結論
フレアスは、歩行が難しい高齢者などを訪問し、医療保険を使ったマッサージや鍼灸を提供する会社である。筆者の結論は割安だ。事業の中核に残る施術需要とフランチャイズ網の価値に対し、現在の時価総額は小さい。
ただし、2026年3月期の純利益5億円強を将来の稼ぐ力とみなしてはいけない。この利益には施設事業の譲渡益などが含まれる。さらに、2027年3月期の会社予想には人材開発支援助成金1.27億円が織り込まれている。売却と助成金を取り除いて初めて、継続事業の収益力が見えてくる。
長所は、患者の身体に直接触れる施術を、全国の直営店と加盟店を通じて届けていることだ。需要は高齢化と在宅療養の普及に支えられ、AIによって施術そのものが消えるとは考えにくい。一方、療養費の単価は国が決める。施術者の賃金が上がっても自由に値上げできず、採用力と訪問効率が利益を左右する。
最大の不安は経営の資本配分である。かつての中期計画はホスピス事業の急拡大を掲げたが、損失が膨らみ、施設の大半を手放した。現在は訪問マッサージと加盟店支援に軸足を戻している。10年後の価値は、この方針転換が定着するかにかかる。中立では緩やかな数量増と費用管理の改善を見込むが、確率は経営計画の未達実績を踏まえて慎重側に寄せた。それでも5つの筋書きの加重価値は、現在の時価総額を十分に上回る。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主の見方では、まず10年後も患者から必要とされる事業かを問う。フレアスの訪問施術は、この条件を満たしやすい。施術する人の手と国家資格が必要であり、保険請求や日程調整が自動化されても患者へのサービスそのものは残る。高齢者の在宅生活を支えるという役割にも長期の需要がある。
次に、その需要を株主の利益に変えられるかを問う。ここでは評価が分かれる。価格を国が決める事業では、物価が上がるほど必ず儲かるわけではない。施術者の賃金、訪問に伴う移動時間、本部の管理費を引いて初めてオーナーの利益が残る。加盟店網は少ない資本で広げられる可能性があるが、その利益を次の施設投資で失えば株主には残らない。
経営者には事業を伸ばす意欲がある。しかし、かつての施設投資は資本配分の規律を欠いた。失敗した事業を売却した判断は評価できる一方、最初から投じなければ避けられた損失もある。再投資の利回りが資本コストを超えると確信するには、直営店の施術生産性、加盟店の継続率、本社費用の抑制を数年にわたり確認する必要がある。
価格面では、現在の時価総額は継続事業の利益回復に対して低い。中立の将来利益が実現すれば、十分な安全域がある。ただし、それは帳簿の自己資本が現在の時価総額を超えるからではない。稼ぐ力を回復し、利益を不採算施設に再投資しないという条件が付く。筆者が長期保有で最も重視するのは、加盟店の拡大速度よりも、この資本配分の約束が守られるかどうかである。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、直営の訪問マッサージと、その仕組みを加盟店に提供するフランチャイズである。利用者は主として歩行困難な高齢者で、ケアマネジャーの紹介を受け、医師の同意に基づいて施術する。会社は患者や保険者から療養費を回収する。単なるリラクゼーションではなく、関節拘縮や疼痛などに対応する継続的な在宅サービスだ。
直営事業では、国家資格を持つ施術者の採用、訪問先への移動、患者の獲得、保険請求の管理が収益を決める。2026年3月期末の直営店は81拠点、年間利用回数は鍼灸を含め約90万回である。1人の利用者への訪問頻度は高いが、施術者の1日に提供できる回数には上限がある。会社は訪問地域を狭め、移動時間を減らす方針を示している。
フランチャイズ事業は361拠点に達した。加盟店が患者への施術を行い、会社は加盟時の支援、研修、請求事務、採用支援などを提供して収入を得る。加盟店の施術売上そのものは、連結売上には含まれない。直営に比べて会社自身が施術者を抱える必要が少ないため、加盟店が定着すれば、追加投資に対して収益が伸びやすい。ただし、本部の支援費用と加盟店の離脱を無視できない。
メディカルケア事業では、看護小規模多機能型居宅介護と訪問看護を営む。2025年9月に医療対応型療養施設の全部と看護小規模多機能型居宅介護の一部を譲渡し、現在は看多機6施設と訪問看護10拠点が中心となった。2026年3月期の報告売上には売却前の事業が含まれるため、継続部分と撤退部分を分けなければ将来の数量を見誤る。その他の訪問介護関連事業は売上規模が小さいが、費用負担には注意を要する。
優良さと弱いところ
フレアスの強みは、施術の品質管理と地域への営業網にある。全国に直営店を持ち、そこを加盟店の研修や支援の拠点として使える。医師の同意取得や保険請求への対応も、小規模な独立施術所には負担となる。2026年3月期には、同社のマッサージ施術に占める変形徒手矯正の割合が77.9%に達した。専門性の高い施術を提供する体制を築いていることは評価できる。
しかし、他社が簡単に入れないほどの堀があるとは言い切れない。療養費は公定価格で、会社が独自に大幅な値上げをすることはできない。ケアマネジャーとの関係や施術者の技能は重要だが、利用者が他社に移れない仕組みではない。加盟店の研修や請求支援にも競合が存在する。国内の大手チェーンという優位はあっても、独占的な価格決定力はない。
事業別の利益と全社利益の差も大きい。2026年3月期は直営マッサージが約11.5億円、加盟店事業が約2.9億円の営業利益を出した。それでも、本社費用約9.4億円や撤退前の施設損失を引くと、連結営業利益は約2.9億円にとどまる。現場の利益率だけを見て優良企業と判定するのは危険である。
