結論
スバル興業は、高速道路の清掃・維持・補修を担う東宝系の会社だ。売上の9割超が道路で、残りがマリーナと飲食、賃貸ビルである。筆者の結論は割高。堅い財務は魅力だが、利益の源泉が少数の発注者と入札に偏る点を重く見る。
2026年4月、首都高の清掃入札で談合が認定され、排除措置命令と課徴金3億円を受けた。違反は2017年から続いていた。談合で守られた利益は、是正後の入札では守りにくい。道路の営業利益率は16%台と高いが、筆者は10年で13%台まで下がると見る。
一方で、財務の堅さは本物だ。自己資本比率は84%、純現金は時価総額の2割にあたる。現金の一部は戻らないと見て、余った分を半分だけ評価に足した。道路の受託量は人口が減っても大きく崩れない。売上は物価で名目3割ほど伸びるが、利益は売上ほど伸びない。
中立の10年後は、売上390億円前後、営業利益50億円台前半、ROEは7%台だ。それでも確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。強気の筋書きでも、今の値段を大きくは超えない。この会社は、ならした利益に比べて値段が先に走っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「割安に見えやすい割高株」だ。純現金が厚く、自己資本比率も高く、配当も出す。しかし筆者は、これらを理由に評価を上げない。
オーナーとして持ちたいかを問うと、道路維持の仕事は10年後も残る。ここは好ましい。だが、発注者が少なく、価格を自分で決められない。入札で決まる価格は、談合が外れれば削られる。値決め力が弱い事業の高い利益率は、長く続かないと見る。
資本の使い方は、まだ評価できる段階にない。現金は積み上がり、ROEは10年中央値の約10%から6〜8%へ落ちている。買収は小粒で、成功か失敗かを測る材料がない。親会社が約5割を持つので、経営が少数株主のために動く力は限られる。
安全域も薄い。余った現金を足し、稼ぐ力から測っても、中立の10年後の価値は今の時価総額に届かない。悲観の筋書きでも現金と不動産が下支えになるが、今の値段との差を埋めるほどではない。
現金の厚さを、安全域とは呼ばない。安全域は、払う値段が稼ぐ力に対して安いときに生まれる。今はそうなっていない。
何で稼ぐ会社か
事業は道路関連、レジャー、不動産の3つである。売上は296億円で、道路が約9割、レジャーと不動産が各1割未満を占める。
道路関連の中身は、首都高速・阪神高速・東名高速など高速道路の維持清掃と補修工事、道路付属設備の維持管理、高速道路の売店だ。主な取引先は阪神高速技術と中日本ハイウエイ・メンテナンス東名で、発注者は少数に偏る。保有する特殊車両と、夜間作業をこなす現場の人手が仕事の中身である。単価は発注者との契約で決まり、燃料や資材の価格変動には「価格スライド」という調整の仕組みが付くが、その効き方が業績を揺らす。
レジャーは、浦安マリーナの管理運営と喫茶・飲食店だ。2024年には東京夢の島マリーナの管理が終了した。売上は16億円ほどで、利益は小さい。
不動産は、吉祥寺スバルビルなどのオフィスビル、賃貸倉庫、賃貸駐車場である。売上は11億円ほどだが、利益率は6割を超え、会社の中でいちばん稼ぎ効率がよい。映画興行の祖業は、有楽町スバル座を2019年に閉じて終わった。
中期経営計画2028は、2028年1月期に売上340億円・営業利益55億円を目標にする。M&Aと環境事業(濁水処理・太陽光)に、3年で最大50億円を投じる構えだ。PFI・コンセッション方式の道路運営への参画も狙う。
優良さと弱いところ
この会社の質は、「現場を持つ手堅さ」と「少数の発注者に頼る危うさ」が同居している点にある。
強みは3つある。1つ目は、高速道路の維持管理で長年積んだ実績と、特殊車両・夜間作業の体制だ。他社が一朝一夕にまねできない。2つ目は、不動産賃貸の高い収益性だ。3つ目は財務で、自己資本比率84%、純現金は時価総額の約2割に達する。借金で背伸びする経営ではない。
弱点も明らかだ。第一に、発注者が少ない。首都高や阪神高速など数社が顧客の大半を占め、契約の更新で価格を押されやすい。第二に、談合である。2017年から続いた違反が2026年4月に認定された。談合で守られた利益率が、競争入札では維持できない恐れがある。筆者がいちばん気にしているのは、ここだ。
資本効率も低い。ROEは過去10年の中央値で約10%、直近は特別損失で6.6%まで落ちた。現金を抱えたまま還元が追いつかず、自己資本が積み上がる。会社の中計は3年で最大50億円の投資を掲げるが、買収の実績はまだ乏しい。
親会社の東宝が約5割を持つため、少数株主が経営を動かしにくいという面もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
