結論
ヒビノは、コンサートや展示会の音響・映像のレンタルと、放送局・ホール向けの機器の販売・施工を営む会社だ。国内のフルカラー LED ディスプレイでは、シェア 1 位とされる。筆者の結論は、10 年後の価値は今の値段を 2 割弱下回る、というものだ。
足元は好調だ。2026 年 3 月期の売上は 676 億円、営業利益は 51 億円で、ともに過去最高だ。大阪・関西万博とジャパンモビリティショーなどの大型案件が、コンサート・イベント事業の利益を 7 割増やした。
だが、その追い風は一時のものだ。2027 年 3 月期の営業利益の会社予想は 46 億円で、減る。第 1 四半期も、前年を 2 割下回った。
財務は軽くない。純有利子負債は 109 億円で、自己資本比率は 31.6%。買収を重ねて規模を広げ、借入への依存が高い。貸出の約束には、純資産を前年の 8 割以上に保つ条件がつく。
中立の営業利益は 74 億円、利益率は 7% だ。ROE は 11% 弱で、資本コスト 8% をわずかに上回る。良い会社だが、値段はその良さを織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ヒビノのオーナー利益は、見た目の純利益 31 億円より小さい。機材を自社で持つので、償却費 33 億円を上回る投資を続けなければ、稼ぐ力は落ちる。営業活動の稼ぎ 86 億円のうち、機材と買収に使う分が大きい。
ただ、事業の骨格は良い。大型の機材と運用の経験は、新規の参入者がすぐにまねできない。ライブ市場は、需要が伸びる側にある。営業利益率が 7.5% まで上がったのは、規模が稼ぐ力を生んだ証拠でもある。
問題は、波と借入だ。利益率は 10 年で 13% から -13% まで振れた。そこに純有利子負債 109 億円と財務制限条項が重なる。景気後退でイベントが止まれば、2021 年のように営業損失が出て、借入が重くのしかかる。
中立の筋書きでも、ROE は 11% 弱で、資本コストの 9% をわずかに上回るだけだ。成長は、新しく投じる資本が資本コストを少し上回るだけの価値しか生まない。今の値段は、直近の好調を織り込み、安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つある。コンサート・イベントサービス、販売施工、建築音響施工だ。
コンサート・イベントは、売上の 3 割強を占め、利益の大半を稼ぐ。ドームやアリーナのコンサート、展示会、企業イベント、博覧会に、音響機材と大型 LED を貸し、運用する。2026 年 3 月期の売上は 213 億円、営業利益は 42 億円で、利益率は 20%。従業員は 650 人だ。
販売施工は、売上の約半分を占める。放送局、ホール、スタジアム、街頭ビジョン向けに、音響・映像・照明の機器を売り、設計して据えつける。LED ディスプレイの開発・販売も、この事業に入る。売上は 327 億円だが、営業利益は 11 億円で、利益率は 3.4%。前期の高採算の大型案件の反動で、利益は半分になった。
建築音響施工は、ホールやスタジオの音響設計と、吸音・遮音の工事だ。売上 116 億円、営業利益 10 億円。
海外の売上は 18% で、前期より 5.5 ポイント上がった。2025 年にシンガポールの Spectrum Audio Visual(75%)を買い、2026 年にもサンオー、アセント、フォトロンの映像事業などを取り込んだ。従業員は連結で 1,829 人である。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、機材の量と運用の経験、そして LED の販売網だ。ドーム公演で使う大型 LED とスピーカーは、1 公演で何億円もする。それを揃え、公演のたびに設営して運用できる会社は少ない。国内のフルカラー LED ディスプレイのシェア 1 位とされ、販売で得た知識がレンタルの機材選びに生きる。
弱みは、利益の波と借入だ。営業利益率は、2016 年 3 月期の 13.3% から、2021 年 3 月期の -13.3% まで動いた。コロナ禍では、イベントが止まり、営業損失 41 億円を出した。2026 年 3 月期の 7.5% は、過去 10 年で最高だが、万博と大型展示会が押し上げた。
機材は自社で持つので、設備投資が重い。償却費は年 33 億円、設備投資は 27 億円。営業利益 51 億円に対し、その大半を機材が使う。
海外ブランドの輸入販売店の契約に頼る部分もあり、契約が切れれば売上が失われる。
経営は買収に積極的で、2025 年から 2026 年にかけて 5 社を取り込んだ。規模は広がるが、のれん(残高 23 億円)の償却と統合の費用が、販管費を押し上げている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ヒビノの主戦場は、日本のライブ市場と、LED ディスプレイの市場である。
ライブ・エンタテインメント市場は、2025 年に 8,564 億円と、3 年連続で過去最高になった。前の年より 12.6% 増え、公演回数はコロナ前の約 10 万回に戻り、1 回当たりの単価も 4.5% 上がった。ぴあ総研は、2035 年に 1.1 兆円に届くと見ている。10 年で年 2〜3% の伸びである。人気の高い公演がドームやアリーナに集まる流れは、大型 LED とスピーカーの需要を押し上げる。
