結論
メイホーホールディングスは、地方の建設コンサルタント、施工会社、人材派遣会社、介護事業者を買収して束ねる企業集団だ。筆者の結論は「やや割安」だが、優良企業が安売りされているという話ではない。国土の老朽化を直す仕事は十年後も残る一方、買収の成功を利益だけでなく現金回収によって証明する段階にある。
2026年6月期は売上高136億円、営業利益5億円だったが、のれん減損で最終赤字となった。純有利子負債は17億円、帳簿上の自己資本は22億円で、その約7割に当たる15億円がのれんである。営業黒字をそのまま株主の稼ぎと見てはいけない。公共工事の需要が安定していても、人材不足、回収遅れ、借入金利、追加買収が重なると、利益を現金として残す余地は細い。
中期計画は2028年6月期に売上高300億円を掲げる。しかし増分の大半を買収に求めるため、売上目標の達成と一株当たり価値の増加は別問題だ。十年後の中立では、地域の案件を少し広げながら建設と介護を維持し、事務派遣ではAIによる仕事量の縮小を受け入れる。買収規模を追うより、既存子会社の採算と親会社費用を整える姿を中心に考えた。
株価を見てから利益を作ることは避けた。五つの筋書きを資本コストで現在に引き戻すと、現時点の時価総額を一割台半ば上回る価値になる。ただし悪い筋書きでは買収先の減損で資産の裏付けが急減する。割安幅がその脆さを十分補うかは、見方の分かれるところである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、会社名や成長目標より、十年後にも顧客がお金を払う必要があるかを先に問いたい。土砂災害への備え、道路橋梁の点検、鉄道設備の補修、要介護者の日々の介助は、景気が悪くても簡単には消えない。実際に資格を持ち現場を運営できる人の組織には、一定の持続力がある。これがこの企業を全く価値のない事業として扱わない理由だ。
ただし、株主が欲しいのは売上ではなく、設備更新と運転資金、買収代金、借入返済の後に残る現金である。2026年6月期の営業利益は黒字でも、契約資産や売掛金が増え、営業キャッシュフローは小さかった。新本社の設備投資も控えている。買収ののれん償却を足し戻した利益だけを見れば、実際より自由に使える資金が多く見えてしまう。
再投資したお金が資本コストを上回って増えるなら、配当を急がず持ち続ける意味がある。反対に、買収が売上を買っているだけなら、株主は大きくなった会社の少ない利益を持つことになる。事務派遣の需要がAIで減る局面では、同じ人数を維持するために値下げするより、現場や規制対応など代わりにくい仕事へ資本を振り向ける方がよい。
現時点の値段には、悲観の回収価値に比べれば相応の上積みがあるが、基本的な事業の稼ぐ力からは一定の評価余地がある。安全域は小幅にあるものの、買収を繰り返す経営への確信を置くほどの厚さではない。筆者が重視するのは、次の買収発表より既存企業の回収可能な現金が増えることだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの入口は四つある。建設関連サービスは、国や自治体が発注する測量、設計、維持点検、施工監督や発注者支援を請け負う。2026年6月期の売上高は約43億円で、セグメント利益は約6.5億円だった。仕事は熟練技術者と入札参加資格に依存し、納期が行政の年度末に集中する。設計図面だけでなく、工事現場での検査と発注側の責任ある判断まで担うことが特徴だ。
人材関連サービスは売上高約41億円。レゾナゲートによる事務派遣のほか、建設技術者、製造業向け人材、交通誘導・警備、カンボジアでの図面受託を含む。事務派遣は稼働人数と請求時間が売上を決めるが、現場の警備や施工管理は人がその場にいること自体に意味がある。同じ「派遣」という名称でも、十年後に必要とされる人数は大きく違う。
建設事業は今田建設、有坂建設などによる土木、法面、鉄道施設の施工で、売上高約43億円、セグメント利益約2.6億円である。受注残高は約38億円に増えたものの、作業員不足、資材高、工期延長が採算を左右する。介護はアルトが中心となり、岐阜と愛知で通所介護、ケアマネジメント、住宅型有料老人ホームを営む。売上高約9億円と小さいが、利用者の生活に不可欠な対面サービスである。
連結子会社は24社に及ぶ。各事業の利益合計約11.6億円から、持株会社の費用や連結調整約6.6億円を差し引くと、全社営業利益約5億円になる。この差額こそ、規模拡大によって生まれる利点と管理費負担のどちらが勝つかを表す。買収先が増えるだけでは株主の利益は増えない。
優良さと弱いところ
最も長持ちする強みは、地方自治体の仕事を請け負う資格と経験、地域の技術者のつながりである。公共工事の発注者支援は成果品に責任を負い、現場の立会いが必要になる。人材が不足する自治体にとって、既に実績のある受託者を替える手間は小さくない。鉄道工事にも、安全手順と限られた施工時間を守る能力が求められる。ただし、発注者の予算と競争入札で価格が制約されるため、独占的な値上げ力はない。
買収した中小企業を一つの資金・採用・管理の仕組みで支える発想には経済的な意味がある。単独では採れない人材を採り、引き継ぐ経営者を確保し、金融機関から資金を調達できれば、買収後の利益を改善し得る。しかしそれが競争相手の再現できない「堀」かどうかは別である。実際の改善額、買収費用、追加投資、回収額を通算した増分資本利益率がまだ見えにくい。
2024年以降の利益率低下と最終赤字は軽視できない。2026年6月期にはレゾナゲートののれん約2.7億円などを減損した。買収で取得した将来利益が期待ほど出ないことを示す具体例であり、単なる会計上の雑音ではない。売上が増えても、のれん償却、統合費用、本社費用が先に増えれば少数株主への取り分は増えない。