道路の維持管理は、需要が景気に左右されにくい防御的な仕事だ。高速道路は開通から長い年月がたち、舗装・橋・トンネルの更新と修繕は避けられない。国と高速道路各社の計画に沿って、更新需要は10年を通して続く。人口が減っても交通量が急には落ちないので、受託の量は横ばいから微増と見る。
一方、価格の決まり方は変わる。公取委の命令を受け、道路の入札は透明性の圧力が強まる。談合で守られた受注の枠は薄まり、落札単価は競争で下がりやすい。人件費・資材費は物価で上がるが、契約への転嫁には時間差がある。2027年1月期の中間決算では、価格スライドの効果が剥がれ、営業利益が前年同期比で約1割減った。
競合は、日本ハイウエイ・サービス、京葉ロードメンテナンスなど道路維持の専業各社と、ゼネコン系の維持部門だ。談合の摘発では、日本ハイウエイ・サービスと子会社が課徴金減免で免れており、業界全体が入札の見直しを迫られている。
この領域の見通しは業界のノートに従う。警備・施設管理などの需要は、物価並みに価格が上がる中で、数量は人口減と省人化で横ばい圏と置く。ここは道路維持という公共色の濃い仕事だが、悲観の形は「発注者の分散と価格競争で受託の取り分が薄くなる」だ。
成長の芽は2つある。環境事業(濁水処理・太陽光)と、PFI・コンセッション方式での道路運営参画だ。どちらもまだ数字は小さい。
資本政策と M&A
資本政策は、増配と現金の積み上がりが同居している。配当は年10億円ほどで、2024年3月に長期の増配を目指す方針に変えた。それでも純現金は10年で約52億円から約135億円へ増え、還元が利益に追いついていない。
自社株買いの実績は乏しい。親会社の東宝が約5割を持つ親子上場で、少数株主の声が資本政策に届きにくい。余った現金は半分だけ戻ると見て評価した。
M&Aは、中計で3年最大50億円を投じる。道路維持の施工体制の強化、濁水処理と粉体凝集剤、太陽光の設計・施工・維持管理に買収を絞る方針だ。大型ではなく、小粒の積み上げである。買収で価値を壊す心配は小さいが、稼ぐ力が大きく伸びる見込みも立ちにくい。
買収される側になる可能性は、東宝が約5割を握るので小さい。完全子会社化(上場廃止)の動きは確認できない。
課徴金3億円の納付期限は2026年11月24日で、金額は現金の厚さに比べれば小さい。重いのは、談合で守られた利益が消える影響である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
道路の維持管理は、10年かけて確実に増える仕事だ。高速道路の老朽化は止まらず、更新・修繕の予算は国の計画に組み込まれている。特殊車両と夜間作業の体制を持つ会社は少なく、仕事は積み上がる。人手不足で、維持を外注する発注者も増える。
談合は痛い。だが課徴金は3億円で、現金の厚さに比べれば小さい。再発防止の体制が整えば、発注者からの信頼は戻り、むしろ取引は安定する。談合の是正で一時的に利益率が下がっても、現場力のある会社が選ばれる流れは変わらない。
財務は盤石だ。自己資本比率84%、純現金は時価総額の2割で、中計の3年50億円の投資も自己資金で賄える。環境事業の濁水処理と太陽光は伸びる市場で、道路の現場網と組み合わせれば収益の柱になる。不動産賃貸は利益率6割を超え、全体の収益を支える。
東宝という親会社の信用も、取引先との関係に効いている。配当は増配方針で、ROEの改善余地は大きい。会社の計画どおりなら、売上340億円・営業利益55億円は、物価分を含めれば無理のない目標だ。
慎重な見方
この会社の利益は、談合で守られた部分を含んでいた。違反は2017年から続き、2026年に認定された。是正後の入札は価格で決まる。道路の営業利益率は16%台と高かったが、競争入札では13%台、悪ければ一桁台まで下がる。
顧客は少数の発注者に偏る。首都高、阪神高速、中日本高速の関係会社が大半で、1つ失えば売上の大きな塊が消える。発注者は、談合の企業に仕事を寄せ続けにくい。受注先を分散させる動きが起これば、取り分は減る。
価格スライドの効果が剥がれ、2027年1月期の中間決算では営業利益が約1割減っている。人件費・燃料の上昇を転嫁できる保証はない。レジャーは小さく利益も薄い。環境事業の買収は小粒で、稼ぐ力を変えるほどの規模はない。
資本効率の低さも、構造的だ。ROEは過去10年の中央値の約10%から直近6.6%へ落ち、現金は積み上がるだけで戻りは親子上場の下で鈍い。ならした利益に対して今の値段は高く、現金の厚さを足しても、10年後の価値は今に届かない。
どちらに重みを置いたか
道路の維持管理が10年後も残るという点は、強気の見方が正しい。だが、談合で守られた利益が競争入札で削られるという指摘と、発注者が少数に偏るという構造は、慎重な見方のほうが重い。そのため中立では利益率を3ポイント下げ、やや悲観と悲観の確率を合わせて36%に置いた。現金の厚さは評価に足したが、親子上場で戻りが半分と見たので、安全域とは数えなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 4,649 円600 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,411 円182 億円)。 今の値に割り戻すと 3,304 円426 億円、今との差 −36.7%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,188 円1,057 億円 | 1,953 円252 億円 | +94.3% | +6.9% | 710 円92 億円 |
