結論
サン・ライフホールディングは、神奈川の県央・湘南と東京の八王子で葬儀を営む会社だ。互助会で会員を集め、自社の斎場で式を出す。介護とホテルも持つ。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぎを控えめに見ており、やや割安だというものだ。
葬儀の稼ぎは安定している。式典の事業は売上102億円で21億円の利益を出す。死亡数は2040年ごろまで増え、神奈川は高齢化が速い。家族葬の小さなホールを増やし、件数の取り分も広げている。
一方で、見かけの財務には注意がいる。現金と債券は143億円あり、借入はゼロだ。だが負債に、互助会の会員から預かった掛金が253億円ある。現金はその裏付けで、自由に使える金ではない。自己資本比率は19%にとどまる。
10年後の中立は、件数が3割増え、単価は家族葬で名目1割増にとどまり、営業利益は約16億円と見る。純利益は約11億円で、ROEは資本コスト8.25%をわずかに上回る。介護とホテルは薄く、全体の足を引く。
確率を重ねた本質価値は、今の時価総額を3割近く上回る。安さの理由は、株式市場が厚い現金を割り引き、薄い自己資本を嫌っていることにある。
バリュー投資の観点から
優れた事業かどうかを問うなら、葬儀の部分は合格に近い。需要は景気に左右されず、地域の斎場の網は簡単には作れない。互助会は客から先にお金を預かる。保険会社のように、他人の金を手元に置いて回せる仕組みだ。
ただ、その他人の金を自分の現金と取り違えてはいけない。253億円の掛金は、いつか式で返すか、解約で戻す約束だ。資産の厚さだけを見て割安と言うのは早い。
経営の資本の使い方は、可もなく不可もない。配当は安定しているが、介護とホテルという薄い事業を抱え続け、会館の減損も繰り返す。葬儀だけに絞れば利益率はもっと高い。
筆者は、事業の質は中くらい、値段は稼ぎに比べて控えめと見る。安全域は、稼ぎが続く限りはある。ただ、互助会の縮みと単価の下落が同時に来ると、その安全域は思ったより薄い。だから筆者は、厚い資産でなく稼ぎの続き方を見張る。
何で稼ぐ会社か
サン・ライフホールディングの柱は葬儀だ。売上の7割強、利益のほぼすべてを式典の事業が稼ぐ。地盤は神奈川の平塚・厚木などの県央と湘南、それに東京の八王子だ。
仕組みの中心に互助会がある。会員は毎月少しずつ掛金を払い、いざという時に、積み立てた分で葬儀や婚礼を受ける。会社から見ると、先にお金を預かり、後でサービスで返す形だ。預かった掛金は負債の「前払式特定取引前受金」に載り、いま253億円ある。
葬儀は自社の斎場で出す。地域に約20の斎場を持ち、2025年には家族葬向けの小さなファミリーホールを5つ開いた。式のほかに、霊園の区画、仏壇、返礼品、会食も売る。1件あたりの売上は霊園と仏壇を含めて150万円弱と見られる。施行件数の開示は無く、筆者は年7千件ほどと推定する。
介護の事業は有料老人ホームなどを営み、売上23億円で利益は1億円に届かない。ホテルは平塚などで宿泊・宴会・婚礼を受け、売上11億円でほぼとんとんだ。その他は互助会の募集と管理、少額短期保険、清掃で、わずかに赤字だ。
本社の費用は年11億円かかり、事業の利益から差し引かれる。費用の柱は斎場の人件費と建物の償却で、件数が減っても大きくは減らない。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、葬儀という止まらない需要と、互助会という前払いの仕組みにある。会員は掛金を払った互助会の斎場を選ぶ。客を先に囲い込めるので、ネットの紹介会社に払う手数料を抑えられる。式典の事業の利益率は2割に達し、葬儀の会社の中でも高い。
ただ、堀は細っている。若い世代は互助会に入らなくなった。葬儀は家族葬や直葬へ移り、1件の単価は下がる。ネットの紹介会社は定額の安い式を並べ、客は値段で比べるようになった。互助会の会員がいなくなれば、斎場の立地と評判だけで戦うことになる。
地域に約20の斎場を持つことは、それなりの壁になる。斎場は近所の反対で新しく建てにくく、既存の立地には価値がある。それでも、大きな会館を小さなホールに作り替える費用は続く。減損も毎年のように出ており、2026/03期の純利益を押し下げた。
介護とホテルは、葬儀の客とのつながりはあるが、稼ぐ力は弱い。資本を食う割に利益が出ない。筆者は、この会社の価値は葬儀の地域の強さに尽き、堀は弱いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
葬儀の市場は、死亡数と1件の単価で決まる。国内の死亡数は年160万人前後で、2040年ごろに山を迎えるまで増える見込みだ。神奈川は人口が多く、高齢化の進みが全国より遅れて来るため、これからの死亡数の伸びは全国より大きい。
