結論
ヒトトヒトホールディングスは、プロスポーツの試合運営と商業施設の警備・清掃を柱に、人を集めて安全な現場を動かす会社である。長く持つ株主の目では、事業の必要性は高いが、現在の時価総額約73億円は10年の本質価値にほぼ見合い、十分な安全域があるとは言いにくい。施設を守り、何万人もの観客を誘導する仕事は、画面操作の自動化だけでは消えない。プロ野球12球団中8球団の本拠地で働いた実績と、1万人を超える登録スタッフの動員力は、顧客が契約を替える際の障害となる。
2026年7月のSPD買収は、北関東の常駐警備を取り込み、事業の売上規模を一段引き上げた。会社は翌期の売上260億円超を予想するが、その大部分は買収の連結効果であり、既存事業が同じ速さで伸びたわけではない。2026年3月期の利益には大阪・関西万博の一時需要も混じる。数量と単価を分けて考えれば、真の強さは案件を増やす力よりも、人件費上昇を契約単価に転嫁し続ける力にかかっている。
警戒したいのは貸借対照表である。2026年3月期末の自己資本約29億円に対し、のれんは約60億円、純負債も約31億円ある。その後の買収には新たに約30億円を借りた。事務派遣にはAIエージェント代替が迫り、警備にも省人化が進む。中立では現場警備を維持しつつ事務系の仕事は縮むと見たが、確率で割り戻した現在価値は約76億円にとどまる。少し割安に映っても誤差の範囲であり、将来の増益を無条件に信じて払う値段ではない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に見るのは、10年後に同じ仕事を誰が担うかである。球場には混雑を整理する人が必要で、大型商業施設には事故を未然に防ぐ人が必要だ。機械で監視が便利になっても、客が困った時に判断する現場責任者は簡単には消えない。8球団の球場での受託経験と、1万人以上を招集できる人材網には価値がある。しかし、その価値がすべて営業利益になるわけではない。応募者を集める費用と上昇する時給を払い、契約更新のたびに価格交渉をしなければならないからだ。
大事なのは、会計上の純利益より、借金の返済と必要な採用・システム投資を済ませた後に持ち主に残る現金である。警備服や端末に大きな設備投資は要らないが、受託先から入金される前に人件費が先に出る。SPDのような買収で取引先を増やしても、対価と利息の合計を上回る増分利益が出なければ株主は豊かにならない。既存ののれんの大きさは、過去の成長が現金を払って手に入れたものであることを物語る。
この会社を全否定する理由はない。スポーツの運営と施設警備が互いの繁閑を埋める仕組みは、同じ時間を売る普通の派遣会社より魅力がある。一方で、契約単価を自由に決められるほどの独占力はなく、事務派遣では技術に顧客の作業を奪われる。業績の上振れと買収の成功を丸ごと先払いすることは避けたい。確率加重の適正価値は現在の時価総額とわずかな差しかなく、負債と減損を受け止めるための安全域はまだ薄い。
何で稼ぐ会社か
収益は人財サービスという単一の会計セグメントで報告されるが、実際には性質の違う四つの仕事がある。2026年3月期のビルマネジメントは約115億円で、商業施設、オフィス、工事現場の常駐・誘導警備と清掃を引き受ける。警備員をどれだけ配置するかと、契約した一人・一時間当たりの請負単価が稼ぎを決める。大手不動産会社などの施設で入居者や来客に接し、建物が営業し続ける限り業務が残りやすい。
イベントマネジメントは約48億円である。明治神宮野球場を祖業とし、現在はプロ野球8球団の本拠地、JリーグやBリーグのチーム、ゴルフ大会などで警備、案内、設営、清掃、物販まで請け負う。試合の開催日数と現場ごとのスタッフ人数が数量であり、現場運営をまとめて任されるほど一開催日当たりの受託額が大きくなる。2026年の会社資料は1万2,000人を超えるアルバイト人材プールを示している。ただし登録者数と実際の年間稼働者数は同じではない。週末の球場で採用した人が、平日の商業施設でも働けることが他社にない効率の源だ。
人財サポートは約36億円で、通信事業者の顧客窓口や契約事務への派遣と、携帯端末の店頭販売支援が主力である。こちらは人の稼働時間を売る構造が強い。事務作業はAIが顧客自身のシステムを操作するようになると必要人数が減るため、球場の人員と同列に成長を扱えない。その他は備品・装飾物の調達や多目的施設運営など約2億円の小さな仕事である。
2026年7月に加わったSPDは、北関東の施設警備を中心に年商約89億円の事業基盤を持つ。2026年3月期の区分別実績には含まれないため、10年先のビルマネジメントの人数には、この買収で新たに加わる勤務量を明示して織り込んだ。今期の大幅増収をそのまま既存顧客の自然成長として延ばしてはいない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、優秀な警備員を一人採用することではなく、大人数を限られた時間に現場へ送り、安全に指揮する力にある。野球場での長い取引と、商業施設の開業時に大量動員した経験は顧客の安心につながる。2026年の会社資料は1万2,815人の人材プールを示し、SPDにも3,000人を超える人材がいるという。SPDの契約継続率が9割を超える事実は、警備の一部に乗り換えの手間があることを裏づける。ただし、人材プールの人数そのものは売上や利益の独占権ではない。
