結論
東祥は、愛知を地盤にスポーツクラブ「ホリデイ」とビジネスホテル「ABホテル」を運営する会社だ。賃貸マンションの不動産も持つ。筆者の結論は「やや割安」である。本質価値は、今の時価総額を 2 割ほど上回る。
稼ぎの中心はホテルだ。2026 年 3 月期の営業利益 75 億円のうち、ホテルが 49 億円を占める。利益率は 40% に近い。安いビジネスホテルを自前の土地に建て、少ない人手で回す仕組みだ。
ただし、そのホテル会社には外部の株主が 47% いる。ホテルの利益の半分近くは東祥の株主のものにならない。営業利益 75 億円に対し、純利益は 36 億円しか残らないのはこのためである。
スポーツクラブは価格の改定と閉店で、利益率が 4% から 13% に回復した。低価格ジムの増加が重しだ。10 年後の中立は、営業利益 102 億円、純利益 49 億円ほどとみる。
筆者が見るのは 3 点だ。ホテルの稼働率が下がり始めたこと、少数株主の取り分、そして個人の大株主が 5 割を超える支配構造である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益率の高い箱物を、規律をもって積む、おもしろい小型株」だ。ただし、見かけの営業利益ほど株主に残らない。
出発点は、少数株主の取り分を引くことだ。営業利益 75 億円は、ホテル会社の外部株主と税金で削られ、親会社の株主に残るのは 36 億円ほどである。筆者はこの 36 億円を稼ぐ力として数える。
ホテルの利益率が 40% なのは、自前の土地と少ない人手の成果だ。堀と言うほど深くはないが、出店の規律は本物だ。稼働率が 3 ポイント下がっても、利益は十分に出る。
気になるのは、資本の使い方と支配構造だ。配当性向は 1 割で、自社株買いも一貫していない。個人株主が 55% 超を握るため、少数株主が声を上げにくい。純現金 52 億円は新しい投資に使われ、株主に戻る分は限られる。
結論として、今の値段は純利益の 6 倍台で、事業の稼ぐ力に比べて安い。ただし、少数株主の取り分と支配構造の分を割り引くと、安全域は「やや」にとどまる。
何で稼ぐ会社か
事業は 3 つある。ホテルは「ABホテル」で、愛知を中心に 38 店、4,938 室を持つ。売上は 123 億円で、営業利益は 49 億円だ。ビジネスホテルより快適に、シティホテルより手頃に、をうたう。2026 年 3 月期の既存店の稼働率は 84.7% と高いが、前期から 3.0 ポイント下がった。
スポーツクラブは「ホリデイスポーツクラブ」で、全国 37 都道府県に 95 店ある。16 歳以上の大人専用で、月会費だけで多くのプログラムを使える。売上は 126 億円。前期に 4 店を閉め、月会費を改定した。営業利益は 17 億円に回復したが、前期は 5 億円だった。
不動産は、賃貸マンション「A・City」が 51 棟 2,040 室、テナントビルが 3 棟だ。売上は 28 億円、営業利益は 9 億円だった。前期は収益用不動産を売って売上が膨らんだため、2026 年 3 月期の売上は 22.5% 減った。ゴルフ練習場も 2 店ある。
出店の基準は厳しい。スポーツクラブもホテルも、単独の店の経常利益率が 35% 以上を条件にする。不動産は利回り 12% 以上だ。いまは ABホテル 7 件と、TOSHO BLDG 2 件に合計 74 億円ほどを投じる計画がある。
連結の従業員は 376 人と少ない。臨時の人員を入れても 1,000 人ほどで、無人に近い運営が利益率を支えている。
優良さと弱いところ
この会社の質は、「安い土地代と少ない人手で利益率を出す、効率の良い箱物屋」だ。強みは、出店の規律にある。単独の店で経常利益率 35% 以上を求め、足りない店は閉める。4 店を閉めたのはその実行例だ。
ホテルは、立地の選び方とコスト管理が際立つ。利益率が 40% に近いビジネスホテルは、他にほとんどない。自前の土地が多いため、家賃に利益を取られない。稼働率は 84.7% と、業界の平均を大きく上回る。
スポーツクラブは、大人専用と月会費だけの仕組みで差別化してきた。ただし、低価格ジムの出店が増え、競争は強まっている。2023 年以前の安い月会費の会員を現行の料金へ移し、利益率を戻したが、会員の離れが続けば効果は薄れる。
弱みは 3 つある。第 1 に、ホテルの稼働率が下がり始めた。第 2 に、ホテル会社の 47% を外部の株主が持つ。第 3 に、個人の大株主が 5 割を超え、少数株主の発言力が弱い。氏名の開示はなく、筆者はそれ以上のことは書かない。
資本効率は高い方だ。ROE の過去 10 年の中央値は 8.0% で、2020 年までは 15% 前後だった。赤字の期(2024 年 3 月期)は、減損が主因とみられるが、金額は確認できていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東祥の稼ぎ場は 2 つあり、どちらも国内の成熟市場だ。ビジネスホテルは、国内の延べ宿泊者数が 6 億 5 千万人泊と過去最高圏にいる。外国人は前年比 8% 増だが、日本人は 4% 減だった。需要の伸びは 2025 年秋をピークに鈍っている。ABホテルは日本人のビジネス客が中心で、関西のインバウンドが上乗せになる。
