結論
クックパッドは、料理レシピの投稿・検索サービスを運営する企業である。筆者の結論は割高だ。料理に関する膨大な投稿と利用者の信頼は今も価値を持つが、それを有料会員収入に変える力が長年弱まり続けている。2025年の売上収益は53億円で、2016年の168億円から大幅に縮んだ。2026年上期も有料会員の減少が止まらず、本業の営業利益はほぼゼロになっている。
ただし、単純な衰退企業ではない。2025年末には現金約59億円のほか、投資信託などの流動金融資産が約59億円あった。合わせて約118億円であり、現在の時価総額89億円を上回る。2024年から2026年にかけて自社株買いも実行しており、株主に資本を戻す意思が全くない会社でもない。この厚い資産基盤は投資判断で無視できず、清算や大規模還元が早期に進めば、本業の収益力から考えた価値を大きく上回る可能性がある。
問題は、現金が存在することと、その現金が適切な時期に株主へ戻ることは別だという点である。経営は配当より新事業への投資を優先しており、投資信託の評価益も恒常的な利益ではない。レシピ検索はAIエージェントが直接代替できる分野で、料理動画のクラシルやデリッシュキッチンとの競争も続く。独自の投稿履歴や実際に調理した人の評価は残るが、以前のような高収益事業に戻るとは限らない。
10年後には、会員数の減少を人員削減やシステム効率化で吸収し、細い利益を維持する展開を中心に考える。現金の取り崩しと自社株買いを含めても、確率加重した現在価値は約48億円で、時価総額89億円を約46%下回る。今後の評価を変える最大の条件は、有料会員の減少停止と、余剰資本の継続的な還元である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、クックパッドには魅力的なものと魅力的でないものが同居している。魅力的なのは、日本の家庭で長年蓄積された料理の実体験と、時価総額を上回る規模の流動資産だ。料理という行為は流行が終わっても必要とされ、過去の投稿は簡単に消えない。これらは、会社の現在の利益だけを見ていては見落とす資産である。
魅力的でないのは、その資産を継続して大きな利益に変える仕組みが弱まっていることだ。優れた企業であれば、既存の顧客が容易には離れず、多少値上げしてもサービスが使われ続ける。クックパッドでは有料会員の減少が長期間続いている。利用者から高く評価されるサービスであることと、株主に高い利回りをもたらす事業であることは異なる。
資本効率も気になる。純利益の一部は金融資産から生じているため、2025年の利益をそのまま将来の事業収益として扱うことはできない。新規事業への投資は、料理の周辺で利用者が抱える問題を解くという意味では筋が通る。しかし、momentにもクックパッドマートにも、投じた資本に見合う利益を安定して生む証拠はまだない。投資機会の魅力は将来の売上高より、追加投資から得られる現金で判断したい。
ここで最も重要なのは、余剰資産を株主がいつ受け取れるかである。資産が多いだけでは、経営者がそれを低い利回りの事業に使い続ける可能性を消せない。逆に、大規模な自社株買いや資産売却が早期に続けば、長期価値は大幅に高まる。最近の自社株買いは評価するが、配当を行わず新事業投資も続ける現状では、全額がすぐに戻るとは考えにくい。
理解できる事業にだけ高い値段を払うという原則では、料理の需要自体は理解しやすい一方、10年先の検索方法と収益化の形は予測しにくい。強いブランドを持っていても、強い収益上の堀が証明されていなければ高い倍率を与えない。現在の時価総額には資産面の魅力があるが、10年間の機会費用と資本配分の不確実性を考えると、安全域は十分ではない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、利用者が投稿した料理レシピを探し、保存し、実際に作った結果を共有できるクックパッドである。無料でも利用できるが、人気順検索、殿堂入りレシピ、献立提案、保存機能などに対して月額料金を受け取る。公式案内では、ウェブ決済のプレミアムサービスは月額308円であり、アプリ内課金では異なる料金が設定されている。利用者が長期間料金を払い続ければ、追加の販売費用をあまりかけずに毎月収入が入る。この継続課金が同社の収益基盤である。
2025年の有料会員収入と広告などの売上内訳は、会社が詳細な数量を公表していないため推定が必要となる。プレミアム会員を約129万人、月額実効単価を308円とすると、年間の会員収入は約48億円になる。連結売上との差額約6億円を広告、提携、新規サービスなどに振り分ける。ただし、会員数には公開情報を利用した推定誤差があり、アプリ決済手数料や海外会員との単価差もあるため、正確な契約数を示したものではない。
無料のレシピサービスは、それ自体でも事業上重要である。利用者が増えれば投稿と調理報告が増え、料理を選ぶ際の判断材料が蓄積される。これは他社が一朝一夕に再現できない資産であり、無料利用者を有料会員に転換する入り口でもある。しかし、投稿数が多いことと、有料会員が増えることは同義ではない。検索結果の表示方法やAIによる献立提案が変われば、無料利用者は残っても有料機能への需要だけが減る可能性がある。