一方で、単価ははっきり下がってきた。通夜と告別式に親族と近所を呼ぶ一般葬は減り、家族だけの家族葬、式をしない直葬が増えた。コロナの時期にこの流れは一気に進み、元には戻っていない。1件の売上は10年前より小さく、件数が増えても市場の金額はそれほど増えない。
競争の相手は三つある。地域の葬儀社と互助会、燦ホールディングスやティアのような上場の葬儀会社、そしてネットで安い式を紹介する会社だ。紹介会社は葬儀社に客を送り、手数料を取る。客を自分で集められない葬儀社は、この手数料で利益を削られる。
互助会の業界は、加入者の高齢化と若い世代の離反で縮んでいる。経済産業省の監督のもと、預かった掛金の半分は保全が義務づけられている。業界全体で解約の返戻をめぐる苦情も多く、規制が強まる恐れもある。
2040年を過ぎると死亡数は減り始める。10年後はまだ山の手前で、件数の追い風は続く。その先は斎場の数が余る時代になる。
資本政策と M&A
借入は無く、現金と債券は143億円ある。ただしその多くは互助会の会員から預かった掛金の裏付けで、筆者は株主に配れる現金とは見ない。掛金を国債などで回した利息は、利益に入る。
配当は安定配当の方針で、2026/03期の配当総額は約2億円、配当性向は3割強だ。2027/03期も増配を予想し、配当総額は約2.1億円になる。自社株買いは目立たない。2026年7月に自己株式を処分した。
株主優待は3月末に、100株から施設の利用券と、ホテルや介護用品の割引券を出す。費用の開示は無いが、株主の数と券の額から年0.05億円前後と推定し、還元に少しだけ数えた。
資本の使い道は、家族葬の小さなホールへの建て替えと新設だ。投資は筋が通るが、大きな会館の減損が続いており、過去の投資の目利きには疑問が残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、葬儀で安定して稼ぐ地域の強者なのに、株価はそれを数えていない。式典の事業は売上102億円で21億円の利益を出し、利益率は2割に達する。死亡数は2040年ごろまで増え、神奈川は全国より高齢化の追い風が強い。会社は家族葬の小さなホールを増やし、時代の変化に手を打っている。
互助会の仕組みも見方を変えれば強みだ。会員は前もって掛金を払い、その互助会の斎場を選ぶ。客を囲い込めるので、ネットの紹介会社に手数料を払わずに済む。預かった掛金を国債で回せば、金利が上がるほど利息が増える。
借入はゼロで、配当は安定している。2027/03期は増配の予想だ。今の値段は、会社予想の純利益の8倍もしない。10年後に件数が3割増えるだけで、営業利益は今の1.5倍になる。厚い資産を割り引いても、稼ぎの割に安すぎる。神奈川で地域に約20の斎場を持つ網は、新しい会社がすぐに作れるものではない。家族葬のホールは小さく、建てる費用も人手も少なくて済む。時代に合わせた作り替えが進めば、利益率はむしろ上がる。
慎重な見方
葬儀の需要が増えるのは確かだが、1件の単価は下がり続けている。一般葬は家族葬に、家族葬は直葬に変わった。ネットの紹介会社が定額の安い式を並べ、客は値段で選ぶ。件数が3割増えても、売上の金額はその分ほどは伸びない。
互助会は強みというより重荷になりつつある。若い世代は入らず、会員は年を取る。253億円の掛金は、いつか式で返すか、解約で戻す約束だ。現金と債券の143億円はその裏付けで、株主の取り分ではない。自己資本比率は19%しかなく、資産の厚さは見かけだけだ。
利益の中身も弱い。介護とホテルは売上の3割を占めるのに、ほとんど稼がない。大きな会館の減損は毎年のように出て、2026/03期の純利益を押し下げた。2040年を過ぎれば死亡数は減り、斎場は余る。10年の追い風の後には、長い向かい風が来る。今の安さには理由がある。筆者が中立に置く件数の増加も、ネットの紹介会社に取り分を奪われれば消える。互助会の解約が増えれば、預かり金を返すために債券を手放し、利息も減る。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方の指摘はもっともだが、値段がそれを十分に織り込んでいると見る。互助会の掛金を株主の現金と見ないのは正しい。それを除いても、葬儀の地域の強さと死亡数の増加で、稼ぎは10年後に今の1.5倍以上になる見込みが高い。減損と薄い事業は割り引くべきだが、今の値段はそれ以上に低い。ただし単価の下落と互助会の縮みが同時に進めば話は変わるので、その二つを見張る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,051 円126 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 394 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 1,193 円73 億円、今との差 +24.6%、 期待の年率 +9.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,232 円260 億円 | 608 円37 億円 | +405.3% | +17.6% | 387 円24 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,169 円194 億円 | 515 円32 億円 | +284.6% | +14.4% | 811 円50 億円 |
