結論
京都ホテルは、河原町御池のホテルオークラ京都と、からすま京都ホテルの2つを営む会社だ。創業は1888年と古く、ホテルオークラが議決権の35%を持つ。
筆者の結論は「割高」だ。理由は借金の重さにある。訪日客の追い風で営業利益は11億円と過去最高だが、借入は約120億円あり、自己資本比率は20%しかない。金利が上がれば、税引き前の利益の3割が利払いに消える。
2021年には新型コロナの赤字で、政府系の基金から10億円の優先株を受け入れた。この優先株は2028年以降に現金で買い戻す必要がある。延期したままの客室改装には、40億円以上が要る。
京都の中心という場所の強さは本物だ。ただ外資系の高級ホテルが次々と開き、単価を自由に上げられる立場ではない。稼ぎの多くが借金の返済と建物の更新に吸われ、株主に残る利益は薄い。
帳簿の外にある不動産の値打ちに期待する見方もある。だが売る時は借金が先に返り、少数株主に届く分は限られる。筆者は、事業の利益で測った価値は今の値段の半分に届かないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い場所にある古いホテルを、借金で抱えている」形だ。10年後もホテルはそこにあるだろう。だが株主のものになる利益は細い。
株主のものになる利益で見ると、営業利益11億円から利払いと税を引き、延期した改装と建物の更新の現金を引くと、手元にはほとんど残らない。今の建物の償却は取得した時の値段のままで、会計の利益は実態より少し良く見える。建て替えや改装は、上がった建設費で払うしかない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、場所とブランドにある。ただ京都の高級ホテルの市場は外資の新規開業で広がっていて、値段を自分で決める力は弱い。
安全域はない、と筆者は見る。自己資本は薄く、借金と優先株が先に返る。オーナーとして持ち続けたいなら、今よりはるかに安い値段が要る。借金の少ない会社なら同じ場所の強さに払えるが、この会社では先に債権者が取る。
何で稼ぐ会社か
売上98億円のうち、宿泊が43%、宴会が30%、レストランなどが27%だ。
ホテルオークラ京都は320室で、市役所の向かいに建つ。1994年に今の17階建てに建て替えた。宴会場と婚礼の設備が大きく、地元の企業や団体の会合、学会、式典の場として使われてきた。からすま京都ホテルは231室の宿泊が中心のホテルで、建物は伊吹から借りている。賃借の期限は2028年3月だ。
稼働率はオークラが82%、からすまが89%と高い。売った客室の数は年約17万室で、1室あたりの単価は平均で2.5万円ほどになる。
ホテルオークラの子会社と提携し、予約と販売の網を使う。2022年に名前を「ホテルオークラ京都」に変え、ブランドを前に出した。
稼ぎの仕組みは、客室で稼ぎ、宴会と料飲で人を雇い続ける形だ。客室は人手が少なく利益が厚いが、宴会と料飲は人件費が重い。
費用の大半は人件費と食材、建物の維持だ。客が減っても人と建物の費用はすぐには減らないため、売上が1割落ちると利益は半分近く飛ぶ。逆に単価が上がる年は、利益が大きく伸びる。
優良さと弱いところ
強みは場所とブランドだ。河原町御池は京都の真ん中で、観光にも商談にも便利な場所にある。130年を超える歴史と、ホテルオークラの名前は、海外の個人客に効く。
弱みは三つある。一つ目は財務だ。借入と社債は約120億円で、自己資本は35億円しかない。2000年には土地と建物を手放して借りる形にまでなった。二つ目は建物の古さだ。30年を超えた建物の客室改装は、約40億円の計画を延期したままだ。三つ目は競争だ。京都には外資系の高級ホテルが相次いで開き、単価を上げる余地は物価並みにとどまる。
コロナ禍の2年で赤字は計26億円に達し、自己資本はほぼ消えかけた。宿泊業は固定費が重く、客が消えると利益は一気に崩れる。
経営は手堅く借金を返してきたが、資本の余裕がないため、攻めの投資は後回しになりがちだ。資本の効率は、ここ3期の自己資本利益率が25%を超えて見えるが、それは自己資本が薄いためで、稼ぐ力が強いからではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
京都のホテルは、訪日客で潤う一方、供給も増えている。2026年3月の市内のホテルの平均単価は2.6万円と、前年より5%上がった。日本人の宿泊は減り、外国人が単価と稼働を支える形だ。
高級ホテルの競争は激しい。リッツ・カールトン、フォーシーズンズ、パーク ハイアット、アマンなどが京都に入り、日本の老舗は改装の遅れで見劣りしやすい。客は新しい客室と体験に高い値を払う。
訪日客には波がある。2025年秋からは中国からの客が減り、会社も次の期は営業利益が28%減ると見込む。為替や国際情勢で、数か月で客が消えることもある。
宴会と婚礼は、構造的に細る市場だ。婚礼の数は人口とともに減り、企業の宴会も小さくなった。ただ学会や国際会議が戻り、大型宴会が支えた年もある。
10年で見れば、京都の客室の量は増え、単価は物価並みに上がるのが普通の姿だ。古いホテルが勝つには、改装と人手への投資が欠かせない。人手不足で賃金は物価以上に上がりやすく、サービスの質を保つ費用も膨らむ。
京都市は2026年3月から宿泊税を大きく引き上げた。観光客の集中への反発が強まれば、客の数より質で稼ぐ流れが一段と進む。
資本政策と M&A
資本政策は、借金の返済と優先株の買い戻しが先に来る。2025年3月に約121億円を借り換え、一部の金利は固定した。それでも10年で見れば、金利は上がる側だ。
