結論
フルテックは、自動ドアを売り、取り付け、保守する会社だ。北海道と東北では据え付けの 4〜6 割を握る。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正だ。保守の契約は 60 年間一度も前の年を割らず積み上がってきたが、本社と営業の費用が重く、その強さが利益になって表に出にくい。
強みはストック、つまり一度売ったドアから毎年入る保守と取り替えの売上だ。管理するドアは 32 万台あり、その 3 割に保守の契約が付く。残る 22 万台は、これから保守や取り替えを取れる畑になる。
弱みは費用の重さと、新築の工事の採算のぶれだ。2026 年の上期は赤字の大型工事と新しい基幹システムの費用で、営業利益がほぼ消えた。決算の遅れと内部統制の不備も出した。
10 年の中立では、管理台数が 2 割近く増え、営業利益は 10 億円台に乗る。ROE は 7% 前後で資本コストにわずかに届かず、価値は今の時価総額とほぼ並ぶ。割安を言うには、費用の管理が変わった証拠が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フルテックは「良い畑を持ちながら、耕し方がまだ下手な会社」だ。10 年後も事業は確かに残る。取り付けた 32 万台のドアは、壊れれば直し、古くなれば替えるしかない。その仕事の多くはフルテックに戻ってくる。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて持ち主に残る現金は、会計の利益とほぼ同じだ。工場は小さく、設備の投資は軽い。保守の契約は毎年の現金を生む。
だが、その現金の多くが本社の費用に消える。新しい基幹システムは決算を遅らせ、内部統制の不備まで招いた。費用の管理と工事の採算の目が鍛えられない限り、良い畑の稼ぎは持ち主に届かない。
現金は厚く、潰れる心配はほとんど無い。それでも安全域は小さい。価値は今の値段とほぼ同じで、保守の積み上げを信じる人には少し安く、費用の重さを気にする人には少し高い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 6 割強は自動ドアだ。新しいビルや店にドアを付ける「新規」、取り付けたドアを点検し直す「メンテナンス」、古くなったドアを替える「リニューアル」の 3 つで成り立つ。新規の客はゼネコンやサッシメーカーで、保守と取り替えの客はビルや店の持ち主だ。
2025 年 12 月期の自動ドア関連の売上は 87 億円で、セグメントの利益は 20 億円あった。利益率は 23% と高い。保守は年額の定額の契約が多く、景気にほとんど左右されない。
2 つ目の柱は建具で、売上は 40 億円。ビルの入り口まわりのガラスの扉やサッシ、シャッターなどを納め、取り替える。2024 年に建具の会社ワイズ・コーポレーションを買ったが、計画に届かず 2025 年にのれんを減損した。
ほかに駐輪場の機器、環境機器、制御基板の開発などがあり、売上は 9 億円ほどで利益はほぼ出ていない。
問題は全社の費用だ。本社、営業、システムの費用が年 20 億円あり、セグメントの利益 25 億円の大半を食う。会社全体の営業利益は 4.6 億円にとどまった。
優良さと弱いところ
優良さは「並」と筆者は見る。核にあるのは地域の首位とストックの厚みだ。北海道で 58%、東北で 42% の据え付けの割合を持ち、管理する 32 万台のドアから保守と取り替えの仕事が毎年生まれる。保守の契約台数は創業から 60 年、前の年を一度も割っていない。
この部分は強い。ドアの保守は、取り付けた会社が部品と図面を持つので、客は簡単には乗り換えない。開け閉めの回数が多い店やビルほど、壊れれば商売が止まるので、保守の値上げも通りやすい。
弱いのは、その強さが会社全体の利益に出ないことだ。全社の費用は売上の 15% あり、人の採用とシステムの費用で増え続ける。新築の工事は受注の競争で採算がぶれ、赤字の物件が出ると利益が飛ぶ。
経営は創業家が率いる。2025 年に決算を遅らせ、内部統制の重要な不備を開示した。資本の効率への意識は中計で示したが、実行はまだこれからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動ドアの市場は、ビルの数とともにゆっくり動く成熟市場だ。新築の数は人口とともに減るが、すでに付いているドアの数は大きく減らない。むしろ古いドアの取り替えと、安全の基準に合わせた更新が、毎年の需要を支える。
競争の形は寡占に近い。全国ではナブコ(ナブテスコ系)と寺岡オートドアが大手で、フルテックは寺岡の代理店から育った独立系だ。地域ごとに強い会社が分かれ、北海道と東北ではフルテックが首位、関東では 15% ほど、西日本は手付かずだ。
伸びしろは保守の契約率にある。管理台数のうち契約が付くのは 3 割で、残りは壊れた時だけ呼ばれる。遠隔で見守る保守や、ドアの情報を客がいつでも見られる仕組みで、この割合を上げようとしている。