資本効率は過去の投資判断に傷がある。施設系事業に資金を投じた時期には営業赤字が発生し、2025年3月期には連結でも赤字となった。売却後の既存メディカルケア施設は利益を出しているが、再投資した資本が継続的に資本コストを上回るかは未証明だ。2026年3月期の高いROEには一時利益も含まれる。堀は普通、経営の資本配分能力もまだ再評価の途中と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の訪問マッサージには、高齢化と在宅療養への移行という長い追い風がある。厚生労働省の資料では、2022年度の療養費はあん摩・マッサージ・指圧が約663億円、はり・きゅうが約447億円だった。合計で約1,110億円の保険給付市場だが、通所サービスも含む。訪問施術だけの市場規模をそのまま示す数字ではない。
フレアスの直営売上約41億円をマッサージ療養費663億円と単純比較すると6%程度になる。ただし、決算年度が異なり、直営売上には鍼灸なども含まれるため、厳密な市場シェアではない。さらに加盟店の施術売上は同社の連結売上に入らないため、442拠点のネットワーク全体が占める給付額は開示だけでは確定できない。競合にはHITOWAグループのKEiROWや地域の独立施術所がある。大手チェーン同士の拠点数ではフレアスが有力だが、業界全体には多数の小規模事業者が残る。
市場全体の実質的な施術回数は、10年間で1割から2割程度増える余地があると考える。ただし、75歳以上人口の増加が永遠に続くわけではない。2040年前後には高齢化の構造も変わり始める。フレアス自身が市場より速く伸びるには、独立事業者からの加盟店獲得、ケアマネジャー経由の新規紹介、施術者の採用と訪問効率の改善が必要になる。
最大の制約は保険制度である。2024年の改定では訪問施術料が包括化され、同一建物で複数患者に施術する際の料金も区分された。2026年にも療養費の改定が行われた。政策が在宅医療を推進しても、財政負担を抑えるため給付単価が物価上昇に追いつかない可能性は高い。看護小規模多機能型居宅介護や訪問看護でも、セントケアなどの大手や地域事業者との人材獲得競争が続く。同社の訪問看護10拠点は全国の事業所数から見れば小さく、こちらに市場支配力はない。
資本政策と M&A
経営の資本配分は、過去の大きな失敗と現在の方向転換を分けて評価すべきだ。2020年にはレイス治療院のフランチャイズ網を持つ事業を買収し、加盟店数を大きく増やした。この買収は現在の全国ネットワークの基盤となった。一方、その後は医療対応型療養施設と看護小規模多機能型居宅介護の新設を急ぎ、固定費と借入負担を増やした。
2024年5月の中期経営計画は、2027年3月期に売上高166.78億円、営業利益20.01億円、ホスピス26拠点を目標に掲げた。しかし、施設事業は損失を生み、2025年9月に医療対応型療養施設の全部などを譲渡した。現在の2027年3月期予想は売上高65.86億円、営業利益5.20億円である。事業構成が変わったとはいえ、当初計画との差は極めて大きい。将来の会社目標には相応の割引が必要だ。
2026年6月公表の事業計画では、直営マッサージの2028年3月期目標を売上高46.10億円、営業利益12.40億円、フランチャイズを売上高13.82億円、営業利益3.47億円とした。加盟店は同年度386拠点を計画する。以前より設備負担の軽い方向へ移ったことは合理的だ。ただし、全社でのROE目標は示されず、中長期の配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い額についても数字の約束なしである。
配当は2025年3月期に無配となり、2026年3月期に復配した。現行の配当水準では年間還元額は約0.28億円にすぎない。2026年3月期には新株発行により株数が約9%増えた点も重要である。大株主への持株集中を考えると、資金調達や新たな買収で少数株主の取り分が薄まらないか継続監視したい。今後10年の還元は利益に応じた控えめな配当を中心とし、安定した自社株買いは前提にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フレアスは、今後10年の国内サービス業では珍しい、需要の持続性と全国展開の余地を併せ持つ会社である。高齢者が自宅で療養する時間は長くなり、歩行が難しい人への施術需要も続く。しかも、サービスそのものをAIが直接提供することはできない。保険請求や訪問経路の管理を自動化できれば、むしろ施術者が患者に向き合える時間は増える。
全国442拠点のネットワークには価値がある。2020年のレイス治療院関連事業の取得によって加盟店網を拡張した後も、2026年3月期には加盟店が純増した。研修、採用、保険請求といった加盟店支援を標準化できれば、加盟店が増えても本部の費用は比例して増えない。直営店は加盟店の技術研修や品質管理に使えるため、直営と加盟の組み合わせに一定の相乗効果がある。
最も大きな改善要因は、赤字施設の撤退が終わったことだ。2026年3月期の存続メディカルケア施設は比較ベースで黒字を確保している。今後は設備投資の重いホスピスを拡大する必要がない。会社が示した2028年3月期の直営と加盟店の事業計画も、急成長より既存店の効率改善を重視している。訪問回数と加盟店数が積み上がり、本社費用の増加を抑えられれば、利益は売上以上の速度で増える。
現在の時価総額は小さく、株主が支払う金額に対して将来の利益の選択肢が大きい。再投資をフランチャイズ支援と採用に絞るなら、買収や新施設の失敗を繰り返す必要はない。利益と資本配分が安定するにつれて、医療保険という公的制度に支えられた現場サービスの価値が明確になるだろう。
慎重な見方
