結論
ベルシステム24は、企業の電話窓口を請け負うコンタクトセンターの国内大手だ。売上の 9 割が継続契約で、伊藤忠商事が議決権の 4 割余りを持つ。
結論から言う。筆者は、10 年後の本質価値は今の時価総額 994 億円を大きく下回ると見る。稼ぎの中身は席の数に単価を掛けたもので、AI エージェントが定型の問い合わせを直接引き取る側にあるからだ。
席は 1 万 7,500 あり、国内市場の 1 割強を押さえる。ここ数年は拠点を減らして利益率を戻す局面で、営業利益率は 8% 台後半にある。会社は 2029 年 2 月期に営業利益 160 億円を掲げるが、前の中計は売上 1,800 億円の目標に 1,458 億円で終わった。
筆者は、中立で席が 3 割余り減り、売上は今の 85%、利益率は 7% 台に下がると置いた。賃上げは顧客に移しきれず、価格は物価を下回る。のれんが自己資本の 1.3 倍あり、借入も軽くない。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額は、開示されていない。
バリュー投資の観点から
本業の質は、可もなく不可もなくだ。毎年必ず仕事が来る継続契約があり、顧客は広く分散している。ただ、値段を自分で決められる事業ではなく、人件費を顧客に転嫁できるかどうかで利益が決まる。バリュー投資の観点では、そこがまず気になる。
10 年先の姿が読みにくい点が、最大の難所だ。席数に応じて稼ぐ今の仕組みは、AI が定型の問い合わせを引き取るほど縮む。会社の自動化がうまくいけば、席あたりの稼ぎは上がる。だが、顧客が自前の AI で足りると判断すれば、仕事そのものが減る。10 年後も今より強いと言い切れない事業は、確信度を下げて見る。
株主のものになる利益は、営業利益から家賃と設備更新を引いた額に近い。借りて営む事業なので、利益のかなりの部分が席の維持に回る。のれんで膨らんだ自己資本に対する ROE は 10% 前後にとどまる。
資本の使い方は、還元 5 割と M&A の半々だ。買収が成功すれば利益が積み上がるが、これまでの実績は強くない。
安全域は小さい。今の値段は、事業が崩れない前提と、うまくいく前提の中間にあり、どちらかに賭けるだけの余白はない。見送るのが自然な値段だ。
見直し(AI エージェント代替):「平凡だが崩れない 10 年」という上の見方は、筆者は改める。席の数に頼る稼ぎは、AI エージェントで構造的に削られる側にある。中立の 10 年後の時価総額は今の半分以下に下がる。継続契約と伊藤忠の網は下を支えるが、価値を守る堀にはならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの本体はコンタクトセンターの運営受託で、売上の 86% を占める。企業の問い合わせ窓口やセールスの電話を請け負い、席の数と運用の質で料金を取る。顧客は 1,690 社で、通信キャリア、金融・保険、ネット関連サービス、自治体や選挙関連まで幅が広い。上位 300 社の売上でみると、サービス業・運輸通信・金融保険の 3 業種でほぼ 8 割になる。
売上の約 9 割は継続業務で、残りがキャンペーンや選挙などの一時的な仕事だ。一度入った窓口は、運用ノウハウと現場の人が定着するため、乗り換えにくい。これがこの商売の安定の源である。
もう 1 つの柱がビジネスサポート、つまり人事・経理・入力・審査などの社内業務の代行で、売上は 207 億円。利益率は電話より低いが、会社は今後の成長の軸に据える。レイヤーズ・コンサルティングとの合弁 Horizon One が人事・経理を、AVILEN との合弁 BA Intelligence が AI を使った業務代行を担う。
コスト面では、原価の 8 割以上が人件費で、直接雇用のオペレーターが 8 割を超える。人件費の上昇を顧客に価格として転嫁できるかが、利益率を左右する。席は国内 49 拠点にあり、クラウド型の運営基盤は約 8,800 席に入った。拠点は借りて営むため、家賃は売上が落ちても残る固定の約束になる。
海外は台湾とベトナムの子会社、タイの持分法会社があるが、全体への寄与は小さい。
優良さと弱いところ
堀は、他社がまねしにくい強みという意味では、狭い。ただ、一度請けた窓口は乗り換えにくく、継続率の高さと 1,690 社という顧客の広がりに、その中身が出ている。40 年分の通話データと業務の型を持つことも、新規の受託で効く。
伊藤忠との関係は強みだ。通信や保険を中心に、グループ向けの売上は前期に 11.7% 伸びた。条件は他の顧客と同じというが、紹介の流れが太いのは確かだ。
弱い所もはっきりしている。値決めの力は強くない。窓口は入札や相見積もりで決まることが多く、営業利益率は過去 10 年の大半が 7〜9% で、2015 年の 16.8% は特殊要因を含む高い年だった。業界は統合を重ねて大手が並び、トランス・コスモスは売上が 3,700 億円超、非上場のアルティウスリンクも同規模だ。
