結論
コシダカホールディングスは、カラオケ「まねきねこ」を国内で最も多く持つ会社だ。郊外を中心に手頃な料金で長く使ってもらう店で客を集め、国内に約 790 店、約 2.2 万室を構える。2025 年にはブラザー工業から JOYSOUND の直営店を引き受け、店数をさらに増やした。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業の力は本物だが、10 年先の価値は今の時価総額に届かない。
一番の理由は利益率だ。営業利益率は 2025 年 8 月期の 16% 台から、2026 年 8 月期は 13% 台へ下がった。店は増えたのに、人件費・光熱費・店の改装費が重く、既存店の売上は前年並みにとどまる。会社の予想にも 2 期続けて届いていない。
中立の筋書きでは、10 年後の営業利益は 150 億円ほどになる。会社が掲げた 150 億円の目標に、10 年かけてようやく届く計算だ。倍率は 12 倍が妥当で、これでは今の値段を超えない。出店と新サービスが当たれば上振れの余地は大きいが、その確率は半分もない。
見るべきは既存店の客数だ。会社が 2026 年 10 月に出店の急ぎ方を見直したのは、筆者には正しい判断に映る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で聞きたいのは「10 年後もこの事業を持ち続けたいか」だ。答えは「持ち続けても悪くないが、強い確信は持てない」である。
良い点は、事業が単純で、現金を生み、借金が軽いことだ。2026 年 8 月期の純利益は 63 億円、現金は 137 億円ある。経営は出店を自己資金でこなしてきた。
悪い点は、利益の質だ。堀が浅く、稼ぎの源が店の数と人手に依存する。利益率は 18% 台から 15% 台へ 2 年で下がった。人件費は物価並みに上がるが、客単価は物価ほど上げられない。この差が毎年利益率を削る。
安全域の目で見ると、今の時価総額 781 億円は、中立の筋書きの価値を上回る。ROE が高い間は倍率が付くが、利益をためるほど ROE は 10% へ薄まる。10 年先の中立の価値は、今の値段に届かない。
買うべきかは別の話だが、「手元の安心」と「払う値段」が噛み合っていない。利益率が下げ止まり、既存店が前年を超え始めれば、見方を改める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎのほぼすべてはカラオケ事業だ。2026 年 8 月期の売上 804 億円のうち 781 億円を占め、セグメント利益は 120 億円だった。
まねきねこは、郊外の大きな店で手頃な料金を出し、長く過ごしてもらう形で客を集める。歌うだけでなく、推し活などでの長時間の貸し切りにも使われる。部屋の数と客の回転がそのまま売上になる単純な事業だ。
店は国内で約 790 店ある。2025 年秋にはブラザー工業から JOYSOUND の直営店ほか 67 店(約 1,900 室)を引き受けた。まねきねこだけで 700 店を超える国内首位に、もう一つの看板が加わった形だ。
ほかの事業は小さい。不動産管理は売上 19 億円で、店舗用の物件を持ち貸す裏方だ。温浴事業は施設 2 か所を閉じて終えた。海外は数店で、米国とフィリピンに 1 号店を出す準備が進む。
会社は国内 3 万室・カラオケ売上 1,000 億円を「エンタメのインフラ」の目標に掲げる。出店ペースを年 50 店から 100 店へ上げる構想もあった。だが 2026 年 10 月に、出店を急ぐより既存店の底上げを優先する方針を示した。受付と会計をスマホで済ませる「まねきGO」も同月に始めた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、店の数と運営の型だ。ただし深い堀ではない。
国内の店数は首位で、全国のカラオケボックス約 8,300 店のうち 1 割弱を握る。出店の速さと、低い料金でも利益を残す運営の工夫が強みだ。JOYSOUND の直営店を取り込み、規模はさらに増した。
それでも堀が浅いと筆者は見る。部屋と機器があれば誰でも店を出せる。客が別の店へ移る費用はゼロだ。機器や曲は専門メーカーの仕組みを使うので、店ごとの違いも出しにくい。
資本の使い方はよかった。ROE は 2023 年 8 月期に 28%、2026 年 8 月期も 16% ある。自己資本比率は 54% で、純有利子負債は 20 億円ほどしかない。
弱点は、利益率が戻らないことだ。2024 年 8 月期に 16%、2025 年 8 月期に 16% 台だった営業利益率は、2026 年 8 月期に 13% 台へ落ちた。店を増やすほど、新店の立ち上がり費用と、人手の確保にかかる費用が先に出る。中期目標の営業利益 150 億円(2027 年 8 月期)は届きそうにない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カラオケボックスの市場は、コロナ前の水準まで戻った。帝国データバンクの推計では 2024 年度に約 3,200 億円で、2018 年度の 3,485 億円に迫る。底の 2021 年度は 1,740 億円だった。
回復の中身は変わっている。宴会の復活と訪日客に加え、郊外では家族の娯楽、歌わない長時間の利用が伸びた。一方で、物価高で客単価は伸び悩み、食材と人件費は上がる。都心の店は競争が厳しい。
