結論
きょくとうは、福岡を地盤に全国へ約470店を広げる家庭向けクリーニングの会社だ。売上の約7割がドライクリーニング、残りの大半がワイシャツなどのランドリーである。
筆者の結論は割高だ。稼ぐ力に対して、今の時価総額は重い。2026年2月期の営業利益は0.03億円とほぼゼロで、純利益も0.5億円にとどまる。配当の総額は0.6億円で、純利益を上回っている。
事業の経済性が悪いわけではない。店舗網と工場網は育ち、一時は営業利益率が5%を超えた。ただ、需要は人口と服装の変化で細り、人件費と燃料の上昇を値上げで吸収しきれない。2027年2月期の中間も、売上は5%減、営業利益は2割減だった。
唯一の厚みは、白洋舍の株7.5億円分を持っていることだ。10年の中立では純利益が1.3億円ほどに戻る。それでも時価総額は今の半分を下回る。創業者が3割を握るため、資産が株主に戻る道は細い。割安に見えるのは、数字の上だけだと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社の条件を満たしていない。需要は細り、利益率は薄く、投じたお金に対して稼ぐ力が資本コストに届かない。
払う値段に安全域があるか。ここが問題である。簿価の自己資本は23億円だが、その中身は、洗濯の工場設備、賃借の差入保証金、そして土地である。土地は帳簿で16億円あるものの、店舗と本社に使う事業用で、売れば事業も縮む。
数少ない現金化できる資産は、白洋舍の株だ。ただ、会社に売る意思が見えず、創業者が3割を握る。戻るとしても半分と筆者は見る。
経営は、危機を乗り越えた手腕は見せたが、成長の資本配分は見えない。安く買えない限り、手を出す理由が見つからない。
土地と白洋舍の株を足せば、帳簿の上では厚く見える。ただ、事業用の土地は売れず、株の戻り方も不確かだ。筆者は、資産の厚みより、稼ぐ力の細さを重く見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、住宅地に広がる店舗から預かった衣類を、自社の工場で洗う仕組みだ。単一セグメントで、2026年2月期の売上は52億円。ドライクリーニングが38億円、ランドリーが13億円、洗剤や雑貨などの販売が1億円強である。
店は478ある。直営が147、契約者が運営する準直営が271、取次店が60だ。売上に応じて手数料を払う準直営と取次は、家賃や人件費が軽い。低価格の「ペリカンズ」や均一料金の「コインズ」で数を稼ぎ、一般店は付加価値の高い洗いを担う。
工場は福岡、中国、関西、関東に22か所あり、すべて賃借だ。年間の賃借料は約0.9億円で、売上が落ちても減らない。この固定費が、需要の縮みで利益を削る。
従業員は正社員141人、パートが381人である。久留米では2025年5月に4店を譲り受け、2026年3月に新工場を動かした。不採算の店は閉め、数よりも工場の稼働率を上げる段階にある。出店より閉店のほうが多い年も珍しくない。
売上の季節性も大きい。春と秋の衣替えの時期に預かる量が増え、夏は洗う量が減る。上期に利益が集まり、下期は赤字に近づく形である。
優良さと弱いところ
強みは、九州から関東まで続く店舗と工場の網と、オゾンを使ったドライの洗いだ。長年の顧客を「特別会員」にして、足を運ばせる工夫もある。
弱みは3つ。1つ目は需要の縮みだ。全国の営業許可施設は7.3万と、1年で1,100以上減った。2つ目は利益率の薄さである。営業利益率が5%を超えたのは2017年2月期のみで、直近は0%台だ。3つ目は価格の弱さである。低価格の店が主力で、値上げは客の出し控えを呼ぶ。
財務は自己資本比率52%と堅い。ただ、2021年2月期からの3期連続の赤字で、自己資本は36億円から18億円まで半減した。コロナ禍の傷は癒えきっていない。配当を続けるため、利益の薄さがそのまま自己資本の目減りにつながる。
経営は、会社の掲げる目標(売上5%増、経常利益率8%)が実績から遠い。筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みを弱いと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のクリーニング関連市場は2025年に約2,800億円で、前年より0.4%減った。ピークの1992年は8,200億円を超えていた。家庭用洗濯機の進化と、服装のカジュアル化が需要を削り続けている。
今伸びているのは、コインランドリーだ。市場は約1,150億円と堅調で、店に預ける手間を嫌う客を取っている。一般の店は経営者の高齢化と後継者難があり、設備を更新できずに廃業する例が多い。
廃業は、残る店には追い風にもなる。きょくとうが久留米で4店を譲り受けたのも、この流れだ。ただ、人件費、電気、燃料、洗剤の上昇が同時に来て、値上げを通せるかが勝負になる。
今後の鍵は2つ。店を減らしながら、工場の稼働を上げられるか。そして、物価並みに料金を上げても客が離れないか。市場全体の数量は、人口とともに年1〜2%ずつ細ると筆者は見る。
きょくとうは地方に店が多く、人口の減る地域ほど縮みが速い。九州で築いた密度の高さは、地域の中では強みだが、市場全体を押し上げる力にはならない。コインランドリーや宅配の新しい事業者が増える点も見逃せない。
資本政策と M&A
資本政策は、安定配当が基本だ。配当は年間で中間と期末に分け、総額は0.6億円ほど。ここ数年の純利益より多く、利益の水準を考えると、増やす余地はない。