優先株は1,000株・10億円で、配当は年4%だ。持ち主は2028年9月まで買い戻しを求められない。会社はいつでも買い戻せるが、それには手元の現金を使う。
普通株の配当は年0.6億円と少なく、利益は自己資本の立て直しに回る。株主優待は宿泊と飲食の割引券で、会社の負担は小さい。
ホテルオークラは35%を持ち、提携の更新も2027年3月に来る。完全な子会社にする動きは今のところない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
京都の中心という場所は、二度と手に入らない。河原町御池で320室を持つホテルは、新しく建てようとしても土地がない。訪日客は10年後も京都に集まり、単価は上がり続ける。
数字も回復した。営業利益は2026年3月期に11億円と過去最高で、借入は5年で20億円近く減った。稼働はオークラで8割を超え、からすまは9割に近い。
ホテルオークラとの提携は、海外の個人客を集める力になる。延期した客室改装をやり終えれば、単価はさらに上がる。
借金は重いが、利益で着実に減っている。優先株を買い戻せば、普通株主の取り分は増える。ホテルの不動産の値打ちは帳簿よりずっと高く、時価総額はその一部にすぎない。
金利が上がっても、ホテルの単価は物価とともに上がる。建物の償却は昔の値段のままなので、利益はむしろ膨らみやすい。借金の重さは、時間とともに軽くなっていく。
宴会も学会や国際会議が戻り、大型の受注で前の期は1割以上伸びた。京都で大きな宴会場を持つホテルは限られ、地元の企業や団体とのつながりは長い。
慎重な見方
借金と優先株が先に返る。自己資本は35億円、借入と社債は約120億円で、金利が上がれば税引き前の利益の3割が利払いに消える。優先株の買い戻しには10億円の現金が要る。
建物は古い。客室改装の40億円を延期したまま、外資系の新しいホテルと戦っている。改装は建設費が上がるほど高くつき、償却を上回る現金が出ていく。
訪日客の波は読めない。会社自身が次の期の営業利益を28%減と見込む。コロナ禍の2年では赤字が26億円に達し、自己資本はほぼ消えた。
不動産の値打ちも、少数株主には届かない。2000年に土地と建物を日冷商事に譲って借りる形にしており、売れる権利の範囲もはっきりしない。売る時は借金が先に返る。
からすま京都ホテルは借りた建物で、2028年3月に更新が来る。家賃は売上が落ちても下がらない。宴会と婚礼は構造的に細る。
自己資本利益率が25%に見えるのは、自己資本が薄いからにすぎない。稼ぐ力を示す数字ではなく、借金の重さの裏返しだ。谷が来れば、同じ梃子が逆に働く。
どちらに重みを置いたか
場所の強さは慎重な見方も認めるが、借金と優先株、改装の現金を考えると、慎重な見方が勝る。確率は中立に厚く置き、悲観側を楽観側より少し厚くした。不動産の値打ちは、悲観の床にだけ安値で入れた。権利の範囲が確かでないうえ、売る時は借金が先に返るためだ。利払いの増え方は借入の額と金利で決まり、単価の上振れでは消えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 831 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 92 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 429 円52 億円、今との差 −32.2%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,659 円200 億円 | 166 円20 億円 | +188.3% | +11.2% | 146 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,212 円146 億円 | 133 円16 億円 | +112.5% | +7.8% | 269 円32 億円 |
| 中立 | 40% | 949 円114 億円 | 99 円12 億円 | +65.6% | +5.2% | 419 円51 億円 |
| やや悲観 | 20% | 307 円37 億円 | 50 円6 億円 | −43.7% | −5.6% | 71 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 124 円15 億円 | 25 円3 億円 | −76.4% | −13.5% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 831 円100 億円 | 92 円11 億円 | +45.9% | +3.8% | 923 円111 億円 |
今の株価時価総額 633 円76 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 京都の高級ホテルとして単価を上げ、改装が当たる 利益 11 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 1,659 円200 億円
訪日客は京都に集まり続け、市内の高級ホテルの客室単価は物価を大きく上回って上がる。ホテルオークラ京都は延期していた客室改装をやり終え、古さを理由に値引きする必要がなくなる。客室単価は10年で1.55倍になる。
からすま京都ホテルは賃借の更新を無事に済ませ、高い稼働を保つ。宴会は企業の会合と学会が戻り、婚礼の減りを補う。