競争の形は分散型だ。店数はまねきねこが首位で 700 店台。ビッグエコーは 440〜500 店、カラオケ BanBan は 390〜460 店、ジャンカラは約 200 店、カラオケ館は約 195 店と並ぶ(集計元で幅がある)。同社の売上 781 億円は市場の 4 分の 1 ほどだが、この比べ方は連結とフランチャイズの含み方が違うので目安にすぎない。
10 年の見通しは、数量が人口とともに弱く、価格は物価に追いつきにくいという構図だ。カラオケ参加人口は 2023 年度で 3,780 万人、コロナ前の 8 割だった。人口は減るが、歌わない用途が足せる。国内の部屋は約 11.3 万室あり、郊外の新店が増えるほど、近くの店と客を取り合う。
勝つのは、立地と運営でコストを抑え、客が来る理由を増やせる会社だ。逆に負けるのは、値上げができず、人件費と家賃だけが重く残る会社である。
資本政策と M&A
資本の使い道は出店が中心だ。稼いだ利益の多くを新店と改装に回し、配当は純利益の 37% ほどを払う。2027 年 8 月期も増配の予定だ。
大きな買収は 2025 年のブラザー工業からの JOYSOUND 直営店の取得だ。70 店ほどを加え、売上 1,000 億円へ近づける策だった。店を新しく建てるより早く室数が増えるが、買った店の利益率が自社の店並みに上がるかは、まだ決着していない。
大株主は、社長と専務が持つ資産管理会社のヨウザン(約 27%)と、別の資産管理会社のふくる(約 10%)だ。経営陣側の持株が厚いので、第三者による TOB(株式公開買付け)は起きにくい。逆に、少数株主の声は届きにくく、出店の速さを会社が決めきる。
店の多くは賃借で、家賃は毎年払う固定の約束だ。2028 年 8 月期からは新リース会計基準で、賃借の店が貸借対照表に載り、自己資本比率の見え方は変わる。
株主優待は、100株以上で年4千円相当(3年以上で8千円)の店舗利用券。会社は優待の費用を開示していないため、株主 約6万人(割引額×利用率7割×変動費率3割)から年5億円と推定した。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10年の還元に年額×10年を、中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5の係数で足した(費用は販管費として利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
まねきねこは国内の店数で首位を独走し、規模の経済がこれから効く。JOYSOUND の直営店 67 店を取り込んだことで、2027 年 8 月期は売上が 12% 増え、営業利益は 17% 増の 126 億円になる計画だ。新店の立ち上がりが終われば、利益率は 2025 年 8 月期の 18% 台まで戻りうる。
市場にも追い風がある。カラオケ参加人口はコロナ前の 8 割まで戻っただけで、まだ伸びしろがある。歌わない長時間の利用、推し活、外国人客が新しい需要を足している。会社の目標である国内 3 万室が実現すれば、現在の 1.4 倍の室数になる。
会計と受付をスマホで済ませる「まねきGO」で、店の人手が減る。人件費が重い事業で、これは利益率を数ポイント押し上げる。
資本面も強い。自己資本比率は 54% で、純有利子負債は小さい。景気が崩れても耐え、そのあと室数を取りに行ける。10 年後に営業利益 220 億円、時価総額 1,700 億円超の筋書きも、十分に描ける。
慎重な見方
利益の伸びは、すでに止まっている。2026 年 8 月期は売上が 16% 増えたのに営業利益は 5% 減った。既存店の売上は前年の 100.3% にとどまり、値上げを入れても客数が減っていると読める。店を増やしても、近くの店と客を分け合うだけだ。
会社は 2 期続けて予想に届かず、2027 年 8 月期の売上 1,000 億円・営業利益 150 億円の目標も、予想の 903 億円・126 億円では未達になる。2026 年 10 月に出店戦略の見直しを打ち出したのは、拡大路線の限界を認めたに近い。
構造の問題もある。賃金は物価並みに上がり続けるが、カラオケの客は値上げに敏感だ。人口は減り、郊外の新店は既存店の客を奪う。「歌わないカラオケ」は需要を足すが、客単価は低い。家賃は売上が落ちても減らず、不況時の利益は急に落ちる。2020 年 8 月期と 2021 年 8 月期は 2 期連続で赤字だった。
倍率の面でも、ROE は利益をためるほど薄まる。10 年後の営業利益が 126 億円のまま横ばいなら、価値は今の時価総額を下回る。
どちらに重みを置いたか
事業の力は強気の言い分が勝つが、利益率の下がり方は慎重な見方のほうが具体的だ。売上が伸びて利益が減る局面は、構造の問題を疑う材料になる。
確率は楽観を 9%、やや楽観を 22%、中立を 36% に置き、やや悲観を 22%、悲観を 11% とした。慎重側にやや寄せたのは、人件費が物価で上がる一方、客単価の値上げ余地が小さいためだ。
