結論
オオバは、街づくりの測量・設計を請け負う建設コンサルタントだ。道路や都市計画、造成、区画整理、防災の仕事が中心で、民間の開発も多い。公共一辺倒でなく、官民の両方に顧客を持つ点が同業と違う。
結論から言う。筆者は、10年後の本質価値は今の時価総額187億円を3割ほど下回ると見る。営業利益率は11%台と過去最高圏にあり、さらに上げる余地は小さい。売上は物価並みにしか伸びない。
財務は堅い。純現金は28億円で時価総額の1割を超え、配当性向は5割に近い。株主への還元は厚い。
弱みは、民間の開発が景気と人口減に左右されること、そして設計・作図の工数がAIで減ることだ。利益率が山にいる今は、買いにくい値段と見る。
数字で見れば、純利益15億円を12倍ほどで評価した値が今の時価総額だ。純現金を除けば、事業そのものは11倍台で買える計算になる。ただ、これは利益率が山にある状態の稼ぎに掛けた倍率で、割安とは言えない。筆者はこの会社を、堅実だが期待を乗せにくい会社と見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くない会社だが、今の値段に安全域はない。官民両方に顧客を持ち、財務は堅く、還元も厚い。10年後も事業は残る。
ただ、株主に残る利益は純利益15億円ほどで、その大半は配当に回る。残りの再投資で、成長は物価並みにとどまる。資本コストを7.25%とみれば、この稼ぎの価値は時価総額とほぼ同じだ。
利益率が過去最高圏にある点が気がかりだ。山にいる会社に高い値を払うと、利益率が平均に戻るだけで割高になる。逆に、AIで工数が減っても、減った分を案件の増加に回せれば、利益率は保てる。その確証は今はない。
筆者は、買うなら利益率が7〜8%に落ちた時の値段で、山の値段では手が出ないと考える。
配当を厚く出す姿勢は、オーナーの目で見れば好ましい。ただ、それは成長に使える再投資先が乏しいことの裏返しでもある。余った現金を株主に戻し続けるかぎり、株主は退屈でも裏切られにくい。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、街づくりに関わる測量・調査・設計・計画だ。土地区画整理や造成の計画と設計、道路や都市基盤の設計、環境・防災の調査、地理空間情報の解析、土地管理のシステム開発などを手がける。
顧客は官民の両方だ。自治体からは都市計画や道路の仕事、民間のデベロッパーや地権者からは、宅地や商業地、物流用地の開発の設計を請け負う。会社は自らを、民間主導型の街づくりが得意な企業と位置づけ、地権者との調整にも強みがある。
創業は1922年と古い。宅地造成の測量から出発し、東日本大震災後には、宮城県名取市の臨空土地区画整理事業など、復興のまちづくりで実績を作った。連結の従業員は550人ほど。
2026年5月期の売上は170億円で前期比6%減、営業利益は19.7億円と1.5%増だった。利益率は11.5%で過去最高圏。2027年5月期は売上175億円、営業利益20.5億円の増収増益を会社は見込む。
収益の形は、案件ごとの受託と、年度をまたぐ長い計画業務の積み上げだ。区画整理のような大型の事業では、設計から事業の運営支援まで数年にわたって関わる。受注残があれば翌期の売上を見通せるが、民間は着手の時期が景気で動くため、読みにくい。
優良さと弱いところ
強みは、官民の両方に根を張る取引網と、地権者を束ねる調整力だ。民間の開発は、地権者との調整が仕事の山場になる。この力は設計図があるだけでは代わりにならない。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準と見る。公共の仕事は入札で決まり、民間は発注者が絞って値を決める。技術者が動けば知見も動く。
資本効率は並だ。ROEは過去10年の中央値で11%、直近は10%。営業利益率は2015年5月期の5%から2026年5月期の11.6%まで、10年かけて上がってきた。利益率を上げたのは、値上げと案件の選別だと見られる。
財務は堅い。自己資本比率は69%で、純現金は28億円。借金に頼らない。配当は性向5割に近づけ、増配を続けている。大株主に目立った支配者はいない。
利益率を上げた手段は、案件の選別と単価の見直しだ。それが続く間は強いが、人を増やせない会社が単価で稼ぐ戦略には天井がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルタントの需要は、公共では国土強靱化の予算が支える。2026年度から5年で20兆円を超える強靱化の中期計画が動き、道路、河川、上下水道の更新と防災の設計が続く。数量は技術者の数が天井で、実質では横ばいに近い。
民間の街づくりは景気と人口に左右される。新設住宅の着工は、野村総合研究所の予測で2030年度に80万戸、2040年度に61万戸と減る。地方の宅地造成は細る一方、都市部の再開発や物流用地、データセンターの用地開発には需要が残る。
変化の中心は、AIによる設計の自動化だ。測量図の作成、造成の土量計算、積算は、AIが得意とする工数型の仕事だ。許認可と技術士の署名が要る部分は残るが、発注者は工数の減った分を値下げとして求める。