舞台技術者の不足と、会場の老朽化が課題だ。人手が足りなければ、機材を貸して運用するまで引き受ける会社の価値は上がる。一方で、人件費の上昇は費用を押し上げる。
音響・映像の費用が公演の売上の 1 割前後なら、国内のライブ向けの市場は 850 億円ほどと推定できる。ヒビノのコンサート・イベントの売上 213 億円には、企業イベントや博覧会も含まれる。ライブ分に限れば、シェアは 2 割前後と見る(推定)。
LED ディスプレイの市場は、国内のデジタルサイネージの拡大を背景に、2024 年から 2030 年にかけて約 2 倍になると予測される。ただ、安価な海外製品が増えており、販売価格は下がりやすい。
10 年後を考える。中立では、ライブ市場の伸びに沿って数量は少し増え、価格は物価並みに上がる。分かれ目は、万博のような単発の需要がなくても、ドーム公演の稼働で稼げるかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は、安定配当が基本だ。2026 年 3 月期の配当は総額 8 億円ほどで、配当性向は 28%。増配が続いている。総還元性向や自社株買いの方針は示されておらず、純利益のうち 7 割は社内に残る。
借入は重い。純有利子負債は 109 億円、借入金は短期 30 億円・長期 76 億円。2026 年 3 月期は営業活動で 86 億円を稼ぎ、短期借入を 48 億円減らした。貸出の約束には財務制限条項があり、純資産を前年度末の 8 割以上に保つ条件がつく。
設備投資は年 27 億円。2027 年 3 月期にも、コンサート用の高精細 LED に 7.5 億円、スピーカーに 5.5 億円、基幹システムに 8.2 億円を投じる予定だ。
買収は積極的だ。2025 年 4 月にシンガポールの Spectrum Audio Visual を、2026 年 3 月にサンオー、4 月にアセント、5 月にソノーラテクノロジーとインクロジュア、7 月にフォトロンの映像事業を引き継ぐ会社(概算 6 億円)を子会社にした。一方で Cerevo は売却した。2026 年 10 月には、グループ内の 2 社を合併する。
筆頭株主は有限会社ハイビーノで、35.5%。個人株主が続く。政策保有株は、上場 4 銘柄で計 1 億円と小さい。株主優待は確認できなかった。kabufu の試算では、10 年以内に買収される確率は 24% である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の利益は、一時の追い風ではない。ライブ市場は 3 年連続で過去最高を更新し、2035 年に 1.1 兆円へ伸びる。ドームとアリーナへの集中が進み、大型 LED の需要は構造的に増える。ヒビノは国内のフルカラー LED でシェア 1 位で、販売で得た知識を機材選びに生かせる。
前の中期計画(ビジョン 2025)は、営業利益の目標 45 億円を、50.7 億円と上回って終わった。新しい計画(Beyond 1000)は、2029 年 3 月期に売上 1,000 億円、経常利益 70 億円、海外売上比率 30% を掲げる。買収した海外子会社が育てば、達成できる。
財務も改善している。2026 年 3 月期は営業活動で 86 億円を稼ぎ、短期借入を 48 億円減らした。自己資本比率は目標の 30% を超えて 31.6% になり、計画では 35%、さらに 40% を目指す。
この流れが 10 年続けば、売上は 1,200 億円、営業利益率は 9% に乗る。ROE は 15% 近くになり、配当性向も上がる。
慎重な見方
今の好調は、万博とジャパンモビリティショーの一時の恩恵で作られた。コンサート・イベントの利益率は 20% だが、前の年は 14%。2027 年 3 月期の会社予想は、営業利益 46 億円で減る。第 1 四半期は前年比で 2 割下回った。
そもそも、利益の波が大きい。営業利益率は、10 年で 13% から -13% まで振れた。コロナ禍では、営業損失 41 億円を出した。
しかも、財務は重い。純有利子負債は 109 億円で、自己資本比率は 31.6%。貸出の約束に、純資産を前年度の 8 割以上に保つ条件がある。買収を重ねてきたので、のれんの減損が出れば、この条件に触れる。
機材は自社で持つので、設備投資が重い。償却費は年 33 億円で、営業利益の 3 分の 2 にあたる。ライブの単価が下がれば、固定費が利益を食う。
国内の販売施工は利益率 3% と薄い。LED は、安価な海外製品との競争が強まっている。ROE 21.8% は、借入で膨らませた見かけの数字である。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。ライブ市場の伸びと、機材を揃えた堀は本物だ。だが、直近の利益は万博で押し上がり、財務は軽くない。