中立の営業利益は 150 億円ほどで、会社が掲げた目標への到達が大きく遅れる姿だ。この水準でも倍率は 12 倍で、今の時価総額を超えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 1,371 円1,136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 388 円322 億円)。 今の値に割り戻すと 899 円745 億円、今との差 −4.5%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,540 円2,105 億円 | 537 円445 億円 | +227.0% | +12.6% | 277 円229 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,944 円1,611 億円 | 467 円387 億円 | +156.2% | +9.9% | 530 円440 億円 |
| 中立 | 36% | 1,575 円1,305 億円 | 424 円351 億円 | +112.3% | +7.8% | 719 円596 億円 |
| やや悲観 | 22% | 550 円455 億円 | 331 円275 億円 | −6.4% | −0.7% | 194 円161 億円 |
| 悲観 | 11% | 241 円200 億円 | 107 円89 億円 | −62.9% | −9.4% | 38 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,371 円1,136 億円 | 388 円322 億円 | +86.9% | +6.5% | 1,759 円1,457 億円 |
今の株価時価総額 941 円780 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 国内 3 万室と省人化が当たり、利益率が 17% に戻る 10 年 利益 134 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 2,540 円2,105 億円
国内の室数が 3 万室に届き、延べ利用客数は 5,500 万人に増える。新店は近くの店と客を食い合わず、全国で空白地を埋める。受付と会計をスマホで済ませる仕組みが定着し、人手が減る。客単価は物価を少し上回って伸び、カラオケ事業の営業利益率は 17% に戻る。買った JOYSOUND の店も自社並みの稼ぎになる。
歌わない需要や外国人客が加わり、稼働が落ちにくい。海外と新しい業態も小さな柱になる。会社が目標とした営業利益 150 億円は 2030 年前後に届き、10 年後は 220 億円を超える。純利益の 4 割を配当に回しても自己資本は 1,000 億円に積み上がり、ROE は 13% を保つ。最も恵まれた 10 年だ。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか):数量 5,500(年間の延べ利用客数(万人・推定))× 価格 2,590(1 人あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 1,425 億円・営業利益 242 億円。利用客 5,500 万人 × 1 人 0.26 万円・利益率 17%
- 不動産管理事業:数量 16.0(賃貸・管理する面積(万㎡・推定))× 価格 18,760(1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定))→ 売上 30 億円・営業利益 5 億円。賃貸面積の微増と賃料の上昇
- その他(温浴終了後の新業態):数量 25.0(拠点数(店・推定))× 価格 1.60(1 拠点あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。新業態が育ち小さな黒字
倍率:事業の純利益 134 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.63 倍、時価総額 2,098 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の拡大、買った店の立ち直り、省人化による人件費の圧縮が同時に当たる必要がある。会社の目標どおりに進む筋書きで、実現すれば強いが、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 室数が増え、利益率は 15% 台に戻る 10 年 利益 105 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 1,944 円1,611 億円
室数は 2.6 万室ほどまで増え、延べ利用客数は 5,150 万人になる。出店の速度は落ちるが、立地を選んで、既存店の客数は横ばいで保つ。客単価は物価をわずかに下回る伸びで、利益率は 15% 台へ上がる。「まねきGO」の効果で人件費の上昇は一部吸収する。
JOYSOUND の店は営業利益率が数ポイント改善し、減損は出ない。10 年後の営業利益は 180 億円ほどで、会社の掲げた 150 億円を 10 年後に超える。歌わない利用も増えるが、客数の伸びは緩やかだ。配当は純利益の 4 割を保ち、ROE は 11% ほどになる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか):数量 5,150(年間の延べ利用客数(万人・推定))× 価格 2,470(1 人あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 1,272 億円・営業利益 197 億円。利用客 5,150 万人 × 1 人 0.25 万円・利益率 15.5%