人手の不足は両面に効く。技術者の賃金は上がるが、保守の値段も上げやすくなる。建具や入り口まわりの改修は、ビルの老朽化で需要が増える。10 年で見れば、管理台数は年 2% 前後の純増を続け、単価は物価並みに上がると筆者は見る。大きく伸びる市場ではないが、急に消える市場でもない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年間の配当は 2018 年から 1 株あたりほぼ同じ額を保ってきた。中計では、2027 年 12 月期に配当性向 50% 以上と、自己資本に対する配当の割合 3% を目指すと掲げた。2026 年 6 月には 0.9 億円の自社株買いを行った。株主優待は保有の量と期間に応じた QUO カードで、年の費用は小さい。
財務は堅い。2025 年末の現金は 18 億円、借入は 8 億円で、純現金は 10 億円ほどある。ただし工事の立替や前受けの金が大きく、事業に要らない現金とは言いにくい。
買収は小さく、2024 年の建具の会社は減損に終わった。中計の 2027 年の目標は、営業利益 10.6 億円と今の倍以上で、会社自身が見直しを検討している。買収の具体的な話は見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保守の積み上げは本物だ。契約台数は 60 年間一度も減らず、2025 年も 1.5% 増えた。管理する 32 万台のうち、保守の契約が無い 22 万台がまだある。遠隔の見守りや客向けの情報の仕組みで契約率が上がれば、利益率の高い売上が毎年積もる。
取り替えの波も来る。1990 年代から 2000 年代に付けたドアが、更新の時期を迎える。古いドアの多くは自社の製品で、取り替えの仕事は自然に戻ってくる。人手が足りない時代ほど、保守の値上げは通りやすい。部品と図面を持つ会社に頼むしかないからだ。
2026 年の上期の落ち込みは一時のものだ。赤字の大型工事と新システムの立ち上げの費用が重なっただけで、受注は増えている。中計の目標は営業利益 10 億円台で、会社が本気で費用を抑えれば、利益率は 7% まで戻る。純現金も厚く、配当性向 50% の方針で還元も増える。今の値段は、この立ち直りをほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
全社の費用が重すぎる。セグメントの利益 25 億円のうち 20 億円が本社と営業の費用に消え、会社の営業利益は 4.6 億円しか残らない。人の採用、賃上げ、システムの費用で、この費用は物価より速く増えてきた。
新築の工事は危うい。2026 年の上期は、工期の長い大型の赤字物件で建具の利益が 6 割減った。受注の競争で値段を下げれば、赤字の物件は今後も出る。2024 年に買った建具の会社は、1 年で減損した。
管理の力にも疑問がある。新しい基幹システムの不具合で決算が 50 日を超えて遅れ、内部統制の重要な不備を開示した。株主総会も継続会になった。上場企業として基本の手続きでつまずいたことは軽くない。中計の目標は既に見直しの対象で、会社の見通しは当たっていない。
関東では 15%、西日本は手付かずで、全国の大手と戦う力は限られる。ストックが厚くても、それを利益に変える力が弱ければ持ち主の得にはならない。
どちらに重みを置いたか
保守の積み上げが本物だという点では、前向きな見方に分がある。一方、全社の費用と工事の採算の管理は、2025〜2026 年に弱さを見せた。どちらの言い分も決め手に欠ける。中立に 38% を置き、楽観側 32%、悲観側 30% とほぼ釣り合わせ、保守の積み上げの分だけわずかに楽観に寄せた。費用の管理が変わった証拠が出れば、楽観側を厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,819 円96 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 468 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 1,209 円64 億円、今との差 +2.2%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,185 円221 億円 | 757 円40 億円 | +317.7% | +15.4% | 494 円26 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,656 円140 億円 | 605 円32 億円 | +175.7% | +10.7% | 718 円38 億円 |
| 中立 | 38% | 1,741 円92 億円 | 473 円25 億円 | +87.1% | +6.5% | 841 円44 億円 |
| やや悲観 | 20% | 590 円31 億円 | 322 円17 億円 | −22.9% | −2.6% | 182 円10 億円 |