ホテルの供給は増えている。建設費は上がっているが、ビジネスホテルの新規開業は続いている。稼働率は業界平均で 8 割前後と高く、これ以上伸びる余地は小さい。単価は物価に沿って上げやすいが、供給が増えれば頭打ちになる。
フィットネスは、市場規模が 2024 年度に 7,100 億円ほどと、過去最高を更新した。伸びを作ったのは、chocoZAP のような低価格の小型ジムだ。総合型のクラブは、価格と設備の両面で挟まれる。東祥は大人専用の広い施設で差別化するが、国内の人口は減り、会員の数は伸びにくい。
不動産では、愛知の賃貸マンション需要は堅い。ただ、建設費の高騰で新築の利回りは下がり、年 300 室の開発目標には無理がある。
循環の位置としては、コロナ後の回復の最終段階にいる。売上の水準は戻り、利益率は過去最高圏にある。ここから先は、落ちる方向の振れが大きい。
資本政策と M&A
資本政策は、方針があいまいだ。配当は年 2 回で、総額は 3.7 億円ほど、性向は 1 割に届かない。業績に応じた成果配分と安定配当を掲げるが、数字の目標はない。2026 年 3 月期は自社株買いで 17 億円を使ったが、株数や時期は開示が薄い。
財務は堅い。現金は 207 億円、純現金は 52 億円ある。ただし、ABホテル 7 件と TOSHO BLDG 2 件の投資予定は合計 74 億円ほどで、純現金を上回る。借入枠も 93 億円の空きがあり、資金は足りる。
不動産では、売却と投資を繰り返す。2024 年 8 月に東祥アセットマネジメントと、東祥東海リート投資法人の投資口を譲渡した。2025 年 6 月には賃貸マンション 1 棟(80 室)を売った。
最大の論点は、株主の構成だ。個人 2 人で 55% を超える。ホテル子会社の ABホテルは東祥が 52.77%、AB開発株式会社が 35.55% を持つ。少数株主への利益の流出は、純利益に織り込んである。
TOB(株式公開買い付け)の可能性は、個人株主の保有が厚いことと、時価総額の小ささから、ゼロではない。ただし時期も条件も不明で、筋書きには織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホテルの利益率 40% は、他にまねできない。自前の土地に、人手を省いたビジネスホテルを建てる。稼働率は 84.7% と業界平均を大きく上回り、客室単価も上がっている。2026 年 3 月期に新店が 2 つ開業し、今後も 7 件の計画がある。
スポーツクラブは立て直しが進んだ。4 店を閉め、安い月会費の会員を現行の料金に移し、利益率が 4% から 13% に戻った。出店の基準を満たさない店を閉める規律が、10 年で利益率をさらに押し上げる。
不動産は年 300 室の開発を目標にし、利回り 12% 以上を求める。賃貸マンションは収益が安定する。
財務は堅く、借入枠も空いている。自社株買いを続ければ、1 株の利益は増える。純現金 52 億円と時価総額 235 億円を比べると、純利益 36 億円の 6 倍台という値段は、成長の織り込みが乏しい。
個人の大株主が 5 割を超える構造は、短期の利益を求めない。長い目で箱物を積む経営には、むしろ都合が良い。
慎重な見方
ホテルの稼働率は 3.0 ポイント下がった。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、売上が 10.4% 減、営業利益が 8.5% 減だ。ホテルと不動産が足を引っ張った。新しいホテルは増えているのに、稼働率が落ちている。
ホテルの 47% は外部株主のもので、営業利益 75 億円の半分近くが東祥の株主には届かない。新しいホテルを建てても、利益の 47% は外に流れる。
スポーツクラブは、低価格ジムに挟まれている。月会費を上げた効果は 1 年限りで、会員の離れが続けば元に戻る。4 店を閉めたことは、縮む市場を示している。
不動産は建設費が上がり、利回り 12% の目標は遠のく。売却益を除くと、本業の利益は小さい。2024 年 3 月期は赤字になり、減損の怖さを見せた。
個人株主が 55% 超を握り、少数株主は還元を求める力が弱い。配当性向は 1 割で、自社株買いも一貫しない。支配株主の意向で、価値が少数株主に回らない恐れがある。
どちらに重みを置いたか
双方に理があるが、数字は強気側に少し分がある。純利益 36 億円に対して 6 倍台という値段は、安い。ただし、強気の根拠であるホテルの高利益率は、稼働率の低下という慎重な側の根拠と同じ数字に出ている。