創業者の牧平年廣氏が30%を握り、従業員持株会と地元の銀行が続く。株主構成は安定しているが、自社株買いや大きな増配が出にくい形である。
投資有価証券は上場6銘柄で8.2億円。このうち、白洋舍の株が7.5億円を占める。2017年に、取引所の外で大株主から買い取った政策投資だ。売却の方針は開示されていない。
借入は純額で7億円ほど。リースの残高は1.6億円、賃借の工場の家賃は年0.9億円で、どれも約束した固定の支払いである。M&Aは、同業の店の譲り受けが中心で、小粒だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
事業は底を打った。2024年2月期から3期連続で黒字を保ち、不採算の店舗を11閉じた。久留米では工場を新設し、店を譲り受けて、地域の密度を高めている。廃業が続く業界で、残る店のシェアは上がる。
値上げは物価の上昇に追いつき始める。コストの上昇は2026年の上期に響いたが、年間の予想は据え置かれた。会社の目標は、経常利益率8%だ。届かなくても、5%に戻せば、営業利益は3億円を超える。
資産も軽視できない。白洋舍の株7.5億円と、帳簿16億円の土地を持つ。土地は都市部の本社を含み、含み益がある可能性が高い。時価総額は27億円で、PBRは1倍を超えるが、資産を足し合わせれば割安とは言い切れない。配当の安定も、株主を支える。廃業が続けば、残った店に客が戻る。この波に乗れば、売上の減りは止まり、数年で利益が増え始める。自己資本比率は5割あり、赤字が続いても数年は耐えられる財務の余裕がある。投資家が見落としているのは、この下値の固さだ。
慎重な見方
需要の縮みは止まらない。家庭用洗濯機は年々よくなり、在宅勤務も定着した。全国の施設は毎年1,000以上減る。きょくとうの売上も、2015年の70億円から52億円まで縮んだ。
利益の質が悪い。営業利益は0.03億円で、経常利益の大半は、営業外の収入だ。2027年2月期の上期も、営業利益は2割減った。低価格の店が主力のため、値上げすれば客が離れ、上げなければ人件費の上昇で赤字に戻る。
工場の家賃は固定で、1店ごとの売上が落ちれば、稼働率が下がる。目標の経常利益率8%は、過去に一度も届いていない。配当は純利益を超え、続ければ自己資本が減る。土地は事業用で、売れば店舗網も縮む。白洋舍の株は創業者支配の下では戻らない。値上げが通ったとしても、人件費と燃料の上昇が先に来る年が続けば、黒字の定着は遠い。ここ10年で売上が4分の3になった事実は重い。久留米のように店を譲り受けても、工場を新設すれば償却と人件費が先に重くなる。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。需要の縮みと薄い利益率は構造的で、値上げの余地は小さい。中立は、営業利益が1億円強に戻る姿とし、確率の中心に置いた。
強気の指摘のうち、店舗網の整理と廃業の取り込みは認める。上の筋書きには2割台を割いた。一方、悲観側にも3割強を置いた。配当が純利益を上回る間は、自己資本が静かに減る。だから確率を悲観側へ寄せた。強気の根拠である含み益は、事業用の土地が中心で、株主の手には届きにくい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 402 円21 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 102 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 241 円13 億円、今との差 −52.3%、 期待の年率 0.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 851 円45 億円 | 152 円8 億円 | +98.6% | +7.1% | 60 円3 億円 |
| やや楽観 | 20% | 619 円33 億円 | 133 円7 億円 | +48.8% | +4.1% | 150 円8 億円 |
| 中立 | 38% | 434 円23 億円 | 114 円6 億円 | +8.5% | +0.8% | 208 円11 億円 |
| やや悲観 | 24% | 207 円11 億円 | 76 円4 億円 | −43.9% | −5.6% | 68 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 105 円6 億円 | 38 円2 億円 | −71.7% | −11.9% | 17 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 402 円21 億円 | 102 円5 億円 | −0.2% | 0.0% | 504 円27 億円 |
今の株価時価総額 505 円27 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 店舗の整理と廃業の取り込みが進み、値上げが通る 利益 3 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 851 円45 億円
近隣の廃業店を取り込み、工場の稼働率が上がる。ドライの点数は1割減にとどまり、値上げは物価を上回って通る。