競合は、同じ街づくり系の中堅コンサル各社と、大手の日本工営や建設技術研究所だ。分かれ目は、人口が減る中で都市部の民間案件を取り続けられるか、そしてAIで空いた工数を新しい案件に回せるかにある。
気象災害の激甚化も、河川や砂防の設計を増やす。ただ、これは建設技術研究所のような河川専業の強い分野で、オオバの強みは街づくりのほうにある。
資本政策と M&A
還元は厚い。2026年5月期の配当性向は47.6%で、増配が続く。自己株式も保有しており、株数は少しずつ減っている。純現金は2023年5月期の42億円から、2026年5月期は28億円に減った。配当と自己株、投資に回した結果だ。
買収は目立たず、資本は本業の人材と設備に使っている。中期の方針は、利益を積み上げて還元を厚くする形と見る。
純現金のうち、賞与や税金の支払い、前受金などの約束に回る分は余りではない。筆者は、事業に要らない余り分を8億円と見ている。TOBの可能性は、大きな支配株主がおらず、民間の街づくりの会社として買い手が付きにくいため低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
オオバは官民両方に顧客を持つ珍しい建設コンサルだ。公共の予算に守られる一方、民間の再開発や物流用地で上振れを狙える。営業利益率は10年で5%から11.6%まで上がり、値上げと案件の選別が実った証拠だ。会社は2027年5月期も増収増益を見込む。純現金が厚く、配当性向は5割に近く、増配が続く。AIによる作図の自動化は、同じ技術者でより多くの案件をこなす道具になる。採用が進めば、売上は物価を超えて伸びる。株主還元の厚さを考えれば、本質価値は今の時価総額を上回りうる。東京や名古屋など都市部では、再開発と物流用地の需要が長く続く。地方の造成が縮んでも、都市部の案件に人を移せる柔軟さがこの会社の強みだ。経営は利益率を意識して案件を選んでおり、それが実績に表れている。技術者は定年後の再雇用や中途採用でも増やせる。利益率が山にあるというより、事業の組み換えが終わって高い水準に定着したと見るのが妥当だ。自社の地理空間情報の解析と土地管理のシステムも、工数に頼らない収入の芽になる。
慎重な見方
利益率は過去最高の山にあり、そこから上がる余地は小さい。10年で5%から11%に上がった同じ速度で戻ることもありうる。民間の開発は金利と景気に敏感で、人口が減る中で地方の造成は縮む。設計・作図・積算はAIが得意とする工数型の仕事で、発注側は減った工数の分を値下げとして求める。技術者の採用難は売上の天井だ。純現金は3年で42億円から28億円に減っており、配当を厚くした分、余力は薄れている。2026年5月期は売上が6%減っており、増益は値上げと案件の選別でつくった面が強い。山の利益に倍率を掛けた値は、先の平均に戻る利益よりも高い。売上の6%減は、案件の選別で量を落とした結果とも読めるが、先行きの受注が細っているとも読める。社会に残る大型案件が減れば、選別の余地が無くなる。人口が減る国で、街づくりの量そのものが縮むという大きな流れには逆らえない。競合の大手は、AIと自動化に先行して投資している。後から追う中堅は、投資の負担が重い。
どちらに重みを置いたか
公共の部分は堅く、民間の部分は景気と人口に左右される。利益率が山にある以上、戻る方向の力が強い。ただ配当と財務の強さが下値を支える。確率は悲観側を3割8分とした。楽観の言う都市部の再開発は確かだが、利益率が山にある事実は動かない。財務の強さと還元の厚さで下値は固いが、上値も限られる。確率は、中立に4割弱、利益率が戻る側に3割台後半を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 1,184 円186 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 496 円78 億円)。 今の値に割り戻すと 938 円148 億円、今との差 −21.3%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,785 円281 億円 | 661 円104 億円 | +105.2% | +7.5% | 147 円23 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,591 円250 億円 | 566 円89 億円 | +81.0% | +6.1% | 388 円61 億円 |
| 中立 | 38% | 1,417 円223 億円 | 534 円84 億円 | +63.7% | +5.1% | 741 円117 億円 |
| やや悲観 | 26% | 886 円139 億円 | 439 円69 億円 | +11.1% | +1.1% | 344 円54 億円 |
| 悲観 | 12% | 176 円28 億円 | 318 円50 億円 | −58.6% | −8.4% | 59 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,184 円186 億円 | 496 円78 億円 | +40.9% | +3.5% | 1,680 円264 億円 |