筆者は、中立を利益率 7% への低下に置き、確率は慎重側へやや寄せた。強気に 3 割弱、慎重に 3 割半だ。強気が実現すれば、価値は今の値段を大きく上回るが、中立では今の値段とほぼ同じにとどまる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,309 円657 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 505 円100 億円)。 今の値に割り戻すと 1,877 円373 億円、今との差 +31.0%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,497 円1,290 億円 | 952 円189 億円 | +419.8% | +17.9% | 596 円118 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,089 円1,010 億円 | 705 円140 億円 | +304.4% | +15.0% | 1,159 円230 億円 |
| 中立 | 37% | 4,012 円797 億円 | 544 円108 億円 | +218.0% | +12.3% | 1,686 円335 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,098 円218 億円 | 287 円57 億円 | −3.4% | −0.3% | 346 円69 億円 |
| 悲観 | 10% | 126 円25 億円 | 151 円30 億円 | −80.7% | −15.2% | 28 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,309 円657 億円 | 505 円100 億円 | +166.2% | +10.3% | 3,815 円757 億円 |
今の株価時価総額 1,433 円284 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:中期計画の 1,000 億円を超え、利益率が 9% に乗る 利益 66 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 6,497 円1,290 億円
ライブ市場は 2035 年に 1.1 兆円へ伸び、ドーム・アリーナの公演が続く。大型 LED とスピーカーのレンタルで、ヒビノは公演の主役を取り続ける。海外は、シンガポールとオーストラリアの買収先が育ち、売上の 3 割を占める。
販売施工は、LED ディスプレイの市場が 2030 年に 2 倍になる波を取り込み、利益率が 6.5% に乗る。建築音響は、スタジアムとホールの更新需要で 11% になる。コンサート・イベントは、機材の稼働が高く、19% を保つ。
全社の売上は 1,200 億円、営業利益は 114 億円、利益率は 9.3% だ。2016 年 3 月期の 13.3% には届かない。純利益は 66 億円、ROE は 15% 弱である。配当性向は 4 割近くに上がり、還元は 10 年で 190 億円になる。万博のような単発の大型案件がなくても、稼働の高さで利益を保つ。買収した海外子会社の統合も、計画どおり進む。
- 販売施工:数量 1,050(従業員数(人、販売施工))× 価格 56(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 589 億円・営業利益 38 億円
- 建築音響施工:数量 290(従業員数(人、建築音響施工))× 価格 64(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 187 億円・営業利益 21 億円
- コンサート・イベントサービス:数量 820(従業員数(人、コンサート・イベント))× 価格 48(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 390 億円・営業利益 74 億円
- その他事業:数量 45.0(従業員数(人、その他事業))× 価格 118(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.32 倍、時価総額 1,213 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画(2029 年 3 月期に売上 1,000 億円・経常利益 70 億円)が達成され、その後も伸びる姿。前の計画は営業利益こそ達成したが、売上は 9 割にとどまったので、1 割に届かない 8% を置いた。
やや楽観 20% やや強気:計画に近い成長で、利益率は 8% 前後 利益 53 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 5,089 円1,010 億円
コンサート・イベントは、ライブ市場の伸びと同じ速さで売上を増やし、利益率は 17% だ。大阪・関西万博のような単発の大型案件は減るが、スタジアムや企業イベントで埋める。
販売施工は、LED ディスプレイと海外ブランドの販売が伸び、利益率は 5.5% に上がる。建築音響は 10% だ。
全社の売上は 1,140 億円、営業利益は 92 億円、利益率は 8.0% である。2027 年 3 月期の会社予想(6.1%)より高く、今の 7.5% を少し上回る。純利益は 53 億円、ROE は 12% 台だ。買収した子会社の統合費用は、2〜3 年で出きる。その後は、機材の稼働率が利益率を押し上げる。
