結論
SQUEEZEはホテルの企画から予約、現場運営までを技術と人の組み合わせで請け負う会社である。筆者の結論は「割高」だ。2035年までに運営客室が大きく増える道筋はあるが、それを実現する資本と契約上の負担が軽くはなく、既存株主が受け取れる10年の価値は現在の時価総額を約38%下回る。ホテル向けの便利な仕組みを売るだけの企業とみなして、ソフトウェアのような高い収益性を永続させるのは危うい。
事業の芯は、宿泊施設を持つ不動産オーナーの代わりに現地まで引き受ける「フル支援」である。2025年末の1,232室に対し、2026年6月末は1,365室となり、会社は2027年末の2,500室を見込む。第一リアルター、霞ヶ関キャピタル、ヒューリックなどの不動産側との提携は、ホテルができる前から運営を取り込む営業経路だ。国内の総客室に占める現在の取り扱いはまだ小さく、契約を獲得できれば実需の成長余地はある。
ただし、仕事の中身にはまったく異なる三種類がある。清掃や安全管理を伴う現場運営はAIだけでは消えないが、予約・電話・価格調整の人手仕事はAIエージェントが直接引き受けられる。suitebookも画面やIDへの課金に依存する部分は価格が下がりうる。2026年上期の賃料は前年の約3倍で、建物を所有しないことと家賃を払わずに済むことは別だ。
中立では2035年の会社全体の時価総額を約289億円と見る。それでも、株主への支払いが約束されておらず、潜在株式による希薄化と資本コストを考えると、今支払える価値は約115億円にとどまる。五つの筋書きの平均は約116億円で、現在の約188億円には届かない。成長の可能性と、投資価格としての魅力は切り離すべきである。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、最初にホテルの客室が10年先も人の手を必要とするかを問う。宿泊そのもの、清掃、設備維持は残り、同社が現場を安全に回し続けられるなら、仕事の土台は比較的明瞭だ。不動産を自分で建てずに建設前から運営を受託する構造も魅力がある。投下資金を抑えて同じ顧客の複数施設へ広がれれば、オーナー利益は会計上の利益以上の速さで増える可能性がある。
しかし、所有するホテルが少ないから資本を使わない、という説明をそのまま信じるべきではない。賃借契約は銀行借入とは別の、逃げにくい支払いの約束である。売上を総額で計上するMLと、運営手数料を中心とするMCでは、同じ1室を増やす意味が違う。平均客室単価や稼働率の良い時期の利益を基準に、入れ替えや改修、保証金、現場管理に要る現金を見落とすと、実際のオーナー利益を高く見積もってしまう。
もう一つ気になるのは、ソフトとAIの競争優位がいつまで有効かである。現場の仕事を効率化する独自技術は価値があるが、技術が顧客のものになり、別のAIエージェントに機能を代替されれば、利用料の値上げは難しい。低解約率や値上げ成功の数字が足りない以上、永続する独占的な利益率は前提にできない。実際の導入数より、導入後の継続率、追加受託、利益率を重視したい。
最終的には資本配分と支払う価格が結論を決める。成長期に配当を抑える判断自体は合理的でも、内部に残した現金が少数株主の価値になるには、投資の利回りか将来の還元という出口が要る。ホテル運営という必要な事業を見つけたことと、現在の時価総額で安全域があることは同義ではない。
何で稼ぐ会社か
SQUEEZEの顧客はホテルの所有者、開発事業者、運営会社である。自社開発の宿泊運営基盤「suitebook」を使い、予約管理、料金の調整、チェックイン、遠隔の顧客応対から清掃、備品や現場の人員配置までつなぐ。旗艦ブランド「Minn」はグループ宿泊向けのアパートメントホテルとして展開される。運営受託であるMC契約では主に運営の対価を受け取り、マスターリースのML契約では建物を借り、宿泊売上を取り込む代わりに賃料と稼働の危険を負う。両方を同じ客室数で測っても、収益と危険の大きさは違う。
会社の開示上は単一のスマートホテル事業だが、投資価値を考えるためにフル支援の現場運営、遠隔業務受託、ソフトウェアの三つに分ける。2025年末のフル支援は1,232室、テクノロジー支援は20,119室である。フル支援の室数にはシステム提供も含まれるため、売上を重複して数えないよう、客室数と推定単価で全社53.7億円へ照合した。会社は三分類の売上、1室当たりの料金、遠隔作業の人月を分けて開示していない。推定の不確かさは、筋書きの幅に反映させる。
フル支援はホテルが開く数年前の企画段階から関与し、開業後の運営、資産の売却後も契約を続ける形を狙う。東京建物・大和証券グループの案件や、霞ヶ関キャピタルのFAV LUX、北海道の球場関連施設などが関係の深まりを示す実例である。一方、テクノロジー支援は三交インホテルズの15施設2,092室へ導入を終え、ポラリスグループの111施設16,216室へ導入を広げている。導入対象客室と、有償かつ解約されずに残る客室とは必ずしも同じではない。
収益構造を左右するのは、契約した室数だけでなく平均客室単価、稼働率、清掃・人件費、そして賃料である。ソフトの新機能が増えてもホテル所有者が受け取る収益改善のうち、どれだけをSQUEEZEが料金として取り続けられるかが分かれ目になる。遠隔運営をソフトに移し、清掃など現地に残る仕事を効率よく回せれば利益率は上がるが、ホテルを借り上げる契約が増えれば景気の谷で利益と現金が同時に傷む。
優良さと弱いところ