今の株価時価総額 1,192 円188 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 民間の再開発とまちづくりが伸び、利益率が過去の山を保つ 利益 20 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,785 円281 億円
都市の再開発、物流施設の用地、防災の更新と、官民の仕事が同時に厚くなる。公共は技術者が1割増え、民間は区画整理や造成の設計が伸びる。単価は物価並みに上がり、営業利益率は過去の山と並ぶ11.6%。売上は約245億円と今の1.4倍になる。AIの作図支援は設計の工数を減らすが、減った分は案件を増やす方向に回る。この筋書きでも、利益率は山を超えない。需要が増えれば人員が足りなくなり、採用難が利益の天井になるからだ。人員の増加を支えるのは中途採用と、AIによる作図の自動化で生まれる余力だ。民間の物流用地やデータセンターの設計が新しい柱になる。配当は性向5割を保ち、純現金も維持される。
- 公共系(道路・都市計画・防災・環境):数量 330(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 4,198(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 139 億円・営業利益 15 億円。人員 1.10 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 11%
- 民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理):数量 263(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 4,074(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 107 億円・営業利益 15 億円。人員 1.05 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 281 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:官民の都市開発が重なって強く出る筋書き。ただ営業利益率はすでに過去最高圏の 11.6% で、さらに上げる根拠が無いため、山と同じ水準で止めた。
やや楽観 18% 公共が堅く、民間も踏みとどまる 利益 18 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 1,591 円250 億円
公共の道路・防災・都市計画の仕事は予算に守られ、技術者は4%増える。民間は地方の造成が細る一方、都市部の再開発と物流用地の設計が補う。単価は物価に少し届かず1.32倍。営業利益率は11%前後を保ち、会社予想の増益基調が続く。AIによる作図の自動化は事務部分に効くが、技術者の署名が要る設計の価値は変わらない。配当は性向を保ち、増配が続く。受注残は積み上がり、売上は着実に増える。民間の再開発では、地権者との調整役としての信用が生き、競合との価格競争を避けられる。純現金は維持され、配当性向も5割前後を保つ。地方の造成が細っても、都市部の仕事で埋め合わせる。利益は緩やかに増え、時価総額は今より少し高い水準に落ち着く。
- 公共系(道路・都市計画・防災・環境):数量 312(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 4,136(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 129 億円・営業利益 14 億円。人員 1.04 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 10.6%
- 民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理):数量 245(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 4,013(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 98 億円・営業利益 13 億円。人員 0.98 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 13.5%
倍率:ROE 8.2%。RONIC = k 7.25% + 1/2 ×(ROE − k)= 8.1%、g は名目 1.0% として PER = 13.86 倍。
確率:公共の予算は堅く、民間の再開発も都市部では続く。足元の利益率が高い分、さらに上がる余地は限られるので 18%。
中立 38% 公共は横ばい、民間はじわり縮む。利益率は今の山を超えない 利益 16 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,417 円223 億円