- 販売施工:数量 1,000(従業員数(人、販売施工))× 価格 55(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 553 億円・営業利益 30 億円
- 建築音響施工:数量 280(従業員数(人、建築音響施工))× 価格 63(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 176 億円・営業利益 18 億円
- コンサート・イベントサービス:数量 780(従業員数(人、コンサート・イベント))× 価格 47(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 364 億円・営業利益 62 億円
- その他事業:数量 40.0(従業員数(人、その他事業))× 価格 116(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.58 倍、時価総額 932 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画におおむね沿って伸びる姿。買収を重ねて規模を広げてきた実績を見て、2 割を置いた。
中立 37% 中立:売上は 1,000 億円を超えるが、利益率は 7% に落ち着く 利益 43 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,012 円797 億円
コンサート・イベントは、ライブ市場の伸び(名目で年 2〜3%)に、LED の高精細化による単価の上昇が乗る。利益率は 15% で、万博で押し上がった 20% からは下がる。
販売施工は、LED とカメラ、放送機器の販売が堅調だが、価格競争が続き、利益率は 5% にとどまる。建築音響は 9% だ。全社の費用は、人件費の上昇で物価並みに増える。
全社の売上は 1,060 億円、営業利益は 74 億円、利益率は 7.0% だ。今の 7.5% より低い。純利益は 43 億円で、借入の金利が上がる分を引いた。ROE は 11% 弱で、資本コストをわずかに上回る。還元は配当性向 3 割で、10 年で 110 億円になる。最初の 2 年は、会社の予想に沿って利益が下がる。その後は、売上の伸びに合わせて利益が戻る。
- 販売施工:数量 950(従業員数(人、販売施工))× 価格 54(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 518 億円・営業利益 26 億円
- 建築音響施工:数量 270(従業員数(人、建築音響施工))× 価格 62(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 166 億円・営業利益 15 億円
- コンサート・イベントサービス:数量 740(従業員数(人、コンサート・イベント))× 価格 46(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 340 億円・営業利益 51 億円
- その他事業:数量 35.0(従業員数(人、その他事業))× 価格 113(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 42 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.91 倍、時価総額 719 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万博のような単発の案件が薄れ、会社予想の 6〜7% 台の利益率に落ち着く姿。最も重い筋書きとして 4 割弱を置いた。
やや悲観 25% やや弱気:過去の平均並みの利益率 4% に戻る 利益 21 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 1,098 円218 億円
ライブ公演の回数が頭打ちになり、機材のレンタル料の競争が強まる。安い海外製 LED が入り、レンタルの単価が上がらない。コンサート・イベントの利益率は 11% に下がる。
販売施工は、大型案件の端境期が長引き、利益率は 3%。M&A で増えた子会社の統合に費用がかかり、のれんの償却も重い。
全社の売上は 910 億円、営業利益は 38 億円、利益率は 4.1% だ。2018〜2023 年の 3% 台〜4% 台に戻る。純利益は 21 億円、ROE は 6〜7% で資本コストに届かない。配当は守られるが、還元は 10 年で 57 億円にとどまる。買収した子会社の統合が遅れ、のれんの償却が重く残る。会社の予想は、期の途中で下に修正される。
- 販売施工:数量 880(従業員数(人、販売施工))× 価格 51(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 447 億円・営業利益 13 億円
- 建築音響施工:数量 250(従業員数(人、建築音響施工))× 価格 57(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 144 億円・営業利益 10 億円
- コンサート・イベントサービス:数量 680(従業員数(人、コンサート・イベント))× 価格 43(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 290 億円・営業利益 32 億円