最大の強みは、ソフトの機能そのものではなく、設計から開業、運営、売却後まで不動産オーナーとの関係が続くことである。清掃会社、予約管理、価格設定、現地の鍵や設備をまとめて変更するのは手間がかかる。1棟で成果を出し、同じ開発会社の次の建物にも採用されれば、顧客獲得の費用は薄まる。第一リアルターや霞ヶ関キャピタルとの拡大例は、こうした経路が実際に働き始めた証拠だ。
ただし、幅の広い「堀」、つまり長年にわたり高い値段を保てる力が完成したとはまだ言えない。会社は解約率5%未満などの継続率、規制上必須の共通基盤であること、毎年の値上げを通した実績を十分に数字で示していない。蓄積した宿泊者・運営データも強みになり得るが、それだけで顧客が乗り換えられないわけではない。ホテル向けソフトは他社が販売し、AIエージェントは異なるシステムを横断して操作できる。
直近の高ROEをそのまま長期の利回りとみるのは誤りだ。2025年のROEは52.7%だが自己資本は約15億円と小さく、税効果で純利益も営業利益を超えた。2026年の上場で自己資本が増え、ホテル運営の売上を増やすには人員、敷金、開業準備資金も要る。国内の多くのホテルを扱う規模に至るまで増分の投下資本利益率が資本コストを上回るか、まだ短い上場履歴だけでは断定できない。
同社は建物を所有しないことで巨額の建築費を避ける一方、マスターリースを増やしている。2026年上期の地代家賃7.47億円は前年同期の2.60億円から急増した。会計上の現金が増えても固定賃料と預り金・保証金に備える必要がある。長期的には、運営委託のMC比率が上がり、フル支援客室の利益額が賃料負担より早く増えることが、持続的な資本効率の条件となる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の宿泊市場そのものは消えないが、数量が毎年二桁で伸びる市場ではない。観光庁による2025年の国内延べ宿泊者数はおよそ6億6,100万人泊で、外国人の宿泊増と国内需要の弱さが併存する。国内人口の減少、訪日旅行者の国籍構成の変化、宿泊料金の上昇による日本人の節約を考え、中立では2035年の市場全体の宿泊数量が大きく増えるとは見ない。円相場は150円で固定し、物価は年3%の前提とする。
伸びるのは主としてSQUEEZEの取り扱い割合である。会社資料では2025年の全国宿泊施設の総客室は約183万室で、同社のフル支援とテクノロジー支援を合わせた約2.1万室は約1.2%にすぎない。フル支援だけなら0.1%を下回る。中立の2035年にフル支援が5,700室になっても、全国客室の約0.3%である。したがって需要の急増を前提にせず、不動産開発業者の案件を獲得し、競合から委託を奪うことで伸びる余地は残る。
競合は二層に分かれる。ホテルを運営する領域では共立メンテナンス、リゾートトラストなど既存のホテル運営会社と、個別の地域ホテル運営受託会社がいる。システムではOracle OPERA、NEHOPS、Cloudbedsなどの宿泊管理・予約管理製品に加え、OTAや宿泊施設が自前で組む業務基盤と競う。事業範囲が違うため、これらの競合とSQUEEZEの同一条件のシェア統計は確認できず、特定社の割合を捏造しない。室数で測る国内占有率と、運営売上高の占有率は別の指標である。
2035年の分岐は人手不足とAIの双方にある。現地の清掃、リネン交換、設備点検は物理的に残り、集約運営の価値は上がる。一方、予約調整、電話応対、遠隔受付、料金改定はAIが自動化し、SaaSのID数やBPO人月への請求額を減らす。会社は電話の約8割をAIで自動化する機能を公表したが、独立したAI商品の売上額は示していない。ここを楽観の売上成長の根拠にしない。新リース会計で賃借契約が貸借対照表に表れれば、競合との債務比較にも注意が要る。
資本政策と M&A
2026年の会社計画は売上高70.34億円、営業利益7.05億円、純利益5.13億円である。2027年末のフル支援2,500室という営業上の目標はあるが、それより先の中期計画として売上、営業利益、ROEを一式で数値約束したものは確認できない。配当性向、DOE、総還元性向、自社株買いの金額も数字の約束なしで、現時点の年間配当予想はゼロである。会社に利益が出ても、それがすぐ既存株主へ届くとは限らない。
2026年4月の上場と第三者割当後、6月末の自己資本は約23.9億円に増えた。新しい資金は財務の安全性を高めるが、開業投資や預け入れ資金、固定賃料に備える部分は余剰現金ではない。9月にヒューリックが既存株主から株式を取得し、保有割合は6.97%となる資本業務提携を発表した。これは新株発行やTOBではない。第一リアルター、RS Investment Managementなどとの出資関係も営業基盤を強めるが、契約の収益保証ではない。
上場前の目論見書では潜在株式が45.3万株に達した。すでに行使されたと見込まれる分を除いても希薄化の余地は大きく、既存株主の取り分を別途調整する。2026年7月にM&A経験者を幹部に迎えたが、大型買収が成立したわけではない。5年間の増配や大規模な自社株買いの実績がなく、株式も経営陣と事業パートナーに集中する。留保金の株主への戻り方は保守的に見て、買収やマスターリース拡大が資本コストを超える利益を作るかを継続検証したい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホテルの運営を支える会社として、顧客を増やす道筋はすでにある。会社が掲げる2027年末2,500室は、2025年末のほぼ2倍に当たる。第一リアルターとの共同開発、霞ヶ関キャピタルのグループ施設への展開、ヒューリックとの資本業務提携は、不動産を開発する前から運営会社を決める商流を作る。約183万室という全国の母集団に比べれば、フル支援の室数を数倍にしても同社の占有率は小さい。国内宿泊者数が横ばいでも、委託化による成長が可能だ。