工場の統合と店の閉鎖が効いて、営業利益率は5%まで戻る。コロナ前の2017年2月期の水準だ。
借入は返し終わり、白洋舍の株は持ち続ける。それでも、ROEは資本コストと同じ水準に届く程度で、堀が厚くなったとは言えない。設備の償却は取得した値段のままで増えず、新しい機械だけが高い値段で足される。このため会計上の利益は見かけ、やや増える。更新の投資は建築費や機械の値上がりで膨らむので、現金の余裕は小さい。
- ドライクリーニング:数量 495(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定)× 価格 0.10(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 2 億円。点数-10%・価格1.38倍
- ランドリー:数量 339(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定)× 価格 0.05(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。点数-5%・価格1.38倍
- 商品・その他:数量 14.4(取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定)× 価格 0.13(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 12.79 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:廃業が続く業界で残る店の密度が上がり、値上げも通る姿。会社の目標に近いが、過去に届いていないので1割を割る確率とした。
やや楽観 20% 値上げが物価並みに通り、利益率が2%台後半まで戻る 利益 2 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 619 円33 億円
ドライの点数は14%減る。値上げは物価並みに通り、客の出し控えは小さい。久留米のような店の譲り受けが続き、工場の稼働が上がる。
営業利益率は3%台に戻り、営業利益は2億円強になる。借入は返済が進み、利払いの負担は軽い。
配当は据え置きで、株主に帰る額は年0.7億円ほど。白洋舍の株の評価は変わらない。需要は細り、利益の伸びは物価並みにとどまる。値上げが通るのは確かだが、人件費の上昇と同じ速さで、利益率の改善は小さい。店の閉鎖で売上は伸びにくい。ランドリーは単価が低く、コインランドリーに客を奪われて、点数が1割近く減る。
- ドライクリーニング:数量 473(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定)× 価格 0.09(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 44 億円・営業利益 2 億円。点数-14%・価格1.34倍
- ランドリー:数量 328(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定)× 価格 0.05(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。点数-8%・価格1.34倍
- 商品・その他:数量 14.4(取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定)× 価格 0.13(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.9 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価並みに通り、店舗整理の効果が出る姿。強気の見方が当たる部分として2割に置いた。
中立 38% 需要は細り、値上げが人件費に追いつくのがやっと 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 434 円23 億円
ドライの点数は2割弱減る。ランドリーも1割減る。値上げは物価に届かず、10年で1.3倍にとどまる。人件費と燃料は物価並みに上がるので、利益率は伸びない。
営業利益率は2%台前半で、営業利益は1億円強だ。コロナ前の2015〜2020年の平均に近い。売上は58億円ほどと、数量の減りを価格が補う。
借入は10年でほぼ返すが、借り換えで金利は3.5%になる。配当は据え置きの0.6億円ほどで、純利益の1.3億円に対しては高めだ。工場の償却は、今ある機械は取得時のままで、新しい機械だけ高い値段で足される。会計の利益は増えて見えるが、機械の更新の現金支出は膨らむ。
- ドライクリーニング:数量 451(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定)× 価格 0.09(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。点数-18%・価格1.30倍
- ランドリー:数量 321(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定)× 価格 0.05(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。点数-10%・価格1.32倍