2026年6月末の自己資本比率は約29%、純有利子負債は自己資本の約8割である。金利上昇時の借換余力は巨額の現金を抱えた企業とは異なる。介護の利用者、測量や施工の現場はAIに置き換わりにくい一方、事務派遣や図面作成は業務量が減り得る。長く残る仕事を持ちながら、収益の質には弱さを抱える企業だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建設コンサルタントの需要を支えるのは、新しい道路の建設より老朽インフラの維持更新と防災である。東京商工リサーチが集計した建設コンサル関連約2,019社の売上高は約1兆7,651億円で、メイホーの建設関連サービス約43億円は単純比較で0.24%程度にとどまる。集計範囲の違いがあるため厳密な市場シェアではないが、地域外へ広げる余地はある。日本工営を擁する大手やパシフィックコンサルタンツ、地域の測量設計会社が競争相手で、規模より地域ごとの技術者と受注実績が物を言う。
人材派遣の全国売上高は、厚生労働省の2024年度集計で約9.9兆円だった。メイホーの人材関連約41億円を単純に割ると0.04%ほどだが、事務、建設、製造、警備では市場も競合も異なる。事務ではパーソルやリクルートスタッフィングなど大手の効率化と、顧客企業自身のAIエージェント導入によって、同じ業務に必要な人数が減る。建設技術者や交通誘導は人の立会いと法令上の責任が残りやすく、単価の転嫁が実現するかが中心課題になる。
建設事業は全国の公共投資予算約6.1兆円を一つの参考市場として見る。ただし鉄道向け民間工事を含む同社売上を、この予算だけで割った数字は正式なシェアではない。維持更新、鉄道施設、防災工事には長期需要があるが、ゼネコンや地域施工業者の競争が続き、材料費と賃金の上昇をすべて請負単価へ転嫁できるわけではない。2026年6月末の建設受注残高の大幅増加は先行指標だが、毎年繰り返せる成長率ではない。
介護は高齢化で利用者が増える構造だ。通所介護の全国給付費は年約1.36兆円で、同社介護事業を単純比較すれば約0.07%にすぎない。ただし同社には住宅型有料老人ホームなどもあり厳密なシェアではない。ツクイ、セントケア、各地の独立事業所が競合し、規制された介護報酬と人件費の差が利幅を決める。全国で必要とされる仕事でも、個々の事業者が必ず儲かるとは限らない。
資本政策と M&A
中期経営計画「メイホーサーティービリオンドライブ」は、2028年6月期に売上高300億円、EBITDA30億円、EBITDAマージン10%を目指す。2025年6月期の130億円からの増収170億円のうち、既存事業の成長は30億円、M&Aによる増収は140億円という設計だ。さらに長期構想には企業数100社、売上高1,000億円がある。しかしEBITDAは、のれん償却と設備償却を足し戻した利益であり、借入金の返済や買収対価を払える現金そのものではない。
今田建設の取得、レゾナゲートの取得、ナスキーキャリアや未来政策研究所の参加など、買収は一貫した成長手段だった。反面、レゾナゲートの減損は買値と統合効果の検証が必要であることを示した。今後は買収前後の営業利益だけでなく、買収対価、借入残高、のれん、運転資金、追加投資を合わせて増分ROICを評価すべきだ。
会社は2017年の持株会社設立以来、株主配当を実施していない。2027年6月期の予想配当もゼロで、中計には配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額の数字の約束がない。持株比率の高い創業経営者が立会外分売で支配株主に該当しなくなったことは流動性改善に資するが、還元実績の代わりにはならない。
2026年6月末には本社機能に総額15億円の設備投資計画があり、約3.2億円を支払済みで、残りは自己資金と借入で賄う予定だ。固定資産の償却は取得原価ベースで進む一方、新規投資は現在の高い建築費を負担する。建物を30~40年で償却する仮定なら、稼働後の年間償却費だけで約0.4億円が加わる。金利と運転資金も含め、将来の現金創出を細かく確かめたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
地方の中小企業には後継者不足が続き、経営規模が小さいため単独では採用や財務管理が難しい会社が多い。メイホーが買収先の経営者や従業員を残しながら、融資枠、採用、営業支援、管理会計を共通化できれば、地方企業の買い手として独自の地位を作れる。公共工事の発注者支援は現場の知識と有資格者が必要であり、AIが設計補助をしても最終責任を引き受ける企業の価値は消えない。老朽化した橋や道路を放置できない以上、十年先の需要も比較的見通しやすい。
2026年6月期には建設の受注残高が大幅に増えた。鉄道施設工事が再開し、請負金額の変更契約による単価改善も利益を押し上げている。こうした案件を積み重ねれば、技術者の採用と地域外への拠点展開で市場シェアを広げられる。公共工事で培った関係は新規参入者が短期間では取りにくく、建設関連サービスの利益率は人材・介護よりも高い。現場事業を中心に収益構成が変われば、全社の資本効率も回復し得る。
介護では高齢化による利用者増が続く。料金を自由に上げられない弱点はあるが、複数施設で採用や送迎、勤務表を共通化できれば固定費を吸収できる。事務派遣のAI代替が進んでも、技術者派遣、施工、介護で受け皿を作れる。帳簿上ののれんの問題は過去の買収価格に関するもので、すべての現場事業の将来利益が消えることを意味しない。
財務の回復と買収案件の選別が進めば、今まで配当できなかった会社から株主還元を行う会社に変わる。新規の大規模増資に頼らず利益を再投資し、親会社費用が規模ほど増えなければ、現在の時価総額に対し十分な十年後価値を作れる。
慎重な見方
事業承継市場が大きいことと、メイホーが安く優良企業を買えることは違う。既に多くの買い手が中小企業を探しており、まともな利益を出す企業には相応の対価が必要になる。買収に伴うのれんと借入が積み上がるほど、景気後退や一社の事業計画未達が自己資本を大きく傷つける。2026年6月期のレゾナゲートの減損は仮説ではなく実際に起きた損失である。