中立を 37%、やや悲観を 25%、悲観を 11% に置いた。強気側は、やや楽観 20%、楽観 7% とした。箱物の会社は良い年と悪い年の差が大きいので、悲観にも厚みを残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,784 円625 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 432 円151 億円)。 今の値に割り戻すと 1,144 円401 億円、今との差 +74.6%、 期待の年率 +13.0%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,805 円983 億円 | 542 円190 億円 | +411.1% | +17.7% | 234 円82 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,438 円854 億円 | 499 円175 億円 | +348.4% | +16.2% | 587 円206 億円 |
| 中立 | 37% | 2,143 円751 億円 | 462 円162 億円 | +297.7% | +14.8% | 964 円338 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,082 円379 億円 | 388 円136 億円 | +124.5% | +8.4% | 368 円129 億円 |
| 悲観 | 11% | 336 円118 億円 | 240 円84 億円 | −12.1% | −1.3% | 63 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,784 円625 億円 | 432 円151 億円 | +238.4% | +13.0% | 2,217 円777 億円 |
今の株価時価総額 655 円229 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% ホテルの高利益率が続き、新店も当たる 利益 63 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 2,805 円983 億円
ホテルの新店 7 件が当たり、室泊は今の 1.3 倍に伸びる。稼働率は 80% 台前半を保ち、客室単価は物価をわずかに上回る。ホテルの利益率は 40% を保つ。
スポーツクラブは閉店と改定で体質が改善し、利益率は 15% に上がる。会員の数は横ばいで、年会費は 1.38 倍になる。
不動産は賃貸の開発が進み、利回り 12% に近い収益が積み上がる。営業利益は 130 億円になる。
ホテルの 47% は少数株主のものなので、純利益は 63 億円にとどまる。自己資本は 660 億円ほどに増え、配当と自社株買いも厚くなる。
- ホテル事業(ABホテル):数量 189(販売した客室数(万室泊))× 価格 1.15(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 217 億円・営業利益 87 億円。188.9 万室泊、客室単価 1.151 万円、利益率 40.0%
- スポーツクラブ事業(ホリデイ):数量 12.3(会員相当数(万人))× 価格 14(1 人あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 26 億円。会員相当 12.3 万人、年会費 14.08 万円、利益率 15.0%
- 不動産事業(A・City ほか):数量 2,652(賃貸の室数(室))× 価格 181(1 室あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 17 億円。2652 室相当、1 室あたり収入 181 万円、利益率 35.0%
倍率:事業の純利益 63 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.86 倍、時価総額 932 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:7%。新店が計画どおり稼働し、稼働率も高いまま。ホテルに偏る会社で、10 年を通じて外れずに続く確率は低い。
やや楽観 20% ホテルが安定し、スポーツクラブも底堅い 利益 55 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,438 円854 億円
ホテルは新店の開業で室泊が 1.22 倍に増える。稼働率は少し下がるが、客室単価は物価並みに上がり、利益率は 39% を保つ。
スポーツクラブは会員が 2% 減るにとどまり、利益率は 14% で落ち着く。不動産は賃貸が緩やかに伸びる。
営業利益は 115 億円、純利益は 55 億円になる。少数株主への流出が 47% あるため、営業利益ほどには増えない。
自己資本は 640 億円ほどで、配当と自社株買いが年 17 億円ほど続く。ホテルの稼働率が上位の水準を保ち、スポーツクラブも改定後の会員数を守る。強気ほど出来すぎではなく、現在の延長に近い良い姿である。