- その他事業:数量 30.0(従業員数(人、その他事業))× 価格 106(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円
倍率:純利益 20.6 億円・10 年後の自己資本 310 億円・ROE 6.6%。ROE 6.6% が資本コスト k 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.1 倍。利益率が戻り、ROE も資本コストを下回るので、成長しても価値は増えにくい。上限の 7 割に置いた。純利益 20.6 億円 × 7.8 倍で時価総額 160.7 億円。
確率:過去 10 年の営業利益率の中央値は 4% ほどで、万博の恩恵を除けば、そこへ戻る姿。直近の 7% 台が続く保証はないので、4 分の 1 を置いた。
悲観 10% 弱気:イベント需要が崩れ、借入の重さが表に出る 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 126 円25 億円
疫病や景気後退、あるいは公演の需要の構造的な減少で、イベントの数が大きく減る。機材のレンタル料は値崩れし、LED の安い海外メーカーが直接受注を取る。ヒビノが輸入販売店をつとめる海外ブランドとの契約が切れる恐れも重なる。
コンサート・イベントの利益率は 5% に下がる。販売施工は利益が出ない。M&A で取得した子会社ののれんを減損する。
全社の売上は 720 億円に縮み、営業損失は 2 億円。借入の返済と貸出の約束の維持(純資産を前年度の 8 割以上)のため、配当を削り、還元は 30 億円になる。借入の返済を優先し、機材の更新を抑える。そのせいで、公演の主役の座を競合に譲る。
- 販売施工:数量 800(従業員数(人、販売施工))× 価格 45(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 358 億円・営業利益 0 億円
- 建築音響施工:数量 230(従業員数(人、建築音響施工))× 価格 51(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 116 億円・営業利益 5 億円
- コンサート・イベントサービス:数量 600(従業員数(人、コンサート・イベント))× 価格 38(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 227 億円・営業利益 11 億円
- その他事業:数量 25.0(従業員数(人、その他事業))× 価格 93(1 人当たり売上(百万円))→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円
倍率:稼ぐ力が小さく、床は事業を続けた時の償却前の稼ぎで測る。償却前の営業利益は 31 億円ほどで、その 4.5 倍から純有利子負債を引くと、残りは 30 億円前後となる。今の自己資本 140 億円に対する PBR 0.18 倍(時価総額 25.0 億円)に置いた。借入が重く、株主に残る部分は小さい。
確率:景気後退とイベントの停止が重なる姿。2021 年 3 月期に営業損失 41 億円を出した前例を見て、1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
販売施工
業務用の音響・映像・照明機器の販売と、システムの設計・施工。LED ディスプレイ(国内のフルカラー LED でシェア 1 位)、放送局・ホール・スタジアム・街頭ビジョン向け。海外ブランドの輸入販売も担う。
| 数量従業員数(人、販売施工) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 804 | 41 | 327 | 11 |
| 10 年後 中立 | 950 | 54 | 518 | 26 |
取り方:販売施工の売上 326.9 億円(有価証券報告書)を、従業員 804 人で割って 1 人当たり 40.7 百万円とした。人数は実質、1 人当たり売上は物価を含む名目。営業利益は 11.0 億円(利益率 3.4%)。前期の高採算の大型案件の反動で、利益は 48% 減った。
建築音響施工
ホール・スタジオ・商業施設などの音響設計と施工。吸音・遮音の工事を含む。
| 数量従業員数(人、建築音響施工) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 253 | 46 | 116 | 10 |
| 10 年後 中立 | 270 | 62 | 166 | 15 |
取り方:建築音響施工の売上 116.3 億円を、従業員 253 人で割って 1 人当たり 46.0 百万円とした。人数は実質、単価は名目。営業利益は 10.3 億円(利益率 8.8%)で、前期とほぼ同じ。
コンサート・イベントサービス
コンサート・展示会・企業イベント・博覧会向けの音響・大型映像(LED)のレンタルと運用。ドーム・アリーナ公演が中心。
| 数量従業員数(人、コンサート・イベント) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 33 | 213 | 42 |