フレアスの問題は需要があるかどうかではなく、その需要から利益を取り続けられるかどうかだ。医療保険で支払われる施術料は国が定める。訪問する施術者の給与、採用費、移動費が上がっても、会社は自由に価格を転嫁できない。高齢者が増えれば利用者が増えるという単純な話ではなく、施術者を増やせなければ売上も増えない。
直営事業の高い事業別利益率は、全社の稼ぐ力と同じではない。本社費用が重く、2026年3月期の連結営業利益率は4%弱にとどまった。売上をほとんど生まないその他事業にも費用負担があり、2027年3月期の会社予想では大きな赤字を見込む。直営の利益が少し下がるだけでも、全社の利益は大きく減る。過去の赤字年度が示す通り、規模があっても利益の安定性は保証されない。
経営計画の実行力にも疑いがある。2024年にはホスピスを急拡大し、2027年3月期の営業利益20億円を目指していた。実際には事業の売却に追い込まれ、目標は大きく後退した。現在の純利益には売却益や助成金が含まれる。これを本業の成果として評価すると、同じ誤りを繰り返すことになる。買収や新規投資が再び大型化すれば、少数株主は将来の赤字だけでなく希薄化も負う。
加盟店網も不可侵ではない。療養費の伸びが鈍れば加盟店オーナーの採算が悪化し、新規加盟や契約更新が減る。AIによる請求業務の自動化は加盟店の効率を上げる一方、本部が事務支援で得る付加価値を薄める可能性もある。現金と借入金はほぼ見合っているが、別にリース負債が残る。再び長期赤字になった場合、帳簿上の自己資本を少数株主がそのまま回収できるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
需要の持続性と現在の価格については強気の見方に分がある。一方、経営者の過去の資本配分と、利益に含まれる一時要因については慎重な見方が正しい。したがって、今後も拡大投資がうまくいくことを中立の前提にはしない。
確率は上側26%、中立37%、下側37%とした。下に寄せる理由は、以前の中期計画の大幅未達と施設事業の損失、助成金に依存する直近予想である。ただし、現場の施術需要は残り、フランチャイズの規模も実在する。悲観的な経営評価と低い現在価値は両立するため、加重後の結論は割安となる。評価を引き上げる条件は、追加の大型施設投資を避け、継続利益と株主還元を積み上げることだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,926 円76 億円(+ 還元の換算額還元の合計 128 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 1,442 円38 億円、今との差 +111.7%、 期待の年率 +16.7%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 8,763 円229 億円 | 376 円10 億円 | +1,242.0% | +31.1% | 822 円21 億円 |
| やや楽観 | 17% | 5,442 円142 億円 | 211 円6 億円 | +730.0% | +24.5% | 961 円25 億円 |
| 中立 | 37% | 2,952 円77 億円 | 119 円3 億円 | +350.9% | +16.8% | 1,136 円30 億円 |
| やや悲観 | 27% | 378 円10 億円 | 48 円1 億円 | −37.5% | −4.8% | 115 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 176 円5 億円 | 12 円0 億円 | −72.5% | −12.4% | 19 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,926 円76 億円 | 128 円3 億円 | +348.3% | +16.7% | 3,053 円80 億円 |
今の株価時価総額 681 円18 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 施術と加盟店の好循環が定着 利益 15 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8,763 円229 億円
在宅療養の拡大に合わせて、フレアスの施術者採用と地域営業が進む。直営店の訪問範囲を狭める取り組みが定着し、1人当たりの施術回数も増える。2036年3月期の直営年間利用回数は150万回となり、保険請求の効率化も利益を支える。医師の同意取得と地域のケアマネジャーとの関係が、新規利用者の獲得につながる。
フランチャイズは560拠点へ広がる。2020年に取得したレイス治療院の基盤を生かし、直営店を研修拠点として加盟店の経営を支える。既存店の収益が増え、加盟店離脱も少なく、本部収入は安定して伸びる。看多機と訪問看護は26拠点まで増えるが、以前のホスピスのように設備投資を先行させず、採算を確かめながら広げる。
会社はかつての施設投資の失敗を繰り返さない。本社費用は増えるものの、加盟店の拡大に対して緩やかな伸びにとどまる。事業の利益が株主に残る構造が定着し、資本効率も改善する。療養費の値上がりは物価を少し下回るが、施術回数と店舗網の伸びがそれを上回る筋書きである。
- 訪問マッサージ直営:数量 1,500,000(年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数)× 価格 5,950(1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価)→ 売上 89 億円・営業利益 26 億円。利用回数は現在の約1.66倍。1回平均売上は約1.30倍で、物価1.34倍より低い。訪問効率の改善で事業利益率29%。