| 中立 | 40% | 2,184 円134 億円 | 426 円26 億円 | +172.4% | +10.5% | 1,044 円64 億円 |
| やや悲観 | 20% | 545 円33 億円 | 279 円17 億円 | −14.0% | −1.5% | 165 円10 億円 |
| 悲観 | 10% | 326 円20 億円 | 57 円4 億円 | −60.0% | −8.8% | 38 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,051 円126 億円 | 394 円24 億円 | +155.2% | +9.8% | 2,445 円150 億円 |
今の株価時価総額 958 円59 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 家族葬のホールで地域を押さえる 利益 18 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 4,232 円260 億円
神奈川の死亡数は2030年代に大きく伸び、会社は家族葬のホールを毎年増やす。施行件数は10年で4割強増え、単価も霊園と仏壇の販売、会食の上乗せで名目2割増える。ネットの紹介会社に頼らず、互助会と地域の評判で客を呼び続ける。式典の利益率は22%に上がる。介護は利用者が2割増え、ホテルも単価を物価並みに上げて少し稼ぐ。営業利益は約27億円、純利益は約18億円になる。互助会の預かり金を国債で回す利息も、金利の上昇で増える。互助会の新規加入も、ホールの近くの住民を中心に下げ止まる。ROEは1割強に上がり、資本コストをはっきり上回る。配当は利益に沿って増え、株主への戻りも太る。
- 式典(葬儀・霊園・仏壇):数量 10,150(施行件数(件。推定))× 価格 175(1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む))→ 売上 178 億円・営業利益 39 億円。件数+45%、単価は名目+20%、利益率22%
- 介護:数量 720(利用者(人。推定))× 価格 493(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。利用者+20%、単価+30%、利益率5%
- ホテル:数量 15.0(利用客(万人。推定))× 価格 10,014(1人あたり売上(円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。客数横ばい、単価+34%、利益率4%
- その他(互助会・少額短期保険・清掃):数量 11.0(契約(万口。推定))× 価格 7,249(1口あたり売上(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。口数+10%、単価+34%、利益率2%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.17 倍、時価総額 260 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡数の増加と小さなホールの展開が両方うまく回り、単価の下げも止まる筋書き。全部がそろう必要があるので1割に満たない。
やや楽観 22% 件数の追い風に乗る 利益 15 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,169 円194 億円
死亡数の増加で施行件数は10年で4割近く増える。単価は家族葬への移りで下がる力と、物価の上昇がおおむね打ち消し合い、名目で15%上がる。小さなホールは人手が少なくて済み、式典の利益率は21%を保つ。介護は施設を少し増やし、ホテルは宴会の戻りでわずかに黒字を広げる。本社の費用は物価に沿って増える。営業利益は約21億円、純利益は約15億円に届く。ROEは1割前後で、資本コストを上回る。互助会の会員は減るが、そのぶん一般の客をホールの評判で取る。大きな会館の作り替えは計画どおり進み、減損は小さく収まる。配当は利益の3割の方針のまま増える。