新事業には、料理中の動作をAIカメラで分析して助言するmomentと、生鮮食品を専用の冷蔵受取設備へ届けるクックパッドマートがある。前者はレシピを読むだけでは得られない調理技能を教え、後者は料理に必要な食材の入手を助ける構想である。だが、2025年の有価証券報告書では、momentは安定提供に向けた開発に課題があり、クックパッドマートは拡張性と収益性を両立できていないと説明している。両事業の数量と採算の個別開示もないため、将来の成長事業として大きな利益を先取りすることはできない。
会社の開示上は『毎日の料理を楽しみにする事業』という単一セグメントである。本分析では経済性の違いを明らかにするため、継続課金のレシピ会員収入と、広告・新サービス等の残余収入に分ける。後者に含まれる現物配送はAIエージェントでは直接代替できないが、事業全体の価値を決めるのは依然としてレシピ会員の減少率である。
優良さと弱いところ
クックパッドの最大の強みは、利用者が実際の調理体験を長年投稿し続けてきたことである。レシピの材料と手順だけでなく、作った人の感想や成功例、失敗を避けるための工夫が蓄積されている。利用者の投稿が次の利用者を呼ぶネットワーク効果は確かにある。料理名を検索するときにクックパッドを思い浮かべる知名度も、広告を大量に購入しなくても利用者を集められる強みだ。
しかし、堀、つまり競争相手が容易には奪えない利益上の優位は、すでに狭まっている。投稿データに独自性があっても、検索するだけなら無料サービスやAIで十分と考える利用者が増えている。人気順検索や保存機能には便利さがあるが、解約すれば仕事や生活が成り立たなくなるほどの切り替え費用はない。価格改定によって物価上昇を継続的に転嫁できた実績も乏しい。2025年の減収は有料会員の減少が原因であり、ブランドの知名度が価格決定力に直結していないことを示している。
資本効率の低下はさらに重要だ。2015年には40億円を超える純利益を生み、高い利益率を誇ったが、その後は海外展開や新規事業への投資が収益に結びつかなかった。2021年から2023年には営業赤字が続いた。2024年に黒字へ戻したものの、2025年の営業利益は約3億円まで縮み、2026年上期の営業利益は約300万円にすぎない。2025年の純利益約7億円には有価証券の評価益等が含まれ、本業の実力を示す数字ではない。
一方、財務の耐久力は高い。2025年末の自己資本は129億円、自己資本比率は約92%である。金融資産を含めた流動性は厚く、通常の借入金返済に追われる構造ではない。赤字が続いても直ちに資金調達が必要になる会社とは異なる。ただし、現金の一部は価格変動のある投資信託へ移されており、全額を安全な預金と同じには扱えない。
長期保有で求めたいのは、残された資産の大きさだけではなく、新しく投じる資本が資本コスト以上の利益を生むことである。その証拠はまだ不十分だ。独自のレシピと利用者の信頼を評価しながらも、現段階では強い堀を持つ優良企業ではなく、価値ある資産を持つ再建途上のプラットフォームと判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
家庭で料理をする需要は10年後も存在するが、料理の情報を調べる方法は大きく変わる。国内の人口は減少する一方、単身世帯や小規模世帯の増加で献立を考える機会そのものが急になくなるわけではない。2025年国勢調査の世帯数は約5,713万世帯である。推定129万人の有料会員をこの世帯数と比較すると約2.3%に相当するが、これは実際のレシピ有料サービス市場のシェアではない。複数人契約や海外会員があるうえ、市場全体の有料契約数も公表されていないためである。
競争相手はクラシル、デリッシュキッチン、楽天レシピ、Nadiaなどである。クラシルは2026年に累計アプリダウンロード4,400万を公表し、デリッシュキッチンも動画と献立提案で大きな利用者基盤を持つ。ただし、累計ダウンロードと有料会員数は異なる指標であり、同じ市場のシェアとして直接比較できない。各社の有料契約シェアは十分に開示されていない。競争の中心はレシピの件数から、目的に合う献立を短時間で見つけられるか、買い物と調理まで一続きで支援できるかへ移っている。
AIエージェントはこの競争の構造を変える。冷蔵庫の食材、家族の人数、アレルギー、好み、調理時間を伝えると、外部のAIが献立と手順を直接提案できる。利用者がレシピサイトの検索画面を経由する必要は減る。これはサイトへの訪問数だけでなく、人気順検索という有料機能の価値にも影響する。一方、実際に何度も作られたレシピや利用者の評価は、AIが回答を検証するための独自データとして残る可能性がある。ただし、その価値を有料収入として回収する仕組みはまだ確認できない。
広告市場全体は伸びている。電通によれば2025年の日本のインターネット広告費は約4兆459億円、うち媒体費は約3兆3,093億円である。もっとも、成長の中心はSNS動画や大規模プラットフォームであり、料理サイトの広告枠が同じように増えるとは限らない。連結売上のうち会員収入以外の推定額約6億円を全額広告と仮定しても、ネット広告媒体費に対する比率は0.02%未満である。実際の広告シェアはさらに小さい可能性がある。