公共工事には維持更新需要があるが、受注価格は入札と自治体の予算に制約される。建設技術者を採れなければ、仕事が多くても売上は増やせない。施工会社では材料高、労務費、残業規制、工期の遅れが利益を削り、大型案件の受注残は収益保証ではない。介護も利用者が増えるほど人手が必要となり、介護報酬の改定が賃上げに追いつかなければ増収減益になり得る。どの部門にも強い値決め力を期待しにくい。
人材関連は質の違う事業が一つにまとまっている。レゾナゲートの事務派遣やカンボジアでの図面作成は、顧客のAIエージェントが自動で仕事を処理するほど必要人員が減る。今までの売上成長率を延長してはならない。業務画面の操作や定型作業を請け負うだけでは、値段を守る交渉材料も乏しい。残る技術者派遣まで事務の効率化が進めば、固定人件費と拠点費用が重くなる。
純負債が17億円ある一方、現金は約4億円にとどまる。建設の売掛金と契約資産は増えており、資金を先に立て替える構造だ。本社設備への15億円の投資が重なり、借り換え金利が上昇すれば、会計利益が戻っても自由に使える現金は出ないかもしれない。無配が続けば少数株主が収益を受け取れるかという根本的な問題が残る。
どちらに重みを置いたか
十年先にも残る建設・介護の仕事を評価する点では強い見方に分がある。ただし会社固有の買収減損、のれんの大きさ、純負債、未達になりやすい巨額の買収計画については慎重な見方を重く受け取る。下側の確率を上側より12ポイント高くしたのはAIへの恐れを二度数えるためではなく、財務と資本配分の実績への不確実性が高いためだ。株価には一割台半ばの割安余地があるが、本格的な信頼を置くには借入削減と買収後の現金回収を確かめたい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 996 円47 億円(+ 還元の換算額還元の合計 24 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 457 円21 億円、今との差 +24.1%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,854 円134 億円 | 167 円8 億円 | +720.8% | +24.7% | 302 円14 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,861 円88 億円 | 42 円2 億円 | +417.0% | +18.2% | 342 円16 億円 |
| 中立 | 32% | 1,026 円48 億円 | 0 円0 億円 | +178.9% | +10.8% | 328 円15 億円 |
| やや悲観 | 25% | 138 円6 億円 | 0 円0 億円 | −62.5% | −9.3% | 35 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 85 円4 億円 | 0 円0 億円 | −76.9% | −13.6% | 13 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 996 円47 億円 | 24 円1 億円 | +177.2% | +10.9% | 1,020 円48 億円 |
今の株価時価総額 368 円17 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 地方企業統合が実を結び現場の収益が広がる 利益 11 億円 · PER 12.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,854 円134 億円
地域中小企業の事業承継案件を無理のない買値で取り込み、施工と公共工事の設計・発注者支援が互いの営業網を補う。建設関連サービスは高齢化する行政職員を補う役割を強め、技術者の育成と買収先の参加によって稼働人数を大きく増やす。鉄道施設と防災工事では選別受注を徹底し、単価改善が労務費上昇を上回る。全国的な市場シェアはなお小さいが、進出先の地方では繰り返し選ばれるようになる。
人材関連では建設技術者と警備など現場に人が必要な仕事に資本を向ける。レゾナゲートの事務派遣はAIによる需要縮小を受けるが、これをAI商品売上の架空の拡大で補うことはしない。介護は人員確保と施設稼働率の上昇が続き、規制報酬下でも利益を維持できる。
過去のレゾナゲートの減損を教訓に、買収価格と買収後の収益改善を厳しく管理する。純負債と本社投資の負担をこなし、終盤には初めてまとまった株主還元が可能になる。
- 建設関連サービス(調査・設計・発注者支援):数量 450(技術者の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.21(技術者1人年あたり受託売上(億円、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 15 億円。自治体の案件獲得と有資格者年人の推移
- 事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心):数量 335(派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.06(1人年あたり派遣料金収入(億円、名目))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。AIエージェントによる事務人月の減少を数量に反映