堀、すなわち競争相手がすぐには模倣できない優位は、スポーツ興行にはあるが、全社一律に強いとは言えない。施設警備ではセコムやALSOK、地域の警備会社と受注を争い、価格改定のたびに発注者から費用明細を問われる。労務費を価格に転嫁する交渉は続けているものの、物価上昇を上回る値上げが恒常的に通ったという定量的な証拠は確認できない。営業利益率は2024年3月期の約2%から2026年3月期の約5%へ上がったが、大阪・関西万博による上振れをならして評価すべきだ。
資本効率にも注意を要する。2026年3月期のROEは高いが、自己資本が薄く、利益を生まないのれんが多いほど高く見える面がある。営業利益だけでなく、買収に払った資金に対して、その後の追加利益がどれだけ残るかを測らなければならない。借入を重ねて規模を増やすだけでは、増分の投下資本利益率が資本コストを超えた証明にならない。警備とイベントは10年後も残りやすい一方、全社の経済的な堀は通常程度と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
警備は需要そのものが突然なくなる産業ではない。経済産業省が紹介する2024年の警備市場は約3.4兆円で、事業者は1万社を超える。うち小規模事業者が多く、分散市場である。セコムとALSOKが全国規模で先行し、東洋テック、日本管財や地域の専門会社が施設ごとに競う。東京商工リサーチの2024年警備業売上ベースでは、セコム約4,057億円、ALSOK約2,566億円で、警備市場全体に対する概算比率はそれぞれ約12%、約8%となる。ただし集計対象と業務範囲が完全には一致しない。同社の買収前のビル管理売上を市場全体に対比すると0.4%未満、SPDの通年売上を加えても0.6%程度が上限の粗い目安だ。両社の売上には清掃も含まれるため、厳密な警備シェアではない。
働き手の不足は需要と費用の両方を押し上げる。警備業界では60歳以上の従事者が多く、採用競争が厳しい。警備会社が人を確保できれば受注を増やせるが、賃金だけが先に上がれば利幅は薄くなる。監視カメラ、遠隔対応、ロボットで一部の巡回を減らせても、事故の初動、混雑の誘導、接客まで無人化するには壁がある。常駐人数は10年で横ばいから減少もあり得るが、全国拠点を広げて顧客の仕事を奪える会社にはシェア増の余地がある。
スポーツでは野球の試合日数はほぼ成熟している一方、新しいアリーナやBリーグの興行は開拓余地がある。国の2030年スポーツ産業15兆円構想は施設運営業務だけの市場ではないので、売上数量にそのまま掛けない。球団との取引実績は野球で8球団・12球団の約3分の2だが、担当業務は球団によって違い、独占的な市場占有率を意味しない。競争相手にはシミズオクト、セレスポなどのイベント運営会社もいる。
最も性質が違うのが人財サポートである。派遣市場全体は厚生労働省統計で10兆円規模だが、同社の一般事務や通信販売支援が占める分野はその一部にすぎない。パーソルやスタッフサービスなどの大手との競争に加え、AIエージェントが顧客対応や事務入力を直接こなす。中立の事務系稼働量は現在の65%まで減り、受託単価も物価上昇に届かないと見た。反対に現場警備とイベントの身体作業にはこの縮小率を機械的に当てない。
資本政策と M&A
資本政策の中心には借入を使った買収がある。前身事業を束ねた後、2021年には現在のヒトトヒトキャリアライズ、2023年にはエース警備保障・エースガードを取得し、2026年7月にはSPD&Companyを総額約31.6億円で子会社化した。この買収では30億円を7年返済で借りており、買収前から約31億円あった純負債と合わせると財務の余裕は小さい。上場によって既存借入の財務制限条項は撤廃されたが、返済と金利の経済負担は残る。取得価格の妥当性は、買収後の自由現金収支で証明する必要がある。
2026年3月期ののれんは約59.5億円で、自己資本の207%に相当する。会社はのれん・自己資本比率を200%、ネット有利子負債・自己資本比率を100%まで下げる目標を示したが、SPD買収後の健全性については再点検が必要だ。買収関連の無形資産償却費を足し戻した調整後利益は参考になるものの、借入利息と将来ののれん減損リスクまで消えるわけではない。
2026年10月22日の単年度予想は2027年3月期の売上260.2億円、調整後営業利益13億円、調整後純利益7.5億円である。数値付きの複数年度中期経営計画については確認できず、2028年以降の売上・利益・ROEには数字の約束なし。一方、株主還元は総還元性向30%以上、年間配当総額3億円を下限とする明確な方針があり、2027年3月期は中間・期末で計3億円を予定する。上場に伴う売り出しで投資ファンドの保有比率は減ったが、なお影響力が大きい。配当の開始を評価しつつ、現金の株主への戻り方は全額ではなく75%としている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
警備員とイベントスタッフは、急に何百人も必要になる日に最も価値を発揮する。会社は野球場で半世紀にわたって現場運営を担い、いまや8球団の本拠地に入る。清掃から始まった取引が案内、警備、物販、設営に広がった事実は、顧客内の担当業務を増やす力がある証拠だ。単なる派遣会社なら、同じ現場でこれほど幅広い業務を増やすことは難しい。新設アリーナが増え、Bリーグやライブの開催日が伸びれば、特定の人気球団に頼らず動員回数を増やせる。人材プールは1万2,815人に達し、実際に頻繁に働く人材も増えている。人を探す際に新規採用広告だけに頼らず、経験者に再び来てもらえる点は、実質的なコスト優位となる。