- 不動産管理事業:数量 15.0(賃貸・管理する面積(万㎡・推定))× 価格 18,760(1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定))→ 売上 28 億円・営業利益 4 億円。物件の賃料が物価並みに上がる
- その他(温浴終了後の新業態):数量 14.0(拠点数(店・推定))× 価格 1.43(1 拠点あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。新業態は収支が均衡
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15 倍、時価総額 1,578 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近い筋書き。2027 年 8 月期の予想(営業利益率 13.9%)どおりに増収増益が続くが、2 期続けて予想に届いていない実績から、計画どおりの確度は半々と見た。
中立 36% 室数は増えるが、利益率は 14% 台で頭打ちの 10 年 利益 87 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 1,575 円1,305 億円
室数は 2.4 万室ほどまで増え、延べ利用客数は 4,850 万人になる。人口が減り、近くの店と客を分け合う中でも、会社は郊外と地方の空白地に出店を続けて首位を保つ。客単価は物価を下回る伸びで、利益率は 14% 台で頭打ちになる。人件費の上昇を、省人化と値上げでほぼ吸収するが、それ以上は戻らない。
10 年後の営業利益は 150 億円ほどだ。会社が 2027 年 8 月期に掲げた営業利益 150 億円の目標に、10 年かけて届く計算になる。カラオケ以外は小さく、本社費は物価並みに膨らむ。配当は純利益の 4 割で、ROE は 10% 弱まで薄まる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×1.0=50億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか):数量 4,850(年間の延べ利用客数(万人・推定))× 価格 2,405(1 人あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 1,166 億円・営業利益 169 億円。利用客 4,850 万人 × 1 人 0.24 万円・利益率 14.5%
- 不動産管理事業:数量 14.0(賃貸・管理する面積(万㎡・推定))× 価格 18,760(1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定))→ 売上 26 億円・営業利益 4 億円。賃料は物価並み、面積は横ばい
- その他(温浴終了後の新業態):数量 10.0(拠点数(店・推定))× 価格 1.50(1 拠点あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。新業態は小さな赤字
倍率:事業の純利益 87 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.43 倍、時価総額 1,254 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人件費は物価で上がり、客単価はそれより弱い。出店は続くが、近くの店と客を分け合って 1 室あたりの稼ぎは薄まる。現在の利益率(13% 台)から少し戻るだけの、最も確度が高い筋書き。
やや悲観 22% 店が客を食い合い、客単価も伸びずに利益率が 1 割に落ちる 10 年 利益 42 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 550 円455 億円
室数は 2.2 万室前後にとどまり、延べ利用客数は 4,400 万人まで減る。人口減と近くの店との食い合いで、1 室あたりの利用が落ちる。客単価は値上げに客が反発して物価を大きく下回り、人件費と光熱費の上昇を吸収できない。カラオケ事業の営業利益率は 10% に下がる。
買った JOYSOUND の店に減損が出て、出店を止めて既存店の維持に回る。10 年後の営業利益は 70 億円ほどで、今の 3 分の 2 だ。配当を絞っても ROE は 5% 前後で、稼ぐ力が資本コストに届かない。新しい店を出しても、利益の薄い店が増えるだけの 10 年になる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.8=37.5億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか):数量 4,400(年間の延べ利用客数(万人・推定))× 価格 2,150(1 人あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 946 億円・営業利益 95 億円。利用客 4,400 万人 × 1 人 0.22 万円・利益率 10%