公共の道路・防災・都市計画の仕事は予算に支えられ、技術者数は横ばい。民間は人口減で地方の造成や住宅地開発が細り、人員は1割弱減る。単価は人件費の上昇を転嫁しきれず1.30倍。営業利益率は10.6%と、直近の山を少し下回る。AIは作図と積算の工数を減らすが、発注側が予定価格を下げる動きが出るので利益率の改善にはつながらない。売上は約213億円で、配当性向は5割前後を保つ。人口が減る地方の宅地造成が細り、都市部の再開発が補う形で全体は横ばい。利益率は今が山で、そこから緩やかに下がる。純現金は配当と自社株で減らないよう維持される。
- 公共系(道路・都市計画・防災・環境):数量 300(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 4,073(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 13 億円。人員 1.00 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 10.2%
- 民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理):数量 230(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 3,952(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 91 億円・営業利益 12 億円。人員 0.92 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 13%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は人口と技術者数で横ばいから微減、単価は物価に少し届かない。利益率は直近の過去最高から1割ほど下げ、山を超えない形にした。
やや悲観 26% 民間の設計が AI と人口減で縮み、利益率が下がる 利益 11 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 886 円139 億円
金利が上がり、民間の宅地造成や再開発が先送りされる。民間の人員は2割減り、AIによる設計の自動化で発注側は単価の引き下げを求める。公共は持ちこたえるが、採用難で人員は5%減る。営業利益率は7%台に戻り、増益基調は止まる。配当は性向を保つが、利益が減る分、額は下がる。不動産市況の悪化で、民間向けの未収金や仕掛の評価も重くなる。単価の引き下げと人員の余剰が同時に起き、利益率は山から大きく下がる。景気が戻るまでの数年間は、受注の戻りを待つ展開が続く。民間の開発が止まった時期に、人員の余剰が出る。会社は採用を絞って利益率を守ろうとするが、単価の下押しには追いつかない。純現金は配当のために細る。
- 公共系(道路・都市計画・防災・環境):数量 285(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 3,885(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 111 億円・営業利益 9 億円。人員 0.95 倍・単価 1.24 倍・営業利益率 8.5%
- 民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理):数量 200(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 3,770(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 8 億円。人員 0.80 倍・単価 1.24 倍・営業利益率 10%
倍率:ROE 5.3%。ROE が k 7.25% を下回る稼ぎで、1÷k = 12.5 倍の下に置いた。余った現金は 0.75 倍の 6 億円。
確率:民間の開発は景気と金利の影響を受け、設計の作図は AI で置き換わりやすい。足元の利益率が高いだけに、戻りの幅が大きい筋書きとして 26%。
悲観 12% 公共も民間も工数型の設計が置き換わり、構造的に縮む 利益 2 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 176 円28 億円
AIエージェントが測量図・造成計画・積算を自動で作り、設計の工数は大きく減る。発注側は工数の減った分を値下げとして求め、単価は物価に届かない。公共も予算が絞られ、技術者を3割減らす。民間は宅地開発が止まり、半分近くまで縮む。営業利益率は2%に落ち、会社は人員と拠点を絞って現金を守る。それでも純現金と土地管理などの事業は残り、床を作る。人員を絞る過程で、優秀な技術者から先に転職する。残った事業の中心は、許認可と調整が要る部分だけになる。AIによる設計の自動化は、人月で売る型の会社から先に売上を奪う。発注側が内製と自動化に動く中、単価と数量の両方が落ちる。純現金は削られ、配当も減らされる。