- 訪問マッサージ・フランチャイズ:数量 560(年度末加盟施術所数、拠点)× 価格 0.05(1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価)→ 売上 26 億円・営業利益 7 億円。加盟店560拠点。本部収入の増加には既存店生産性と加盟店の契約構成改善を含む。
- メディカルケア・継続事業:数量 26.0(継続する看多機・訪問看護の合計拠点数)× 価格 0.80(1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価)→ 売上 21 億円・営業利益 4 億円。設備負担を抑えた拠点拡大と稼働率改善。1拠点当たり売上は利用者構成も含む。
- メディカルケア・撤退事業の比較調整:数量 0.0(過去の施設減少数に相当する比較用拠点数)× 価格 0.87(比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。譲渡・撤退済みの施設は2036年に残らない。
- その他・訪問介護関連:数量 1.0(継続する訪問介護等の事業拠点、概算)× 価格 0.20(1拠点当たり年間売上、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。関連費用の一部は残るが、その他事業の赤字は縮小。
倍率:資本コストk8.0%、2036年の事業ROEは15.25÷100.25=約15.21%。堀は普通なので超過ROEの半分が残り、RONICは約11.61%。2036年以降の名目成長率gは1%。正当化PER=(1−0.01÷0.1161)÷(0.08−0.01)=約13.05倍。市場の過去倍率による調整はせず、事業の純利益に式の上限を適用する。施設拡大に伴う費用は営業利益と自己資本に反映済み。
確率:施設投資への回帰を避け、施術者の確保、加盟店支援、療養費改定への適応を10年間続ける必要がある。過去の計画未達を踏まえると、実現は十分あり得るが低めの確率とする。
やや楽観 17% 加盟店主導の着実な成長 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5,442 円142 億円
在宅マッサージの需要は、全国の高齢化と在宅療養の普及に沿って緩やかに増える。直営店は数を急増させず、施術者の採用と移動時間の短縮で患者への訪問回数を増やす。年間利用回数は132万回に達する。療養費の改定は物価に届かないものの、施術件数の増加で売上を伸ばす。
加盟店は510拠点まで増える。会社は新規加盟よりも既存店の継続率と本部収益を重視し、研修や請求支援を標準化する。加盟店の売上が増えれば本部のロイヤルティーも増えるが、支援スタッフは必要なため、利益率は急上昇しない。メディカルケア事業では赤字だったホスピスを再開せず、訪問看護と看多機の小規模な増設にとどめる。
本社費用は賃金上昇を受けて増えるが、事業別利益の伸びを下回る。経営陣は買収や大型施設への投資よりも既存網への投資を優先し、営業利益率は現在の全社水準を大きく上回る。直営と加盟店が利益を支えるという、比較的実現しやすい成功の10年である。
- 訪問マッサージ直営:数量 1,320,000(年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数)× 価格 5,650(1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価)→ 売上 75 億円・営業利益 21 億円。利用回数は現在の約1.46倍。平均売上は約1.23倍にとどめる。
- 訪問マッサージ・フランチャイズ:数量 510(年度末加盟施術所数、拠点)× 価格 0.04(1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価)→ 売上 22 億円・営業利益 6 億円。加盟店510拠点。本部収入は加盟店の生産性改善を含めて伸びる。
- メディカルケア・継続事業:数量 23.0(継続する看多機・訪問看護の合計拠点数)× 価格 0.76(1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価)→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。看多機・訪看を採算を確かめながら増設。
- メディカルケア・撤退事業の比較調整:数量 0.0(過去の施設減少数に相当する比較用拠点数)× 価格 0.87(比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み施設の再展開なし。
- その他・訪問介護関連:数量 1.0(継続する訪問介護等の事業拠点、概算)× 価格 0.20(1拠点当たり年間売上、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。関連費用は残るが、2027年3月期の損失予想から改善する。
倍率:2036年事業ROEは約12.51%、k8.0%、普通の堀の残存割合0.5からRONICは約10.25%。長期g1%を用いた正当化PERは約12.89倍。10年先の成長率を高くして倍率を吊り上げず、利益と自己資本で価値を決める。
確率:2026年6月の事業計画で示された加盟店中心の方針が持続する筋書き。会社の事業別目標には実体があるが、過去の大型投資失敗を踏まえて無条件には信じない。
中立 37% 訪問施術の需要は残り、資本配分は正常化 利益 5 億円 · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,952 円77 億円