中立では、レシピの有料会員数が今より減り、利用者の無料サービスへの移行も続くとみる。自社媒体広告の数量もAIの要約やSNSへの流出で減る。広告単価には一定の物価転嫁を認めるが、媒体としての競争力が弱まるため物価上昇率を全面的には転嫁できない。楽観は料理体験の記録と信頼が利用者をつなぎ止める筋、悲観は外部AIと動画サービスが利用者との接点を握り、クックパッドが収益化の力を失う筋である。
資本政策と M&A
資本配分の評価は、過去の失敗と最近の還元を分けて考える必要がある。2013年から2015年にかけて、海外レシピサービスや習い事、ECなどの買収を進めた。スペインのMis Recetasや米国のALLTHECOOKSなどはその代表例である。海外で利用者を獲得する構想は理解できるが、買収に伴うのれんはその後大きく減損された。長い目で見れば、国内レシピ事業の高収益を他分野へ再投資した成果は十分ではなかった。
近年は方向が変わった。2024年には約20億円、2025年には約17億円の自己株式取得を行い、2026年にも追加取得している。2026年3月には自己株式の大量消却も実施した。2026年6月末の発行済株式7,881万株から自己株式692万株を引くと、分析の基準となる7,188万株になる。株数を大幅に減らしたことは既存株主に有利だが、過去の買付額を将来の還元として再度足すことはしない。
会社は2025年有価証券報告書で、配当より事業開発と利用者基盤の獲得を優先すると説明している。2024年と2025年の配当実績はゼロである。中期経営計画に相当する売上高、営業利益、ROEの具体的な数値目標は確認できず、有価証券報告書でも目標経営指標を特に設けないと明記している。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの将来累計額についても数字の約束はない。
2025年には手元資金の一部を投資信託と債券へ移した。金融資産の評価益は純利益を支えたが、これは料理サービスへの再投資の利回りとは区別すべきだ。株主にとって望ましいのは、余剰資産を運用で増やそうとすることより、収益力を超えて必要のない資本を規律を持って戻すことである。自社株買いの再開が繰り返されるなら価値は改善するが、現時点で10年間の継続を約束された還元として扱うことはできない。
将来のM&Aでは、買収する側としての大型投資には慎重であるべきだ。むしろ、独自のレシピと顧客基盤、流動資産を評価する外部企業が買収提案をする可能性に注目したい。ただし、TOBやMBOが決定した事実は確認できておらず、買収価格を本質価値に上乗せすることはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
クックパッドを単なる衰退するレシピサイトとして扱うのは誤りである。長年にわたって蓄積された料理の投稿とつくれぽには、実際に人が調理したという証拠がある。一般的なAIが文章で生成するレシピとは異なり、家庭の台所で繰り返し使われてきた知識だ。この独自データが利用者の信頼をつなぎ止め、検索の方法が変わっても料理をする人の重要な情報源として残る可能性がある。
AIも必ずしも競争相手だけではない。食材、季節、家族の健康状態に応じて献立を提案し、投稿された成功例まで組み合わせれば、既存サービスの使い勝手は改善できる。momentが調理中の助言という別の価値を確立できれば、レシピを読むだけのサービスから抜け出せる。もっとも、新事業の売上実績は十分ではないため、その成功を楽観シナリオの数量成長として先取りせず、有料会員の流出が小さくなる程度にとどめるべきだ。
資産面にも強い根拠がある。2025年末には現金と流動金融資産が合計約118億円存在し、2026年上期にも大きな流動性が残っている。自己株式の取得も複数年行っており、株主還元の実行能力は確認できる。今後、新規事業の投資負担を抑えながら自社株買いを続ければ、残る株主の持分は高まる。事業の復活を必要条件とせず、資産の再配分だけでも投資価値が改善する余地がある。
料理市場は人口が減っても消えない。動画サービスへの対抗で勝ち残る必要はあるが、全利用者を取り戻す必要もない。既存会員の流出を緩やかにし、運営費用を小さくできれば、軽い資産で安定した現金を生む事業に作り直せる。その場合、現在の株価が織り込むより高い企業価値を実現する可能性は残る。
慎重な見方
レシピの投稿が大量にあることと、その情報に毎月料金を払う理由があることは別である。利用者が欲しいのは料理名の一覧ではなく、今日の条件に合う献立と失敗しない手順だ。AIエージェントは、この問いに直接答える。検索結果を比較する作業を省き、材料の購入から調理手順まで一度に案内できる。クックパッドが持つ過去のコンテンツの価値は残っても、それを表示する画面の価値は急速に薄れる可能性がある。
競争はすでに厳しい。クラシルやデリッシュキッチンは動画を中心に利用者を集め、GoogleやYouTubeなども料理情報を探す入口になっている。クックパッドの有料会員減少は、一時的な広告宣伝の失敗ではなく、利用者が料理の情報を得る経路そのものの変化を示している。実際、2025年の売上は減少し、2026年上期も回復していない。検索機能の改善だけで過去の収益力を取り戻すとは考えにくい。
