年の借入返済期限を前に事業整理や資産売却が必要となり、増配や自社株買いの余地はない。2035年は営業赤字と純損失を計上し、成長企業としての評価を失う。
それでも清算が直ちに行われるとは限らない。価値の下限には、買収前から存在した自己資本を基準とする回収可能資産の概算を使い、利益に倍率を掛けて高く評価することは避ける。買収後に生じるのれんの帳簿価額を別途上乗せしない。
- スマサポサンキューコール:数量 100,000(入居者への年間コンタクト数(件))× 価格 6,100(1コンタクト当たりの売上(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。管理会社の内製化と手数料低下で主力取次が赤字化。
- 入居者アプリtotono1.0:数量 35.0(月額契約する管理会社数(社))× 価格 390,000(1管理会社当たり月額売上(円/社/月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。契約数と月額料金の低下に固定開発費が追いつかない。
- 入居者アプリtotono2.0・チャット代行:数量 48,000(月額課金の対象入居者数(人))× 価格 75(課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。チャット代行の市場価値が低下し、料金収入で運営費を回収できない。
- 内覧用IoT・保証・その他住まいサービス:数量 6,000(年間契約・販売件数相当(件、推計))× 価格 20,000(1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。保証・IoT機器の販売も縮小し、固定費負担が残る。
- トレードワン・日用雑貨企画卸売:数量 4,400,000(日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計))× 価格 260(1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。在庫処分と価格競争で卸売も赤字。
倍率:継続損失のためPERを用いない。2025年9月期の自己資本5.7億円を資産回収額の基準とし、PBR1.0倍で5.7億円とする。これは2035年に利益の蓄積が生む成長資本を評価する倍率ではない。買収後ののれんや含み益を追加しない。
確率:取次・SaaSの同時失速に加え、雑貨卸売の販売減少、借入返済負担、買収のれんの減損が重なる筋書きである。継続企業の前提に関する注記は確認されておらず、直ちに倒産を前提とする確率までは高めない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スマサポサンキューコール
賃貸住宅への入居者に通信回線やライフラインなどを紹介し、サービス提供会社から取次手数料を受け取る。管理会社との手数料分配とコールセンターの対応費が採算を左右する。
| 数量入居者への年間コンタクト数(件) | 価格1コンタクト当たりの売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 285,404 | 7,147 | 20 | 1 |
| 10 年後 中立 | 195,000 | 8,750 | 17 | 1 |
取り方:会社の2025年9月期説明による実績は285,404件×7,147円で約20.40億円。2026年9月期第3四半期累計は220,354件×7,045円で約15.52億円。営業利益1.20億円は会社がサービス別利益を公表していないため推計である。AIエージェント代替の型は『人月・工数で売るBPO・事務処理に準じる取次業務』と判定した。中立の数量195,000件は2025年の0.683倍で指定範囲の0.55〜0.75倍、単価8,750円は1.224倍で物価による10年1.34倍以内とした。取次件数が減る一方、紹介商材の改善による単価上昇は一部残る。
入居者アプリtotono1.0
賃貸管理会社へ入居者連絡・申請・案内用ソフトを月額提供する。新規導入の主力は2.0に移行している。
| 数量月額契約する管理会社数(社) | 価格1管理会社当たり月額売上(円/社/月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 83.0 | 468,747 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 515,000 | 4 | 1 |
取り方:会社開示の2025年9月末83社、MRR3,890.6万円を使用。MRR÷83社から平均月額約46.87万円とした。4.67億円は期末MRRの12倍で、期中に認識した実売上そのものではない。営業利益0.60億円は分析用推計。2026年6月末は77社、MRR3,731.5万円。AIエージェント代替の型は『席課金・操作画面が価値の中心の業務SaaS』であり、記録の正本を守る証拠は不足する。中立66社は83社の0.795倍、月額51.5万円は46.87万円の1.099倍で、指定した数量0.70〜0.90倍、価格1.00〜1.15倍の範囲内である。