利益率は13%台と、過去30年の山を上回る。借金は利益で少しずつ返り、利払いの重さも和らぐ。優先株は手元の現金で買い戻し、普通株主の取り分が増える。ホテルオークラとの提携は続き、ブランドの力で外国人の個人客を集める。
- 宿泊:数量 17.1(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.85(1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 20 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.55 倍、利益率 31.0%
- 宴会・婚礼:数量 17.1(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.25(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 4.0%
- レストラン・その他:数量 52.6(利用者数(万人、推定))× 価格 0.70(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 0.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 16.01 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:単価の上振れと改装の成功、賃借の更新がそろう必要がある。利益率 13% 台は過去 30 年に例がないので低く置いた。
やや楽観 20% 単価が物価を少し上回り、利払いを吸収する 利益 8 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 1,212 円146 億円
客室の稼働は今の8割台を保ち、単価は物価を少し上回る1.46倍になる。京都の中心で、河原町御池という場所の強さが効く。宴会は婚礼が減るぶんを会合で埋め、売上は物価並みに伸びる。
人件費は上がるが、単価で吸収でき、利益率は12%前後で落ち着く。借り換えで利払いは倍近くに増えるが、利益で十分に払える。
優先株は2028年以降に手元の現金で買い戻す。客室改装は建設費の上がった値段で行い、償却が年3億円ほど増える。配当は少しずつ増えるが、借金の返済が先に来る。
自己資本は利益の積み上げで厚くなり、10年後には借金への耐性もつく。
- 宿泊:数量 17.1(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.62(1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 18 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.46 倍、利益率 29.0%
- 宴会・婚礼:数量 16.2(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.20(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.90 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 3.0%
- レストラン・その他:数量 51.0(利用者数(万人、推定))× 価格 0.69(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.97 倍 × 単価 今の 1.37 倍、利益率 -1.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.94 倍、時価総額 121 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 3 期は単価の上昇で利益率 10〜11% を出しており、京都の需要は数字に出ている。
中立 40% 単価は物価並み、利払いが利益を食う 利益 6 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 949 円114 億円
客室の数は増えず、稼働も8割台で頭打ちだ。単価は物価よりわずかに上の1.4倍にとどまる。京都には外資系の高級ホテルが次々に開き、客の取り合いが続くからだ。宴会は婚礼の減少で量が15%減る。
利益率は11%で、今と同じ水準だ。今ある建物の償却は取得した時の値段のまま増えないので、会計の利益は少し助かる。だが延期した客室改装は建設費の上がった値段でやるしかなく、償却を上回る現金が出ていく。
重いのは利払いだ。約120億円の借入が順に3%台後半の金利に置き換わり、税引き前の利益の3割を食う。優先株の買い戻しに手元の現金10億円も要る。配当は少額のままで、利益は借金の返済と自己資本の立て直しに回る。
- 宿泊:数量 17.1(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.47(1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 17 億円。数量 今の 1.00 倍 × 単価 今の 1.40 倍、利益率 28.0%