| やや楽観 | 21% | 6,560 円847 億円 | 1,713 円221 億円 | +58.5% | +4.7% | 1,737 円224 億円 |
| 中立 | 36% | 5,327 円687 億円 | 1,488 円192 億円 | +30.5% | +2.7% | 2,453 円317 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,559 円330 億円 | 1,162 円150 億円 | −28.7% | −3.3% | 893 円115 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,389 円179 億円 | 837 円108 億円 | −57.3% | −8.2% | 267 円34 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,649 円600 億円 | 1,411 円182 億円 | +16.1% | +1.5% | 6,061 円782 億円 |
今の株価時価総額 5,220 円674 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 入札の追い風と環境・自治体の受託が重なり、道路維持の受注が広がる10年 利益 53 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 8,188 円1,057 億円
高速道路の大規模更新が計画どおり進み、維持・補修の受託が広がる。首都高や阪神高速の老朽化は避けられず、特殊車両と現場の人手を持つ会社に仕事が集まる。PFI・コンセッション方式の運営にも参画し、受託路線は増える。環境事業では濁水処理と太陽光の小さな買収が当たり、道路の現場網と組み合わさって収益を支える。談合の再発防止策も定着し、発注者との信頼はむしろ厚くなる。
レジャーは新店舗が順調に育ち、不動産も1棟を買い増す。売上は470億円前後、営業利益は70億円台に乗る。還元は厚くなり、ROEは10%近くまで上がる。会社の描く姿が、ほぼそのまま実現した10年である。
談合を認めた企業が信頼を戻すには時間がかかるが、この筋書きでは再発防止の徹底が発注者に評価される。
- 道路関連・環境事業:数量 1,800(受託路線の換算延長(km、推定))× 価格 0.24(1km 当たり年間受託額(億円))→ 売上 423 億円・営業利益 66 億円。受託路線の換算延長1,800km、単価は物価を上回る1.40倍。更新工事の高付加価値化で利益率15.5%
- レジャー事業:数量 150(利用者・来店数(万人、推定))× 価格 0.19(1人当たり単価(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。4店舗の出店が育ち利用者150万人
- 不動産事業:数量 3.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 6.30(1㎡当たり年間賃料(万円))→ 売上 19 億円・営業利益 12 億円。賃貸面積3.0万㎡、賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)128 億円。全体の PER 18.39 倍、時価総額 1,057 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:道路の更新需要、買収の成功、新店舗の収益化が同時にそろう必要があり、起これば強いが連続して当たる確度は高くない。確率は低めに置いた。
やや楽観 21% 更新工事の需要を取り込み、買収も小さく成功する10年 利益 45 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 6,560 円847 億円
道路の更新・修繕の需要は読みどおりに続き、受託路線は緩やかに増える。国の老朽化対策の予算は人口が減っても削りにくく、仕事の量は底堅い。環境事業の買収は小さく成功し、維持管理の収益を支える。
入札は価格競争の色が濃くなるが、特殊車両と現場の人手という強みで、取れる案件は守る。レジャーは新店舗が数店育つ。会社の中計が掲げる売上340億円・営業利益55億円は、物価の分を含めれば後半の数年で超える。ROEは8〜9%まで改善するが、積み上がった現金が重しになって10%には届かない。会社の計画に近いが、一歩届かない10年だ。