SPDの取得で北関東の商業施設警備が増え、通年約89億円の売上が加わる。継続率が9割を超える顧客網と3,000人超の人材プールは、同社の球場中心の繁閑をならす助けになる。買収先と人員や営業拠点を共用できれば、追加の買収をしなくても稼働率を上げる余地がある。近年の警備業界は小規模事業者が多く、顧客が大型案件を一括発注するほど、採用力と管理体制を持つ企業への集中が進みやすい。
事務派遣の縮小は避けがたくても、その売上は全体の2割弱である。現場業務の単価改定と新規物件の獲得がこれを補えば、10年後に利益の重心はさらに警備・イベントへ移る。銀行借入を予定どおり減らし、株式を増やさず買収を消化できれば、資本利益率は上がり、安定配当も続けられる。特にイベントで顧客内の業務シェアを深め、組織として受注する範囲を広げられれば、競合より高い利益率を維持できる余地がある。
慎重な見方
見た目の増収にだまされてはいけない。2026年3月期の数字には大阪・関西万博の一時受注が14.52億円含まれ、2027年3月期の増収の多くは7月に買ったSPDの連結による。前身の単体売上が年6%台で伸びた実績はあるが、過去の連結売上の急拡大をそのまま10年先に延ばすことはできない。施設警備は顧客から必要人数を指定されやすく、契約更改で人件費の全額を転嫁できる保証はない。大手のセコムやALSOKと価格・採用を争う以上、地方企業を買って規模を大きくしても、利益率が同じように上がるとは限らない。
さらに貸借対照表の弱さがある。2026年3月末時点ののれん約60億円は自己資本約29億円の2倍を超え、純負債も約31億円に達していた。これにSPD取得のための新規借入30億円が重なる。取得費用や無形資産償却を除く調整後利益が増えても、利払いと借入返済は現金で必要だ。好調な年の利益と買収後の売上を比較するだけでは、真に資本効率が改善したかは分からない。買収先の景況が悪化した時には、のれんの減損が株主資本を急減させる可能性もある。
人財サポートは顧客のバックオフィスと通信機器の販売支援を抱える。一般事務の入力や照会はAIエージェントが直接処理でき、必要な派遣人数が減れば時給を物価並みに上げても売上は残らない。警備でも遠隔監視が普及すれば深夜の巡回人数は減り得る。スポーツ興行も契約更新で失注すれば、人材プールは固定的な採用・管理費を生むだけになる。借金が多いため悪い年に配当の下限を守れるとは限らず、会計上の自己資本を下値の支えと考えるのも危険だ。
どちらに重みを置いたか
事業の存続可能性では現場の動員網を評価する。AIが直ちに球場の警備員を置き換えるという見方は採らない。しかし、SPD統合後の純負債、自己資本を上回るのれん、万博売上の一過性という三つは、会社固有の明確な下振れ要因である。中立の数量にはすでに事務派遣のAI代替を入れ、同じ理由で資本コストや確率を何重にも悪化させない。上側31%、下側38%と慎重側へ小幅に寄せたのは、価格転嫁と買収の増分利益がまだ10年間の実績で証明されていないからだ。現在の価値は株価に近く、強気の成長が実現しても安全域を十分に確保できているとは判断しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 853 円119 億円(+ 還元の換算額還元の合計 250 円35 億円)。 今の値に割り戻すと 543 円76 億円、今との差 +18.9%、 期待の年率 +10.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 2,328 円326 億円 | 479 円67 億円 | +514.0% | +23.2% | 309 円43 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,589 円223 億円 | 335 円47 億円 | +321.1% | +17.8% | 385 円54 億円 |
| 中立 | 31% | 742 円104 億円 | 260 円36 億円 | +119.2% | +9.7% | 311 円43 億円 |
| やや悲観 | 24% | 171 円24 億円 | 171 円24 億円 | −25.2% | −3.7% | 82 円11 億円 |
| 悲観 | 14% | 55 円8 億円 | 62 円9 億円 | −74.4% | −15.9% | 16 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 853 円119 億円 | 250 円35 億円 | +141.3% | +10.8% | 1,103 円154 億円 |
今の株価時価総額 457 円64 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 11% 現場網を全国へ拡大し、高付加価値の大会運営まで受託 利益 24 億円 · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,328 円326 億円
プロ野球の既存球場で警備や清掃以外の業務を増やし、新設アリーナやゴルフ大会でも顧客を獲得する。イベントの年間稼働日相当は大きく増え、統括運営まで一括で任される契約が増えるため、単価も物価上昇を超える。12,000人を超える人材プールとSPDの北関東拠点を行き来する働き手が増え、繁閑差を埋める仕組みが生きる。警備の勤務量も買収直後の規模よりさらに伸び、契約更改では人件費をきちんと価格に転嫁する。