- ホテル事業(ABホテル):数量 177(販売した客室数(万室泊))× 価格 1.13(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 201 億円・営業利益 78 億円。177.3 万室泊、客室単価 1.134 万円、利益率 39.0%
- スポーツクラブ事業(ホリデイ):数量 12.1(会員相当数(万人))× 価格 14(1 人あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 167 億円・営業利益 23 億円。会員相当 12.05 万人、年会費 13.87 万円、利益率 14.0%
- 不動産事業(A・City ほか):数量 2,346(賃貸の室数(室))× 価格 181(1 室あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 13 億円。2346 室相当、1 室あたり収入 181 万円、利益率 30.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.38 倍、時価総額 791 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。ホテルが安定し、スポーツクラブの利益率も保たれる姿。強気と中立の間に置く。
中立 37% ホテルは緩やかに伸び、スポーツクラブは横ばい 利益 49 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 2,143 円751 億円
ホテルは新店で室数が 2 割ほど増える。稼働率は 80% に下がり、室泊は 1.15 倍になる。客室単価は物価よりやや低い 1.32 倍で、利益率は 38% だ。
スポーツクラブは会員が 5% 減り、年会費は 1.34 倍になる。利益率は今の 13% から 12.5% に下がる。
不動産は賃貸が緩やかに伸びる。営業利益は 102 億円、売上は 386 億円で、利益率は 26.4% だ。今の 27.1% より少し低い。
ホテルの 47% が少数株主に流れ、純利益は 49 億円になる。償却は新店の分だけが増え、既存の設備の償却は物価で膨らまない。
- ホテル事業(ABホテル):数量 167(販売した客室数(万室泊))× 価格 1.12(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 187 億円・営業利益 71 億円。167.1 万室泊、客室単価 1.117 万円、利益率 38.0%
- スポーツクラブ事業(ホリデイ):数量 11.7(会員相当数(万人))× 価格 14(1 人あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 20 億円。会員相当 11.69 万人、年会費 13.67 万円、利益率 12.5%
- 不動産事業(A・City ほか):数量 2,142(賃貸の室数(室))× 価格 181(1 室あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 11 億円。2142 室相当、1 室あたり収入 181 万円、利益率 28.0%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.91 倍、時価総額 676 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:37%。新店で室泊は増えるが、稼働率は下がる。スポーツクラブは縮み、不動産は緩やかに伸びる、10 年の中心の姿として最も厚く置いた。
やや悲観 25% 稼働率が下がり、会員も離れ、利益率が 22% に下がる 利益 36 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,082 円379 億円
ホテルは新店の開業が続くが、稼働率は 75% に下がる。客室単価も物価に届かず、1.28 倍にとどまる。ホテルの利益率は 34% に下がる。
スポーツクラブは低価格ジムに会員を奪われ、12% 減る。月会費の改定効果も一巡し、利益率は 9% に落ちる。
不動産は賃料が伸びず、建設費の高騰で新規開発も鈍る。営業利益は 77 億円になる。
少数株主への流出を引くと、純利益は 36 億円ほどで、今とほぼ同じだ。物価で名目の数字が膨らむ分を除くと、実質では 3 割近く減る。自己資本は 560 億円ほどに積み上がるが、稼ぐ力は伸びず、配当と自社株買いも年 12 億円ほどにとどまる。
- ホテル事業(ABホテル):数量 153(販売した客室数(万室泊))× 価格 1.08(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 165 億円・営業利益 56 億円。152.6 万室泊、客室単価 1.083 万円、利益率 34.0%