自社株買いは行わず、配当の積み増しが中心になる。親会社が約5割を握る構造は変わらない。
- 道路関連・環境事業:数量 1,700(受託路線の換算延長(km、推定))× 価格 0.23(1km 当たり年間受託額(億円))→ 売上 383 億円・営業利益 56 億円。受託路線1,700km、単価1.34倍、利益率14.5%
- レジャー事業:数量 130(利用者・来店数(万人、推定))× 価格 0.19(1人当たり単価(万円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。利用者130万人、利益率9.5%
- 不動産事業:数量 2.7(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 6.30(1㎡当たり年間賃料(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 11 億円。賃貸面積2.7万㎡
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)112 億円。全体の PER 17.07 倍、時価総額 846 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新・修繕の需要は国の計画に裏づけがあり、会社の中計どおりに近い進み方になりうる。ただし談合後の入札で利益率は守りにくい。
中立 36% 値上げで売上は伸びるが、談合後の入札で利益率が削られる10年 利益 39 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 5,327 円687 億円
道路の維持管理は人口が減っても止まらない仕事で、受託の量はほぼ横ばいで推移する。人件費の上昇は契約改定で少しずつ転嫁され、受託単価は物価より少し緩く上がる。ただし談合の是正後は入札の競争が増し、道路事業の利益率は16%台から13%台へ下がる。
レジャーは新店舗がわずかに寄与し、不動産は吉祥寺の賃貸が安定して稼ぐ。売上は390億円前後、営業利益は50億円台前半に落ち着く。還元は利益の半分強で、現金は年々積み上がる。環境事業の買収は小粒のまま、事業の姿は今と大きく変わらない。平凡だが崩れない10年である。
親会社の東宝が約5割を持つ構造も変わらず、買収される側にもならない。
- 道路関連・環境事業:数量 1,620(受託路線の換算延長(km、推定))× 価格 0.22(1km 当たり年間受託額(億円))→ 売上 354 億円・営業利益 48 億円。受託路線1,620km、単価は物価より緩く1.30倍、入札競争で利益率13.5%
- レジャー事業:数量 115(利用者・来店数(万人、推定))× 価格 0.19(1人当たり単価(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。利用者115万人、単価1.34倍、利益率9%
- 不動産事業:数量 2.4(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 6.30(1㎡当たり年間賃料(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 9 億円。賃貸面積2.4万㎡で据え置き、賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)105 億円。全体の PER 15.81 倍、時価総額 687 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価並みに伸びるが、談合の是正後は入札の価格競争が増し、利益率が少し下がる。最も重みを置く、平凡で崩れない筋書き。
やや悲観 24% 競争入札が本物になり、高速道路会社の発注も絞られる10年 利益 29 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,559 円330 億円
談合の是正後、首都高の清掃・維持業務の入札は価格が主役になる。落札単価が下がり、道路の受託量も減る。発注者は特定の会社に偏らないよう受注先を分散させ、スバル興業の取り分は薄くなる。
環境事業の買収は期待ほど稼がず、レジャーは人件費に押されて薄い利益に戻る。不動産だけが計画どおりの収益を出すが、全体の1割強にとどまる。売上は340億円程度、営業利益は40億円を割り込む。還元は減らさないが、成長は止まる。親会社の東宝にとっても、守るべき主力とは言いにくい会社になる。
入札のルールが厳格になるほど、これまでの受注の枠は薄まる。
- 道路関連・環境事業:数量 1,500(受託路線の換算延長(km、推定))× 価格 0.21(1km 当たり年間受託額(億円))→ 売上 308 億円・営業利益 35 億円。受託路線1,500km、単価1.22倍、利益率11.5%