入居者アプリtotono2.0・チャット代行
入居者アプリにチャット対応、問い合わせ整理、業者への手配などの業務受託を組み合わせ、管理会社の課金対象となる入居者数に応じて料金を受け取る。
| 数量月額課金の対象入居者数(人) | 価格課金対象入居者1人当たり月額売上(円/人/月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 64,687 | 103 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 95,000 | 132 | 2 | 0 |
取り方:会社開示の2025年9月末64,687人×月額103円×12カ月から期末時点の年換算約0.80億円を求めた。提供初期の期中売上とは一致しない。2026年6月末には111,289人、月額125円に増加したため、10年の数量・価格の伸縮率は、実際に観測されたこの新しい基準も使って判定する。型は『BPOと席・利用者課金SaaSの複合』であり、AIエージェント代替が強い。中立95,000人は2026年6月末の0.854倍、月額132円は同時点の1.056倍である。自社AIの独立した売上・受注額が未開示なので、楽観でもAIによる新たな数量増を先取りしない。営業利益は推計である。
内覧用IoT・保証・その他住まいサービス
内覧用キーボックス、住まい関連の保証や紹介など、主力3サービス以外の業務をまとめた分析上の区分。
| 数量年間契約・販売件数相当(件、推計) | 価格1件当たり平均売上(円、サービス構成を含む推計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 8,000 | 29,150 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 9,600 | 32,000 | 3 | 0 |
取り方:全社売上28.2億円から、サンキューコール20.398億円、totono1.0の期末年換算4.669億円、totono2.0の期末年換算0.800億円を差し引いた約2.33億円を暫定上限として採用した。実際のその他事業売上と一致するとは限らない。物理的な鍵管理機器・保証・サービス手配の混合で個別件数は未開示のため、8,000件相当×29,150円という便宜的な数量・単価へ換算した。現場機器と保証の引受けはAI代替の直接対象ではないが、受付・契約事務にはBPO型の圧力がある。中立の数量1.20倍は物理的サービス部分の販路拡大に限った仮定である。
トレードワン・日用雑貨企画卸売
2026年9月に子会社化した日用雑貨の企画・調達・卸売事業。傘下小売会社ワカマツの収益・在庫リスクも負う。
| 数量日用雑貨の年間販売個数相当(個、推計) | 価格1個当たり平均卸売売上(円、商品構成込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 0.0 | 300 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 6,400,000 | 390 | 25 | 1 |
取り方:2025年9月期にはスマサポ傘下でなかったため、全社実績との二重計上を避けて数量と売上をゼロとする。別会社だったトレードワンの2026年2月期売上20.49億円を、仮定した卸売平均300円で割ると年間約683万個になる。平均卸売単価も販売個数も非開示であり、この個数は売上を分解するための明示的な推計である。中立2035年の640万個はこの推計の約0.94倍、390円は1.30倍で、数量増には依存しない。物理的な雑貨販売そのものはAIエージェント代替の対象ではなく、広告制作や事務処理だけが部分的な対象となる。営業利益は子会社取得前なのでゼロとした。
リスクと懸念
AIエージェント代替
電話による生活インフラの案内、賃貸管理会社の問い合わせ受付、チャット返信、業務ソフトの画面操作は、いずれもAIエージェントに代替されやすい。会社が2026年に提供を始めた「totonoAI」は対抗策だが、独立した売上・受注額は確認できない。独自データの存在だけで、顧客が使い続ける記録の正本としての地位まで認めることはできない。
取次件数減少と紹介手数料の変動
2025年9月期は単価上昇で売上を支えたが、2026年9月期第3四半期でも接触件数が減少した。管理会社や電力・通信事業者による取次方法の変更、契約条件の改定、不採算取引の整理によって、紹介件数と1件当たりの収益が同時に減る可能性がある。高い単価が継続的な値上げ力を証明したわけではない。
トレードワン買収とのれん減損
2026年の取得対価は7.42億円で、取得時の純資産との差が大きい。トレードワンは過去に大きな純損失を出し、傘下のワカマツも赤字を計上している。商品企画や物流の強化が進まなければ、在庫処分損、追加運転資金、のれんの償却・減損によって、連結利益が買収前の想定を下回り得る。
変動金利借入と2033年の返済