人財サポートでは事務作業のAIエージェント代替が進むが、店頭接客に残る需要を取り込むため稼働人数の減少は小さい。これはAIで新しい売上が生まれる想定ではなく、人による対応が残る部分の防衛に成功する筋書きである。営業利益率の改善には、新たな買収を連発せず、既存の人材網を効率よく使うことが条件となる。SPD取得後の借入を返しながら既存の顧客を守り、無理な増資やのれん減損を避けられれば、利益の厚い地域総合警備・イベント運営会社に近づく。株主還元も利益の増加に沿って増やせる。
- ビルマネジメント(警備・清掃):数量 4,400(年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定))× 価格 0.08(稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年))→ 売上 370 億円・営業利益 26 億円。万博約252人年を除き、SPD約1,547人年を加えた正常化起点約3,295人年からの推計。警備・清掃の常駐量と労務費の転嫁率に依存。
- イベントマネジメント:数量 1,600(主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定))× 価格 0.07(1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日))→ 売上 106 億円・営業利益 14 億円。試合・大会の担当開催日相当数×平均受託額で表す。
- 人財サポート(事務派遣・販売支援):数量 650(年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定))× 価格 0.07(派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替を受ける人月・工数型。売上の実質数量を落とし価格も物価以下。
- その他(備品・工事・施設運営):数量 140(備品・工事等の換算案件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1案件相当の売上(億円/件))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。備品・装飾工事と施設運営の小型案件。
倍率:2036年事業ROE22.2%とk8.5%、超過利益の残る割合1/2から増分RONIC15.3%を求め、長期名目成長g2.5%で正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.95倍。成長・値決め力を二重に値引かず上限そのものを使う。純現金はなくSPD買収借入を返し、資金を事業と運転資金に用いるため余剰現金は0億円。過去のPERを参照していない。
確率:SPDの統合後に値決めと全国展開がすべて奏功するには継続的な大型受注が必要。AIに左右される事務部門の成長は想定しないため11%に限定する。
やや楽観 20% SPD統合が進み、値上げと大型施設の新規受注が定着 利益 17 億円 · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,589 円223 億円
SPDの統合で北関東の常駐警備が加わり、三井不動産など既存取引先の新規物件も受注する。新しいスポーツ施設の開業とBリーグなどの成長が、球場以外でもスタッフを動員する機会を増やす。特定の大会に依存せず受託範囲を広げられれば、スポーツ運営の利益率は賃金上昇を吸収する。人員シフトの共通化、求人紹介による採用費の抑制も利益に効く。
警備では全国市場の規模に比べてシェアが小さいため、競合の取り分を少し奪うだけでも案件数は増やせる。もっとも大手と入札で争うため、物価を大きく超える価格決定力まではない。人財サポートでは事務派遣が縮小し、店頭での直接販売支援も携帯契約のオンライン化に押されるが、残る接客案件を深める。新たな巨額買収を前提にせず、SPDまでの取得が生む継続売上を基礎に徐々に増益する。利益のうち必要な運転資金を確保しつつ配当を積み上げ、借入負担を縮小できれば投資家の信頼は高まる。
- ビルマネジメント(警備・清掃):数量 4,050(年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定))× 価格 0.08(稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年))→ 売上 326 億円・営業利益 20 億円。万博約252人年を除き、SPD約1,547人年を加えた正常化起点約3,295人年からの推計。警備・清掃の常駐量と労務費の転嫁率に依存。
- イベントマネジメント:数量 1,400(主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定))× 価格 0.06(1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日))→ 売上 88 億円・営業利益 10 億円。試合・大会の担当開催日相当数×平均受託額で表す。
- 人財サポート(事務派遣・販売支援):数量 525(年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定))× 価格 0.07(派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年))→ 売上 35 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替を受ける人月・工数型。売上の実質数量を落とし価格も物価以下。