- レジャー事業:数量 100(利用者・来店数(万人、推定))× 価格 0.18(1人当たり単価(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利用者100万人、人件費で利益率5%
- 不動産事業:数量 2.3(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.88(1㎡当たり年間賃料(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 8 億円。賃貸面積2.3万㎡、賃料1.25倍
倍率:事業の ROE は約 6.2% で k 7.25% 以下なので、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。受託量と利益率が構造的に落ちる筋書きで、稼ぐ力(事業の純利益 約 28 億円)を基に上限の約 7.5 割(10.0 倍)に置いた。
確率:公取委の命令後に、価格だけで決まる入札が増えて利益率が落ちる。発注者が受注先を分散させる動きも考えられる。道路の維持管理は少数の発注者への依存が強く、起こりやすい。
悲観 12% 首都高・阪神高速の主力契約を失い、不動産だけが残る10年 利益 17 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,389 円179 億円
首都高と阪神高速の主力契約が、競争入札で他社に移る。談合の是正で守られてきた受注の枠が消え、道路の売上は大きく落ちる。落札を維持するために単価を下げ、利益率は一桁台まで縮む。
環境事業の買収は統合に失敗して損失を出し、レジャーは赤字に近づく。不動産賃貸の利益と積み上がった現金だけが残る。売上は270億円台、営業利益は20億円強にとどまり、ROEは4%を割る。主力の依存先が2〜3の発注者に偏る会社が、その偏りで負ける形である。
課徴金の3億円は小さいが、談合で守られてきた利益が消える影響は、その何倍にもなる。道路を維持管理する技能は残るので、事業が消えるわけではないが、稼ぐ力は大きく削られる。
- 道路関連・環境事業:数量 1,350(受託路線の換算延長(km、推定))× 価格 0.18(1km 当たり年間受託額(億円))→ 売上 250 億円・営業利益 21 億円。受託路線1,350km、単価1.10倍、利益率8.5%
- レジャー事業:数量 85.0(利用者・来店数(万人、推定))× 価格 0.17(1人当たり単価(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。利用者85万人、利益ゼロ
- 不動産事業:数量 2.0(賃貸面積(万㎡、推定))× 価格 5.17(1㎡当たり年間賃料(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 6 億円。賃貸面積2.0万㎡、賃料1.10倍
倍率:事業の ROE は約 3.6% で k 7.25% 以下、上限は 1÷k = 13.3 倍。主力契約を失い道路の利益が一桁台に縮む筋書きなので、稼ぐ力(事業の純利益 約 16 億円)の評価として上限の約 7 割弱(9.0 倍)に置いた。余った現金は半分に目減りした 45 億円で足している。
確率:首都高・阪神高速の主要契約が競争入札で他社に移り、買収も不発に終わる構造的な負け。依存が大きいので、起これば打撃は深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
道路関連・環境事業
高速道路の維持清掃・補修工事、付属設備の維持管理、売店。環境事業(濁水処理・太陽光)の買収も含める。
| 数量受託路線の換算延長(km、推定) | 価格1km 当たり年間受託額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 1,600 | 0.17 | 269 | 44 |
| 10 年後 中立 | 1,620 | 0.22 | 354 | 48 |
取り方:売上 296 億円のうち道路関連が約 9 割。開示がないので、受託路線の換算延長 1,600km × 1km 当たり 0.168 億円と推定した。営業利益は全社 48.6 億円から不動産約 7 億円とレジャー約 1.5 億円、調整 −3.9 億円を引いて逆算した。価格は物価に契約の改定が遅れるぶんを引き、中立で 10 年 1.30 倍とした。数量は更新需要で緩やかに増える。
レジャー事業
浦安マリーナの管理運営と喫茶・飲食店。
| 数量利用者・来店数(万人、推定) | 価格1人当たり単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 110 | 0.14 | 16 | 2 |
| 10 年後 中立 | 115 | 0.19 | 22 | 2 |