- 現場人材・警備・製造派遣など:数量 600(現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.09(1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。現場立会いの必要数と料金転嫁
- 建設(鉄道・法面・土木施工):数量 210(標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計))× 価格 0.51(標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目))→ 売上 107 億円・営業利益 10 億円。土木・鉄道案件の完成件数と材料費転嫁
- 介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム):数量 105,000(延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計))× 価格 0.00(利用者日相当1日あたり売上(億円、名目))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。施設の延べ利用者日と介護報酬改定
倍率:2026年の市場PERではなく事業の稼ぐ力に依拠する。十年後のROE 13.82%、k 8.5%、堀は弱く超過ROEが残る比率1/3、長期名目成長上限g 2.0%。RONIC 10.27%から正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=12.3891倍。楽観~中立の上限そのもの。期末の全社純利益10.5億円に適用して終価130.0861億円とする。
確率:地場企業の承継案件で優良な買収を継続し、本社共通費の増加を抑えて建設・介護の受注を広げる。事務派遣はAIで成長しない条件のままで、上振れを建設の採算改善と現場シェア拡大に限定する。
やや楽観 18% 大型の統合に頼らず事業規模を広げる 利益 7 億円 · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,861 円88 億円
建設コンサルタントは地場の競合から少しずつ受注を取り、行政の維持点検と施工監督の仕事が増える。大型買収を繰り返すのではなく、既存の資格者を育成し、地域をまたぐ共同受注が形になる。公共発注単価の改善が人件費の上昇を概ね吸収し、設計に使うAIは社員の生産性向上にとどまる。最終的な責任を伴う検査や現場立会いの人数は維持される。
建設では大阪圏の鉄道施設工事をきっかけに安定した顧客関係を築き、法面の維持更新にも取引を広げる。派遣は事務系の需要が減るものの、建設技術者・製造・警備の現場へ配置を変える。介護は既存施設の稼働率を改善し、適度な拠点追加で地域シェアを広げる。
レゾナゲートの減損以降、買収後の管理に手間をかける。親会社費用は増えるが規模ほどではなく、借入金利と建物償却の負担を吸収した利益を残す。終盤に小規模な配当等を始める余裕が生じる。
- 建設関連サービス(調査・設計・発注者支援):数量 395(技術者の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.20(技術者1人年あたり受託売上(億円、名目))→ 売上 80 億円・営業利益 13 億円。自治体の案件獲得と有資格者年人の推移
- 事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心):数量 300(派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.06(1人年あたり派遣料金収入(億円、名目))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントによる事務人月の減少を数量に反映
- 現場人材・警備・製造派遣など:数量 525(現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.09(1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目))→ 売上 45 億円・営業利益 3 億円。現場立会いの必要数と料金転嫁
- 建設(鉄道・法面・土木施工):数量 175(標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計))× 価格 0.49(標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目))→ 売上 86 億円・営業利益 7 億円。土木・鉄道案件の完成件数と材料費転嫁
- 介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム):数量 90,000(延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計))× 価格 0.00(利用者日相当1日あたり売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。施設の延べ利用者日と介護報酬改定
倍率:2026年の市場PERではなく事業の稼ぐ力に依拠する。十年後のROE 11.57%、k 8.5%、堀は弱く超過ROEが残る比率1/3、長期名目成長上限g 2.0%。RONIC 9.52%から正当化PER=(1-g/RONIC)/(k-g)=12.1536倍。楽観~中立の上限そのもの。期末の全社純利益6.9億円に適用して終価83.8600億円とする。
確率:老朽化対策と鉄道関連の受注増が続き、買収した地方企業で経営統合も概ね成功する。ただし中計300億円を十年後でも完全には達成しない現実的な上振れにとどめる。