- その他(備品・工事・施設運営):数量 120(備品・工事等の換算案件数(件・年、推定))× 価格 0.03(1案件相当の売上(億円/件))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。備品・装飾工事と施設運営の小型案件。
倍率:2036年事業ROE17.3%とk8.5%、超過利益の残る割合1/2から増分RONIC12.9%を求め、長期名目成長g2.5%で正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.44倍。成長・値決め力を二重に値引かず上限そのものを使う。純現金はなくSPD買収借入を返し、資金を事業と運転資金に用いるため余剰現金は0億円。過去のPERを参照していない。
確率:大型施設の継続受注と雇用網の稼働率向上は会社の実績の延長にあり、実現可能性はある。ただし買収費用と賃金競争を考えて20%。
中立 31% SPDを通年で取り込み、現場は維持するが事務派遣は縮む 利益 9 億円 · PER 12.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 742 円104 億円
10年後も商業施設には警備員と清掃員が必要であり、プロスポーツの開催日にも多数のスタッフが必要である。SPDの取得で既に加わった北関東の顧客を維持し、既存のヒトトヒトの現場勤務量と合わせた基盤を守る。建物の出入りや観客の安全を管理する職務は残るが、カメラ・巡回ロボットと遠隔運用が一部の持ち場を減らす。人員不足が新規案件を取りにくくする面もあるため、買収後にさらに勤務量を大きく増やす想定はしない。契約単価は10年間の物価上昇におおむね沿うものの、原価の賃金も上がり、収益性は緩やかな改善にとどまる。
イベントは既存の8球団との関係をおおむね維持し、バスケットボールの新アリーナなどの仕事を少し増やす。反対に人財サポートの一般事務と顧客窓口では、AIエージェントが人間の操作を代わって引き受けるため、年間稼働人数は現在の65%となる。単価も物価に届かず、サービスの構成比は下がる。SPD取得で増えた借入の金利と返済を利益から優先し、買収を繰り返して見かけの売上を膨らませることはしない。自己資本は配当後も着実に厚くなるが、強い独占企業へ変わるわけではない。
- ビルマネジメント(警備・清掃):数量 3,580(年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定))× 価格 0.08(稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年))→ 売上 275 億円・営業利益 13 億円。万博約252人年を除き、SPD約1,547人年を加えた正常化起点約3,295人年からの推計。警備・清掃の常駐量と労務費の転嫁率に依存。中立はその起点より実質約9%増。
- イベントマネジメント:数量 1,175(主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定))× 価格 0.06(1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日))→ 売上 68 億円・営業利益 6 億円。試合・大会の担当開催日相当数×平均受託額で表す。
- 人財サポート(事務派遣・販売支援):数量 455(年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定))× 価格 0.06(派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替を受ける人月・工数型。売上の実質数量を落とし価格も物価以下。
- その他(備品・工事・施設運営):数量 105(備品・工事等の換算案件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1案件相当の売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。備品・装飾工事と施設運営の小型案件。
倍率:2036年事業ROE12.9%とk8.5%、超過利益の残る割合1/2から増分RONIC10.7%を求め、長期名目成長g2.5%で正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.77倍。成長・値決め力を二重に値引かず上限そのものを使う。純現金はなくSPD買収借入を返し、資金を事業と運転資金に用いるため余剰現金は0億円。過去のPERを参照していない。
確率:既存の球場・商業施設の仕事を守り、SPDの通年収益を取り込みながら、事務派遣のAI代替が進むもっとも自然な経路なので31%。
やや悲観 24% 賃金上昇を転嫁できず、事務派遣も失注 利益 3 億円 · PER 9.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 171 円24 億円
既存の球場運営は続くが、新設アリーナの受託で競合に遅れ、契約更新時に担当範囲を削られる。商業施設では価格入札が厳しくなり、現場警備は必要でも一施設に配置する警備員の数が減る。遠隔監視の導入と警備人材の不足が同時に進み、SPDまで加えた勤務量を維持できない。会社の掲げる人材プールの規模が実際の有料稼働に結び付かず、募集・研修・現場責任者の固定費が残る。