本業の固定費も軽視できない。会員が減れば決済手数料などは減るが、ソフトウェア開発、システム維持、海外運営、物流設備の費用は同じ速度では減らせない。2021年から2023年の赤字は、売上が縮むと費用構造が急に重くなることを示した。物価が毎年3%上がる環境では、名目単価を十分に上げられない事業は、費用削減を続けなければ利益を維持できない。
余剰資産の評価にも注意が必要だ。2025年に購入した投資信託は市場価格で変動する。評価益を継続利益とみなせば稼ぐ力を過大評価する。現金の多さを根拠に投資を続け、事業の赤字を埋めていけば、10年後に残る資産は大きく減る。買収や清算が起きると期待するだけでは、少数株主が実際に資産を受け取る時期を決められない。長期保有では、資産の額より資産を守り、還元する経営の規律が問われる。
どちらに重みを置いたか
資産価値では強気の見方に十分な根拠がある。現金だけを確認して投資信託を見落とすと、同社の下値を過小評価してしまう。一方、本業の収益力では慎重な見方が優勢だ。会員数の減少が続き、AIによって有料検索の価値がさらに弱まる可能性がある。
確率は楽観とやや楽観を合わせて28%、やや悲観と悲観を合わせて40%とし、下側に12ポイント寄せた。これは一般的なIT企業への警戒ではなく、同社の長い減収実績と2026年上期の営業利益の低さが理由である。資産を早期に還元する場合は上振れするが、現状の事業と資本政策からは、その時期を確実には読めない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 104 円75 億円(+ 還元の換算額還元の合計 29 円21 億円)。 今の値に割り戻すと 67 円48 億円、今との差 −45.0%、 期待の年率 +1.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 182 円131 億円 | 65 円47 億円 | +104.2% | +8.8% | 20 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 153 円110 億円 | 49 円35 億円 | +66.5% | +6.1% | 40 円29 億円 |
| 中立 | 32% | 105 円75 億円 | 35 円25 億円 | +15.4% | +1.7% | 45 円32 億円 |
| やや悲観 | 25% | 77 円55 億円 | 11 円8 億円 | −27.6% | −3.4% | 22 円16 億円 |
| 悲観 | 15% | 42 円30 億円 | 0 円0 億円 | −65.5% | −10.1% | 6 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 104 円75 億円 | 29 円21 億円 | +9.9% | +1.1% | 133 円96 億円 |
今の株価時価総額 121 円87 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% レシピの信頼を守り、効率的な小型プラットフォームへ 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 182 円131 億円
クックパッドは料理の実体験に関する信頼性を守り、AIによる献立提案が普及しても独自の利用価値を維持する。つくれぽや保存履歴を使った検索改善が進み、無料利用者から有料会員への転換率が安定する。2035年の有料会員は約123万人と、現在から小幅な減少にとどまる。人気順検索だけではなく、実際に料理をした人の評価と履歴が会員をつなぎ止める。
クラシル、デリッシュキッチン、外部AIへの利用者流出は残るが、独自の投稿コミュニティが競争上の支えになる。広告は大幅には伸びないものの、残った利用者の価値が認められ、物価上昇を価格に反映できる。momentやクックパッドマートは大きな新規売上を生む前提にせず、採算の悪い投資を縮小することで全社の固定費負担を軽くする。
経営は海外拠点の効率化と事業の選別を進め、営業利益は約7億円へ改善する。自社株買いが継続し、余剰資産も段階的に株主へ戻る。売上が過去最高へ戻らなくても、資本を効率よく使う小型のプラットフォームへ変わる10年になる。従業員向け新株予約権が行使される場合の既存株主の希薄化も織り込む。
- レシピサービス有料会員:数量 123(年間平均の有料契約数(万人、推定))× 価格 354(1契約当たり月額実効料金(円))→ 売上 52 億円・営業利益 14 億円。有料会員は現在の約0.95倍、料金は1.15倍。AI代替の楽観上限を超える会員増加を想定しない。
- 自社媒体広告・提携・新サービス等:数量 38.0(年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量))× 価格 201(広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。広告換算数量は横ばい、単価は物価相当。新事業の損失は大幅に縮小する。