フル支援はソフトを売って終わる商売ではない。オーナーが物件を売却しても現場運営を継続した実績があり、同じ顧客の別施設へ横展開も起きている。ホテルが変われば客室の清掃、予約、現場応対を一斉に組み直す必要があり、単純なSaaSより乗り換えは難しい。自社の運営現場を実験場としてAI価格調整や電話対応を磨けるため、同じ品質でより多くの施設を扱う余地がある。AIを売上拡大の魔法として数えなくても、清掃と現場配置の効率化が本業の利益率を押し上げうる。
マスターリースの賃料は危険でもあるが、開業後の稼働が安定すれば、総額で受け取る宿泊売上から利益を厚く残す手段になる。会社が相手にするのは新設ホテルだけではなく、既存ホテルの運営改善も含む。2035年にフル支援が1万室を超え、契約ごとの採算を維持できれば、いまは小さく見える稼ぐ力は相当に大きくなる。資本業務提携先が出資と仕事を継続するなら、営業網も強くなる。
慎重な見方
事業の高成長を、株主への高い利回りへ直結させるのは危険だ。2025年の売上54億円に対し営業利益は5億円程度で、いまだ固定費を吸収する途中にある。2026年上期の売上は伸びたが、販管費も増え、地代家賃は前年同期の2.60億円から7.47億円に跳ね上がった。建物を持たないことを資産の軽さと呼んでも、借り上げたホテルの稼働が落ちれば賃料の支払いは残る。数年に一度の不況で現金が急速に減る可能性がある。
suitebookの普及も、将来の独占を証明してはいない。ポラリスへの導入と三交インでの採用は確かな進捗だが、低い解約率や追加料金を払わせる力は未確認である。予約管理、問い合わせ、収益管理をAIエージェントが横断的に実行するようになれば、施設側はソフトのIDや遠隔人員を減らせる。会社も電話応対の8割を自動化する機能を公表しており、人手による作業量が構造的に減ることを自ら示している。競合が同じ機能を低価格で提供する時に、SQUEEZEだけが高い利用料を守れるとは限らない。
2025年の純利益が営業利益より大きいのは税効果による押し上げがあり、長期の稼ぐ力と同じではない。IPOで増えた自己資本と潜在株式の行使は、一株当たりの利益を薄める。現時点で配当や自社株買いの数字の約束もないため、利益を増やしても少数株主は経営者の資本配分に依存する。提携先との案件が開発段階で止まる、あるいは借り上げた物件の稼働が低下するだけで、期待された複利成長は崩れうる。
どちらに重みを置いたか
現場運営の必要性と顧客経路には説得力があり、会社を単なるAIに置き換わる受託業とみるのは行き過ぎだ。ただし、ソフトウェアと遠隔人員の価格決定力は立証されておらず、賃料固定化と未還元資本は無視できない。楽観とやや楽観を計30%、中立を32%、やや悲観と悲観を計38%とした。下に寄せたのは株価に合わせたからではなく、事業モデルの混合性とリースの非対称な損失があるためである。
フル支援のシェア拡大は中立でも織り込んだが、2035年の利益を資本コストで現在に戻し、潜在株式を考慮すれば現在の約188億円には安全域がない。新規受託1室ごとの投下資本利益率と、AI導入後のソフト単価を確認するまでは慎重な判断が勝る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 7,777 円253 億円(+ 還元の換算額還元の合計 72 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 3,569 円116 億円、今との差 −35.9%、 期待の年率 +3.5%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 21,863 円712 億円 | 487 円16 億円 | +301.3% | +15.2% | 2,012 円66 億円 |
| やや楽観 | 21% | 13,615 円443 億円 | 135 円4 億円 | +146.9% | +9.5% | 2,887 円94 億円 |
| 中立 | 32% | 7,808 円254 億円 | 0 円0 億円 | +40.2% | +3.4% | 2,499 円81 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,471 円48 億円 | 0 円0 億円 | −73.6% | −12.5% | 368 円12 億円 |
| 悲観 | 13% | 646 円21 億円 | 0 円0 億円 | −88.4% | −19.4% | 84 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,777 円253 億円 | 72 円2 億円 | +40.9% | +3.5% | 7,849 円256 億円 |
今の株価時価総額 5,570 円181 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 開業前から運営を取り込むネットワークが全国に広がる 利益 54 億円 · PER 14.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 21,863 円712 億円
不動産事業者と深く組む営業経路が広がり、当初の2027年2,500室を着実に超えて2035年のフル支援は10,500室になる。第一リアルターやヒューリックとのホテル開発が複数地域で実際の稼働施設になり、既存オーナーが施設を売却した後も運営受託が続く。全国約183万室を母数とすればなお小さなシェアであり、量の拡大は旅行市場そのものの急成長を要しない。