資本効率は中くらいだ。ROE は 11% 前後で、資本コストの 8% 台は超えるが、高くはない。自己資本の 8 割近くはのれんで、買収の失敗が自己資本を直接削る。前の中計で M&A が思うように進まなかった点は、資本の使い方としては採点を下げる材料だ。
経営は、拠点を減らして収益を戻す手堅さを見せた。一方、後継者計画を定めていないと自ら開示している。社外取締役は 8 人中 5 人で、体制は整っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のコールセンター市場は約 1 兆 500 億円で、前年比 3.5% 減だった。コロナ期の大型の公共案件が終わった反動が大きい。会社の整理では、市場の伸びは以前の年 6% から 2019 年度以降は 2% 程度に落ちた。数量でみれば、横ばいから減りだ。
この市場を動かす力は 2 つある。1 つは人手不足だ。電話に出る人を集められない企業が、自前の窓口を外に出す。会社は内製の窓口の市場を 1.4 兆円と見ており、これが外へ出る分が受託の伸びしろになる。もう 1 つは AI だ。問い合わせの定型部分を AI が引き取れば、必要な席は減る。
AI は、単価の構造も変える。席数に応じて料金を取る商売は、席が減れば売上も減る。AI の運用や知識の整備に対して取る料金に置き換えられるかが、勝負の分かれ目になる。会社は自動化の仕組み HOL を自社開発し、2029 年 2 月期に売上 100 億円を見込む。
競争は、規模の大手 3〜4 社と、AI を売る IT ベンダー、そして企業自身の内製化との三つ巴だ。大手は同じ顧客を取り合い、価格で競う場面が多い。人件費の上昇は賃金の 3% 程度が続く前提で、これを価格に乗せられるかが利益率を決める。
事業の領域が近いリクルート、パーソル、トランス・コスモスなどとは、人を提供して稼ぐという点で似るが、ベルシステム24は派遣ではなく直接雇用で運営する点が違う。景気には比較的強いが、景気の山は小さい。
見直し(AI エージェント代替):上の議論で AI を脅威と追い風の五分として扱っていたが、筆者は AI エージェントによる席の置き換えをより重く見る。10 年の中立でも、席は今より 3 割余り減ると置いた。
資本政策と M&A
還元は配当性向 50% を基本とし、配当は据え置きで、性向は 5 割強にある。自社株買いは主軸ではない。純利益の半分を還元し、残りで借入を返す。前期は借入金を 53 億円減らし、自己資本比率は 43.5% に上がった。
M&A は、前の中計で想定ほど進まなかった。今回の計画は 3 年で 250 億円を投じ、うち 200 億円を M&A と事業投資に回す。内製の窓口を持つ会社の窓口部門を買う「ロールアップ」を軸にする。スカパー・カスタマーリレーションズの子会社化が手本だ。
買い手としての筆者の見方は厳しめだ。のれんが 947 億円と大きく、買収の成功率が低いと自己資本を削る。純有利子負債は自己資本の 0.56 倍で、無理はできる範囲だが、計画の投資を全部借入で賄うと余裕は薄くなる。
伊藤忠が議決権の 40.7% を持ち、持分法適用会社だ。完全子会社化の可能性は残るが、時期や条件の材料は確認できない。上場子会社に近い立場のため、少数株主に不利益が出る取引がないかは、気にして見ておきたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人手不足は、コンタクトセンターにとって追い風だ。電話に出る人を集められない企業が、窓口を外へ出す。会社の見立てでは内製の窓口市場は 1.4 兆円あり、国内の受託市場の 1.4 倍に近い。取り込める分だけで成長は続く。
AI は脅威ではなく、受託を増やす道具になる。自動化に必要なのは、AI そのものではなく、自社の問い合わせに合った質の高い知識だ。ベルシステム24は 40 年分、年間 5 億件の通話データと、3 万人の運用知見を持つ。通話から知識を自動で作る HOL が機能すれば、人件費が原価の 8 割を占める事業で、粗利率は従来の 2 倍になる。
伊藤忠の顧客網と TOPPAN との合弁は、紹介案件の太い流れを生む。ビジネスサポートは、経理・人事の代行へ領域が広がり、規模が育つ。資本面では、配当性向 50% を守りながら、純利益の 5 割が借入の返済と成長投資に回る。内製の窓口を買うロールアップは、買った瞬間から顧客がつく。のれんの大きさも、利益が伸びれば薄まる。営業利益率が会社の目標の 10% 台に乗れば、自己資本利益率は 14% 台まで上がる。
慎重な見方
AI エージェントは、この商売の中心にある席を直接削る。問い合わせの多くは定型で、AI エージェントは人より安く速く答える。企業が AI エージェントを自前の窓口に入れれば、外へ出す必要そのものが減る。受託量が縮み、残る仕事も単価が下がる。
席の数に応じて料金を取る商売は、席が減るほど売上が落ちる。人件費は賃上げで年 3% 前後上がり続けるため、売上が落ちる中で固定費と家賃が残る。拠点は借りて営むので、稼働が落ちても家賃は変わらない。利益率は一気に薄くなる。