- 公共系(道路・都市計画・防災・環境):数量 225(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 3,509(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 79 億円・営業利益 3 億円。人員 0.75 倍・単価 1.12 倍・営業利益率 4%
- 民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理):数量 138(技術者・稼働人員(人、推定))× 価格 3,344(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。人員 0.55 倍・単価 1.10 倍・営業利益率 3%
倍率:稼ぎが小さくなった事業の純利益に 1÷k 近い倍率を置いた。減損で自己資本を減らした。
確率:AI による設計・作図の自動化、公共予算の抑制、民間開発の長い停滞が重なる構造的な負け。民間比率が高く、悲観は12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
公共系(道路・都市計画・防災・環境)
国や自治体から請け負う道路・都市基盤・防災・環境・地理空間情報の計画と設計。
| 数量技術者・稼働人員(人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 300 | 3,133 | 94 | 10 |
| 10 年後 中立 | 300 | 4,073 | 122 | 13 |
取り方:官民別の売上は開示を確認できなかった。会社は民間の比率が高いと自らの説明で述べている。公共を売上の約55%(94億円)と推定した。人員は連結550人から推定。営業利益も推定で、全社の営業利益19.7億円と整合させた。許認可の型で AI エージェント代替は事務部分に限り、中立は人員1.0倍・単価1.30倍。
民間系(宅地・再開発・物流用地・土地管理)
デベロッパーや地権者から請け負う造成・区画整理・再開発・建築の計画と設計、土地管理。
| 数量技術者・稼働人員(人、推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 250 | 3,040 | 76 | 11 |
| 10 年後 中立 | 230 | 3,952 | 91 | 12 |
取り方:売上の約45%(76億円)と推定。人員は連結550人から推定。民間の開発設計は工数型で、AI エージェント代替の影響が公共より大きい。人口減もあり、中立の人員は0.92倍、単価は物価に届かず1.30倍。
リスクと懸念
利益率が過去最高圏にある
営業利益率は10年で5%から11.6%に上がった。山にいる時に高い倍率が付くと、利益率が平均に戻るだけで割高になる。
設計・作図の自動化(AI エージェント代替)
測量図、造成計画、積算は工数型の仕事で、AI が得意とする。発注側は減った工数を値下げとして求め、民間の設計ほど影響が大きい。
民間開発の景気と金利への感応
民間の売上は、宅地や再開発の着手に左右される。金利が上がれば先送りが増え、受注が急に細る。
人口減と新設住宅の減少
新設住宅着工は2040年度に61万戸と減る見通しだ。地方の宅地造成は構造的に縮む。
技術者の採用難
数量の天井は技術者の数だ。採用と定着が滞れば売上が伸びない。人件費の上昇を単価に転嫁しきれない問題も続く。
純現金の減少と還元の厚さ
純現金は3年で42億円から28億円に減った。配当性向が5割に近く、利益が落ちる局面では余力が薄れる。
今後の分かれ目
- 2027年5月期に営業利益率が12%を超えて定着する
- 値上げと案件の選別が一段進んだことになり、やや楽観の筋書きに近づく。
- 民間向けの受注残が2期続けて減る
- 民間の開発が先送りされている証拠で、やや悲観の確率が上がる。
- AIを使った設計サービスが売上として開示される
- 工数に頼らない稼ぎが育った証拠で、楽観の確率が上がる。
- 金利の上昇で不動産開発が止まる
- 民間系の売上が急に縮み、悲観の筋書きに近づく。
- 純現金が20億円を割る
- 還元の余力が薄れ、配当の増額が止まる可能性が高まる。
見ておくもの
- 官民別の受注高と受注残
- 営業利益率の推移(11%台が山か)
- 技術者の人数と離職率
- 純現金と配当性向
- 民間向けの開発案件の着手時期
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式から出し、ROE が資本コストに届かない中立は 1÷k を上限にした。今の株価や過去の PER、同業の値付けは使っていない。営業利益率は過去12年の山の11.6%を超えないように置いた。AI エージェント代替は、民間系の人員と単価、k の寿命に入れ、確率や g には重ねていない。償却は取得額のままとし、人件費を物価で増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.7→13.79 倍・やや楽観 PER 12.5→13.86 倍・中立 PER 12.5→13.79 倍・やや悲観 PER 11.5→12.69 倍・悲観 PER 11→12.19 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。