現場運営を重ねるほど清掃・保守の手配が効率化し、MC型の比率も上がる。物理的なオペレーションはAIに代わらないため、現場事業の採算が良いホテルでは値上げを通せる。遠隔人月と画面型ソフトの数量はAIエージェントが代替するため、成功側でもそれらの客数を2025年より増やすとは想定しない。2026年時点で別建ての有料AI商品の金額が公表されていないからだ。
賃料負担は拡大するが、高稼働の施設を選別して契約し、過大なML契約を避ける。地域運営会社の小規模な買収を実施する場合も、対価を自社が生み出した現金の範囲に抑え、買収後の利益率を見極める。営業利益率は現場で17%台に達し、10年累計の利益は相応に増える。株主へ一部18億円を還元しても自己資本と現金が厚くなる筋書きである。
- フル支援・現地オペレーション(MC・ML):数量 10,500(年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似))× 価格 0.05(1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上))→ 売上 487 億円・営業利益 85 億円。フル支援10,500室×年間会社売上464.0万円/室。MC・ML構成で単価が変わり、現地人手と固定賃料も営業利益率に含む。
- 遠隔受付・価格調整などのBPO業務:数量 400(契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定))× 価格 0.01(遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。遠隔400人月、単価67.0万円/人月。業務自動化で数量が減る。
- suitebook・クラウド宿泊運営システム:数量 20,119(suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室))× 価格 0.00(対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。AIエージェント代替の席・操作画面型。対象20,119室。価格は2025年比1.15倍で、独立したAI商品の未公表収益を積み増さない。
倍率:非事業用余剰現金115億円を2035年の自己資本と純利益から除いた事業ROEは約30.8%である。資本コストk=8.25%、普通の堀の残存率1/2から新規投下資本のRONICは約19.5%、2035年以降の名目成長率g=2.0%とし、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.36倍の上限そのものを採用。余剰現金の利息を純利益から外し、帳簿額の0.5倍だけを足した。過去・同業の市場倍率は根拠に使わない。
確率:短期の2027年2,500室案件を十年以上繰り返して大幅に伸ばし、かつ高採算のMC契約を選び抜ける条件が多いため、上限側には9%だけ配分する。
やや楽観 21% 運営案件の積み上がりで着実に拡大 利益 35 億円 · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13,615 円443 億円
2027年の開業パイプラインが概ね収益化し、その後も東京都心や北海道、関西、九州で運営委託を取れる。霞ヶ関キャピタルのグループ案件や不動産開発会社との協業が継続し、2035年のフル支援は7,800室となる。国内総客室の半分の1%にも達しないため、需要を大きく取り込むというより、既存運営会社からシェアを少しずつ奪う筋書きだ。
新規施設では鍵やチェックインの仕組みを企画時点で設計し、スタッフを増やしすぎずに受託を積み上げる。価格は賃料・人件費のインフレを概ね反映するが、オーナーとの成果配分で超過利潤のすべてを得るわけではない。遠隔BPOの工数は360人月へ減り、ソフトの対象客室も18,107室に縮む。AIエージェントの一般化が業務の一部を代替するのを、現場運営の利益で補う。
大型買収に頼らず、提携と既存顧客からの案件獲得が中心となる。マスターリースのリスク管理に失敗せず、現場の営業利益率は16%を維持する。留保利益を再投資し、株主還元は10年間で小幅にとどまるが、2035年には堅実な中堅運営会社になる。
- フル支援・現地オペレーション(MC・ML):数量 7,800(年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似))× 価格 0.05(1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上))→ 売上 355 億円・営業利益 57 億円。フル支援7,800室×年間会社売上455.0万円/室。MC・ML構成で単価が変わり、現地人手と固定賃料も営業利益率に含む。
- 遠隔受付・価格調整などのBPO業務:数量 360(契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定))× 価格 0.01(遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。遠隔360人月、単価66.0万円/人月。業務自動化で数量が減る。
- suitebook・クラウド宿泊運営システム:数量 18,107(suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室))× 価格 0.00(対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。AIエージェント代替の席・操作画面型。対象18,107室。価格は2025年比1.12倍で、独立したAI商品の未公表収益を積み増さない。