国内の在宅マッサージ需要は緩やかに伸びるが、療養費の単価改定は物価上昇を下回る。フレアスは独立事業者から加盟店を少しずつ獲得し、直営では訪問地域を狭めて施術回数を増やす。2036年3月期の直営年間利用回数は115万回、加盟店は455拠点となる。市場全体の施術回数の伸びに加え、全国チェーンへのシェア移動が数量増加の根拠となる。
直営の利益率は、2028年3月期の会社計画を上回るものではない。施術者の採用難と賃金上昇が続き、診療報酬に相当する療養費の改定だけでは費用を吸収できないためだ。加盟店も増えるが、支援要員と品質管理の費用が必要になる。存続する看多機・訪問看護は小幅な増設と稼働改善で利益を出し続ける。
本社費用は物価に沿って増え、その他事業の赤字も一部残る。赤字施設の大規模な再投資は行わないが、大幅な組織改革にも成功しない。利益は事業の実態に沿ってゆっくり積み上がり、純利益は現在の一時利益を除いた水準から改善する。高い独占利益ではなく、必要とされるサービスを堅実に提供して得る収益が10年後の価値を支える。
- 訪問マッサージ直営:数量 1,150,000(年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数)× 価格 5,350(1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価)→ 売上 62 億円・営業利益 16 億円。施術回数は約1.27倍。平均売上は約1.165倍で、10年の物価上昇1.34倍を下回る。
- 訪問マッサージ・フランチャイズ:数量 455(年度末加盟施術所数、拠点)× 価格 0.04(1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価)→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。加盟店455拠点。毎年平均約9拠点の純増で、直近の増加速度より慎重。
- メディカルケア・継続事業:数量 18.0(継続する看多機・訪問看護の合計拠点数)× 価格 0.77(1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価)→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。既存施設の稼働率改善と小幅な増設。単価には利用者・サービス構成の影響を含む。
- メディカルケア・撤退事業の比較調整:数量 0.0(過去の施設減少数に相当する比較用拠点数)× 価格 0.87(比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2025年の事業譲渡による売上消失を反映し、将来は計上しない。
- その他・訪問介護関連:数量 1.0(継続する訪問介護等の事業拠点、概算)× 価格 0.20(1拠点当たり年間売上、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。2027年3月期会社予想のその他損失1.90億円から一部改善するが、関連費用は残る。
倍率:2036年の事業ROEは5.05÷55.95=約9.03%。k8.0%に対して超過ROEは小さく、普通の堀の残存割合0.5を使うRONICは約8.51%。2036年以降のgは名目1%で、正当化PER=(1−0.01÷0.0851)÷(0.08−0.01)=約12.61倍。利益の質による割引はkとRONICに織り込み、倍率を手でさらに下げない。余剰現金を別立てしていないため、事業純利益と全社純利益は同額として計算する。
確率:下に寄せる理由:2024年の中期計画が大きく未達となり、2027年3月期予想には1.27億円の助成金も含まれる。中立では過去の成長率を使わず、加盟店純増と施術者生産性の改善を現実的な水準にとどめる。
やや悲観 27% 公定価格と採用難が利益を圧迫 利益 1 億円 · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 378 円10 億円
訪問マッサージの需要自体は残るが、フレアスの施術者採用が難しくなる。既存の施術者の退職を補えず、利用者の紹介を受けても訪問枠が足りない。直営年間利用回数は92万回と、現在からほとんど増えない。療養費の改定は賃金上昇に追いつかず、平均売上の増加も小さい。
フランチャイズでは加盟店オーナーの採算が悪化する。新規加盟より閉店・契約終了が増え、加盟店数は345拠点に減る。本部は研修や営業支援に費用をかけるが、1拠点当たり収入の伸びは限られる。競合のKEiROWや独立事業者との競争により、全国チェーンとしての規模の優位は薄まる。
メディカルケアの残存施設も人材確保に苦しみ、一部拠点を閉鎖する。経営陣は赤字施設への新投資を避け、本社部門の縮小で固定費を削減するが、利益の落ち込みを完全には止められない。事業は存続するものの、得られる利益は小さく、資本コストを上回る再投資先も乏しくなる。配当は縮小し、株主に残る価値は現行より大幅に低くなる。
- 訪問マッサージ直営:数量 920,000(年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数)× 価格 5,050(1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価)→ 売上 46 億円・営業利益 10 億円。施術者不足で数量はほぼ横ばい。実質料金は下がり、利益率は21.5%。
- 訪問マッサージ・フランチャイズ:数量 345(年度末加盟施術所数、拠点)× 価格 0.03(1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価)→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。加盟店の純減と加盟店単位の成長鈍化。