取り方:売上約 16 億円を、年 110 万人 × 1 人当たり約 0.145 万円と推定した。単価は物価並みの 1.34 倍。利益は薄く 1.5 億円と置いた。
不動産事業
吉祥寺スバルビルなどの賃貸オフィス・賃貸倉庫・賃貸駐車場。
| 数量賃貸面積(万㎡、推定) | 価格1㎡当たり年間賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 2.4 | 4.70 | 11 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 6.30 | 15 | 9 |
取り方:売上約 11 億円、セグメント利益率 62% から、賃貸面積 2.4 万㎡ × 1㎡当たり年 4.7 万円(駐車場を含む平均)と推定した。賃料は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
談合後の入札で利益率が下がる
首都高の清掃入札の談合が2026年4月に認定された。談合で守られた利益は、是正後の競争入札で守りにくい。道路の営業利益率は16%台と高く、数ポイント下がるだけで全体の利益が1割以上動く。
発注者への依存
道路事業は、首都高・阪神高速・中日本高速の関係会社など少数の発注者が顧客の大半を占める。契約の更新で価格を押されたり、受注先を分散されたりすると、売上の大きな塊を一度に失うおそれがある。
価格スライドと人件費の転嫁の遅れ
燃料・資材・人件費の上昇は、契約の改定まで時間がかかる。2027年1月期の中間では価格スライドの効果が剥がれ、営業利益が前年同期比で約1割減った。物価が高い局面ほど、このずれが利益を削る。
親子上場と少数株主
東宝が約5割を持つ。資本政策は親会社の意向が強く、余った現金が株主に戻る速度は遅い。現金は10年で2倍以上に積み上がっており、戻りが鈍ければROEは上がらない。
環境事業・小粒買収の成否
中計は3年で最大50億円を、濁水処理・太陽光などの買収に投じる。小粒なので失敗しても傷は浅いが、成功しても道路の利益の落ち込みを埋める規模にはなりにくい。
レジャー・マリーナの収益性
2024年に夢の島マリーナの管理が終わった。浦安マリーナも発注者との契約に依存し、飲食は人件費上昇で薄い利益に戻りやすい。全体への影響は小さいが、赤字化すれば足を引っ張る。
今後の分かれ目
- 首都高・阪神高速の入札で、他社が主力契約を落札する
- 売上の大きな塊を失い、10年の悲観・やや悲観の確度が上がる。
- 談合後の入札でも、道路の営業利益率が15%台を保つ
- 競争入札でも現場力が価格に出ていることが確認でき、10年のやや楽観・楽観に近づく。
- 環境事業の買収が黒字化し、売上に数十億円が乗る
- 道路依存から抜ける道が見え、10年のやや楽観の確度が上がる。
- 自社株買いや大幅な増配で、積み上がった現金が株主に戻る
- 余った現金の戻りが厚くなり、評価に足す現金が増える。本質価値は現金分だけ上がる。
- 東宝による完全子会社化(上場廃止)の発表
- 少数株主への価格は親会社が決める。本質価値と比べて、提示価格が高いか低いかで判断が分かれる。
- 新たな不祥事・行政処分が表面化する
- 発注者との関係が悪化し、受注の分散が進み、悲観の確度が上がる。
見ておくもの
- 首都高・阪神高速・中日本高速の入札結果と落札単価
- 道路関連事業の営業利益率(中計の営業利益55億円への進捗)
- 価格スライドの効き方と、人件費・燃料の転嫁の状況
- 環境事業の買収と売上への寄与
- 配当・自社株買いの増減と、現金の積み上がり
- 東宝の持株比率と、親子上場の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。現金を分けた事業の ROE から RONIC(k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(事業の ROE − k))を出し、g 4% の正当化 PER を求め、利益の質は並(発注者が少数・談合後の価格競争)として上限の約 8.3〜8.5 割に置いた。やや悲観・悲観は ROE が k 以下なので上限 13.3 倍から、稼ぐ力の評価で 10.0 倍・9.0 倍にした。今の株価・今の PER は倍率の根拠に使っていない。現金は余った分を 90 億円と見て、戻り方 0.5 で足した。10 年のならした利益で測ったので、今の値段より低く出たのは、計算の結果である。店舗の賃借は小さく、新リース会計基準(2028年1月期から)で営業利益と純負債の形は変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.2→18.39 倍・やや楽観 PER 14→17.07 倍・中立 PER 12.5→15.81 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。