倍率:非事業用余剰現金60億円を2035年の自己資本と純利益から除いた事業ROEは約23.1%である。資本コストk=8.25%、普通の堀の残存率1/2から新規投下資本のRONICは約15.7%、2035年以降の名目成長率g=2.0%とし、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.96倍の上限そのものを採用。余剰現金の利息を純利益から外し、帳簿額の0.5倍だけを足した。過去・同業の市場倍率は根拠に使わない。
確率:不動産パートナーからの横展開は実例がある一方、賃借物件の採算は未検証であるため、十分に考えられる上振れとして21%とする。
中立 32% 現場受託は広がるがシステム収益は成熟 利益 20 億円 · PER 13.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 7,808 円254 億円
2027年の2,500室計画は開業遅れを含みつつ概ね実現し、その後の成長はゆるやかになる。第一リアルターやヒューリックの案件は一部が実際のフル支援ホテルとなるが、競合運営会社との入札も厳しく、2035年に5,700室へ到達する。全国ホテル市場の宿泊数量は大きく伸びず、同社の成長は物件開発側との協業による委託シェアの増加から生じる。
現地清掃と施設維持は残り、フル支援の1室当たり名目売上は約1.30倍となる。既存物件の償却は取得原価のまま残り、システムや設備を新規更新する分には高い投資額が要る。遠隔BPOの実質工数は2025年の7割である280人月となり、ソフトの有償対応客室は8割の16,095室に落ちる。AI価格調整や電話対応はコスト削減には効いても、独立した有料AIの増収は証明されない。
現場運営は営業利益率13.6%を確保するが、全社では本社費と技術投資、賃料の増加が重い。税効果が正常化した後の純利益は約20億円で、利益は主として事業拡大と現金の積み上げに回る。経営陣が配当目標を設けない状態が続き、既存株主にまとまった現金が直接戻るまでには至らない。
- フル支援・現地オペレーション(MC・ML):数量 5,700(年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似))× 価格 0.04(1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上))→ 売上 255 億円・営業利益 35 億円。フル支援5,700室×年間会社売上448.0万円/室。MC・ML構成で単価が変わり、現地人手と固定賃料も営業利益率に含む。
- 遠隔受付・価格調整などのBPO業務:数量 280(契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定))× 価格 0.01(遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。遠隔280人月、単価65.0万円/人月。業務自動化で数量が減る。
- suitebook・クラウド宿泊運営システム:数量 16,095(suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室))× 価格 0.00(対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AIエージェント代替の席・操作画面型。対象16,095室。価格は2025年比1.10倍で、独立したAI商品の未公表収益を積み増さない。
倍率:非事業用余剰現金42億円を2035年の自己資本と純利益から除いた事業ROEは約17.8%である。資本コストk=8.25%、普通の堀の残存率1/2から新規投下資本のRONICは約13.0%、2035年以降の名目成長率g=2.0%とし、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.54倍の上限そのものを採用。余剰現金の利息を純利益から外し、帳簿額の0.5倍だけを足した。過去・同業の市場倍率は根拠に使わない。
確率:現在の提携・開業実績を尊重しつつ、長期ではAIが遠隔工数とソフト価格を下げると見る中心筋であり、32%を置く。
やや悲観 25% 競争と賃料負担で利益が薄くなる 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,471 円48 億円
ホテル開発は2027年以降も続くが、用地代・建築費・金利の上昇で一部が中止される。フル支援は2035年に3,500室まで増えるものの、開業遅延や契約の入れ替えで計画ほど伸びない。既存ホテル運営会社との競争が激しくなり、SQUEEZEが新たに受託するには価格を譲る必要が出る。ホテル需要は横ばいでも、新しい物件同士の競争で稼働率が下がる。
AIエージェントが受付や予約管理を広く引き受け、遠隔BPO人月は220、テクノロジー支援は12,000室まで減る。suitebookの機能は残っても顧客の価格交渉力が増し、料金は物価ほど上げられない。現場の効率化で人件費を抑えようとしても、賃借物件の家賃は固定であり、フル支援の営業利益率は9%程度へ下がる。失敗した物件の整理にも現金が必要となる。