通信サービスの事務派遣では顧客がAIエージェントを導入し、入力や問い合わせ対応の契約が順次終了する。店頭販売支援もオンライン販売に移り、同部門は利益をほとんど残せない。既存事業の利益だけではSPD取得時の借入負担を十分に吸収できず、以前より営業利益率が低くなる。のれんの減損は小幅で済んでも、継続して新しい警備会社を買う余力はなく、配当を最優先にする経営も難しい。建物を警備する需要自体はあるので事業は存続するが、価格交渉力の弱い下請けに近づいてしまう。
- ビルマネジメント(警備・清掃):数量 2,960(年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定))× 価格 0.07(稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年))→ 売上 213 億円・営業利益 7 億円。万博約252人年を除き、SPD約1,547人年を加えた正常化起点約3,295人年からの推計。警備・清掃の常駐量と労務費の転嫁率に依存。
- イベントマネジメント:数量 950(主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定))× 価格 0.05(1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日))→ 売上 51 億円・営業利益 3 億円。試合・大会の担当開催日相当数×平均受託額で表す。
- 人財サポート(事務派遣・販売支援):数量 350(年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定))× 価格 0.06(派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を受ける人月・工数型。売上の実質数量を落とし価格も物価以下。
- その他(備品・工事・施設運営):数量 85.0(備品・工事等の換算案件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1案件相当の売上(億円/件))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。備品・装飾工事と施設運営の小型案件。
倍率:10年後ROE5.7%が資本コスト8.5%未満となり、成長による付加価値は数えない。稼ぐ力の上限1÷k=11.76倍より低い9.6倍とし、契約減少が続く事業の一部撤退・縮小を反映する。余剰現金は0で、今の株価や昔の谷のPERを根拠にしない。
確率:下に寄せる理由:買収前から純負債が自己資本を上回り、2026年7月の追加借入30億円と人件費上昇の転嫁難が重なる。24%を割り振る。
悲観 14% 買収後の負債が重荷となり、顧客を失いのれんを減損 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 55 円8 億円
SPDを含む施設警備の大口案件が競合へ移り、警備員を十分に配置できないため新規受注でも負ける。監視業務の省人化が進み、会社が得意とした現場への大量動員は新しい技術や競合の人員配置に置き換えられる。スポーツでは複数の球団で受託範囲が縮み、開催日数が残っても一開催日の委託額が落ちる。かつては大人数を集められること自体が価値だったが、顧客の安全運営を支える能力の優位も薄れていく。
人財サポートではAIエージェントと販売のオンライン化が進み、派遣人数は現在の3分の1ほどになる。売上の減少に本社管理費、採用・研修費、金利負担が追いつかず、営業利益は辛うじて残る程度となり、税後は赤字に転じる。SPDを含む買収で計上されたのれんを約35億円減損し、自己資本は薄くなる。こうした場合に、帳簿の資産を事業から簡単に取り戻せるわけではない。大きな買収は止まり、数年間の配当を経て株主還元も途絶える可能性が高い。既存株主に残るのは清算価値よりむしろ、細った事業の再建可能性だけとなる。
- ビルマネジメント(警備・清掃):数量 2,150(年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定))× 価格 0.06(稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年))→ 売上 138 億円・営業利益 3 億円。万博約252人年を除き、SPD約1,547人年を加えた正常化起点約3,295人年からの推計。警備・清掃の常駐量と労務費の転嫁率に依存。
- イベントマネジメント:数量 720(主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定))× 価格 0.05(1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。試合・大会の担当開催日相当数×平均受託額で表す。
- 人財サポート(事務派遣・販売支援):数量 230(年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定))× 価格 0.05(派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替を受ける人月・工数型。売上の実質数量を落とし価格も物価以下。