| 悲観 | 10% | 365 円19 億円 | 151 円8 億円 | −56.3% | −8.0% | 52 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,819 円96 億円 | 468 円25 億円 | +93.3% | +6.8% | 2,287 円121 億円 |
今の株価時価総額 1,183 円63 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 保守の契約率が上がり、関東で取り替えを取る 利益 13 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 4,185 円221 億円
遠隔の見守りと客向けの情報の仕組みが当たり、保守の契約率が 3 割から 4 割へ上がる。1990 年代から 2000 年代に付けたドアの取り替えが続き、関東でもシェアを伸ばす。管理台数は 10 年で 1.35 倍になる。
人手の不足で保守の値上げが通り、管理 1 台あたりの売上は物価より速く上がる。建具は入り口まわりの改修の需要で伸び、赤字の大型物件を避ける選別が定着する。
全社の費用は物価並みに増えるが、売上の伸びがそれを上回る。営業利益は 20 億円を超え、Vision2030 の経常利益 20 億円に届く。配当性向 50% で還元も増え、ROE は 11% 台に上がる。
- 自動ドア関連:数量 43.6(自動ドアの総管理台数(万台))× 価格 3.76(管理 1 台あたりの年間売上(万円))→ 売上 164 億円・営業利益 41 億円。台数 1.35 倍。保守契約率の上昇で単価 1.40 倍
- 建具関連:数量 5,750(施工の件数(件・推定))× 価格 112(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 64 億円・営業利益 7 億円。入り口まわりの改修が伸びる
- その他:数量 1,000(案件の数(件・推定))× 価格 115(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。採算が改善
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.51 倍、時価総額 221 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 9% 台は過去 12 年の山 7.7% を超える。保守の契約率の上昇と全社の費用の抑制が両方そろう必要があり 10%。
やや楽観 22% 管理台数の積み上げと値上げで利益率 7% 台に戻る 利益 10 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,656 円140 億円
管理台数は年 7,000 台から 9,000 台の純増を続け、10 年で 1.25 倍になる。保守の契約率は少しずつ上がり、取り替えの仕事も安定して戻る。値上げは物価よりわずかに速く通る。
建具は選別の受注で採算が戻り、利益率は 10% 台を保つ。2026 年の赤字の大型物件と新しいシステムの立ち上げの費用は一時で終わる。
全社の費用は人の賃金で物価並みに増えるが、システムの効率化で伸びは抑えられる。営業利益は 15 億円近くまで戻り、利益率は 7% 前後になる。配当は利益の半分ほどを払い、ROE は 9% 台に上がる。
- 自動ドア関連:数量 40.3(自動ドアの総管理台数(万台))× 価格 3.68(管理 1 台あたりの年間売上(万円))→ 売上 149 億円・営業利益 36 億円。台数 1.25 倍。単価は物価より少し速い
- 建具関連:数量 5,250(施工の件数(件・推定))× 価格 109(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 57 億円・営業利益 6 億円。件数 5% 増
- その他:数量 1,000(案件の数(件・推定))× 価格 115(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。ほぼ横ばい
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.62 倍、時価総額 140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2015〜2016 年は営業利益率 7% 台だった。保守の積み上げが続き、2026 年の工事の赤字が一時で終われば届く水準で 22%。
中立 38% 保守が積み上がるが、全社の費用に食われて利益率は 5% 台 利益 7 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,741 円92 億円
管理台数は年 2% 弱の純増を続け、10 年で 1.18 倍になる。保守の契約率は少し上がる程度で、取り替えの仕事は管理台数に合わせて増える。単価は物価並みに上がる。
建具は新築の減りを改修が埋めきれず、件数は 5% 減る。工事の採算は年によってぶれるが、ならせば利益率 10% を保つ。