| 10 年後 中立 | 740 | 46 | 340 | 51 |
取り方:コンサート・イベントの売上 213.4 億円を、従業員 650 人で割って 1 人当たり 32.8 百万円とした。人数は実質、単価は名目。営業利益は 42.3 億円(利益率 19.8%)で、前期から 71% 増えた。大阪・関西万博とジャパンモビリティショーの大型案件が押し上げた一時の部分を含む。
その他事業
映像制作・機器開発などの小さな事業。
| 数量従業員数(人、その他事業) | 価格1 人当たり売上(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.0 | 84 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 113 | 40 | 1 |
取り方:その他事業の売上 19.4 億円を、従業員 23 人で割って 1 人当たり 84.4 百万円とした。人数は実質、単価は名目。営業利益は 0.6 億円(前期は損失 0.2 億円)。
リスクと懸念
万博後の反動
2026 年 3 月期の利益は、大阪・関西万博とジャパンモビリティショーの大型案件が押し上げた。2027 年 3 月期の営業利益は 46 億円と、会社自身が減ると見る。第 1 四半期は前年を 2 割下回った。
景気とイベントの波
コンサートや企業イベントは景気と感染症に左右される。2021 年 3 月期は営業損失 41 億円だった。機材の償却費が年 33 億円と固定費で重く、売上が落ちると利益が急に減る。
借入と財務制限条項
純有利子負債は 109 億円。貸出の約束には、純資産を前年度末の 8 割以上に保つ条件がある。のれんの減損や損失が出ると、条件に触れて資金繰りに響く。
買収の消化
2025 年から 2026 年に 5 社を取り込み、のれんは 23 億円。統合に失敗すれば、減損と費用が利益を削る。海外の売上比率 30% の目標は、為替と地政学のリスクも連れてくる。
海外ブランドの契約
海外ブランドの輸入販売店の契約に、売上の一部が頼る。契約が更新されなければ、販売施工の売上と利益が失われる。
LED の価格下落
LED ディスプレイは、安価な海外製品の流入で価格が下がりやすい。販売施工の利益率は 3% と薄く、値下がりを吸収できない。
人材の確保
舞台技術者の不足は業界の課題で、会社自身が最重要のリスクに挙げる。人件費の上昇は費用を押し上げ、人手が足りなければ受注を断る場面が出る。
今後の分かれ目
- コンサート・イベントの営業利益率が、万博の剥落後も 15% を保ったら
- 強気・やや強気側へ重みを移す。大型案件に頼らない稼ぐ力が示されたことになる。
- 純有利子負債が 100 億円を下回り、自己資本比率が 35% を超えたら
- 借入の重さが和らぐ。強気側の確率を少し上げてよい。
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 46 億円を下回ったら
- やや弱気側へ重みを移す。利益の水準が思ったより低い証拠になる。
- のれんの減損や、買収した子会社の損失が出たら
- 財務制限条項との距離を見る。やや弱気側へ重みを移す。
- 海外ブランドの契約の更新や、LED の取扱ブランドの変更が公表されたら
- 販売施工の売上と利益率の前提を見直す。
- 第三者が同社を買収する、または筆頭株主が資本政策を変えると発表したら
- 条件しだいで価値は大きく動く。買付価格と借入の扱いを見る。
見ておくもの
- コンサート・イベントの売上と営業利益率(万博を除いた水準)
- 販売施工の利益率と、LED ディスプレイの販売の動き
- 純有利子負債・自己資本比率と、貸出の約束への余裕
- 買収した子会社の売上・利益と、のれんの減損
- ライブ市場の公演回数と単価、舞台技術者の確保
倍率と資本コストの決め方
数量は 4 つの事業の従業員数(実質)、価格は 1 人当たり売上(物価 3% を含む名目)で積んだ。開示に台数や公演数がないので、人数と 1 人当たり売上で置いた。中立の人数は、買収で販売施工を増やし、コンサートも少し増やした。価格は、コンサートがライブ市場の高単価化を見て物価に 4% 上乗せした 1.40 倍、他は物価並みの 1.34 倍とした。本社費などは物価で増やした。中立の営業利益率は、コンサート 15%・販売施工 5%・建築音響 9% で、全社 7.0% だ。過去 10 年の中央値(4% ほど)より高く、今の 7.5% を下回り、最高の 13.3% よりずっと低い。会社の予想(2028 年 3 月期に 6.6%)に近い。倍率は k 8%・g 4% の式から置き、ROE が資本コストをわずかに上回る。余った現金はなく、純有利子負債が重い。悲観の床は、償却前の稼ぎと純有利子負債で測った。減価償却は物価で増やさず、機材の更新(年 27 億円の設備投資)の膨らみは、利益率の低さに含めた。今の株価と PER は、最後に比べただけで、倍率の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。理由は quality_why。事業は健全で、上乗せは付けない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。