- 不動産管理事業:数量 13.0(賃貸・管理する面積(万㎡・推定))× 価格 17,000(1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。面積は縮み賃料は物価を下回る
- その他(温浴終了後の新業態):数量 8.0(拠点数(店・推定))× 価格 1.50(1 拠点あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 −2 億円。新業態の赤字が続く
倍率:ROE 6% は k 8% 以下なので、稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k)が価値の上限で、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍。やや悲観は構造的な負けの筋書きなので、上限の約 8 割の 9.5 倍に置き、7 割への引き上げはしない。
確率:郊外の新店が既存店の客を奪う状況は、すでに 2026 年 8 月期(売上 +16%、営業利益 −5%)に見えている。この流れが続く筋書きで、中立と並ぶ重みで置いた。
悲観 11% 過剰出店と景気後退が重なり、固定費の重さで利益が消える 10 年 利益 4 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 241 円200 億円
室数は増えたのに需要が追いつかず、延べ利用客数は 3,500 万人まで減る。客単価は物価より遥かに低くしか上げられない。家賃と人件費は売上が落ちても減らず、カラオケ事業の営業利益率は 4% 台まで落ちる。赤字の店が続出し、減損と閉店が相次ぐ。
会社は配当を大きく削り、出店を止めて、店の整理に追われる。海外と新業態は撤退する。10 年後の営業利益は 10 億円に満たず、純利益はほぼ消える。
もう成長企業ではなく、持っている店と現金で価値が決まる会社になる。買った JOYSOUND の店は多くが閉じられ、借り入れの返済と家賃の支払いを優先する。株主への還元は、わずかな配当にとどまる。還元には、株主優待の受け取り(費用ベース年5億円×10年×0.5=25億円)も足した。優待の費用は利益から引き済み。
- カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか):数量 3,500(年間の延べ利用客数(万人・推定))× 価格 1,900(1 人あたり売上(円・名目・推定))→ 売上 665 億円・営業利益 30 億円。利用客 3,500 万人 × 1 人 0.19 万円・利益率 4.5%
- 不動産管理事業:数量 13.0(賃貸・管理する面積(万㎡・推定))× 価格 15,400(1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。賃料が伸びず面積も縮む
- その他(温浴終了後の新業態):数量 7.0(拠点数(店・推定))× 価格 1.43(1 拠点あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 −3 億円。撤退で縮小し赤字
倍率:稼ぐ力(純利益 ÷ k)は 5 億円ほどにしかならないので、床は今の自己資本 351 億円(最新の決算後は 425 億円)に PBR 0.57 倍として置いた。賃借中心の事業で、自社物件・店の内装と機器の中古価値と敷金が下支えになる前提。ためた利益には掛けない。
確率:2020〜2021 年 8 月期は 2 期連続で赤字だった。景気後退や再び外出が止まる事態に、近くの店との食い合いと人件費の上昇が重なれば、10 年に一度は起こりうる。1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
カラオケ事業(まねきねこ・JOYSOUND 直営店ほか)
国内でカラオケ店を約 790 店、約 2.2 万室運営する。まねきねこは郊外型の低価格・長時間利用が柱。2025 年にブラザー工業から JOYSOUND 直営店を買った。海外は数店。
| 数量年間の延べ利用客数(万人・推定) | 価格1 人あたり売上(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 4,220 | 1,850 | 781 | 120 |
| 10 年後 中立 | 4,850 | 2,405 | 1,166 | 169 |
取り方:開示はカラオケ売上 780.8 億円とセグメント利益 120.3 億円、室数(約 2.2 万室)まで。客数は公開されていないので、1 人あたり 0.185 万円(部屋代と飲食の合計の目安)で割った推定の 4,220 万人。全国の参加人口 4,070 万人(2024 年度)が年に数回通うとして延べ 1.5〜1.7 億人、同社はその 25% ほどという見積もりと合う。10 年の数量は室数の増加と人口減・競合の食い合いを差し引いて中立 1.15 倍、価格は物価より弱く 1.30 倍に置く。
不動産管理事業
自社で持つ・管理する店舗用の物件の賃貸と管理。売上は小さく、カラオケ店の立地を支える裏方。
| 数量賃貸・管理する面積(万㎡・推定) | 価格1㎡あたり年間賃料(円・名目・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 13.6 | 14,000 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 14.0 | 18,760 | 26 | 4 |