中立 32% 現場需要は残り買収の歩みは抑える 利益 4 億円 · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,026 円48 億円
公共インフラの老朽化により、道路橋梁の調査、発注者支援、災害対策は十年後も発注される。建設関連サービスでは地域の有資格者を確保できた分だけ受注が増え、売上単価はおおむね物価の上昇に沿う。ただし図面作成と報告書づくりはAIで効率化し、技術者数を売上ほど急速に増やす必要はなくなる。大型の買収が計画どおり続くとは見込まない。
事務派遣はAIエージェントによって顧客が行う定型業務そのものが減り、実質人年は現在の約7割になる。給与・料金は名目では上昇しても派遣人数の減少を相殺しきれない。建設技術者や警備、製造業の現場派遣は維持されるが、間接事務部分には同じ自動化圧力が及ぶ。施工は受注残高の拡大を一度は業績に結び付け、その後は通常の維持更新需要へ戻る。
介護の利用者は増えるが介護報酬が物価に追いつかず、賃金上昇で利益率は抑えられる。のれん償却、金利上昇、新本社の償却、本社管理の費用を負担すると、利益率は大きく伸びない。現金は借入返済と運転資本に優先して使われ、無配が続く。
- 建設関連サービス(調査・設計・発注者支援):数量 335(技術者の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.19(技術者1人年あたり受託売上(億円、名目))→ 売上 64 億円・営業利益 10 億円。自治体の案件獲得と有資格者年人の推移
- 事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心):数量 240(派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.06(1人年あたり派遣料金収入(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントによる事務人月の減少を数量に反映
- 現場人材・警備・製造派遣など:数量 440(現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.08(1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。現場立会いの必要数と料金転嫁
- 建設(鉄道・法面・土木施工):数量 135(標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計))× 価格 0.48(標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 4 億円。土木・鉄道案件の完成件数と材料費転嫁
- 介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム):数量 74,000(延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計))× 価格 0.00(利用者日相当1日あたり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。施設の延べ利用者日と介護報酬改定
倍率:2026年の市場PERではなく事業の稼ぐ力に依拠する。十年後のROE 7.55%、k 8.5%、堀は弱く超過ROEが残る比率1/3、長期名目成長上限g 2.0%。ROEがk以下のため成長価値を認めず、PERの上限は1/k=11.7647倍。期末の全社純利益3.75億円に適用して終価44.1176億円とする。
確率:AIが事務派遣の業務量を約3割減らし、地方の建設・介護の仕事は存続する。増収率に比べ利益の伸びは緩やかで、借金と管理費のため資本効率の回復に時間がかかる。下に寄せる理由:すでに買収先減損が起きたことと純負債の厚さが、中心筋書きからの下振れに結び付くためだ。
やや悲観 25% 買収減損と事務派遣の縮小が重なる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 138 円6 億円
公共工事の予算は残るが、競争入札で受注単価を十分上げられず、設計・測量の採用にも苦戦する。工事現場の有資格者を確保できる会社へ案件が流れ、メイホーが請け負う実働量は減る。建設事業では鉄道関連の大型工事が一巡し、材料費と工期延長を契約価格に転嫁できない。介護でも有資格者の採用費用が増え、報酬改定に賃金が先行する。
事務派遣ではAIエージェントが定型作業を処理するため、契約人数と請求時間が現在の6割程度まで減る。現場派遣は一定量が残るが、顧客の内製化と採用競争で料金の上昇率が鈍る。グループの本社費用は簡単には消せず、不採算子会社の整理を進める。
買収先に追加の減損が発生する。途中までの小さな営業黒字が帳消しになり、十年間の報告純利益の合計は概ねゼロにとどまる。期末の利益がわずかに黒字でも資本コストを下回り、配当できないまま信用力が低下する。
- 建設関連サービス(調査・設計・発注者支援):数量 290(技術者の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.18(技術者1人年あたり受託売上(億円、名目))→ 売上 53 億円・営業利益 7 億円。自治体の案件獲得と有資格者年人の推移
- 事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心):数量 210(派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.05(1人年あたり派遣料金収入(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントによる事務人月の減少を数量に反映