会社は前の中計で、売上 1,800 億円、営業利益 165 億円を掲げたが、実績は 1,458 億円と 127 億円だった。新しい計画の 1,750 億円も同じ道をたどる可能性がある。大手 IT ベンダーやクラウド事業者は、桁違いの資金で窓口向けの AI エージェントを売る。のれん 947 億円は、事業が弱れば減損が避けられない。自己資本の厚みは見かけほど当てにならない。
どちらに重みを置いたか
人手不足と通話データという具体的な材料では強気の見方に分がある。ただ、席の数に連動して稼ぐ構造が AI エージェントで直接削られるという、より根本的な点は慎重な見方が突く。会社の計画は前の中計で大きく外れており、数字をそのまま使えない。AI エージェントの売上が数字で出るまで、楽観にも数量 1.0 倍以上は置かない。
やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いた。置き換えの影響は中立の数量と価格に入れたので、確率では重ねて引かない。悲観は稼ぐ力でなく売れる資産の床で置いた。期待は今の値段を大きく下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,088 円809 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 436 円324 億円)。 今の値に割り戻すと 848 円630 億円、今との差 −38.4%、 期待の年率 +1.0%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,287 円1,700 億円 | 675 円502 億円 | +115.3% | +8.0% | 178 円132 億円 |
| やや楽観 | 19% | 1,895 円1,409 億円 | 578 円430 億円 | +79.7% | +6.0% | 470 円349 億円 |
| 中立 | 38% | 1,344 円999 億円 | 471 円350 億円 | +31.9% | +2.8% | 690 円513 億円 |
| やや悲観 | 25% | 277 円206 億円 | 352 円262 億円 | −54.3% | −7.5% | 157 円117 億円 |
| 悲観 | 12% | 94 円70 億円 | 157 円117 億円 | −81.7% | −15.6% | 30 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,088 円809 億円 | 436 円324 億円 | +10.8% | +1.0% | 1,525 円1,134 億円 |
今の株価時価総額 1,376 円1,023 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% 窓口の外出しが続き、席の数を守る 利益 119 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,287 円1,700 億円
人手不足で電話に出る人を集められない企業が窓口を外へ出し続け、席の数は今の 1.75 万席の水準を守る。AI エージェントが定型の問い合わせを引き取る一方、運用とナレッジ整備の料金が席あたりの売上を支え、価格は物価並みの 1.34 倍まで上がる。売上は約 1,950 億円と今を 3 割ほど上回り、営業利益は約 190 億円、利益率は 9.7% になる。会社が掲げる営業利益 160 億円や、利益率 10% 以上は、10 年かけて届く。のれんは利益に吸収されて薄まり、還元は純利益の半分を保つ。ただ、前の中計は売上 1,800 億円の目標に 1,458 億円で終わった。
- コンタクトセンター運営受託(SC 業務):数量 17.5(稼働席数(千席))× 価格 958(1 席あたり年間売上(万円))→ 売上 1,677 億円・営業利益 176 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 10%
- ビジネスサポート(SB 業務):数量 4.6(稼働人員(千人))× 価格 603(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 277 億円・営業利益 28 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 119 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,640 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントを売り物にして出た売上・受注の金額開示が無く、楽観でも数量は 1.0 倍までと決めた。外部委託の取り込みと賃上げの価格転嫁が揃い、HOL が当たる筋書きなので 6% に絞った。前の中計は未達だった。