倍率:資本コスト8.25%、長期成長率マイナス0.5%、弱い堀の残存率3分の1。余剰資産75億円の平常的な税後収益1.05億円を全社純利益6億円から除くと事業利益は4.95億円。事業自己資本約55.4億円に対するROEは約8.9%、RONICは約8.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限付近となる約12.1倍を用いる。余剰資産は別途帳簿価額で加算する。自己資本にはオプション行使による払込金約4.4億円を含み、過去10年の純利益累計約45億円と還元48億円による変化を反映する。
確率:ブランドと投稿資産の価値が維持され、会員流出がほぼ止まり、さらに運営費用の削減と株主還元が両立する筋。AIによる新規売上の拡大を仮定せず、有料会員数も現在以下に制限する。複数の改善が同時に必要なため8%にとどめる。
やや楽観 20% 会員減少が鈍り、黒字を維持する 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 153 円110 億円
レシピサービスの有料会員は減り続けるが、減少率は次第に小さくなる。利用者の投稿履歴、つくれぽ、保存レシピなどが一定の切り替え費用として働き、完全な無料サービスへの流出を防ぐ。2035年には約110万人の有料会員が残り、適度な料金改定も受け入れられる。長期的に利用する固定客を中心とする事業へ変わる。
クラシルやデリッシュキッチンは料理動画の利用者を増やし、AIも献立作成の標準的な手段になる。それでも、既存の料理記録を必要とする利用者が残るため、サービスの収益基盤はなくならない。広告収入は伸び悩むが、新規サービスへの支出を抑え、海外部門も小さな組織で運営できるようになる。
営業利益は約4億円まで回復する。経営は配当再開までは踏み切らないものの、余剰資産を使った機動的な自社株買いを続ける。事業から高い成長は得られないが、現金を大きく減らさず収益を維持できるため、投資家にとってはある程度予測できる会社になる。
- レシピサービス有料会員:数量 110(年間平均の有料契約数(万人、推定))× 価格 340(1契約当たり月額実効料金(円))→ 売上 45 億円・営業利益 10 億円。有料会員数は現在の0.85倍、月額単価は1.10倍。収益の減少を運営効率化で吸収する。
- 自社媒体広告・提携・新サービス等:数量 35.0(年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量))× 価格 185(広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。広告換算数量は0.92倍、価格は1.23倍。新事業の損失が概ね解消する。
倍率:資本コスト8.25%、長期成長率マイナス0.5%。余剰資産75億円の税後金融収益約1.05億円を除いた事業純利益は約3.05億円で、事業自己資本54億円に対するROEは約5.6%。ROEが資本コストを下回るため、長期の稼ぐ力の上限1÷(k−g)=約11.43倍とする。事業価値約34.9億円に余剰資産75億円を別途加算する。自己資本129億円は現状129億円に10年間の純利益累計約35億円を加え、還元35億円を差し引いた結果である。
確率:会員減少の鈍化と運営効率化は実現の余地があるが、動画競合と外部AIへの流出は続く。営業黒字を維持しながら自社株買いを継続するため、現在より改善した経営規律が必要となる。
中立 32% 会員は縮小し、費用削減で小幅黒字 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 105 円75 億円
有料レシピ検索は10年間でゆっくりと縮小する。AIエージェントが献立の提案、材料の置き換え、分量の調整まで行うようになり、利用者がサイト内で何度も検索する機会は減る。一方、実際に料理した人の評価や保存したレシピは残るため、有料会員が一気に消えるわけでもない。2035年の会員数は約97万人になり、国内世帯数に対する相対的な普及率も低下する。
競合のクラシルやデリッシュキッチンは料理動画の強みを維持し、Googleなどの検索サービスもAI回答を拡充する。広告表示機会は減り、広告単価は物価上昇ほど上がらない。クックパッドマートとmomentには一定の社会的な価値が残るが、大きな利益の柱となる証拠は得られない。新規投資を抑え、赤字事業を縮小しながら既存サービスを運営する展開になる。
営業利益は1億円未満にとどまり、純利益も金融資産の通常の運用収益に頼る。運営規模を小さくしたことで大きな赤字は避けるものの、ROEは資本コストを下回る。期間中には自社株買いで一定の資産を株主へ戻すが、現金を再投資する魅力的な事業機会を十分には作れない。安定化は進むものの、株主に高い複利成長をもたらす会社には戻らない。
- レシピサービス有料会員:数量 96.8(年間平均の有料契約数(万人、推定))× 価格 339(1契約当たり月額実効料金(円))→ 売上 39 億円・営業利益 6 億円。AI代替を反映して会員数は0.75倍、月額価格は1.10倍。物価上昇1.34倍に届かない。