全社の費用は人の賃金と採用で 10 年に 1.3 倍になる。新しい基幹システムの償却は取得した時の値段のまま増えず、更新の時に新しい値段で足される。営業利益は 10 億円台で、利益率は 5% 台にとどまる。
純利益は 7 億円ほど。配当性向 50% の方針で利益の半分近くを払い、ROE は 7% 前後と資本コストにわずかに届かない。
- 自動ドア関連:数量 38.1(自動ドアの総管理台数(万台))× 価格 3.60(管理 1 台あたりの年間売上(万円))→ 売上 137 億円・営業利益 32 億円。台数 1.18 倍。単価は物価並み
- 建具関連:数量 4,750(施工の件数(件・推定))× 価格 108(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。件数 5% 減。新築の減りを改修が埋めきれない
- その他:数量 1,000(案件の数(件・推定))× 価格 115(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。ほぼ横ばい
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は 0.6〜7.7% で、中央は 5% 前後。保守の積み上げと全社の費用の増加が釣り合う形として 5.4% を置き、最も起こりやすい形として 38%。
やや悲観 20% 工事の赤字と費用の増加が続き、利益率 2% 台 利益 2 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 590 円31 億円
保守の積み上げは続くが、関東での競争で単価は物価に届かない。管理台数の伸びも 10 年で 1 割弱に鈍る。
建具は赤字の大型物件が繰り返し、利益率は 6% に落ちる。2024 年に買った建具の会社は立て直せず、追加の減損が出る。
全社の費用は人の賃金で増え続け、効率化は進まない。営業利益は 4 億円ほどにとどまり、利益率は 2% 台になる。純利益は 2 億円台で、配当は方針どおりに払うと内部の蓄えが細る。価値は稼ぐ力で決まり、純現金は工事の立替に縛られる。保守の地盤が残るので、会社が傾くほどではない。
- 自動ドア関連:数量 34.8(自動ドアの総管理台数(万台))× 価格 3.44(管理 1 台あたりの年間売上(万円))→ 売上 120 億円・営業利益 25 億円。台数 1.08 倍。競争で単価が物価に届かない
- 建具関連:数量 4,250(施工の件数(件・推定))× 価格 103(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 3 億円。件数 15% 減。赤字の物件が続く
- その他:数量 900(案件の数(件・推定))× 価格 111(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:ROE 2.8% で、価値は稼ぐ力(純利益 2.4 億円÷k 7.5% ≒ 32 億円)まで。PER は 1÷k に近い 13 倍で稼ぐ力の水準。
確率:2022 年に営業利益率 0.6%、2026 年上期は 0.4% まで落ちた。工事の採算の管理が改善しなければ戻りうる水準で 20%。
悲観 10% 大手に取り替えを奪われ、工事の赤字で利益が消える 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 365 円19 億円
全国の大手が地方の保守と取り替えに攻め込み、価格で客を奪う。管理台数は 10 年で 5% 減り、保守の契約率も下がる。単価は物価を大きく下回る。
建具は赤字の物件が続き、事業の縮小を迫られる。全社の費用は人の賃金で増え、削っても追いつかない。営業利益はゼロ近くに沈み、配当も減る。
価値は稼ぐ力では測れず、純現金と土地・建物の手取りで決まる。ただし現金の多くは工事の立替に縛られ、創業家が率いる会社は清算しない。株主に戻る額は帳簿より小さい。保守の首位という最後の強みまで失う、最も厳しい筋書きだ。配当も大きく減る。
- 自動ドア関連:数量 30.7(自動ドアの総管理台数(万台))× 価格 3.23(管理 1 台あたりの年間売上(万円))→ 売上 99 億円・営業利益 18 億円。台数 5% 減。大手に取り替えを奪われる
- 建具関連:数量 3,500(施工の件数(件・推定))× 価格 97(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 −1 億円。件数 3 割減。赤字
- その他:数量 800(案件の数(件・推定))× 価格 107(1 件あたりの売上(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:赤字なので PBR。価値は売れる資産で見て、今の自己資本 69 億円の 0.28 倍の 19 億円(floor_assets の内訳)。
