結論
ステップは、神奈川県だけで高校受験の集団塾を営む会社だ。小学 5 年から高校 3 年まで、在籍は 3 万 7 千人に近い。筆者の結論は、事業は強いが少子化で伸びしろが小さく、厚い現金を加えて初めて今の値段と釣り合う、というものだ。
強みは公立トップ校への合格実績だ。会社は県内トップ 19 校の合格者数で、2 位の塾の 2 倍以上と説明している。親が塾を選ぶ決め手は実績で、実績が生徒を呼び、生徒が実績を生む。この循環が、湘南ゼミナールや臨海セミナーが並ぶ激戦の県内で、ステップを一歩前に出している。
弱みは市場そのものが縮むことだ。県の 15 歳人口は 10 年で 2 割近く減る見通しで、2026 年からは私立高校の授業料が実質無償になり、中 3 の早期退会が出始めた。それでも直近の生徒数は年 4% 台で伸び、営業利益率は 24% 弱と高い。
10 年後の中立は、営業利益が 46 億円、純利益が 33 億円。生徒数はほぼ横ばいで、授業料は物価に少し遅れて上がる。会社が持つ現金と債券は時価総額の 2 割を超え、利益に混ぜずに別に数えた。
筆者がいちばん気にしているのは、少子化そのものではなく、無償化で公立一本の受験が減ることだ。ステップの看板は公立トップ校であり、その母数が痩せるほど看板の値打ちも薄れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業は好ましく、資本の置き方は物足りない。
好ましい点は、地域一番の看板が生徒を呼び、授業料が前払いに近い形で入り、設備投資が軽いことだ。営業利益率は 24% 弱で、営業の現金は毎年 33 億円ほど出る。借金はなく、校舎の多くを自前の土地に持つ。
物足りない点は、増えた現金の使い道だ。純資産の 3 割近くが現金と債券で、利益を生む力は弱い。事業だけの ROE は 10% を超えるのに、全体の ROE は 10% 前後に薄まる。この差を埋めるのは、配当と自社株買いしかない。
10 年後の姿は、生徒数が横ばいでも、授業料の上昇で利益が緩やかに伸びる、という地味なものだ。筆者は、爆発的な成長を期待しない。物価と同じ速さで稼ぎが増え、利益の 7 割を戻してくれれば、オーナーとして持ち続けてよいと考える。
安全域は、現金を別に数えたうえで、中立の筋書きで今の時価総額を上回る程度に厚い。ただし、無償化と少子化の読みは難しい。わからないものには確信を下げ、確率は悲観側に厚めに置いた。母数が縮む市場で払う値段には、慎重でありたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、小学 5 年から中学 3 年までを教える高校受験の集団塾「STEP」だ。売上の 8 割以上をここで上げる。
2025 年 9 月期の期中平均の在籍は、小中学生が 2 万 8 千 8 百人、高校生が 6 千 3 百人。合わせて 3 万 5 千人を超え、前期から 4.3% 増えた。スクールは 160 校台で、すべて神奈川県内にある。そのうち 109 校は賃借だ。
高校生部門は、中学から進んだ生徒が中心の大学受験コースだ。小中の生徒が高校でも残るため、学年が上がっても授業料の流れが途切れにくい。
学童の「STEPキッズ」は 2025 年 3 月に 5 教室目を開いた。在籍は 600 人を超え、期中平均は 2 割増えている。ただし売上は全体の 3% ほどで、利益への寄与はまだ小さい。
収入は授業料と講習費が中心で、1 人当たりの年間売上は 45 万円ほどだ。教材は自社で制作・印刷し、外に払う額を抑えている。
講師は正社員で育てる方針で、従業員 954 人のうち教務が 820 人を占める。平均勤続は 12.5 年と長く、パートに頼る個別指導の塾と違う。人件費は固定費に近く、生徒が埋まるほど利益が膨らみ、空くほど削られる。利益率は席の埋まり具合でほぼ決まる。
優良さと弱いところ
堀は、公立トップ校への実績と、県内に密に張った校舎網の組み合わせだ。ただし鉄壁とは言えない。
第 1 の強みは、実績が生む口コミだ。親は子どもの進学先を塾に任せるので、結果が出る塾に集まる。会社は県内トップ 19 校の合格者数で他社の 2 倍以上と説明するが、自社の資料なので割り引いて見る必要はある。
第 2 の強みは、教材と授業を自社で作り、全校舎に同じ質で届ける仕組みだ。講師は正社員の新卒が中心で、辞めにくい。授業の品質が揃えば、保護者は校舎が変わっても信頼を移さない。
弱みは 2 つある。1 つは、神奈川一県に集中していることだ。県の人口が減れば、そのまま影響を受ける。もう 1 つは、競合が多いことだ。湘南ゼミナールは約 100 校舎、臨海セミナーも県内に厚く、実績を競っている。値上げを急げば、生徒が他へ動く。
資本の面では、自己資本比率が 9 割と極めて高く、借金はほぼない。ROE は 10% 前後で、現金と債券が積み上がっているため、事業そのものの稼ぎ(本業の ROE)より低く見える。
筆者は堀の厚さを「普通」と置く。地域一番の看板は本物だが、人口が減る市場では、看板だけで利益率を守ることはできない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この市場は、数が減る一方で、一人あたりの教育費が増える、という二つの力で動く。
神奈川県の公立中学の卒業者は、2024 年春の 6.7 万人から 2033 年春には 5.8 万人に減る見通しだ。会社の有報も、15 歳人口が 2035 年に 6.4 万人まで減ると書く。10 年で 2 割近い縮小で、塾の生徒の母数はこの分だけ痩せる。
一方で、通塾率は上がっている。受験情報が増え、親が早くから塾に預けるようになった。ステップも、小学生の在籍が 1 割近く増えている。ここで囲い込めば、中学、高校へと続けて通ってもらえる。