取り方:開示は売上 19.1 億円と利益 2.2 億円だけ。賃料を 1㎡ 年 1.4 万円と見て割り戻した推定の面積。物件売却(厚木)が出ており、面積は伸びても横ばいと置く。
その他(温浴終了後の新業態)
温浴施設 2 か所を閉じ、温浴事業を終えた。ネコラボカフェなど小さな新しい業態が残る。赤字が続く。
| 数量拠点数(店・推定) | 価格1 拠点あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 8.0 | 1.15 | 9 | −1 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 1.50 | 15 | −1 |
取り方:開示は売上 9.2 億円と小さな赤字だけ。拠点数は推定で、温浴の撤退後は数拠点の小さな新事業と見る。
リスクと懸念
既存店の客数が減り続ける
2026 年 8 月期の既存店売上は前年の 100.3% で、値上げを入れてなお横ばいだった。客数が減っていると読める。近くに新店を出すと、自社の店どうしで客を奪い合う。この状態が続くと、店を増やしても利益が増えない。
人件費の上昇に値上げが追いつかない
賃金は物価並みに毎年上がるが、カラオケの客は値上げに敏感で、客単価は物価ほど上げられない。差は毎年、利益率を削る。受付と会計をスマホで済ませる「まねきGO」が人手を減らせるかが分かれ目になる。
家賃という固定の約束が残る
店の多くは賃借だ。売上が落ちても家賃は減らない。コロナ期は 2 期連続で赤字になった。賃借料は売上の 1 割前後と筆者は推定する。2028 年 8 月期からは新リース会計基準で負債の見え方が変わるが、固定費の重さは同じだ。
買った店の利益が上がらない
2025 年に引き受けた JOYSOUND の直営店は、2026 年 8 月期の営業利益率を押し下げうる。自社の店並みの利益率に上がるまで時間がかかるか、上がらない可能性がある。減損が出れば利益はさらに削られる。
歌わない需要が一時の流行で終わる
長時間の貸し切りや推し活は、客数を支えているが、客単価が低い。流行が移れば、郊外の大型店の稼働が落ちる。部屋数を増やした後に需要が細ると、固定費が重くのしかかる。
経営の資本の使い方が内向きになる
大株主は経営陣側の資産管理会社で、約 4 割を占める。出店の速さも配当も会社が決めきれる。判断が当たれば強いが、外れた時に止める力が株主から働きにくい。TOB(株式公開買付け)で割り込まれる可能性は低い。
今後の分かれ目
- 既存店の売上が 2 期続けて前年を 3% 以上上回る
- 値上げと客数の両方が通る証拠になる。営業利益率は 15% 台へ戻り、楽観寄りの筋書きが現実味を増す。
- 2027 年 8 月期の営業利益が予想の 126 億円に届かず、3 期連続で予想を外す
- 利益率の低下が構造だと確かめられる。やや悲観の筋書きの確率を上げて見る必要がある。
- 「まねきGO」と新サービスで、店の人手と人件費率が目に見えて下がる
- 最大の費用の削減が証明され、営業利益率は 17% 前後まで戻りうる。強気の筋書きの土台になる。
- 会社が出店ペースを落とし、新店の数を絞る
- 売上の伸びは鈍るが、利益率と既存店の質は守りやすい。長期の ROE の薄まり方も緩やかになる。
- 景気が悪化し、裁量の娯楽消費が一斉に削られる
- 家賃が固定費として残り、利益は急に落ちる。コロナ期ほどでなくても、悲観寄りの筋書きに近づく。
- 海外(米国・フィリピン)の 1 号店が想定を超えて稼ぐ
- 国内の頭打ちを補う成長の第 2 の柱になる。ただし店数が少ないので、10 年の利益への寄与は限られる。
見ておくもの
- 国内のまねきねこ既存店売上の月次(前年同月比)と、客数・客単価の内訳
- 2027 年 8 月期の営業利益率(予想は 13.9%)と、人件費率の動き
- 新規出店数と、2026 年 10 月に見直した出店方針の具体策
- JOYSOUND 直営店の利益率と減損の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE(中立で約 10%)と k 8%・g 4% から正当化 PER を出し、中立は 12 倍に置いた(1÷k の 11.8 倍を下限、式の上限 12.6 倍の約 95%)。今の PER や同業の倍率は使っていない。今の時価総額(781 億円)が倍でも半分でも、数字は動かない作りにした。数量と価格は市場規模・室数・店数の見積もりから積み、今の株価には寄せていない。店の多くは賃借で、2028 年 8 月期から新リース会計基準でリース負債が貸借対照表に載り、営業利益は少し増え、純有利子負債と自己資本比率の見え方が変わる。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。FY2026 は決算が出たが facts は 2025/08 のままなので、自己資本と純利益の起点を最新の値に置き直した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.63 倍・やや楽観 PER 12.5→15 倍・中立 PER 12→14.43 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。