- メディカルケア・継続事業:数量 15.0(継続する看多機・訪問看護の合計拠点数)× 価格 0.70(1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価)→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。人員不足で一部事業所を閉鎖し、利益率も低下。
- メディカルケア・撤退事業の比較調整:数量 0.0(過去の施設減少数に相当する比較用拠点数)× 価格 0.87(比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。撤退済み施設の再開なし。
- その他・訪問介護関連:数量 1.0(継続する訪問介護等の事業拠点、概算)× 価格 0.18(1拠点当たり年間売上、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。少額売上に対して関連人員費用が残る。
倍率:2036年のROEは約1.56%でk8.0%を大幅に下回る。資本を再投資しても価値が増えないためPER上限は1÷k=12.5倍。やや悲観では需要と加盟店の低迷が長引く稼ぐ力を反映し、11倍とする。今の株価、過去のPBRの底、同業の市場倍率を根拠にしない。利益による価値6.05億円は、売れる資産の税後価値の推定4.5億円を上回る。
確率:過去に売上拡大と利益悪化が同時に起きた実績がある。下に寄せる理由:本社費用が重く、公定価格の改定が人件費上昇に追いつかないと、施術回数が維持されても利益が急減するため。
悲観 10% 加盟店縮小と固定費負担で再び構造的赤字 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 176 円5 億円
国の療養費抑制が続き、施術料は物価にも人件費にも追いつかない。訪問マッサージの患者は存在するが、フレアスは必要な国家資格者を確保できず、直営年間利用回数は75万回まで減る。地域のケアマネジャーからの紹介も競合に流れ、直営店の稼働率は落ちる。移動費と拠点運営費を削っても採算は戻らない。
加盟店でも閉店や契約終了が続き、拠点数は260まで減少する。ロイヤルティー収入が細る一方、本部には請求システム、営業、品質管理の固定費が残る。メディカルケアは看多機と訪問看護の双方で人員を確保できず、残存拠点の一部が赤字化する。過去のような不採算施設への投資も再び起き、損失が長引く。
経営は拠点閉鎖や組織縮小に取り組むが、賃貸借契約、借入返済、退職関連費用が重荷になる。2036年には営業赤字が構造化し、営業上の堀はほとんど残らない。株主価値は将来利益ではなく、保険請求債権などの換価可能資産から負債と撤退費用を控除した額が中心となる。再建のための増資が必要なら既存株主の取り分はさらに薄まる可能性がある。
- 訪問マッサージ直営:数量 750,000(年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数)× 価格 4,750(1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価)→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。施術回数は現在より約17%減少。料金抑制と稼働悪化で利益率15.5%。
- 訪問マッサージ・フランチャイズ:数量 260(年度末加盟施術所数、拠点)× 価格 0.03(1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価)→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。加盟店260拠点まで縮小。ロイヤルティーの減少が本部利益を圧迫。
- メディカルケア・継続事業:数量 12.0(継続する看多機・訪問看護の合計拠点数)× 価格 0.64(1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価)→ 売上 8 億円・営業利益 −1 億円。施設閉鎖と人材不足で残存事業も赤字化。
- メディカルケア・撤退事業の比較調整:数量 0.0(過去の施設減少数に相当する比較用拠点数)× 価格 0.87(比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない)→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。2025年の撤退事業は復活しない。
- その他・訪問介護関連:数量 1.0(継続する訪問介護等の事業拠点、概算)× 価格 0.15(1拠点当たり年間売上、億円)→ 売上 0 億円・営業利益 −1 億円。関連費用の負担が残り、継続的な赤字。
倍率:営業赤字が継続するため将来利益にPERを適用しない。PBRは過去の市場底値ではなく、現時点の自己資本約21.8億円に対する残存換価価値4.5億円前後から算出する。21.8億円×0.21=約4.58億円。2036年に残る自己資本5.0億円へ機械的に倍率を掛けたものではない。帳簿ののれん、施設資産、保険請求債権の回収減と撤退費を控除した床を重視する。
確率:過去の施設投資の損失と赤字決算から、事業運営が再び大きく崩れる可能性を無視できない。一方、医療保険による施術需要自体は消えないため、最悪側に確率を集中させすぎない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
訪問マッサージ直営