増資による資本の減少は避けられる一方、稼ぎの再投資効率は資本コストを下回る。売上が増えても税引後の利益は5億円程度にとどまり、株主への配当は行われない。会社は存続するが、期待された事業拡大の価値は大きく削られる。
- フル支援・現地オペレーション(MC・ML):数量 3,500(年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似))× 価格 0.04(1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上))→ 売上 142 億円・営業利益 13 億円。フル支援3,500室×年間会社売上405.0万円/室。MC・ML構成で単価が変わり、現地人手と固定賃料も営業利益率に含む。
- 遠隔受付・価格調整などのBPO業務:数量 220(契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定))× 価格 0.01(遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。遠隔220人月、単価60.0万円/人月。業務自動化で数量が減る。
- suitebook・クラウド宿泊運営システム:数量 12,000(suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室))× 価格 0.00(対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の席・操作画面型。対象12,000室。価格は2025年比1.03倍で、独立したAI商品の未公表収益を積み増さない。
倍率:現金8億円の利息控除後の事業ROEは約7.4%で資本コスト8.25%を下回る。PERの上限は1÷8.25%=約12.1倍であるが、優位喪失、賃料固定化、事業整理が重なるためやや悲観の稼ぐ力を10.5倍で評価する。余剰現金8億円は還元係数0.5で4億円と数え、収益から対応利息を外す。
確率:下に寄せる理由:地代家賃の急増とAIエージェント代替により、売上拡大が営業利益に結びつかない可能性が高い。会社固有のMLリスクを含め25%を置く。
悲観 13% 新規ホテルの低稼働とAI代替で優位を失う 利益 0 億円 · PBR 1.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 646 円21 億円
マスターリースで引き受けたホテルの稼働が落ちる一方、固定賃料を十分に下げられない。国内客の旅行需要が弱まり、訪日需要の偏りも重なって、新たな開発案件が細る。第一リアルターやヒューリックとの協業が想定ほど開業につながらず、採算の悪い契約から撤退する。2035年のフル支援は1,750室まで縮小し、国内で存在感のある運営会社には育たない。
ホテル各社が外部AIエージェントを標準化し、suitebookの操作画面と遠隔受託の仕事が代替される。遠隔人月は100、ソフトの対象室数は7,042へ減り、低価格で提供を続ける。AIによる自動化で社内コストは減るが、顧客から受け取る手数料も同時に減るため、ソフトは赤字化する。物理的な清掃や設備管理は残るものの、受託の利幅を確保できない。
成長期に積み上げた運営体制と賃借契約を縮小するため、途中の期には賃借物件の撤退損、既存子会社の減損、買収した運営会社の整理など合わせて20億円強の非経常的な損失を計上する。2035年に営業黒字をかろうじて確保しても、純利益はほぼゼロである。株主還元を停止し、優良な運営会社ではなく換金可能資産の価値が中心になる。倒産を前提にはせず、残る純現金と回収可能な資産で価値の床を考える。
- フル支援・現地オペレーション(MC・ML):数量 1,750(年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似))× 価格 0.03(1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。フル支援1,750室×年間会社売上346.0万円/室。MC・ML構成で単価が変わり、現地人手と固定賃料も営業利益率に含む。
- 遠隔受付・価格調整などのBPO業務:数量 100(契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定))× 価格 0.01(遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の人月型。遠隔100人月、単価50.0万円/人月。業務自動化で数量が減る。
- suitebook・クラウド宿泊運営システム:数量 7,042(suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室))× 価格 0.00(対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。AIエージェント代替の席・操作画面型。対象7,042室。価格は2025年比0.86倍で、独立したAI商品の未公表収益を積み増さない。
倍率:収益力は資本コストを大幅に下回るため、2035年の予想純利益を高い倍率で資本化しない。悲観の価値は、2026年6月末の現金預金36.09億円から有利子借入13.63億円を引いた純現金22.46億円と、換金可能なその他正味資産1.44億円の合計23.90億円を床として決める。SCHEMAの悲観側PBRの検査では、2035年予想自己資本28億円ではなく、基準期2025年12月末の自己資本14.8億円を倍率の掛け先とする。PBR表記の1.615は床23.90億円÷基準期自己資本14.8億円の換算値であり、14.8億円×1.615=約23.90億円となる。これは2026年のIPOによる資本増強を反映した換金可能資産の床を表すもので、将来自己資本や過去の市場PBRを評価根拠には用いない。