2026 年 4 月から、私立高校の授業料が実質無償になった。国の支援は所得制限なしで年額 45 万 7 千円まで、神奈川は県の補助も加わる。私立を選ぶ家庭が増えれば、公立トップ校だけを狙う集団塾の母数は減る。実際に会社は、2026 年 9 月期の上期に、中 3 の早期退会が増えたと説明している。
競合は、湘南ゼミナール、臨海セミナー、早稲田アカデミー、個別指導の各社だ。講師の確保が難しくなるなか、賃金の引き上げ競争が続く。
AI による個別学習の登場は、10 年のうちに集団授業の価格を崩す恐れがある。ただし、受験の本番に向けた競争の場や、保護者が安心できる環境は、画面の学習だけでは置き換わりにくい。筆者は、速さよりも、実績という信頼の貯金をどう守るかが分かれ目と見る。
資本政策と M&A
資本政策の形は、配当を 5 割前後に保ち、余った現金を債券などで運用しながら、折々に自社株買いを入れる形だ。
2025 年 9 月期は、配当に 13 億円、自社株買いに 5 億円を使った。純利益の 6 割強を戻した計算だ。2024 年 9 月期は自社株買いが 10 億円と多く、合わせて利益の 9 割近くになる。今期も増配の予想で、配当は毎期増えている。
現金は 76 億円と厚いうえに、2025 年 9 月期は投資有価証券を 29 億円買い増した。受取利息だけでは回りが悪く、利益への寄与は小さい。使い道が定まらない現金は、配当か買い戻しで株主に返す余地がある。
M&A はほとんどなく、買収で数を増やす会社ではない。新規開校は数年おきに集中して進め、間は席の埋まりを高める。この規律は評価できる。
資産管理会社が 35.8% を持つ。経営の意思は通りやすく、TOB で買われる可能性は小さい。一方、外から資本政策を迫る力も弱く、現金の戻し方は経営の判断次第だ。
自社株買いは 2025 年 9 月末で終わり、いまは新しい枠はない。したがって株数は直近の水準で固めてよい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
需要の質が変わっているから、少子化の穴は埋まる。親は早くから塾に預け、小学生の在籍はすでに 1 割近く伸びている。学童で囲い込んだ子が、小学 5 年から高校受験の主力へ進む。
ステップの看板は、公立トップ校への合格実績だ。県内トップ 19 校の合格者数で、他社の 2 倍以上を取る。実績の差は、保護者の口コミで広がる。母数が減るほど、確かな実績のある塾に集まるので、シェアは上がる。
会社の収益力は高い。営業利益率は 24% 弱で、自己資本比率は 9 割、借金はほぼない。新規開校を抑えている今も、生徒数が 4% 台で伸びているのは、席の埋まりがまだ上がる証拠だ。川崎や横浜東部には、まだ未開拓の需要が残っている。
資本の面では、利益の 5 割を配当し、余れば自社株買いを入れる。現金 76 億円と債券の積み増しは、使い道が決まれば一気に株主へ戻せる余力でもある。基幹システムの更新が終われば、事務の人手も減る。
物価が 3% で上がる世界では、授業料を毎年少しずつ上げやすい。親は物価の上昇に慣れ、塾代の値上げも受け入れる。人件費を吸収できる範囲で値上げすれば、営業利益率は 24% を保てる。
10 年で純利益が 4 割以上増えることは、高望みではない。
慎重な見方
無償化の影響は、これから本格的に出る。2026 年 4 月から私立高校の授業料が実質無償になり、すでに中 3 の早期退会が出た。私立を併願する家庭が増えると、公立トップ校の合格実績だけで選ぶ塾の求心力は落ちる。
市場は縮む。県の 15 歳人口は 2035 年に 6.4 万人まで減る。いまの生徒数の伸びは、スクールの増床と席の埋まりで押し上げた分が大きく、母数が減ればその余地も消える。
競争は激しい。湘南ゼミナールは約 100 校舎、臨海セミナーや個別指導の塾も実績を競う。講師の採用が難しくなれば、賃金を物価以上に上げるしかない。ステップは正社員で育てるため、人件費は景気が悪くても下げられない。授業料の値上げが賃金に追いつかなければ、利益率は 21% 台、さらに 17% 台まで下がる。
資本の使い方にも疑問が残る。現金と債券が純資産の 3 割近くに積み上がり、利益を生まない。基幹システムの再構築は遅れ、費用がふくらんだ。資産管理会社が 35.8% を持つので、現金の戻し方に外から口を挟みにくい。
AI の個別学習は、10 年のうちに集団授業の価格を押し下げる。現金に目を奪われて、事業の縮みを見落とすべきではない。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が上回る。地域一番の実績と席の埋まりは本物で、現金を返す力もある。ただし 10 年の縮み幅は慎重な見方のほうが重い。県の 15 歳人口の 2 割減と、無償化による母数の痩せは、確かな逆風だ。
そのため中立に最も厚く置き、悲観側(やや悲観 22%、悲観 10%)を楽観側(8% と 22%)より少し厚くした。余った現金は戻し方を 1.0 とみて、事業の価値とは別に足した。確率を重ねた 10 年の価値は、今の時価総額とほぼ釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 3,672 円569 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,304 円202 億円)。 今の値に割り戻すと 2,743 円425 億円、今との差 +22.3%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,147 円953 億円 | 1,730 円268 億円 | +251.2% | +13.4% | 630 円98 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,995 円774 億円 | 1,555 円241 億円 | +192.0% | +11.3% | 1,441 円223 億円 |