- 商品・その他:数量 14.4(取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定)× 価格 0.13(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい・価格1.30倍
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 22 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の縮みを値上げと店舗整理が相殺する姿。2つの見方の落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 24% 値上げが通らず、人件費に利益を食われる 利益 1 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 207 円11 億円
低価格の店が主力なので、値上げで客が離れる。ドライの点数は4分の1減り、価格は物価の6割ほどしか上げられない。人件費は物価並みに上がる。
営業利益率は1%まで下がり、営業利益は0.5億円ほどだ。売上は50億円を割る。店の閉鎖と減損が続く。
借入は返せるが、借り換えの金利で利払いが増える。配当は半減に近づく。白洋舍の株を売る判断は、資金繰りが厳しくなって初めて出る。賃借の工場の家賃は固定で、稼働率の低下が利益を直接削る。設備を更新する余力も乏しく、機械の老朽化が品質と生産性を落とす。人手の確保も難しくなる。
- ドライクリーニング:数量 407(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定)× 価格 0.09(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。点数-26%・価格1.24倍
- ランドリー:数量 293(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定)× 価格 0.04(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。点数-18%・価格1.25倍
- 商品・その他:数量 14.4(取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定)× 価格 0.13(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい・価格1.25倍
倍率:事業の ROE は約3%で k 8.75%を大きく下回る。上限の約6割の7倍に置いた。稼ぐ力は細るが事業は残る前提。EV ÷ 営業利益は25倍と高いが、営業外収益が年0.7億円あり営業利益だけで測ると過大になる。純利益ベースで置いた。
確率:値上げが物価に届かず、利益率が1%まで落ちる姿。2021〜2023年の赤字の記憶があり、慎重な見方の本流として2割台半ばに置いた。
悲観 12% 需要の流出が速く、赤字に戻り、資産を売って整理する 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 105 円6 億円
ドライの点数は半分近く減り、ランドリーも3分の2になる。価格は物価に届かず、営業利益は赤字になる。
店を大幅に閉じ、工場を統合して、賃借の家賃と原状回復の費用を払う。配当は止まる。
白洋舍の株と、事業用の土地を売って借入を返す。会社は縮んで、小さな店舗網だけが残る。上場を保つ意味も薄れ、株主への配当は止まったままになる。取引先の店舗契約者も離れ、店舗網の維持が難しくなる。コロナ禍の2021年2月期のように、売上が一気に3割落ちる年が再び来れば、自己資本の半分が1〜2年で消える。借入の返済と配当を両立できず、会社は守りに入る。創業者が3割を握るため、整理は経営の判断に委ねられる。株主に残る価値は、売れる資産から借入と閉鎖の費用を引いた分である。
- ドライクリーニング:数量 303(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定)× 価格 0.08(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。点数-45%・価格1.12倍
- ランドリー:数量 232(取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定)× 価格 0.04(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。点数-35%・価格1.12倍
- 商品・その他:数量 13.0(取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定)× 価格 0.11(1万点あたり売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。縮小・価格1.12倍