- 宴会・婚礼:数量 15.3(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.15(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 1 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 2.0%
- レストラン・その他:数量 50.0(利用者数(万人、推定))× 価格 0.67(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.95 倍 × 単価 今の 1.34 倍、利益率 -2.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.98 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働は頭打ちで単価は物価並み、借り換えで利払いが増えるという、いちばん起きやすい筋書きに厚く置いた。
やや悲観 20% 訪日客が細り、からすまの賃借が重くなる 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 307 円37 億円
中国との関係の悪化や円高で訪日客が細り、京都の高級ホテルの単価は物価に届かない。2027年3月期の減益予想は、その入り口になる。からすま京都ホテルは賃料の上がった条件でしか更新できず、客室の一部を手放す。
宴会は企業の会合が減り、婚礼はさらに細る。人件費は物価で上がり続けるため、利益率は7%に落ちる。
利払いは増え、税引き前の利益はほとんど残らない。延期した客室改装は先送りが続き、建物の古さが単価の重しになる。配当は最低限にとどまる。
自己資本は増えるが、稼ぐ力は資本コストを大きく下回り、ためた利益は価値を生まない。
- 宿泊:数量 14.6(販売した客室の数(万室泊))× 価格 3.10(1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 11 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 24.0%
- 宴会・婚礼:数量 13.5(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 2.01(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。数量 今の 0.75 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 0.0%
- レストラン・その他:数量 44.7(利用者数(万人、推定))× 価格 0.63(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.85 倍 × 単価 今の 1.25 倍、利益率 -4.0%
倍率:純利益 1.4 億円の稼ぐ力(純利益÷k で約 16 億円)より、売れる資産の床の方が大きい。床の約 18 億円を今の自己資本 35 億円に対する PBR 0.51 倍として置いた。
確率:会社自身が次の期に営業 28% 減を見込む。訪日客の揺れとからすまの賃借の更新は、現実の分かれ目だ。
悲観 12% 改装できないまま古び、借金に縛られる 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 124 円15 億円
外資系の新しいホテルとの競争に負け、ホテルオークラ京都は改装の資金を出せないまま古びる。単価は物価を大きく下回り、稼働も落ちる。からすま京都ホテルは更新できず、手放す。
宴会と婚礼は大きく減り、利益はほぼ消える。借入の金利が上がり、赤字が続く。ホテルオークラとの提携を見直す話も出る。
会社は事業を続けるために、借金の返済の猶予か、資産の売却を迫られる。価値は、ホテルの建物と土地を売った時に借金を返して残る額のうち、少数株主に届く分まで沈む。清算は少数株主には決められないので、その額より安い値もありうる。
- 宿泊:数量 12.0(販売した客室の数(万室泊))× 価格 2.73(1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目))→ 売上 33 億円・営業利益 5 億円。数量 今の 0.70 倍 × 単価 今の 1.10 倍、利益率 15.0%
- 宴会・婚礼:数量 10.8(宴会・婚礼の利用者数(万人、推定))× 価格 1.85(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.60 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -3.0%
- レストラン・その他:数量 39.5(利用者数(万人、推定))× 価格 0.58(1 人あたり単価(万円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円。数量 今の 0.75 倍 × 単価 今の 1.15 倍、利益率 -6.0%
倍率:赤字で PER は当てない。売れる資産の床(約 17.5 億円)より少し下の 15 億円を、今の自己資本 35 億円に対する PBR 0.43 倍として置いた。清算は少数株主には決められないため、床を下回ってよい。EV(時価総額+純負債)÷営業利益が数百倍になるのは営業利益がほぼ消えるためで、EV で見ても事業に値は付かない。