- 自社媒体広告・提携・新サービス等:数量 29.0(年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量))× 価格 175(広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。広告換算数量は現在の約0.76倍。価格は1.17倍にとどまり、新事業にはなお小幅な損失が残る。
倍率:中立の全社純利益1.45億円から余剰資産70億円の税後平常収益0.98億円を除くと、事業純利益は約0.47億円となる。事業自己資本約51億円に対するROEは約0.9%で、資本コスト8.25%を大きく下回る。長期名目成長率マイナス0.5%の下でPER上限は1÷(8.25%+0.5%)=11.43倍。事業利益の価値約5.4億円に余剰資産70億円を加える。10年間の純利益累計は約17億円で、途中の会員減少と費用削減の遅れにより単純な始点・終点平均より低い。株主還元25億円を差し引き自己資本121億円とする。
確率:2025年と2026年上期の有料会員減少が示す構造的な縮小を中心に置く。AI代替の席課金・情報サービス型に従い、会員数量を現在の0.75倍、価格を1.10倍とし、物価並みの値上げを実現できないと判断する。経営効率化はある程度成功するが、高収益事業への復帰までは見込まない。
やや悲観 25% AIと動画サービスに利用者を奪われる 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 77 円55 億円
生成AIが料理の条件に合う献立を直接提案し、有料検索を利用する理由が薄くなる。クラシルやデリッシュキッチンが短い動画と買い物支援で利用者を引き付け、クックパッドの投稿資産は残っても、サイトを使う頻度が低くなる。有料会員は約75万人まで減少し、値上げもほとんど通らない。長年のブランドは維持されるが、価格を決める力はさらに弱まる。
広告枠の表示機会も減る。新規事業の縮小や海外拠点の整理を進めるものの、システム維持と開発人員の費用を十分には減らせない。物価上昇の中で単価を上げられないため、売上の減少がそのまま営業赤字につながる。新事業への投資成果も限られ、料理サービスの会社としての役割は小さくなる。
それでも金融資産が厚いため、急な資金調達は必要にならない。経営は一部の自社株買いを継続した後、赤字補填を優先するようになる。10年間で純損失が累積し、株主還元も小規模にとどまる。株主にとっての残存価値は事業利益より、最後まで手元に残る現金と換金可能な有価証券が中心となる。
- レシピサービス有料会員:数量 75.0(年間平均の有料契約数(万人、推定))× 価格 310(1契約当たり月額実効料金(円))→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。会員数は約0.58倍、価格はほぼ横ばい。減収で固定費吸収力が低下する。
- 自社媒体広告・提携・新サービス等:数量 20.0(年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量))× 価格 150(広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値))→ 売上 3 億円・営業利益 −1 億円。広告表示相当数量は約0.53倍、単価は名目で横ばい。
倍率:2035年には本業が赤字であり、PERは有効な評価基準にならない。10年間の純損失約15億円と株主還元8億円により自己資本は約106億円へ減る。そのうち換金可能な余剰金融資産として約55億円が残ると想定する。利益を生まない事業資産には高い価値を認めず、残存自己資本の約0.52倍、すなわち55億円を採る。
確率:有料会員の減少が現在の傾向に近い速度で数年間続き、費用削減が遅れる筋。検索のAI代替と既存競合への流出は実際に進んでいるため、中立よりやや悲観の確率を厚くする。流動資産があるため直ちに存続危機にはならない。
悲観 15% レシピ検索の収益モデルが崩れ、資産を取り崩す 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 42 円30 億円
料理レシピを探す方法がAIエージェントへ大きく移り、検索画面に料金を払う需要が急速に減る。利用者は外部AI、YouTube、クラシル、デリッシュキッチンなどへ移り、クックパッドを訪れる頻度が下がる。独自の投稿レシピは参照され続けるが、検索結果の閲覧から十分な料金や広告収入を得られない。2035年の有料会員は約48万人まで減少する。
月額料金の引き上げは解約を加速させるため実施できず、割引や無料機能の拡大が必要になる。広告表示数も大幅に減少し、新事業は売上が小さいまま設備や開発費用だけが残る。海外事業の再整理やサービスの停止も行うが、解約不能な契約と人員整理の費用が発生する。物価上昇で維持費が増え、営業損失は年間10億円を超える。
会社は存続のため保有する金融資産を現金化し、事業の再構築に使う。株主への還元は停止される。過去の投稿資産は社会的には価値を持ち続けるが、株主のための利益を生む能力は著しく低下する。10年後の会社価値は、減少した現金と売却可能な資産の価値で決まる。多額の金融資産があったため倒産には至らないものの、株主にとっては大きな価値の毀損となる。