- スポーツクラブ事業(ホリデイ):数量 10.8(会員相当数(万人))× 価格 13(1 人あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 13 億円。会員相当 10.82 万人、年会費 13.26 万円、利益率 9.0%
- 不動産事業(A・City ほか):数量 1,938(賃貸の室数(室))× 価格 176(1 室あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 8 億円。1938 室相当、1 室あたり収入 176 万円、利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 36 億円・ROE 約 6.1% は k 7.75% を下回り、上限は 1÷k=11.8 倍。稼働率の低下と会員の離れが重なる筋書きなので、上限の約 7 割強の 8.5 倍に置いた。
確率:25%。ホテルの供給増による稼働率の低下と、低価格ジムへの会員流出が重なる姿。ホテルに偏る会社なので、中立に近い厚みで置いた。
悲観 11% 稼働率の急落と会員の流出で、利益が 4 割に縮む 利益 16 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 336 円118 億円
ホテルの供給が過剰になり、国内の出張とインバウンドも細る。稼働率は 70% を割り、客室単価は物価に届かず 1.15 倍にとどまる。ホテルの利益率は 24% に落ちる。
スポーツクラブは会員が 4 分の 1 減り、利益率は 3% まで落ちる。閉店と減損が続く。賃借料の固定費が重く残る。
不動産は賃料が伸びず、利益は 4 億円ほどに縮む。営業利益は 40 億円、純利益は 16 億円になる。
自己資本は減損で 470 億円ほどに減る。個人株主が残る限り、少数株主に回る価値は小さい。配当は絞られ、新店の投資は止まり、借入の返済が先になる。現金の厚みで倒れはしないが、株主が得る果実は細る。
- ホテル事業(ABホテル):数量 138(販売した客室数(万室泊))× 価格 0.97(1 室泊あたりの客室単価(万円・名目))→ 売上 134 億円・営業利益 32 億円。138.0 万室泊、客室単価 0.973 万円、利益率 24.0%
- スポーツクラブ事業(ホリデイ):数量 9.2(会員相当数(万人))× 価格 12(1 人あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 113 億円・営業利益 3 億円。会員相当 9.23 万人、年会費 12.24 万円、利益率 3.0%
- 不動産事業(A・City ほか):数量 1,632(賃貸の室数(室))× 価格 162(1 室あたりの年間収入(万円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。1632 室相当、1 室あたり収入 162 万円、利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 16 億円・ROE 約 3.3% で、稼ぐ力が低い。稼働率の急落と低価格ジムへの会員流出が重なる構造的な負けなので、上限の約 6.5 割の 7.5 倍に置いた。
確率:11%。ホテルの供給過剰と国内需要の落ち込み、低価格ジムへの流出が重なる構造的な負け。箱物と固定費の重い会社なので、厚みを残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテル事業(ABホテル)
愛知を中心に全国 38 店・4,938 室。安い土地と少ない人手で回すビジネスホテル。ホテル会社の 47% は外部の株主が持つ。
| 数量販売した客室数(万室泊) | 価格1 室泊あたりの客室単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 145 | 0.85 | 123 | 49 |
| 10 年後 中立 | 167 | 1.12 | 187 | 71 |
取り方:2026 年 3 月期のホテル売上 122.9 億円を、期中の平均客室数(約 4,700 室、期末は 4,938 室)× 365 日 × 稼働率 84.7% = 約 145 万室泊で割った客室単価(約 0.85 万円)の推定。期中の開業分は日割りにしていない粗い推定。営業利益 48.9 億円は開示。数量は実質で、物価の分は価格に入れた。
スポーツクラブ事業(ホリデイ)
全国 95 店の大人専用の会員制クラブ。月会費だけで多くのプログラムを使える。
| 数量会員相当数(万人) | 価格1 人あたりの年間収入(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.3 | 10 | 126 | 17 |
| 10 年後 中立 | 11.7 | 14 | 160 | 20 |