- 式典(葬儀・霊園・仏壇):数量 9,660(施行件数(件。推定))× 価格 168(1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む))→ 売上 162 億円・営業利益 34 億円。件数+38%、単価は名目+15%、利益率21%
- 介護:数量 690(利用者(人。推定))× 価格 486(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 2 億円。利用者+15%、単価+28%、利益率4.5%
- ホテル:数量 15.0(利用客(万人。推定))× 価格 9,864(1人あたり売上(円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。客数横ばい、単価+32%、利益率3%
- その他(互助会・少額短期保険・清掃):数量 10.5(契約(万口。推定))× 価格 7,249(1口あたり売上(円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。口数+5%、単価+34%、利益率1%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.38 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡数の増加という確度の高い追い風に、ホールの新設が少し上乗せされる筋書き。起きやすさは中立に次ぐ。
中立 40% 件数は増え、単価は伸びない 利益 11 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 2,184 円134 億円
死亡数の増加と新しいホールで、施行件数は10年で3割増える。だが単価は名目で1割しか上がらない。一般葬が家族葬へ、家族葬が直葬へと小さくなり、ネットの紹介会社の定額の式が値段の上限を決めるからだ。物価の分を上げられないのはこのためだ。式典の利益率は今より少し低い20%に落ち着く。介護は国が決める報酬の改定が物価に遅れるので、単価は25%増にとどまる。ホテルはほぼとんとんだ。営業利益は約16億円、純利益は約11億円になる。互助会の前受金は会員の高齢化で少しずつ減り、預かり金の利息の伸びは小さい。配当は利益の3割で増えていく。ROEは資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。
- 式典(葬儀・霊園・仏壇):数量 9,100(施行件数(件。推定))× 価格 161(1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む))→ 売上 146 億円・営業利益 29 億円。件数+30%、単価は名目+10%(家族葬・直葬への移りとネットの定額の式で物価に届かない)、利益率20%
- 介護:数量 660(利用者(人。推定))× 価格 474(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。利用者+10%、単価+25%(国の報酬の改定が物価に遅れる)、利益率4%
- ホテル:数量 14.3(利用客(万人。推定))× 価格 9,715(1人あたり売上(円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。客数−5%、単価+30%、利益率2%
- その他(互助会・少額短期保険・清掃):数量 10.0(契約(万口。推定))× 価格 7,249(1口あたり売上(円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。口数横ばい、単価+34%、収支とんとん
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.28 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:死亡数の増加は確度が高い。一方で家族葬への移りとネットの値下げ圧力も続くので、両者を相殺する形を最も起きやすいと見る。
やや悲観 20% 単価が崩れ、互助会が細る 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 545 円33 億円
直葬と小さな家族葬が主流になり、単価は名目でも上がらない。施行件数は死亡数の増加で15%増えるが、ネットの紹介会社に客を取られ、取り分は下がる。互助会の新しい加入は細り、会員の高齢化で解約が増える。式典の利益率は16%まで落ちる。ホテルは宴会と婚礼が減って赤字になり、介護も人件費の上昇で利益が薄い。本社の費用は少し削るが、営業利益は約5億円にとどまる。純利益は3億円台で、ROEは資本コストの半分を下回る。介護は報酬の改定が物価に遅れ、単価は2割増にとどまる。配当は維持するが、利益に対する重みは増し、自己資本は伸び悩む。会館の減損も数年おきに出る。