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。残るのは売れる資産の税後から借入と閉鎖の費用を引いた分で、戻り方も半分を掛ける。今の自己資本23億円の約4分の1に置いた。
確率:家庭用洗濯機とコインランドリーへの流出が速まり、赤字に戻る姿。コロナ禍で一度赤字になった実績があり、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドライクリーニング
背広、コート、ニットなどの水を使わない洗い。店で預かり、近くの工場で洗う。
| 数量取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.07億円と置いた推定 | 価格1万点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 550 | 0.07 | 39 | 0 |
| 10 年後 中立 | 451 | 0.09 | 41 | 1 |
取り方:売上38.5億円は開示(ドライ3,849百万円)。点数は開示が無く、1点あたり売上が1千円を下回る水準と置いた推定。利益は単一セグメントで内訳が無く、全社の営業利益0.03億円を売上比で割った推定。
ランドリー
ワイシャツ、シーツなどの水洗い。単価が低く、回転の速い品。
| 数量取扱点数(万点)。1万点あたり売上0.035億円と置いた推定 | 価格1万点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 357 | 0.04 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 321 | 0.05 | 15 | 0 |
取り方:売上12.5億円は開示(ランドリー1,251百万円)。点数は開示が無く、1点あたり売上がドライの半分ほどと置いた推定。利益は売上比の推定。
商品・その他
洗剤、雑貨、付随サービスの販売。小さい。
| 数量取扱量(万点換算)。1万点あたり売上0.1億円と置いた推定 | 価格1万点あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 14.4 | 0.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 14.4 | 0.13 | 2 | 0 |
取り方:売上1.44億円は開示(商品その他144百万円)。点数は推定。利益は小さく0と置いた。
リスクと懸念
需要の構造的な縮み
家庭用洗濯機の進化、服装のカジュアル化、在宅勤務で、市場はピークから7割減った。営業許可施設も毎年1,000以上減る。コインランドリーに客が移れば、単価の低いランドリーが先に痛む。
人件費・燃料・原材料の上昇
洗いは人手と熱を使う。2027年2月期の中間は、中東情勢による燃料などの上昇で営業利益が2割減った。低価格の店が主力で、値上げは客の出し控えを呼ぶ。
固定費と工場の稼働
22の工場はすべて賃借で、年0.9億円の家賃は売上が落ちても減らない。店の閉鎖で稼働が下がれば、利益が一気に削られる。新リース会計基準で見かけの負債も増える。
利益の薄さと配当
営業利益は0.03億円とほぼゼロ。配当の総額は純利益を上回る。続ければ自己資本が減り、減配に追い込まれる可能性がある。
創業者支配と資産の戻り方
創業者が30%を握り、白洋舍の株は政策投資で売却の方針が無い。株主への資産の還元は進みにくい。
金利の上昇と借換え
純負債は7億円。借り換えのたびに金利は3.5%前後へ向かい、利払いが増える。利益が薄い会社には重い。
今後の分かれ目
- 値上げ後も、客数と点数の減りが小さい
- 価格の弾力性が低いと分かる。中立の利益率を上げ、やや楽観の重みが増す。
- 営業利益が半期で2億円を割る状態が続く
- 燃料高と値上げの遅れが構造的だと分かる。やや悲観の重みが増す。
- 白洋舍の株の売却や、自社株買いが発表される
- 資産が株主に戻る道が見える。余り資産の戻り方を上げる余地が出る。
- 近隣の同業の店の譲り受けが相次ぐ
- 廃業の波の取り込みが進む。工場の稼働率が上がり、利益率が戻る。
- 配当が減らされる
- 利益の薄さを経営が認めた形だ。自己資本の減りは止まるが、市場の見る目は厳しくなる。
見ておくもの
- 半期ごとの営業利益とドライの売上の前年比
- 店舗数と不採算店の閉鎖の件数
- 燃料・電気・人件費の上昇と値上げの時期
- 白洋舍の株の保有と配当方針の変更
- 借入残高と新リース会計基準の影響
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROE(ならした純利益と自己資本から約3〜9%)、k 8.75%、g 4%の式から出した上限を土台にした。今のPERやPBR、同業の倍率は見ていない。白洋舍の株7.5億円は、配当が利益に入っているが小さいので、帳簿の額に戻り方0.5を掛けて足した。土地は事業用なので足さず、悲観の床でだけ売却する。新リース会計基準は、今の形(家賃を営業費用に入れる形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.79 倍・やや楽観 PER 9→11.9 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.25%を足して8.75%。個別の懸念は筋書きと確率で表した。