- レシピサービス有料会員:数量 48.0(年間平均の有料契約数(万人、推定))× 価格 270(1契約当たり月額実効料金(円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。会員数は現在の約0.37倍、単価も低下。レシピ有料検索の収益モデルが大幅に縮小する。
- 自社媒体広告・提携・新サービス等:数量 12.0(年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量))× 価格 115(広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値))→ 売上 1 億円・営業利益 −1 億円。広告相当数量は約0.32倍となり、単価も下落。新規サービスの撤退費用や固定費が重い。
倍率:恒常的な赤字のためPERでは評価しない。10年間の累積純損失約60億円と還元ゼロにより、自己資本は129億円から69億円へ縮小する。さらに手元資金の一部は不採算事業の維持や再構築に投じられ、換金可能な純金融資産は約25億円まで減少する。事業用資産の売却可能額約5億円を加えた約30億円を価値の床とする。ROEが負であるため、帳簿自己資本そのものを床には使わない。
確率:AIエージェントによる検索の代替と競合への利用者流出が連続し、会員収入が大きく減る筋。赤字の経験があるため無視できないが、厚い流動資産と既存の投稿基盤があり、事業が完全に消滅するとは限らないため15%とする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
レシピサービス有料会員
国内外のレシピ検索・保存・献立提案などの有料機能を、月額課金で利用者に提供する継続収入。AIエージェント代替の型では、席課金・検索画面中心の情報サービスに準じる。
| 数量年間平均の有料契約数(万人、推定) | 価格1契約当たり月額実効料金(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 129 | 308 | 48 | 9 |
| 10 年後 中立 | 96.8 | 339 | 39 | 6 |
取り方:公式プレミアムサービスのウェブ決済料金は月額308円。公開されている会員規模の参考情報と、会社が会員売上を売上収益の大部分と説明していることから、平均129万人と仮定した。129万人×308円×12か月で約47.68億円となる。ただし会員数、アプリ課金手数料、海外契約の単価は正確に分離開示されていないため、これは公表実数ではなく経済性を把握するための推定値である。営業利益9億円も推定配賦であり、会社が開示した部門利益ではない。料金は公式ヘルプと2025年有価証券報告書を参照。
自社媒体広告・提携・新サービス等
無料レシピサービスの広告、提携収入、クックパッドマート、momentなどの収入を含む残余事業。広告枠は自社媒体型として評価し、現物配送はAIの直接代替対象から除く。
| 数量年間広告表示回数相当(億回、推計換算数量) | 価格広告表示1000回当たり売上相当額(円、周辺収入込みの換算値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 38.0 | 150 | 6 | −6 |
| 10 年後 中立 | 29.0 | 175 | 5 | −1 |
取り方:会社は単一セグメントであり広告、新サービス、ECの個別売上を開示していない。連結売上約53.4億円から推定会員売上47.68億円を引き、残額約5.7億円を計上した。仮に広告表示1000回当たり150円で換算すると年間38億回相当になる。これは実際の広告表示回数を示すものではなく、広告と周辺事業をまとめた換算数量である。営業損失6.36億円には新事業の赤字と共通費の一部を推計配賦し、二つの事業の営業利益の合計が2025年全社の約2.6億円になるよう整理した。独立した売上・利益開示がないことが推定の最大の制約である。
リスクと懸念
AIエージェント代替による有料検索の陳腐化
レシピ検索、献立提案、分量調整、食材の代替提案は、外部AIエージェントが直接提供しやすい機能である。利用者がクックパッドの画面を開かなくなれば、広告表示数と有料会員への転換率が同時に低下する。料理に関する独自データが残っても、その価値を課金として回収できるとは限らない。
有料会員数の減少と価格決定力の弱さ
2025年も2026年上期も、プレミアムサービス会員の減少が減収の主因となった。固定客が残っても、月額料金を物価上昇に合わせて引き上げられなければ、名目売上を維持するだけで苦しくなる。中立では会員数量の減少と物価以下の値上げを見込むが、解約速度が現在の水準に近いまま続けば、さらに大きな減収となる。
投資信託の市場価格変動
2025年末には現金約59億円とは別に、投資信託約53億円、債券などを含む金融資産が存在する。投資信託の評価損益は金融収益を通じて純利益を大きく動かす。2025年の金融収益を安定した本業利益と誤認すると、企業価値を過大評価する可能性がある。市場下落による資産価値の減少も、悲観シナリオに反映する必要がある。
新規事業への再投資の失敗