確率:好況時に増やした借上げ負担とAIによる価格低下が同時に起こるには複数条件が要るが、損失が非対称なので13%を確保する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
フル支援・現地オペレーション(MC・ML)
不動産オーナーが所有するホテルで、開業準備から清掃、現場対応、宿泊売上管理まで担う。MCの運営手数料とMLの宿泊売上計上を含む。
| 数量年間フル支援換算のホテル客室数(室、稼働の年平均に近似) | 価格1室当たり年間会社売上(億円/室、宿泊単価ではなくMC・ML混合売上) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,232 | 0.03 | 42 | 7 |
| 10 年後 中立 | 5,700 | 0.04 | 255 | 35 |
取り方:会社の2026年上期説明資料は2025年末フル支援1,232室、2026年6月末1,365室と開示。2025年全社売上53.7億円のうちフル支援を42.352億円と推定配賦し、1室当たり343.8万円に換算。これは平均宿泊ADRではなく、MC手数料とML総額計上を混ぜた会社売上で、直販数量単価ではない。個別契約の部屋数・単価・MC/ML構成比を非開示のため推定。売上は年平均稼働室数でなく年度末室数で代理する誤差がある。営業利益7.2億円も分析上の配賦値であり、部門開示値ではない。同業の単価の外部確認として東京商工リサーチの2025年度上場ホテル調査はADR17,818円・稼働率83.3%を報告し、365日換算の宿泊売上は約542万円/室年となる。MCでは宿泊売上を全額計上しないので、同社のMC・ML混合の343.8万円はその水準より低いとした(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202962_1527.html)。
遠隔受付・価格調整などのBPO業務
人の作業を通じたクラウドレセプション、予約調整、遠隔顧客対応、運営代行の部分。物理的な清掃と切り分ける。
| 数量契約で請け負う遠隔作業人月(人月/年、推定) | 価格遠隔業務1人月当たりの年間売上を構成する月額請求(億円/人月) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 0.01 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 280 | 0.01 | 2 | 0 |
取り方:会社は遠隔受付の人月数と受託単価を開示していない。テクノロジー支援20,119室およびフル支援案件で提供する人手の遠隔業務の年間売上を分析上2.0億円、外部向け稼働400人月・1人月50万円と仮定した。400人月は常時約33人相当の受託作業の換算であり従業員数の開示値ではない。残るシステム売上と重複しないよう全社売上から別枠配賦した。営業利益0.05億円も推定である。AIエージェント代替の人月型とする。
suitebook・クラウド宿泊運営システム
宿泊管理ソフト、オンライン連携、セルフチェックイン端末、AI価格管理などテクノロジー支援施設へ提供する機能を中心に扱う。
| 数量suitebook等のテクノロジー支援の対象客室(室) | 価格対象1室当たり年間ソフト・周辺機能売上(億円/室) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20,119 | 0.00 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 16,095 | 0.00 | 8 | 1 |
取り方:2025年末テクノロジー支援20,119室は会社開示。2025年の全社売上53.7億円から現地42.352億円と人月BPO2.0億円を控除した9.348億円をシステム・周辺機能へ分析配賦した。1室年約4.65万円であり、開示された実際のSaaS単価ではない。2026年6月末には対象客室23,784室。AIエージェントが人手の操作画面を迂回できるため席課金・画面主体型として見る。導入数だけで継続・有料化を断定しない。営業利益1.05億円は推定。外部の客室課金の参考としてAirHost公式価格は基本月2,000~3,000円/室、年2.4~3.6万円/室であり、suitebookには端末や追加機能があると仮定して年4.65万円とした(https://website-pre-prod.airhost.co/products/vacation-rentals)。商品構成が違うため同一単価を確認できたわけではない。
リスクと懸念
マスターリースの固定賃料
建物を所有せずホテルを借り上げるモデルは、売上の成長と同時に景気悪化時の支払い義務を増やす。2026年上期の地代家賃は7.47億円へ増加した。契約期間、途中解約条件、各物件の稼働率が公表されない限り、全社の純現金だけで財務を安全とみなせない。新リース会計で負債として表れた時に、表面的な債務の増加を業績悪化と混同しない注意も要る。
AIエージェント代替
suitebookの宿泊管理画面と、遠隔受付・収益管理で人月課金してきた仕事は、AIエージェントが予約サイトや他社システムを横断して実行するようになると縮む。中立では遠隔人月を400から280、テクノロジー支援室数を20,119から16,095に縮め、ソフト単価も物価上昇以下とする。現場の清掃業務は残るため、全社を同じ比率で縮めてはいない。