- 現場人材・警備・製造派遣など:数量 380(現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.08(1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。現場立会いの必要数と料金転嫁
- 建設(鉄道・法面・土木施工):数量 110(標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計))× 価格 0.47(標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。土木・鉄道案件の完成件数と材料費転嫁
- 介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム):数量 70,000(延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計))× 価格 0.00(利用者日相当1日あたり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。施設の延べ利用者日と介護報酬改定
倍率:将来の積み増し自己資本ではなく、現在の自己資本約21.64億円を分母とする。ROE約2.77%は資本コスト8.5%を大きく下回り、稼ぐ力の上限0.60/0.085=7.06億円と、のれん等を除いた床4.00億円の間で、損傷した事業にPBR0.30倍を用いる。計算結果6.492億円。過去の市場PBRを根拠にしない。
確率:下に寄せる理由:のれん約15億円と純負債約17億円を抱えるため、既存の買収先で計画未達が起きると、わずかな営業利益回復では自己資本と現金の余裕を取り戻せない。AI分は中立数量に織り込み済みで、確率を重ねて罰しない。
悲観 15% のれんを失い収益基盤が崩れる 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 85 円4 億円
買収先の利益回復が進まず、追加取得に伴う借入が収益を圧迫する。建設コンサルタントは自治体の財政制約と技術者流出でシェアを落とし、施工部門では採算の悪い案件を抱えて価格競争に巻き込まれる。介護施設の利用需要はあっても、有資格者を採れず施設を縮小する。社会に必要な仕事が残ることと、その担い手の株式価値が残ることは別問題である。
事務派遣は、顧客企業がAIエージェントで請求、入力、照会業務を自動化し、稼働人年が現在の半分未満になる。賃金負担と取引先への値下げ圧力が重なり、当該部門は赤字に転じる。現場派遣も施工管理の事務部分が自動化され、受託量が減少する。買収先ごとの管理体制が分散したままで統合効果を得られない。
約15億円ののれんの大半を減損し、利益剰余金も取り崩す。期末時点の営業損失と金利負担が続き、銀行との条件変更や不採算事業の売却が必要になる。継続企業の前提が崩れると断定はしないが、経営が持ちこたえても少数株主への配当はない。
- 建設関連サービス(調査・設計・発注者支援):数量 260(技術者の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.18(技術者1人年あたり受託売上(億円、名目))→ 売上 47 億円・営業利益 5 億円。自治体の案件獲得と有資格者年人の推移
- 事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心):数量 160(派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.05(1人年あたり派遣料金収入(億円、名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。AIエージェントによる事務人月の減少を数量に反映
- 現場人材・警備・製造派遣など:数量 340(現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計))× 価格 0.08(1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。現場立会いの必要数と料金転嫁
- 建設(鉄道・法面・土木施工):数量 95.0(標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計))× 価格 0.44(標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。土木・鉄道案件の完成件数と材料費転嫁
- 介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム):数量 60,000(延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計))× 価格 0.00(利用者日相当1日あたり売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。施設の延べ利用者日と介護報酬改定
倍率:減損で将来自己資本を6.0億円まで落とした厳しい筋書き。利益は赤字で利益倍率を使えないため、のれん14.98億円、繰延税金資産1.78億円と資産回収の不確実性を控除した床4.0億円を採用する。表示上のPBRは4.0/6.0=0.6667倍であり、歴史的な市場の底値ではない。
確率:下に寄せる理由:過去に実際の買収先減損があり、巨額の未償却のれんと新本社の資金負担がある。複数の事業で採用・価格転嫁に失敗して資産価値が消える厳しい事象を、少数ながら無視できない確率で考える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設関連サービス(調査・設計・発注者支援)