momentはAIカメラによる料理支援、クックパッドマートは生鮮食品の配送という新たな価値を提供しようとしている。しかし会社の2025年の説明では、前者は開発の安定性、後者は規模拡大と収益性の両立が課題である。会員事業から得た現金を不採算事業へ投じ続ければ、財務が強くても株主の価値は減少する。
広告接点の喪失と競合の拡大
クラシル、デリッシュキッチン、YouTubeなどが料理の情報を探す利用者を引き付けている。クックパッドが広告媒体として持つ価値は、掲載するレシピ数だけでなく、利用者が実際に訪問する頻度で決まる。AIが検索結果を要約して回答するようになると、投稿データの価値が残ってもサイトへの流入と広告表示回数が減る可能性がある。
株主還元が続くかどうか
2024年から2026年にかけて大規模な自社株買いを実施したことは評価できる。しかし配当は行っておらず、将来の還元額にも数値目標はない。経営が新規事業への投資を優先すれば、余剰資産が市場価値で評価されていても株主には届かない。早期の還元が進むか、資産が長期間社内に留まるかで現在価値は大きく変わる。
ストックオプションによる希薄化
2025年末には未行使のストックオプションが約215万株あり、基準となる自己株式控除後株数に対して約3%に相当する。行使には価格や業績などの条件があり、全てが行使されるとは限らない。楽観では行使による資金流入と既存株主の持分減少の両方を反映する。自社株買いの効果を見る際も、新規株式の発行可能性を無視しない。
今後の分かれ目
- プレミアムサービス会員数の減少が止まり、複数四半期にわたって売上収益が前年同期比で増加したら
- レシピ事業の競争力が改善した証拠として中立の会員数量を引き上げる。広告収入だけではなく、継続課金収入そのものが増えているかを確かめる。
- 年間営業利益が5億円以上へ回復し、その大半が金融資産の評価損益ではなくレシピ事業から生まれたら
- 費用削減と事業の収益化が進んだと評価し、楽観側の確率を高める。ROEが資本コストへ近づくなら正当化倍率も再計算する。
- 新たな自社株買い計画が発表され、保有する余剰金融資産の大きな部分を継続的に株主へ戻す方針が示されたら
- 資産の回収時期が早まるため現在価値を上方修正する。ただし買付実施額を株主還元と残存現金の両方に数えず、財務上の資金移動を確認する。
- 投資信託などの金融資産の時価が大きく下落し、流動資産の合計が継続的に減少したら
- 余剰金融資産の前提を下方修正する。運用損と新規事業への資金投入を分け、どちらが株主価値を減らしたのかを確認する。
- momentやクックパッドマートが個別売上と営業利益を開示し、継続的に黒字を達成したら
- 新事業を独立した数量と単価で評価し直す。収益化の確認された部分だけ成長価値を加え、実績のないAI関連需要を先取りしない。
- 外部企業によるTOBまたはMBOが正式に発表されたら
- 通常の10年利益価値ではなく、公開買付条件、価格、成立見込み、残余資産の扱いを中心とする評価に切り替える。噂だけでは買収価値を追加しない。
見ておくもの
- 四半期ごとのプレミアムサービス会員数、または会員収入の減少率
- 金融収益を除いた営業利益と営業キャッシュ・フロー
- 現金・投資信託・債券の内訳とその時価の推移
- 新たな自己株式取得枠、実際の買付額、消却株数、配当方針
- momentおよびクックパッドマートの売上・利益の個別開示と事業撤退・拡大の判断
- AIを利用した料理支援サービスの実際の有料契約数と売上実績
- ストックオプションの未行使残高と業績条件の達成状況
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額89億円から逆算して利益率や倍率を決めていない。2025年の会員収入を契約数と月額料金で推定し、広告・周辺事業を別に組み立てた。中立の会員数量0.75倍、価格1.10倍は、AIエージェント代替の型と長期の会員減少実績から決めたものである。物価上昇は名目価格に入れ、利用者数には混ぜない。
PERは現在や過去の市場倍率を参照せず、資本コスト8.25%、長期名目成長率マイナス0.5%、事業ROEから求める上限を使った。中立では事業ROEが資本コストを下回るため、長期の稼ぐ力の上限11.43倍である。2025年の純利益には投資信託評価益が含まれるため、正常化した利益を起点とし、金融資産約95億円相当の余剰部分は営業利益による価値と分けた。
10年間の自社株買いは累計還元額に計上し、同額が2035年の金融資産にも残る二重計上を避けた。各筋書きの自己資本は今の129億円に期間純利益の合計を加え、還元を引いた額とした。悲観では資産が赤字で消費される経路を説明し、その時点で残る換金可能資産を床とした。会社はIFRS適用企業であり、リース負債は既に財務諸表に含まれるため、新リース基準を理由とした機械的な二重調整は行わない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本の資本コスト7.5%に事業の質の調整プラス0.75%を加えた8.25%。個別のAI代替リスクや新規事業の失敗は10年後の数量・利益率と確率に反映し、追加的な危険料として二重計上しない。