買収資金に充てた7.42億円の借入は、2025年9月期の自己資本を上回る。金利条件が変動型であるため、借換え時の金利上昇は利益と現金を圧迫する。2033年の返済に向けて利益を内部留保しても、運転資金と在庫に現金を使えば株主への還元は増えない。
アプリ導入遅延とデータの非独占性
「totono2.0」の2026年6月末利用者は約11.1万人で、会社が掲げた2026年9月末約20.2万人の目標に対して進捗に遅れがある。基幹システムとの接続作業が導入を遅らせていると会社は説明した。長期的な解約率や、管理会社が他の業務基盤へ移れない証拠は不足しており、潜在市場の大きさをそのまま利益に変換できるとは限らない。
株主還元と支配株主構造
上位10株主の保有割合は約72%であり、少数株主が余剰資金の使途に影響を与える力は小さい。現金配当や自己株買いの長期実績は乏しい。2025年に始まったQUOカード優待には価値があるが、配当性向やDOEの数値目標がなく、利益が増えた時に株主へどれだけ戻るかは予測しにくい。
賃貸住宅市場の成熟と卸売競争
国内の賃貸住宅戸数は人口減少の下で大幅な増加を見込みにくい。管理業務のデジタル化が進んでも、競合する業務システムや大手管理会社の内製化が市場を分け合う。日用雑貨卸売でも量販店、100円ショップ、ネット通販の価格交渉力が強く、物価上昇をそのまま利益率改善につなげられるとは限らない。
今後の分かれ目
- サンキューコールの年間コンタクト数が30万件を超え、単価も継続的に上昇したら
- 管理会社経由の販売網がAI代替の中でも残っている証拠になる。数量の長期縮小率を緩め、楽観側の確率を引き上げる。
- totono2.0の課金利用者が20万人を超え、その後も解約率を低く保ったら
- 新型サービスの市場浸透力を再評価する。ただしAIエージェント関連の独立売上や課金継続が確認できるまでは、永続成長率を自動的に引き上げない。
- totonoAIの契約売上、利用企業数、AI処理率、チャット1件当たり原価が継続開示されたら
- 自社AIが単なる費用節約ではなく、顧客から対価を得る商品になったか判断する。金額を伴う実績が確認できれば、BPaaSの数量と利益率を再評価する。
- トレードワンとワカマツの連結後営業利益が安定して1億円を超え、在庫も増えなかったら
- 異業種買収による利益の上積みと資金回収能力を確認できる。小売赤字の織込みを縮め、買収事業の資本効率を上方修正する。
- 借入残高の減少が遅れ、2033年に借換えや増資が必要になったら
- 資金調達負担と既存株主の取り分低下を見直す。買収事業の利益が黒字でも、株主価値への貢献は減る。
- 現金配当の開始、自社株買い、またはDOE・総還元性向の数値目標が公表されたら
- 累積利益のうち株主へ戻る割合を見直す。実績を伴う還元が継続するなら、余剰現金の戻り方を0.5から引き上げる余地がある。
- totonoの契約社数と課金利用者数がともに減少し、単価も下落し始めたら
- 顧客接点の優位性が失われつつあると判断する。SaaSとBPaaSの利益率を引き下げ、やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- サンキューコールの四半期累計コンタクト数、1件当たり売上、取次商材数
- totono1.0の契約管理会社数とMRR、totono2.0の課金利用者数と月額ARPU
- totono2.0の解約率、移行完了率、1チャット当たり処理原価とAI自動対応率
- totonoAIの独立した売上・受注金額、導入管理会社数
- トレードワンとワカマツの連結売上、営業利益、在庫回転、減損の有無
- みずほ銀行借入の残高、実効金利、返済・借換えの進捗
- 現金配当・自己株買い・株主優待の実際の年間負担額
- 国内借家戸数、主要管理会社向けアプリの有効ID数、競合の管理物件数
- 2026年9月期の通期確定決算と買収後の連結貸借対照表
倍率と資本コストの決め方
分析の起点は添付の2025年9月期の売上28.2億円、純利益1.3億円、自己資本5.7億円とし、株価は2026年10月22日の848円、株数は発行済株式から自己株を引いた2,405,157株に固定した。2026年6月末のサービスKPIと2026年9月に完了した買収は、2025年の実績へ重複加算せず、将来の構造変化として扱った。売上は各サービスの数量×名目単価から求め、利益は営業利益率と買収関連調整を通して計算した。中立の取次数量は0.683倍、旧型SaaS数量は0.795倍とし、AI代替の指定範囲を守る。新型BPaaSは2026年6月末の利用者実績を追加の基準として採用した。資本コスト8.25%、長期名目成長0%から中立の正当化PER12.12倍を求め、現在や過去の市場PERから倍率を逆算していない。利益の縮小をg_longと数量に反映したので寿命部分へ重ねていない。2027年以降に適用が始まる新リース会計基準による貸借対照表の表示変更は事業価値の増減とみなさず、賃借料を営業費用とする従来方式で比較する。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、過去の利益変動、値決め力、純現金の4項目から求めた0.75%を加えた。特定の買収案件やAIの不確実性を別途上乗せせず、事業数量と利益率、確率で表現する。