国・自治体の調査、測量、設計、工事監督。専門技術者の実働量が売上の主要因。
| 数量技術者の年間稼働換算人数(人年、推計) | 価格技術者1人年あたり受託売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 300 | 0.14 | 43 | 7 |
| 10 年後 中立 | 335 | 0.19 | 64 | 10 |
取り方:有報の2026/06外部売上42.95747億、セグメント利益6.53599億。実際の延べ有償稼働人年は非開示のため、資格を要する設計・監督を含む年間300人年の標準稼働に換算し、単価0.14319億円/人年と逆算した推定であって人員開示ではない。全国市場は東京商工リサーチ調査の建設コンサル関連2,019社売上約1.7651兆円、当社売上比0.24%は市場定義差のある概算。十年の人数増は地域受注率と拠点買収、価格は委託単価で測る。約8割が行政発注で、許認可に係る現場・検査はAIエージェント代替の事務人月型に一括分類しない。ただし作図・報告文の省人化を織り込む。
事務派遣・定型受託(レゾナゲート中心)
事務、コール業務など労働時間で請求する派遣・BPOのAI感応部分。
| 数量派遣スタッフの年間有償稼働換算人数(人年、推計) | 価格1人年あたり派遣料金収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 350 | 0.04 | 16 | 0 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.06 | 14 | 0 |
取り方:2026/06決算説明資料のレゾナゲート個社売上1,558百万円、利益5百万円を基礎に、人材関連サービス40.63610億から切り出した分析用区分であり法定セグメントではない。派遣人数約349人に近い350人年を便宜的に実質数量とし、単価0.044514億円/人年に換算。純粋な有償人年・職種内訳は非開示。AIエージェント代替の型は「人月・工数で売る事務系派遣・BPO」で、中立数量240/350=0.686(0.55〜0.75内)、単価1.279倍(1.34倍以下)、十年後以降の当部分g=0%。解約率・独自DBなど正本型の証拠2個はない。
現場人材・警備・製造派遣など
建設技術者・製造工員、交通誘導と警備、海外人材関連を中心とする現場就業。
| 数量現場派遣・警備の年間稼働換算人数(人年、推計) | 価格1人年あたり現場人材サービス売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 400 | 0.06 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 440 | 0.08 | 37 | 2 |
取り方:2026/06有報の人材関連セグメント売上40.63610億・利益1.73749億から、別区分のレゾナゲート売上15.58億・利益0.05億を引いた分析用残額25.05610億・利益1.68749億。400人年換算は請求数量の開示ではなく年収・稼働日換算の仮定であり、請求単価0.06264億円も推定。残額にも事務職・カンボジア図面受託が混在する可能性があり、すべて非代替とは言えない。建設現場・警備・製造の「現場の体」はAIで直接置換されないが、管理事務と図面受託部分は縮小を数量・利幅の慎重さに含める。全国派遣市場約9.9005兆円に対する人材全体40.64億円の比率約0.041%は概算。
建設(鉄道・法面・土木施工)
道路・河川や鉄道設備の施工、斜面保護と維持修繕。受注工事の件数・規模・工期で売上が決まる。
| 数量標準的な施工契約の年間完成換算件数(件、推計) | 価格標準施工契約1件あたり完成工事売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 120 | 0.36 | 43 | 3 |
| 10 年後 中立 | 135 | 0.48 | 65 | 4 |
取り方:2026/06有報の建設セグメント外部売上42.85720億、利益2.56910億、期末受注残約38.27億(前期比約2倍)。実際の完成契約件数・契約平均単価は非開示なので、大小混じる施工を120件の標準パッケージに換算し、約0.35714億円/件とした。数量は施工能力・受注シェア、価格は材料労務費の契約転嫁。建設投資80兆円規模/国の公共事業予算約6.1兆円は参考需要母集団で、鉄道民間案件を含む当社の正式なシェアの分母ではない。現場の施工はAIエージェントの直接代替に非該当。
介護(通所・ケアマネ・有料老人ホーム)
アルトが営む岐阜・愛知のデイサービス、居宅支援、住宅型有料老人ホーム。
| 数量延べ利用者日相当(人日、施設・居宅サービスを換算した推計) | 価格利用者日相当1日あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 60,000 | 0.00 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 74,000 | 0.00 | 15 | 1 |
取り方:2026/06介護セグメント外部売上9.23156億、利益0.74633億。通所介護の延べ実利用日・施設別利用者数は非開示のため、通所と有料老人ホーム等の収入を合算した6万人日相当という代替数量とし、単価約1.539万円/人日相当に逆算。実際の通所単価ではない。全国通所介護給付費約1.3616兆円への当社売上比約0.068%は居宅・施設分を含むため厳密なシェアではない。AIによる記録事務軽減はあり得るが、身体介助は現場の体で直接代替に非該当。介護報酬改定のため価格は中立で物価1.34倍未満とする。
リスクと懸念