国家資格を持つ施術者が患者宅や介護施設を訪問する保険適用マッサージ・鍼灸。主治医の同意と療養費請求が必要となる。
| 数量年間施術利用回数、鍼灸を含む延べ回数 | 価格1利用回数当たりの平均連結売上高、円。保険・自費・鍼灸の混合単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 902,396 | 4,592 | 41 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1,150,000 | 5,350 | 62 | 16 |
取り方:2026年3月期有価証券報告書の直営年間利用回数902,396回を用いる。会社決算説明資料の745,578回は鍼灸を除いたマッサージ回数であるため混同しない。売上41.44億円÷902,396回=約4,592円。これはマッサージの法定1回単価ではなく、鍼灸や保険外収入を含む実績平均売上である。2026年3月期末の直営拠点81、施術者1人当たり1日10.4回を生産性の検証指標とする。療養費の価格は厚生労働省が決定する。
訪問マッサージ・フランチャイズ
加盟時の支援、ロイヤルティー、採用・研修・請求管理支援を提供する。加盟店自身の施術売上は連結売上に含まない。
| 数量年度末加盟施術所数、拠点 | 価格1加盟拠点当たり年間本部売上、億円。加盟料なども平均した実績単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 361 | 0.03 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 455 | 0.04 | 17 | 4 |
取り方:2026年3月末のFC拠点361とFC売上11.33億円から、1拠点当たり年間約313.9万円の本部収入とする。加盟料と既存店ロイヤルティーの内訳、および加盟店の施術回数は公開資料だけでは確定できない。したがって拠点数を実数量とし、1拠点当たり本部収入には加盟店の生産性と契約構成の影響が残ると明示する。2025年3月末344から17拠点純増した実績を数量見通しの根拠とする。
メディカルケア・継続事業
2025年の事業譲渡後も残る看護小規模多機能型居宅介護6施設と訪問看護10拠点。介護保険・医療保険から収入を得る。
| 数量継続する看多機・訪問看護の合計拠点数 | 価格1拠点当たり年間売上、億円。利用者数・稼働率・サービス構成を含む便宜的な単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 0.54 | 9 | 2 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 0.77 | 14 | 2 |
取り方:2026年3月期決算説明資料は『現在残っている施設のみ』の比較値として、メディカルケア売上8.66億円、営業利益1.73億円を開示する。現在の看多機6施設と訪問看護10拠点の計16拠点で割った平均が約0.541億円。これは異なる2種類の拠点をまとめた概算で、個別の診療報酬単価ではない。2027年3月期の存続事業売上予想9.65億円を正常化の手掛かりとする。
メディカルケア・撤退事業の比較調整
2025年9月に譲渡した医療対応型療養施設や縮小した看多機に相当する2026年3月期の売上・損益。将来は存在しない事業。
| 数量過去の施設減少数に相当する比較用拠点数 | 価格比較用1拠点当たり当年度売上、億円。将来の継続単価としては用いない | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 0.87 | 15 | −4 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.87 | 0 | 0 |
取り方:2026年3月期の報告メディカルケア売上23.44億円・営業損失1.84億円から、存続拠点のみの売上8.66億円・営業利益1.73億円を差し引いた会計上の橋渡しである。売上差14.78億円、損益差−3.57億円。数量17は施設系の前期からの減少数である療養施設11と看多機6を用いた便宜的な物差しで、17施設すべてが売却されたという意味ではない。2025年9月の譲渡後、翌期以降はこの区分の売上をゼロとする。
その他・訪問介護関連
訪問介護や関連事業など。売上は小さいが、費用の計上先として全社利益に影響する。
| 数量継続する訪問介護等の事業拠点、概算 | 価格1拠点当たり年間売上、億円 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.15 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.20 | 0 | −1 |
取り方:会社開示のその他売上0.15億円、営業損失0.20億円を用いる。2026年3月末の訪問介護1拠点を実数量の代理としたが、関連費用がすべて当該1拠点に対応するわけではない。2027年3月期はその他営業損失1.90億円の予想であり、この費用が継続するかは重要な不確実性である。
リスクと懸念
療養費改定と人件費の不一致
訪問施術料は厚生労働省が定めるため、会社は価格を自由に引き上げられない。2024年には同一日・同一建物の患者数に応じた訪問施術料が導入され、報酬体系が変わった。今後も財政抑制が進み、報酬単価の伸びが施術者の賃金や移動費を下回れば、利用回数が増えても利益は減る。
施術者の不足と訪問効率の低下
在宅マッサージには国家資格者が必要で、全国に拠点を構えても施術者を確保できなければ患者への訪問は増えない。利用者が分散すると移動時間が増え、1日に提供できる施術回数が減る。現在の施術者1人当たり1日10.4回という生産性が維持できるかが、長期利益を左右する。