確率:自己資本比率 20% で借入が重く、2021〜2022 年には 2 期で赤字 26 億円を出した。谷が来れば構造的に負ける余地がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宿泊
ホテルオークラ京都(320 室・自社)と、からすま京都ホテル(231 室・建物を賃借)の客室。
| 数量販売した客室の数(万室泊) | 価格1 室泊あたりの客室単価 ADR(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.1 | 2.48 | 43 | 13 |
| 10 年後 中立 | 17.1 | 3.47 | 60 | 17 |
取り方:室数×365×稼働率(オークラ 320 室・82.2%、からすま 231 室・89.4%)で約 17.1 万室泊。宿泊の売上 42.5 億円を割って単価約 2.48 万円。部門の利益は非開示のため、宿泊は人手が少なく利益率が高いとみて 30% と推定した。
宴会・婚礼
ホテルオークラ京都の宴会場での会議・式典・パーティー・婚礼。
| 数量宴会・婚礼の利用者数(万人、推定) | 価格1 人あたり単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 1.61 | 29 | 1 |
| 10 年後 中立 | 15.3 | 2.15 | 33 | 1 |
取り方:宴会の売上 28.9 億円を、1 人あたり約 1.6 万円と見て割り、約 18 万人と推定した。人手と食材の費用が重く、利益率は 3% と推定。
レストラン・その他
両ホテルのレストラン・バー、通販、その他の付帯収入。
| 数量利用者数(万人、推定) | 価格1 人あたり単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.6 | 0.50 | 26 | −1 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.67 | 34 | −1 |
取り方:全社の売上から宿泊と宴会を引いた 26.3 億円を、1 人あたり約 5 千円と見て割り約 52.6 万人と推定した。料飲は人件費が重く、利益率は −2% と推定。本社と共通の費用 2.0 億円は調整に入れた。
リスクと懸念
借入の金利と借り換え
借入と社債は約120億円で、自己資本の3倍を超える。金利が上がれば、借り換えのたびに利払いが増え、税引き前の利益の3割前後が消える。2025年3月の借り換えで一部は固定したが、10年では新しい金利になる。
優先株の買い戻し
政府系の基金が持つ10億円の優先株は、2028年9月以降に現金での買い戻しを求められうる。手元の現金で払えば、改装や返済に回す余力が細る。
客室改装の延期と建物の古さ
約40億円の客室改装を延期し、再開の時期は決まっていない。建設費は上がり続け、改装が遅れるほど外資系の新しいホテルに見劣りする。
からすま京都ホテルの賃借の更新
からすま京都ホテルの建物は借りており、期限は2028年3月だ。賃料が上がる条件でしか更新できなければ、利益の一部を失う。家賃は売上が落ちても下がらない固定費だ。
訪日客の波
単価と稼働を支えるのは外国人の客だ。2025年秋から中国の客が減り、会社は次の期の営業利益を28%減と見込む。為替と国際情勢で数か月のうちに客が消えることもある。
今後の分かれ目
- 客室改装の再開を決め、資金の手当てを示したら
- 単価を上げる道筋が見え、やや楽観の確率を上げる。借入の増え方も見る。
- 優先株を手元の現金で買い戻したら
- 普通株主の取り分が増える一方、現金が細る。借入の残りと利払いを見直す。
- からすま京都ホテルの賃借を、今と近い条件で更新したら
- やや悲観の確率を下げる。
- 訪日客が減り、営業利益が2期続けて8億円を割ったら
- 利払いが利益の大半を食う形になり、やや悲観の確率を上げる。
- ホテルオークラが持株を増やすか、資本の提携を深めたら
- 財務の後ろ盾が強まる。買い取りの話が出れば、悲観の床の見方を変える。
見ておくもの
- 客室単価と稼働率(両ホテル)
- 借入の残高と平均の金利
- 優先株の買い戻しの時期と資金
- 客室改装の再開の判断
- からすま京都ホテルの賃借の更新条件
倍率と資本コストの決め方
宿泊は売った客室の数 × 客室単価、宴会と料飲は利用者数(推定)× 1 人あたり単価で積み、数量は実質、単価は名目(宿泊 1.40 倍・ほか 1.34 倍)。償却は今の 7 億円を物価で増やさず、改装の分だけ足した。k は 7.5% + quality 1.5% の 9.0%。ROE は 7% 台で k に届かず、PER は上限 1÷k の 8〜9 割。悲観側はホテルを安値で売って借金を返した床で置いた。からすまの賃借は今と同じく家賃を費用に入れた形でそろえ、2028/03 期からの新しいリース基準で数字の形が変わる点は踏まえた。今の株価・PBR は倍率に使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→16.01 倍・やや楽観 PER 9.8→14.94 倍・中立 PER 9→13.98 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% で 9.0%。純現金の帝国ホテル(8.0%)より、借金の重さの分だけ高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。