やや楽観 19% 席が 15% 減り、賃上げの価格転嫁で支える 利益 90 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,895 円1,409 億円
大手の顧客が自前の AI エージェントを窓口の前段に置き、席は今より 15% ほど減って約 1.5 万席になる。人手不足による外部委託の取り込みと運用ノウハウの料金で、価格は 1.30 倍まで上がる。売上は約 1,620 億円と今を 1 割ほど上回り、営業利益は約 140 億円、利益率は 8.8% に下がる。選挙や大型公共案件の反動が出る年も挟む。ビジネスサポートは買収と合弁で小さく育つが、期待を下回る買収も出る。のれんの増加は抑えられ、還元は純利益の半分を保つ。借入は少しずつ減る。伊藤忠の顧客網と合弁からの紹介は続き、新規の窓口を一定数つなぐ。ただ、前の中計が未達に終わった経緯から、買収に頼った拡大は進めにくい。
- コンタクトセンター運営受託(SC 業務):数量 14.9(稼働席数(千席))× 価格 930(1 席あたり年間売上(万円))→ 売上 1,384 億円・営業利益 136 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 10%
- ビジネスサポート(SB 業務):数量 4.1(稼働人員(千人))× 価格 585(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 237 億円・営業利益 21 億円。数量 0.88 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 1,241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが定型の問い合わせを一部引き取り、席は減るが、外部委託の取り込みが一部進む筋書きの中で良い側。景気の波と大口の契約の終わりを挟むとみて、19% を置いた。
中立 38% 席が 3 割減り、賃上げの転嫁では埋めきれない 利益 58 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,344 円999 億円
問い合わせの定型部分は AI エージェントが引き取り、席は今より 3 割余り減って約 1.2 万席になる。ビジネスサポートの人員も 3 割ほど減る。人件費は賃上げで上がり続けるが、顧客の交渉力は強く、価格は物価を下回る 1.25 倍にとどまる。売上は約 1,250 億円と今の 85% に縮み、営業利益は約 92 億円、利益率は 7.4% に下がる。家賃など拠点の固定費は残る。純利益は約 58 億円で、自己資本利益率は k を下回る。のれんは一部の減損が避けられない。過去 10 年の成長は、ここで止まる。
- コンタクトセンター運営受託(SC 業務):数量 11.9(稼働席数(千席))× 価格 894(1 席あたり年間売上(万円))→ 売上 1,064 億円・営業利益 90 億円。数量 0.68 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 8%
- ビジネスサポート(SB 業務):数量 3.2(稼働人員(千人))× 価格 563(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 181 億円・営業利益 14 億円。数量 0.70 倍・価格 1.25 倍・営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 804 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI エージェントが定型の問い合わせを引き取る流れの中心の筋書き。数量 0.68 倍、価格 1.25 倍と決まりの範囲の中ほどに置いた。数量と価格に入れた分を、確率と g で重ねて引いていない。
やや悲観 25% 席が半分近く減り、単価も崩れて利益が 4 分の 1 ほどになる 利益 23 億円 · PER 7.7 倍 · 株価時価総額 277 円206 億円
大手の顧客が自前の AI エージェントで窓口の大半を回し、外へ出す席は今の 5 割ほど、約 0.9 万席に減る。1 席あたりの売上は賃上げを移しきれず、1.12 倍にとどまる。売上は約 860 億円と今の 6 割弱に縮み、営業利益率は 4% 台まで下がる。拠点を整理しても、借りた拠点の家賃は残る。のれんは約 200 億円を減損し、自己資本は縮む。還元は利益の半分を保つが、金額は今の 3 分の 1 以下になる。会社は縮小均衡に入り、伊藤忠の紹介の流れだけでは席の減りを埋めきれない。会社は拠点を減らし、人員を絞って固定費を抑える。ビジネスサポートは買収が進まず、小さな規模で止まる。
- コンタクトセンター運営受託(SC 業務):数量 9.1(稼働席数(千席))× 価格 801(1 席あたり年間売上(万円))→ 売上 729 億円・営業利益 40 億円。数量 0.52 倍・価格 1.12 倍・営業利益率 6%