不動産パートナーへの依存と開業遅延
第一リアルター、霞ヶ関キャピタル、ヒューリック、RS Investment Managementとのつながりは強みだが、新規ホテルは用地取得から竣工まで数年を要する。建築費、金利、規制で開発が延期されれば、会社が示す2,500室という短期パイプラインも収益化が遅れる。提携施設数の目標を、契約済みの稼働客室にそのまま読み替えてはいけない。
純利益の税効果と高ROEの見かけ
2025年の純利益6.2億円は営業利益5.1億円を上回った。税効果会計による評価性引当額の変動が負担税率を押し下げた面があり、同じ比率を10年後へ延長できない。2026年の会社予想でも営業利益は増えるのに純利益は減る。小さな自己資本を分母にした過去の高ROEも、IPO後の資本増強で見え方が変わる。
潜在株式による既存株主の希薄化
2026年の上場時に潜在株式約45.3万株が存在し、株式数の分母が増える可能性がある。経営者や役職員への報酬として合理的でも、現在の株主が将来利益を独占できるわけではない。行使に伴う現金の流入が小さい場合、総時価総額の成長より一株の持分の増加は遅れる。株主構成が濃いことだけで現金の還元を保証しない。
宿泊需要と客室単価の循環
訪日客の増加が宿泊市場を下支えする一方、国内人口の減少と円安による需要の反動がある。新規ホテルの開発が同時に進めば、客室稼働率と平均宿泊単価が両方落ちる可能性がある。会社売上の大部分を占めるフル支援でML比率が増えていると、宿泊料下落が賃料の固定性と重なり、利益率は収入以上の速さで悪化する。
今後の分かれ目
- 2027年末のフル支援2,500室が予定どおり収益化し、MC契約比率も上昇したら
- 運営案件の成長が現金を食わずに起こる証拠になる。2035年のフル支援室数と営業利益率を上側に修正し、増分投下資本利益率を検証する。
- 地代家賃の伸びがフル支援客室の売上増を上回る状態が2期続いたら
- 物件ごとの採算が見通せない契約が増えたと判断し、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。現金と借入だけでなく賃貸借の残存義務を確認する。
- suitebookの継続率が年95%以上、値上げ後の維持率も数値で開示されたら
- 画面課金でも乗り換え困難な基盤がある可能性を再評価する。継続率だけでなく、規制対応や独自データ利用など堀の別の証拠も要求する。
- 遠隔受付の工数と有料ID当たり単価がAI導入後に継続して減ったら
- 人月BPOと画面型SaaSの縮みが中心筋に近づく。現場支援の契約数に成長があっても技術関連売上への高成長期待は持ち込まない。
- ヒューリックや第一リアルターとの新施設が開業し、売却後もSQUEEZEの運営契約が続いたら
- 特定顧客内での横展開とスイッチングコストの証拠になる。楽観側の案件獲得確率を上げる一方、MCとMLの収益率の差を必ず確認する。
- 配当性向や自己株買いの数値目標が示され、留保現金が実際に株主へ戻り始めたら
- 内部にためた現金の回収率を0.5から0.75あるいは1.0へ引き上げ、既存株主の割引現在価値を見直す。
- 新株予約権が当初見込みを超えて行使・付与され、希薄化率が上がったら
- 会社全体の利益見通しを変えず、既存株主の最終的な取り分を引き下げる。無償の資本増強として扱わず、行使による払い込みだけ別途反映する。
見ておくもの
- 四半期ごとのフル支援室数、稼働済み室数と2027年末2,500室に対する契約済みパイプライン
- 運営受託MCとマスターリースMLの物件数・室数・平均賃料・継続期間の区分開示
- suitebookの有償稼働室数、解約率、施設当たり売上、AI追加課金の実額
- 地代家賃・敷金保証金の推移と売上総利益、営業キャッシュフロー、解約不能賃料
- 第一リアルター、ヒューリック、RS Investment Management等との提携施設の実際の開業と採算
- 2026年会社計画の売上70.34億円・営業利益7.05億円の達成度と税効果除去後の純利益
- 新株予約権の残高・行使・新規付与、株主還元目標の新設、実際の配当と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
まず全国のホテル客室数、フル支援の受託室数、suitebookの導入室数と遠隔受託人月を別々に考え、2025年全社売上53.7億円へ推定配賦した。2035年の数量と単価を先に決め、営業利益と税負担、留保資本を積み上げた。PERは現在や同業の相場に合わせず、資本コスト8.25%、堀の残存率2分の1、長期成長率2%から求めた。蓄積現金を分けた筋書きでは事業用の利益と自己資本からそれを控除し、二重計上しない。悲観は2026年時点の換金可能資産23.90億円を床とし、PBRの分母には2035年予想自己資本28億円ではなく2025年末自己資本14.8億円を用いた。床23.90億円と基準期自己資本14.8億円の比率がPBR表記1.615であり、将来の蓄積自己資本にこの倍率を掛けていない。2027年4月以降開始事業年度の新リース基準で帳簿上の負債と利益表示は変わりうるが、10年の数値は家賃を営業費用とする現在の経済実態に統一した。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式上乗せ4.5%の基本7.5%に、景気・値決め力・財務・寿命の合計0.75%を加える。赤字が続く状態ではないのでdistressの上乗せはしない。