- 式典(葬儀・霊園・仏壇):数量 8,050(施行件数(件。推定))× 価格 146(1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む))→ 売上 117 億円・営業利益 19 億円。件数+15%、単価は名目で横ばい、利益率16%
- 介護:数量 600(利用者(人。推定))× 価格 455(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。利用者横ばい、単価+20%、利益率2%
- ホテル:数量 12.8(利用客(万人。推定))× 価格 9,341(1人あたり売上(円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。客数−15%、単価+25%、赤字
- その他(互助会・少額短期保険・清掃):数量 9.0(契約(万口。推定))× 価格 7,033(1口あたり売上(円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。口数−10%、単価+30%、赤字
倍率:10年後のROEは約3.4%で資本コスト8.25%に届かない。PERの上限は1÷kの12.5倍で、稼ぐ力(純利益÷k)の約42億円より下に置く。利益が実質で細る局面なので8割の10倍とした。
確率:直葬とネットの紹介会社が想定より早く広がると起きる。業界ではすでに見えている流れなので、2割の確率を置いた。
悲観 10% 斎場が余り、会員が去る 利益 −4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 326 円20 億円
大手の葬儀社とネットの紹介会社が地域に入り、価格の安い式で件数を奪う。死亡数は増えても会社の件数は横ばいで、単価は名目で1割下がる。互助会では解約が相次ぎ、預かり金を返すために債券を手放す。大きな会館は使われなくなり、減損が続く。ホテルは客が3割減って赤字が広がり、介護も利益が出ない。営業損益は約5億円の赤字に転じる。預かり金の利息がわずかに支えるが、純損失が続き、配当も減る。斎場の土地は葬儀の他に使い道が乏しく、売っても値が付きにくい。株主に残るのは、預かり金を返したあとの債券と土地のわずかな残りだけになる。
- 式典(葬儀・霊園・仏壇):数量 7,000(施行件数(件。推定))× 価格 131(1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む))→ 売上 92 億円・営業利益 9 億円。件数横ばい、単価は名目−10%、利益率10%
- 介護:数量 540(利用者(人。推定))× 価格 436(1人あたり年間売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。利用者−10%、単価+15%、収支とんとん
- ホテル:数量 10.5(利用客(万人。推定))× 価格 8,968(1人あたり売上(円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。客数−30%、単価+20%、赤字
- その他(互助会・少額短期保険・清掃):数量 8.0(契約(万口。推定))× 価格 6,763(1口あたり売上(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。口数−20%、単価+25%、赤字
倍率:事業の稼ぎは赤字で、稼ぐ力からは値が付かない。現金・債券と売れる資産の税後から、互助会の前受金を果たす費用と他の負債を引いた約20億円を床にした。今の自己資本69億円の約0.29倍。
確率:単価の下落、互助会の解約、斎場の過剰が同時に起きる構造的な負け。連鎖の条件が重いので1割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
式典(葬儀・霊園・仏壇)
神奈川の県央・湘南と東京の八王子で、自社の斎場を使った葬儀を請け負う。家族葬の小さなホールを増やし、霊園と仏壇も売る。互助会の会員が主な客だ。
| 数量施行件数(件。推定) | 価格1件あたり売上(万円。霊園・仏壇を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,000 | 146 | 102 | 21 |
| 10 年後 中立 | 9,100 | 161 | 146 | 29 |