取り方:2026 年 3 月期のスポーツクラブ売上 125.6 億円を、1 人あたり年約 10 万円(月会費約 0.85 万円と物販・追加料金)で割った推定の会員相当数(約 12 万人、1 店あたり約 1,300 人)。会員数は開示がない。営業利益 16.7 億円は開示。数量は実質で、物価の分は価格に入れた。
不動産事業(A・City ほか)
賃貸マンション 51 棟 2,040 室、テナントビル 3 棟、駐車場、ゴルフ練習場。収益用不動産の売却を含む。
| 数量賃貸の室数(室) | 価格1 室あたりの年間収入(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,040 | 135 | 28 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2,142 | 181 | 39 | 11 |
取り方:2026 年 3 月期の不動産売上 27.6 億円を、賃貸室数 2,040 室で割った 1 室あたり年約 135 万円の推定。賃料のほかテナントビル・駐車場・ゴルフ・1 棟(80 室)の売却を含むため、賃料そのものより高い。営業利益 9.1 億円は開示。
リスクと懸念
ホテルの稼働率の低下
既存 34 店の稼働率は 84.7% で、前期より 3.0 ポイント下がった。2027 年 3 月期の第 1 四半期も、ホテルが足を引っ張った。供給が増えれば、さらに下がる。ホテルは営業利益の 65% を占め、稼働率 1 ポイントの差が利益に直結する。
少数株主への利益の流出
ホテル会社の ABホテルは、東祥の持株が 52.77% で、AB開発株式会社が 35.55% を持つ。ホテルの利益の 47% は東祥の株主に届かない。新しいホテルを建てるほど、この流出も増える。
個人株主による支配
個人の大株主 2 人が 55% 超を持つ。少数株主が還元や資本政策に影響を及ぼす力は弱い。配当性向は 1 割で、自社株買いも一貫しない。TOB(株式公開買い付け)やMBOの可能性は、読めない。
スポーツクラブの会員の離れ
低価格ジムが増え、総合型のクラブは価格と設備の両面で挟まれる。月会費の改定効果が一巡すれば、利益率は戻る。4 店を閉めたことが、縮む市場を示している。減損の恐れも有報に明記されている。
建設費の高騰と投資の回収
ABホテル 7 件などで 74 億円の投資を計画する。建設費が上がるほど、出店基準の経常利益率 35% は遠のく。借入で賄えば利払いが増え、投資の回収が遅れる。償却は新設分だけが物価で増え、会計の利益は少し守られるが、現金は出ていく。
賃借の固定費と新リース会計
土地建物の賃借料は年 29 億円で、主にスポーツクラブが借りる。売上が落ちても賃料は落ちない。2028 年 3 月期からの新リース会計で、負債の見かけは増える。純現金は、見た目ほど強くないとみる。
今後の分かれ目
- ホテルの稼働率が 80% を割り、客室単価も下がったら
- ホテルの利益率が崩れる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ABホテルへの少数株主の持分を、東祥が買い取るか、整理したら
- 流出が減り、純利益が増える。中立の純利益を上方に直す。
- 配当性向や自社株買いの方針が数字で示されたら
- 還元の見通しが立つ。支配構造の割引を縮める。
- 個人株主による TOB や MBO が発表されたら
- 買収価格が議論になる。筋書きにない上振れか下振れとして別に考える。
- スポーツクラブの営業利益率が 10% を割り込んだら
- 改定効果が消えたと読み、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- ホテルの稼働率と客室単価(四半期)
- スポーツクラブの会員数と営業利益率
- ABホテルの少数株主の持分の変化
- 配当・自社株買いの方針
- 新規ホテルの開業と投資額
- 純現金と借入の推移
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER には寄せていない。売上はホテル(室泊 × 客室単価)、スポーツクラブ(会員 × 年会費)、不動産(室数 × 年間収入)から積み上げ、物価は価格に入れた。純利益はホテルの少数株主の取り分(47%)を引いて出した。倍率は ROE が資本コスト 7.75% に近く、上限 1÷k(11.8 倍)の 8.5 割(10.0 倍)を中立に置いた。今の PER が 6 倍台である点は、倍率の根拠にしていない。純現金 52 億円は、投資予定 74 億円に足りないので、余った現金に分けなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→14.86 倍・やや楽観 PER 10.5→14.38 倍・中立 PER 10→13.91 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。