- その他(備品・工事・施設運営):数量 65.0(備品・工事等の換算案件数(件・年、推定))× 価格 0.02(1案件相当の売上(億円/件))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。備品・装飾工事と施設運営の小型案件。
倍率:営業利益1.28億円でも支払利息等により純損失0.8億円、事業ROEマイナス4.4%なのでPERではなく、約35億円ののれん減損後の自己資本18億円に対する残余価値として0.45倍を評価し8.10億円とする。今の自己資本28.7億円より大きい簿価へ床PBRを掛けない。現金・売却可能資産の税後純額の床0億円より高く、清算価値ではなく再建オプションを残す。
確率:下に寄せる理由:自己資本約29億円を上回るのれん約60億円があり、SPD買収後に契約失注とAI代替が重なれば減損が株主価値を大きく削る。重度の複合事象は14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビルマネジメント(警備・清掃)
商業施設・オフィスの常駐警備、工事・駐車場の交通誘導、清掃。2026年7月に買収したSPDの規模拡大は将来シナリオで反映する。
| 数量年間フルタイム換算の稼働人員(人・年、推定) | 価格稼働人員1人年当たり契約売上(億円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.06 | 115 | 6 |
| 10 年後 中立 | 3,580 | 0.08 | 275 | 13 |
取り方:2026年3月期有報のサービス形態別売上11,503百万円を正とする。契約人員・請負時間の内訳は非開示なので、通常の警備請負で一人年あたり約575万円の売上に相当するものとして約2,000人年を逆算した推定値。これは実在の従業員数ではなく、協力会社・短時間シフトを合計したフルタイム換算である。事業別営業利益は非開示のため6.4億円は会社全体の利益との整合を図った試算。2026年の万博一時売上14.52億円(同じ平均単価で約252人年)を除いた継続受託量は約1,748人年となる。2026年7月取得のSPDの通年売上約89億円(約1,547人年)を将来の数量だけに追加する。したがって買収後の正常化した基礎稼働は約3,295人年であり、2036年の数量はこの起点から推定する。物価上昇は単価のみに入れる。警備市場3.4兆円に対する約115億円は粗い上限シェア0.34%で、清掃分を含み厳密な市場占有率ではない。
イベントマネジメント
野球・サッカー・バスケットボール・ゴルフ等の試合・大会の運営、警備、案内、設営、物販を受託する。
| 数量主要イベント稼働日相当(開催日・年、推定) | 価格1開催日相当の総合運営受託額(億円/開催日) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,100 | 0.04 | 48 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,175 | 0.06 | 68 | 6 |
取り方:有報のイベント売上4,772百万円を基準とする。実開催件数と一開催日の人員は非開示。プロ野球8球団×本拠地約70日で560日、Jリーグ8チーム×約20日で160日、Bリーグ8チーム×約30日で240日、ゴルフ約25大会×複数日等を参照し、会場・業務の重複や他のイベントも含めた正規化単位を約1,100開催日相当とした。単価は47.72÷1,100=約0.04338億円であり、実際の一試合の請求額ではない。事業別営業利益は非開示で推計。8/12は球場で何らかの業務を受託する関係の割合であり、委託費用の市場シェアではない。
人財サポート(事務派遣・販売支援)
通信事業者向けバックオフィス派遣、顧客窓口、携帯端末等の実店舗販売促進。
| 数量年間フルタイム換算の請負・派遣人員(人・年、推定) | 価格派遣・受託1人年あたり売上(億円/人年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 0.05 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.06 | 29 | 1 |
取り方:有報の人財サポート売上3,624百万円を基準とし、年間約518万円の請負・派遣売上を生む稼働人員700人年と推定する。会社は事務派遣と店頭販売の人員内訳を開示していない。安全側に全体をAIエージェント代替が強く効く人月・工数型と分類する。中立の2036年数量は現在の0.65倍、価格は1.236倍で物価1.344倍に届かない。実際の人数、各業務の手数料単価の開示ではない。営業利益も推計。
その他(備品・工事・施設運営)
イベントの備品・装飾物調達や関連工事、屋内型施設の運営など。
| 数量備品・工事等の換算案件数(件・年、推定) | 価格1案件相当の売上(億円/件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.02 | 2 | 0 |
取り方:有報のその他売上193百万円を基準に100件の換算案件、1件約193万円と仮定。会社の実件数開示はなく、施設運営も含めた便宜的な数量である。営業利益は推計。
リスクと懸念
買収資金の金利と財務余力
2026年3月末の純負債約31億円に対し、SPD買収資金として新たに30億円を借り入れた。借入の一部は変動金利で、7年返済のため毎年の営業キャッシュフローが返済に先取りされる。基準の国債3%と融資スプレッドが定着すれば、純利益と配当に回る余力が減る。