不採算施設への再投資と資本配分
2024年の中期計画で掲げたホスピスの急拡大は実現せず、2025年には施設事業を大幅に売却した。赤字事業の撤退は評価できるが、投資した資本の多くは株主に十分な利益を生まなかった。今後も医療・介護関連の大型買収や新施設投資を優先するようなら、フランチャイズの利益が失われる可能性がある。
本社費用とその他事業の赤字
2026年3月期の直営・加盟店の事業別営業利益は大きいが、本社費用約9.4億円が利益を圧縮した。2027年3月期はその他事業にも1.9億円の営業損失を見込む。将来の本部費用が施術・加盟店の成長より速く増えれば、連結利益の拡大は実現しない。
助成金・譲渡益と真の収益力
2026年3月期には事業譲渡益約2.82億円、新株予約権戻入益約0.26億円、営業外の助成金収入約1.50億円があった。さらに、2027年3月期の会社予想には助成金1.27億円が織り込まれている。こうした一時利益を継続利益と誤認すると、10年後の利益と株主価値を過大評価する。
AIエージェント代替と加盟店支援の価値
施術や看護は人が現場で行う身体サービスであり、人月売りのSI、席課金SaaS、事務BPOの代替モデルには当たらない。したがって施術数量をAI代替によって一律に縮小させない。一方、保険請求、日程調整、加盟店の事務支援はAIエージェントによる自動化が進む。本部の事務支援が差別化要因でなくなるリスクと、本部自身の費用削減効果を併せて見る。
リース負債、株式希薄化、少数株主の立場
添付データでは純有利子負債がマイナス約0.9億円だが、2026年3月期末には別にリース債務約6.1億円がある。撤退時にも固定的な支払いが残り得る。2026年3月期には新株発行によって株数が約9%増加した。再び資金調達が必要になった場合、企業全体の価値が残っても既存株主の取り分が薄まる可能性がある。
今後の分かれ目
- 直営の年間施術利用回数が100万回を超え、その後も施術者1人当たりの生産性を維持できたら
- 中立の直営数量見通しを引き上げられる。営業利益が本社費用に吸収されず増えているかも併せて確認し、やや楽観側の確率を高める。
- 加盟店数が2028年3月期の計画386拠点を超え、既存店の本部収入も増加したら
- 加盟店網の競争上の優位と増分投資利回りを再評価する。加盟店数だけが増えて本部利益率が落ちている場合は、価値の上方修正をしない。
- 国の療養費改定が賃金上昇率を継続的に下回ったら
- 直営の平均売上と営業利益率を下方修正する。費用の削減では吸収できない差が広がるなら、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 営業利益が増えても助成金を除いた経常利益と営業キャッシュフローが増えなかったら
- 本業の利益回復を認めず、中立の純利益見通しを下方修正する。利益が補助金や会計上の利益に依存している限り、長期の価値は高く評価しない。
- 新しいホスピス事業、大型施設買収、借入や増資を伴う急拡大計画が公表されたら
- 過去の施設投資の失敗が繰り返される危険として、投資額と想定利回りを精査する。具体的な高収益実績がなければ、悲観側へ確率を移す。
- 本社費用とその他事業の赤字が縮小し、連結営業利益率が二桁で定着したら
- 過去の問題が解消した証拠として、中立の営業利益と再投資利回りを上方修正できる。ただし一時的な助成金収入や費用の計上区分変更では評価を上げない。
- 復配後の配当が増え、利益の相応の割合を継続して株主へ戻す方針が示されたら
- 利益を再び不採算施設に投じる懸念が小さくなる。余剰現金の株主への戻り方を0.75から1.0へ見直し、資本配分の質を高く評価する。
見ておくもの
- 直営の年間利用回数。鍼灸を含む有報の数字と、鍼灸を除く決算説明資料の数字を混同しないこと
- 施術者1人当たり1日の施術回数と直営拠点当たりの患者数
- 加盟店の期末拠点数、新規加盟数、契約終了数と1拠点当たり本部収入
- 療養費改定の実施内容、同一建物施術の料金区分、施術者給与の上昇率
- 存続する看多機6施設と訪問看護10拠点の利益および稼働率
- 本社費用の年額とその他事業の営業損失
- 助成金・事業譲渡益を除いた経常利益、営業キャッシュフロー、運転資金
- 有利子負債とリース債務、追加の新株発行と株主への還元状況
- 2028年3月期の直営46.10億円・加盟店13.82億円の事業別売上目標の進捗
倍率と資本コストの決め方
売上は直営の延べ利用回数、加盟店数、存続する介護・看護拠点数から組み立てた。2026年3月期の施設譲渡前の売上と一時利益を将来に延長しない。価格には物価3%を機械的に転嫁せず、国が決める療養費の制約を反映した。中立の正当化PERは、資本コスト8%、将来ROE約9%、10年後以降の名目成長率1%、普通の堀の残存割合から求めた約12.61倍である。過去や現在の市場倍率は使用していない。悲観では今の自己資本から換価損を控除した資産価値を床とし、過去のPBRの底を使っていない。2028年3月期以降の新リース会計基準による表示変更があっても、賃料の経済的負担を二重に控除しない。5筋書きの時価総額と期間中還元を資本コストで割り引いた手計算の価値は約32億円で、添付の時価総額約17.71億円を約81%上回る。これは自動計算される将来の余剰現金の補正前の概算であり、結論は割安である。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に4つの事業品質要素の合計+0.5%を加えた8.0%。規模や株価のβによる加算は行わない。過去に赤字はあったが、施設売却後は黒字を回復しているため、継続的な経営危機に対する追加上乗せはしない。施設再投資や経営計画未達の個別リスクは筋書きと確率で扱う。