- ビジネスサポート(SB 業務):数量 2.5(稼働人員(千人))× 価格 504(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 128 億円・営業利益 6 億円。数量 0.55 倍・価格 1.12 倍・営業利益率 5%
倍率:ROE 2.9% が k 7.25% 以下。ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k = 11.8 倍を上限に ROE÷k の割合で下げて 7.65 倍。g は名目 0.0%。人月・席の型で寿命は短く、g は名目 0%(横ばい)まで。堀は普通。
確率:AI エージェントが定型の問い合わせの大半を処理し、単価にも値下げの圧力がかかる筋書き。席の数と単価の両方に効くので、25% を置いた。
悲観 12% AI エージェントが窓口を置き換え、家賃の固定費が利益を食う 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 94 円70 億円
AI エージェントが定型の問い合わせの大半を処理し、企業は外部の席を大きく減らす。席は今の 4 割弱、約 0.65 万席になる。単価は大手 IT ベンダーの AI エージェントに押されて下がり、売上は約 530 億円と今の 3 分の 1 近くに縮む。借りた拠点の家賃は残り、営業利益は赤字に近づく。のれんは大半を減損し、自己資本は半分以下になる。事業としては構造的に負けた姿で、稼ぐ力は床にならない。株主への還元は前半の数年にとどまり、後半はほぼ止まる。伊藤忠が支えるかどうかは別として、事業を続ける理由が薄れる。
- コンタクトセンター運営受託(SC 業務):数量 6.7(稼働席数(千席))× 価格 679(1 席あたり年間売上(万円))→ 売上 452 億円・営業利益 0 億円。数量 0.38 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 0%
- ビジネスサポート(SB 業務):数量 1.8(稼働人員(千人))× 価格 428(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 79 億円・営業利益 0 億円。数量 0.40 倍・価格 0.95 倍・営業利益率 0%
倍率:稼ぐ力が崩れた姿。事業の稼ぎは床に使わず、売れる資産から負債を引いた残り(約 70 億円)を、今の自己資本 739 億円に対する PBR で表す。
確率:AI エージェントが窓口を構造的に置き換え、売上が 10 年で 3 分の 1 近くに縮む筋書き。のれんの大半が減損される形で、12% を置いた。やや悲観と合わせて 37%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
コンタクトセンター運営受託(SC 業務)
企業の問い合わせ窓口・販売促進の電話・技術サポートなどを請け負う。売上の 9 割は継続契約。
| 数量稼働席数(千席) | 価格1 席あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 17.5 | 715 | 1,252 | 118 |
| 10 年後 中立 | 11.9 | 894 | 1,064 | 90 |
取り方:2026 年 2 月期の売上 1,251.6 億円(SC 業務とその他)を、拠点の席 17,500 で割って 1 席あたり約 715 万円とした。席は人の数に近い実質の量。国内市場約 1 兆 500 億円(矢野経済研究所)に対し会社全体で約 14%。セグメント利益は非開示のため、全社の営業利益 126.5 億円を、SC の利益率 9.4% と SB の 8.7%、本社費 −9.5 億円に分けた推定。 AI エージェント代替の型:売上の約 86%。コンタクトセンターの運営受託は、席という人の数に単価を掛ける人月の型。問い合わせの定型部分は AI エージェントが直接引き取れる側にある。AI エージェントを売り物にして出た売上の金額開示は確認できない(HOL の売上目標は 2029 年 2 月期 100 億円とあるが、実績の開示は無い)。数量は 10 年中立で 0.68 倍(決まりの 0.55〜0.75 の中ほど。クラウド運営基盤の自動化で席の減りは少し緩む)、価格は賃上げを顧客に移しきれないので、物価並みの 1.34 倍でなく 1.25 倍とした。
ビジネスサポート(SB 業務)
人事・経理・入力・審査など社内業務の代行と、AI を使った業務代行。
| 数量稼働人員(千人) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4.6 | 450 | 207 | 18 |
| 10 年後 中立 | 3.2 | 563 | 181 | 14 |