確率:赤字の年は過去 12 年に無いが、2026 年上期に営業利益がほぼ消えた。保守の首位が崩れる見込みは小さく 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動ドア関連
自動ドアの新規の取り付け、保守・修理、取り替え。北海道・東北・関東・九州に拠点。
| 数量自動ドアの総管理台数(万台) | 価格管理 1 台あたりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 32.3 | 2.69 | 87 | 20 |
| 10 年後 中立 | 38.1 | 3.60 | 137 | 32 |
取り方:総管理台数は 2024 末 315,563 台(FISCO)に年 7,000 台前後の純増を足し 2025 末 32.26 万台と推定。単価はセグメント売上 86.71 億円÷台数。営業利益はセグメント利益 20.39 億円(全社費用の配賦前)。
建具関連
ビルの入り口まわりのガラス扉・サッシ・シャッターなどの納入と取り替え。子会社ワイズ・コーポレーションを含む。
| 数量施工の件数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 81 | 40 | 5 |
| 10 年後 中立 | 4,750 | 108 | 51 | 5 |
取り方:件数の開示が無いので、1 件 80 万円前後の改修と新築の大型物件の混在とみて、売上 40.39 億円から 5,000 件と推定。営業利益はセグメント利益 4.62 億円。
その他
駐輪システム、環境機器、セキュリティ、制御基板の開発など。
| 数量案件の数(件・推定) | 価格1 件あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 86 | 9 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 115 | 11 | 0 |
取り方:件数の開示が無いので売上 8.57 億円を 1,000 件・1 件 86 万円と推定。営業損失はセグメント損失 0.15 億円。
リスクと懸念
全社の費用の膨張
本社・営業・システムの費用は年 20 億円あり、セグメントの利益の 8 割を食う。賃上げと採用、システムの費用で物価より速く増えてきた。売上の伸びが鈍れば、利益率はすぐに 2〜3% へ落ちる。
工事の採算のぶれ
新築の自動ドアと建具は、ゼネコンからの受注の競争で値段が決まる。工期の長い大型の赤字物件が出ると、2026 年上期のように会社の利益がほぼ消える。
管理と内部統制
新しい基幹システムの不具合で 2025 年 12 月期の決算が 50 日を超えて遅れ、内部統制の重要な不備を開示した。是正が遅れれば、費用の管理と工事の採算の把握も遅れる。
大手との競争
全国ではナブコと寺岡オートドアが大手だ。関東での割合は 15% にとどまり、西日本には拠点が無い。大手が地方の保守を価格で取りに来れば、首位の地盤も揺らぐ。
買収の失敗
2024 年に買った建具の会社は、1 年で計画を下回り減損した。今後も買収で地域を広げるなら、同じ失敗が還元に回るはずの現金を減らす。
今後の分かれ目
- 保守の契約台数の伸びが年 3% を超える
- ストックの積み上げが速まったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 2027 年 12 月期に配当性向 50% と DOE 3% を達成する
- 還元の方針が実行されたとみて、ROE の見通しを上げる。
- 建具で大型の赤字物件がまた出て、通期の営業利益が 3 億円を割る
- 工事の採算の管理が直っていないとみて、やや悲観に寄せる。
- 内部統制の不備が是正され、決算が期限内に戻る
- 管理の不安が和らいだとみて、悲観の確率を下げる。
- 西日本への進出か、関東の同業の買収を決める
- 管理台数の伸びが上振れうるが、買収の値段と採算を見て判断する。
見ておくもの
- 自動ドアの総管理台数と保守契約台数
- リニューアル(取り替え)の台数と売上
- 全社費用の額と売上に対する割合
- 建具の工事損失引当金の増減
- 中期経営計画の見直しの内容と還元の実行
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立は ROE 7.0% が k 7.5% をわずかに下回るので上限 1÷k = 13.3 倍の 94%、楽観側は正当化 PER の 9 割強。今や過去の PER・PBR は見ていない。中立の営業利益率 5.4% は過去 12 年の山 7.7% 以下。全社の費用は物価で 1.3 倍にし、新しい基幹システムの償却は増やしていない。純現金は運転資金に見合うので分けず、悲観の床だけで戻り方 0.75 を掛けて数えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→16.51 倍・やや楽観 PER 14→14.62 倍・中立 PER 12.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。