買収によるのれんの損失と増分ROIC
2026年6月期にはレゾナゲートののれんを約2.7億円減損し、純損失になった。連結ののれんはなお約15億円あり、買収前の事業計画を超える利益が出なければ追加の減損が起こり得る。企業数や売上高ではなく、買収対価とその後に回収できた現金を比べる必要がある。
借入金の借り換えと運転資本
純有利子負債は約17.2億円、現金は約4.2億円にとどまる。契約資産と売掛金が増加し、2026年の営業キャッシュフローはほぼ均衡だった。借入金を十年かけて3.5~4%程度へ借り換えると、調達金利と回収遅れが資金繰りを圧迫する。実際の固定・変動比率と満期は未確認である。
AI エージェント代替
人材事業のうちレゾナゲートを中心とする事務派遣、定型BPO、カンボジアの図面作成は、顧客のAIエージェントに代替される。中立では事務派遣の実質稼働人数を約0.69倍とした。建設コンサルの検査・発注者支援、警備、製造現場、介護の身体介助は直接の代替に当たらず、各事業の事務だけを慎重に評価する。
公共入札の価格競争と採用制約
建設関連サービスの発注者の約8割は行政で、予算編成、入札基準、資格者数が受注能力を決める。老朽化するインフラの維持需要が増えても、技術者を確保できず価格転嫁も通らなければ利益を増やせない。競合の大手設計会社や各地域の測量会社に案件を失うと、固定人件費が負担になる。
施工案件の粗利と新本社の投資
建設の受注残高拡大は好材料だが、鉄道の作業時間制約、資材高、技能者不足、天候遅延によって完成工事の採算は変わる。本社機能の総額15億円の設備投資も控え、建築時の支出と稼働後の減価償却・利払いが重なる。古い資産の償却をCPIで一律に増やすのではなく、新規取得分の負担を評価する必要がある。
介護報酬の改定と介護人材不足
高齢化によってサービスを必要とする人が増えても、介護報酬は公定価格で、改定は事業者が自由に決められない。介護職員や看護・ケアマネ資格者を採れなければ施設稼働率が下がり、賃金上昇を単価へ十分反映できない。事故や行政処分が起きた場合には、地域で積み上げた信頼も損なわれる。
無配と少数株主の回収可能性
持株会社設立以来の無配と高い大株主保有割合は、利益が出ても少数株主へいつ戻るかが不透明であることを意味する。中期計画は売上とEBITDAの目標を示すが、配当性向や自社株買いの数値目標はない。今後の株式報酬、買収資金の新株発行が生じる場合には、会社全体の成長と一株当たりの取り分を分けて評価する。
今後の分かれ目
- 2028年6月期に売上300億円とEBITDA30億円が達成されても、営業CFが設備投資と運転資本を賄えなかったら
- 中計達成を一株価値の増大と同一視せず、買収の追加支払と運転資本を調べ、弱い資本配分の確率を上げる。
- レゾナゲートの派遣稼働人年が二年連続で年5%以上減り、請求単価も停滞したら
- AIエージェント代替と顧客の内製化が想定以上とみて事務人月の十年数量を下方修正する。
- 借入金残高が減り、買収後の営業CFが三期連続で安定してプラスになったら
- 現金回収を伴う買収と認め、やや楽観側を増やし、戻り方と資本効率を見直す。
- 建設関連の受注残高が減る一方、入札単価の上昇が賃上げに追いつかなかったら
- 建設関連サービスの数量と営業利益率を下げ、行政案件依存の悲観筋書きへ重みを動かす。
- 鉄道・土木の受注残高増が二年間にわたり高い完成工事粗利と債権回収へつながったら
- 建設の利益率と再現性を引き上げる。ただし一時的な工事進捗増加と永続的な単価改善を区別する。
- 追加ののれん減損が数億円単位で発生し、自己資本比率がさらに低下したら
- 帳簿の床を下げ、借り換え条件悪化と新株発行による希薄化も織り込んで悲観の確率を上げる。
- 介護報酬改定で処遇改善の財源が厚くなり、離職率と採用費用が低下したら
- 利用者日の拡大と利益率維持の確度を高める。施設数だけではなく実利用日と介護職の定着率で確認する。
見ておくもの
- 建設関連サービスの受注高38.06億円・受注残20.27億円からの増減と、技術者の有資格者数
- 建設の受注残高38.27億円の完成工事粗利、増額変更契約と回収期間
- レゾナゲートの派遣人年・稼働率・顧客単価、AI利用による顧客の必要人員数
- のれん約14.98億円の残高、追加減損、買収別の営業CFと投下資金回収率
- 借入総額約21.44億円の返済予定・変動金利比率、現金4.23億円、契約資産と売掛金
- 2028年6月期の売上300億円・EBITDA30億円の達成率と、M&Aによる140億円増収の対価
- 2027年6月期の配当ゼロ予想からの変更、自己株買い方針、本社投資15億円の完成費用と償却費
倍率と資本コストの決め方
起点の株価と自己株控除後の株数は、評価終了後の比較にだけ使った。四つの報告セグメントのうち人材をAI代替の強さで二つへ分け、稼働人年・施工件数・介護利用日と名目単価から売上を求めた。非開示の実質数量は推計である。倍率は現在のPERやPBRの履歴を使わず、k8.5%、長期g2%、弱い堀による増分ROICの収れんから正当化した。中立のROEがkを下回るためPERの上限は1/kとした。悲観の床は純負債と多額ののれんを考慮した約4億円であり、今の自己資本22億円を無条件の清算価値にしていない。本社費用の基準約6.62億円を物価3%で十年増やすと約8.9億円になり、さらに新本社の年間償却約0.4億円を含めて中立調整費用9.3億円とした。十年間の株主還元を期中平均時点で割り引く近似を用いた。自動的に積み上がる簿価上の余剰は実測の余剰現金ではない点に注意する。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。国債3%と株式プレミアム4.5%の基本7.5%に、価格交渉力と負債の各0.5%を加える。規模プレミアム・ベータ・個別買収失敗の上乗せはしない。