取り方:2026 年 2 月期の売上 206.7 億円を、稼働人員約 4,600 人と 1 人あたり約 450 万円と推定した(人員は開示なし。ほぼ人件費の事業で、賃金の水準から置いた)。利益は非開示で、利益率 8.7% と置いた推定。 数量は実物(稼働人員)で、市場の名目の伸びからは置いていない。価格は物価並みの1.34倍。 AI エージェント代替の型:売上の約 14%。人事・経理・入力・審査などの社内業務の代行は、人の工数で売る人月の型。AI を使った代行の合弁(BA Intelligence)はあるが、稼ぐ売上の金額は開示されていない。数量は中立 0.70 倍、価格は顧客の交渉力が強く、物価並みの 1.34 倍でなく 1.25 倍とした。
リスクと懸念
AI エージェントによる窓口の置き換え(AI エージェント代替)
売上の約 9 割は、席という人の数に単価を掛ける人月の型だ。AI エージェントが定型の問い合わせを引き取れば、必要な席が減り、受託量と単価が同時に下がる。10 年の中立で席は 3 割余り減り、悲観では売上が 3 分の 1 近くに縮み、家賃の固定費とのれんの減損が自己資本を削る。
賃上げの価格転嫁
原価の 8 割以上が人件費で、最低賃金と賃金は年 3% 前後で上がる。顧客への価格転嫁が遅れると利益率が削られる。入札や相見積もりでは値上げが通りにくく、大口顧客の交渉力も強い。
大型案件の終了と選挙・公共の反動
売上の 1 割はキャンペーンや選挙関連の一時的な仕事で、国政選挙や大型公共案件が終わると反動が出る。コロナ関連の大口が終わって席が 600 減った例が、前期にもあった。
のれんの減損
のれんは 947 億円で、総資産の 56% にあたる。事業の収益力が落ちれば減損が避けられず、自己資本が大きく減る。借入の約定にも響く恐れがある。
M&A の実行力
前の中計で M&A が想定ほど進まなかった。今回は 3 年で 200 億円を M&A と事業投資に回す。内製窓口の買収は、統合の難しさと、顧客との利益相反が起きやすい。
家賃の固定費と新しい会計基準の影響
拠点は借りて営むため、売上が落ちても家賃は残る。会社は IFRS でリースをすでに負債に載せており、数字の形は変わらないが、純負債だけで安全度を測ると見誤る。
大株主と少数株主の関係
伊藤忠が議決権の 40.7% を持つ。顧客でもあり、株主でもある。完全子会社化の話が出れば、少数株主にとって条件が価値に見合うかが問題になる。
今後の分かれ目
- AI エージェントを売り物にした売上・受注(HOL など)の金額が決算で開示される
- 開示が席の減りを補う規模なら、楽観側の数量を引き上げる。開示が無い間は、数量 1.0 倍を超える筋書きは置かない。
- HOL(自動化の仕組み)の導入先が 2028 年度に 50 社を超える
- 席あたりの売上が上がり、利益率が 10% 台に近づく。楽観寄りの筋書きに寄る。
- ロールアップ型の買収が年 50 億円規模で積み上がる
- 売上の伸びが計画に近づき、のれんの重さも利益で薄まる。
- のれんの減損や、買収後の業績の悪化が出る
- 自己資本が削られ、還元の余力も落ちる。悲観寄りの見方が正しくなる。
- 賃金の上昇が 3% を超え、価格転嫁が遅れる
- 営業利益率が 8% を割り、中立の利益が下振れする。
- 伊藤忠による完全子会社化の話が出る
- 少数株主の取り分は条件次第で、本質価値と比べて判断する材料になる。
見ておくもの
- HOL の導入社数と、HOL の売上(2029 年 2 月期 100 億円の目標)
- 稼働席数(17,500 席)の推移と、クラウド運営基盤の席数
- 営業利益率(目標 2029 年 2 月期 9% 台、2031 年 2 月期 10% 以上)
- ロールアップ型 M&A の件数と買収額、のれんの変化
- クライアント数(1,690 社)と、大口顧客の契約の更新
倍率と資本コストの決め方
倍率は式だけで置いた。人月の型なので長期の g(10 年より先の名目の伸び)は 0% とし、PER は 1÷k = 11.8 倍になる。k は循環 −0.25%、値決め +0.25%、AI エージェント代替の寿命(決まりの下限の +1.0%)で 8.5%。AI エージェント代替の理由は、主に中立の数量と価格に入れ、k は下限、確率は 37%、g は 0% と、重ねすぎないようにした。中立とやや悲観は ROE が k を下回るため、式で PER が下がる。今の PER や同業・過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力でなく、売れる資産から負債を引いた床で置いた。のれん 947 億円は、やや悲観で一部、悲観で大半を減損する想定。自己資本は「今の 739 億円+期間の純利益−還元−減損」で積んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.76→13.79 倍・やや楽観 PER 10.66→13.79 倍・中立 PER 7.65→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。