のれん減損と帳簿上の床の弱さ
2026年3月期ののれんは約59.5億円で自己資本の2倍を超える。警備会社の買収価格に含まれる将来利益の期待が外れれば、のれんの減損で自己資本は大幅に減り得る。土地や預金と違い、のれんを売却して借入を返済することはできないので、PBRが低くなっただけでは割安とは言えない。
AIエージェント代替と現場の省人化
人財サポートは通信事業者の一般事務や顧客対応、販売支援など人の稼働を売る。AIエージェントが入力や照会を顧客自身のシステムで終わらせれば派遣人数と単価の双方が下がる。現場警備も遠隔監視や巡回ロボットの導入で人時が減る可能性があり、全業務がインフレ率どおり増収するわけではない。
採用難と賃金上昇の価格転嫁不足
警備・イベントは働き手の人数を確保できなければ受注機会を逃す。警備業界には高齢者が多く、若い労働力の採用競争は厳しい。年度契約の更新時に時給上昇を発注者へ転嫁できなければ、受託数量が増えても営業利益率が低下する。人材プールの登録数より継続稼働者と一人当たり粗利が重要になる。
イベントの失注と一時需要
プロ野球など一部の球団との長期関係は強みだが、すべての球場業務を独占しているわけではない。開催日程、主催者の内製化や競争入札による委託先変更が起きれば、雇用確保の費用だけが残る。2026年3月期の売上には大阪・関西万博関連約14.5億円も含まれ、実績の増収率をそのまま平常時の成長率とは見られない。
買収の増分利回りと株式希薄化
SPD買収後も借入を使った同業買収を進める方針である。対象企業の利益が買収対価と金利を正当化できなければ、売上が膨らんでも株主価値を壊す。株式買収資金を借りられなくなる局面では増資に頼る可能性もあり、既存の新株予約権約62万株の行使も持ち分を約4%薄める。
今後の分かれ目
- SPDの通年連結後に顧客の契約継続率が90%以上を維持し、管理費共通化で営業利益率が改善したら
- 施設警備の数量と利益率の上側を引き上げる。増収が借入金利を上回る増分利益を生むか確認し、やや楽観を厚くする。
- 警備の更新契約で人件費上昇率以上の単価改定が2年以上続いたら
- 全社の値決め力評価を見直し、ビル管理の10年後の単価と利益率を引き上げる。賃上げだけでなく粗利の伸びも必要である。
- 人財サポートの請負稼働人数がAI導入で3年連続減少したら
- 事務派遣の数量を中立より下へ寄せ、やや悲観・悲観の確率を増やす。店頭販売支援の実人員も分けて確認する。
- 純負債・自己資本比率がSPD連結後も100%を超え続け、現金収支が悪化したら
- 将来の買収余力と還元額を引き下げる。借入返済の遅れは減損リスクと連動するため、悲観時の下値も厳しく見直す。
- Bリーグ・新規アリーナでの契約数と一開催日当たりの受託範囲が同時に増えたら
- イベント稼働日と実質単価の両方を上方修正する。新設会場の所有者が違っても契約が取れるなら、動員網の堀を再評価できる。
- のれんの減損、銀行の借換条件悪化、または大きなエクイティ調達が発表されたら
- 悲観筋書きの自己資本・既存株主の取り分・配当見通しを更新する。減損だけなら現金流出はないが、背景の受注・利益減少を重視する。
見ておくもの
- SPD連結後のビルマネジメント受託売上、稼働人員、受注物件数、契約継続率
- イベントで取引のあるプロ野球球団数、Jリーグ・Bリーグの契約数と開催日相当数
- アルバイト人材プール数、月10万円以上稼働するコア人材数、採用数と離職率
- 警備請負単価の改定率と警備員賃金上昇率、部門粗利率
- 人財サポートの事務派遣と店頭販売支援の売上内訳、AI導入による稼働人数の変化
- 純負債・自己資本比率、のれん・自己資本比率、買収先の増分ROIC、実際の配当総額
- 2027年3月期の調整後営業利益13億円・調整後純利益7.5億円とIFRS実績との差
倍率と資本コストの決め方
株価518円と現在時価総額72.52億円は、最後の比較にしか用いていない。2026年3月期の部門売上実績から警備の人年、スポーツの開催日相当、派遣の人年を推定し、2026年7月取得のSPDの通年約89億円は将来のビル警備の数量にだけ加えた。2026年の万博関連売上14.52億円は一過性であり、施設警備の2026年推定2,000人年から約252人年を引いた継続分に、買収先SPD約1,547人年を加えて正常化起点を約3,295人年にした。物価年3%は価格に含め、数量に二重計上していない。
資本コスト8.5%、長期名目成長2.5%、普通の競争優位での超過ROE残存率50%から、中立のPER約12.77倍を事業の稼ぐ力で正当化する。事務系AI代替の影響は稼働人数65%とg_longにだけ表し、kの寿命や下側確率へ重ねていない。純負債のため余剰現金は足さず、留保は運転資金・借入返済・買収対価に使うとした。IFRS採用会社であり、リース負債は既に計上されているため日本基準の新リース会計への移行による重複調整はしない。
悲観の床は簿価ではない。2026年3月末の自己資本28.7億円からのれん59.5億円を除くと実体純資産はマイナスで、追加借入後も売却可能資産が負債を上回るとは示せない。したがって清算床はゼロとし、減損した帳簿を根拠に現在自己資本より大きい価値を作っていない。既存株主の取り分は潜在株式約62.5万株の希薄化後に評価する。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に、値決め力+0.5%、事前の純負債負担+0.5%を加えた。規模・株価の変動率を使わず、買収案件の固有リスクは数量・利益率と確率で表す。