取り方:2026/03期の外部売上102.1億円とセグメント利益21.29億円は決算短信の開示。施行件数は開示が無く、地域の死亡数と斎場の数から約7千件と推定し、売上÷件数で1件約146万円とした(霊園・仏壇の売上を含む)。
介護
神奈川で有料老人ホームなどの介護施設を営む。
| 数量利用者(人。推定) | 価格1人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 379 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 660 | 474 | 31 | 1 |
取り方:外部売上22.76億円、利益0.85億円は決算短信の開示。利用者数は開示が無く約600人と推定し、売上÷人数で1人年約379万円とした。
ホテル
平塚などでホテルを営み、宿泊・宴会・婚礼と、葬儀のあとの会食を受ける。
| 数量利用客(万人。推定) | 価格1人あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 7,473 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.3 | 9,715 | 14 | 0 |
取り方:外部売上11.21億円、利益0.12億円は決算短信の開示。客数は開示が無く年約15万人と推定し、1人約0.75万円とした。
その他(互助会・少額短期保険・清掃)
互助会の募集と管理、少額短期保険、ビルの清掃などを営む。
| 数量契約(万口。推定) | 価格1口あたり売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 5,410 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 7,249 | 7 | 0 |
取り方:外部売上5.41億円、損失0.27億円は決算短信の開示。口数は開示が無く約10万口と推定した。
リスクと懸念
単価の下落
家族葬と直葬への移りが速まると、件数が増えても売上が伸びない。ネットの紹介会社の定額の式が値段の上限を下げる。
互助会の縮み
若い世代が加入せず、会員の高齢化で解約が増える。客の囲い込みが弱まり、解約の返戻で手元の債券を取り崩すことになる。
会館の減損
大きな会館は家族葬の時代に合わず、使われなくなると減損が出る。2026/03期の減益も減損が一因だった。
介護とホテルの赤字
介護は人手不足と報酬の改定の遅れ、ホテルは宴会と婚礼の減少で、赤字に転じる恐れがある。
規制の強化
互助会の解約の返戻をめぐる苦情は業界で多い。保全や解約の手数料の規制が強まれば、資金の回し方と利益が変わる。
2040年後の死亡数の減少
死亡数は2040年ごろに山を越える。その先は斎場が余り、件数の取り合いが激しくなる。
今後の分かれ目
- 決算で式典の単価の下落が件数の増加を上回ったら
- 中立の単価の見込みを下げ、やや悲観の重みを上げる
- 互助会の前受金が年に5%以上減り始めたら
- 会員の囲い込みが崩れたと見て、悲観の確率を上げる
- 家族葬のホールの新設が年5つ以上続いたら
- 件数の取り分が広がると見て、やや楽観の重みを上げる
- 介護かホテルを売るか閉じると開示したら
- 薄い事業が消えて利益率が上がると見て、中立の利益を見直す
- 大きな減損が2年続けて出たら
- 会館の作り替えの費用が重いと見て、中立の利益率を下げる
- 配当性向を4割以上に上げる方針を出したら
- 株主への戻りが太ると見て、還元の見込みを上げる
見ておくもの
- 式典の外部売上の伸び
- 式典のセグメント利益率
- 前払式特定取引前受金の増減
- 減損損失の額
- 介護とホテルのセグメント利益
- 家族葬のホールの新設数
倍率と資本コストの決め方
今の値段は会社予想の純利益の8倍もしない。だが互助会の掛金253億円という負債を抱え、自己資本は薄い。現金と債券が厚いから安いという見方はとらず、事業の稼ぎだけで値を付け、その稼ぎの伸びも単価の下落で控えめに見た。値段に引きずられて楽な結論にしていないか、そこを確かめた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→14.17 倍・やや楽観 PER 13→13.38 倍・中立 PER 12.5→12.28 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足した8.0%。同じ葬儀のティアと同じ。燦ホールディングスの7.5%より高いのは、互助会の前受金で自己資本が薄く、ホテルと介護の薄い事業を抱えるため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.25%。