| 中立 | 38% | 4,076 円632 億円 | 1,362 円211 億円 | +142.4% | +9.3% | 2,066 円320 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,043 円317 億円 | 1,058 円164 億円 | +38.3% | +3.3% | 682 円106 億円 |
| 悲観 | 10% | 833 円129 億円 | 729 円113 億円 | −30.4% | −3.6% | 156 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,672 円569 億円 | 1,304 円202 億円 | +121.9% | +8.3% | 4,976 円771 億円 |
今の株価時価総額 2,243 円348 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 川崎・横浜へ面を広げ、授業料も物価に追いつく 10 年 利益 48 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 6,147 円953 億円
川崎市と横浜の東部・南部に、成功した型のままスクールを広げる。小中学生の在籍は 3 万 5 千人に届き、神奈川で公立トップ校をめざす家庭の第一候補としての地位が一段と固まる。授業料は物価と同じ 10 年で 3 割強上がり、講師の賃上げを吸収する。学童の STEPキッズ は 15 教室ほどに増え、小学生の囲い込みが高校受験の入口として効く。基幹システムの再構築は予定どおり終わり、事務の人手が減る。県の中学卒業者は 1 割以上減るが、通塾率の上昇とシェアの伸びがそれを上回る。会社が掲げる営業利益率 20% を超え、23% 台で定着する。余った現金は配当と自社株買いで厚く戻す。
- 小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」):数量 35,000(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 218 億円・営業利益 68 億円。小中学生 35,000人・利益率 31%
- 高校生部門(大学受験コース):数量 8,500(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 9 億円。高校生 8,500人・利益率 24%
- 学童・保育部門(STEPキッズ):数量 3,000(期中平均の在籍児童数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 4 億円。学童 3,000人・利益率 12%
倍率:事業の純利益 47 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 18.97 倍、時価総額 952 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:川崎・横浜東部での開校が当たり、授業料も物価並みに上がり、無償化の逆風も小さく済む必要がある。条件が多く、実現すれば強いが確度は高くない。
やや楽観 22% 開校を絞りつつ席の埋まりが進み、緩やかに伸びる 10 年 利益 40 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 4,995 円774 億円
新規開校は数年おきの小さな波にとどめ、既存スクールの増床と席の埋まりで生徒を増やす。小中学生は 3 万 2 千人、高校生部門は 7 千人台、学童は 2 千人ほどになる。授業料は物価をわずかに下回って上がり、利益率は 22% 台を保つ。公立トップ校の合格実績で他塾を引き離す構図は続き、無償化で一時的に落ちた中 3 の在籍も、実績の力で戻る。大学受験部門は内部進学を取り込み、高校生の売上は安定する。基幹システムの更新費用は重いが、2、3 年で吸収できる。配当は利益の 5 割を目安に増え、自社株買いも折々に入る。
- 小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」):数量 32,000(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 196 億円・営業利益 59 億円。小中学生 32,000人・利益率 30%
- 高校生部門(大学受験コース):数量 7,400(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 7 億円。高校生 7,400人・利益率 23%
- 学童・保育部門(STEPキッズ):数量 2,100(期中平均の在籍児童数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。学童 2,100人・利益率 10%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 18.04 倍、時価総額 774 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の生徒数は年 4% 台で伸びており、席の埋まりと増床で 10 年の上振れは現実的。ただし少子化と無償化で小中の伸びは鈍る。
中立 38% 生徒数は横ばい、授業料は物価に少し遅れて上がる 10 年 利益 33 億円 · PER 17.1 倍 · 株価時価総額 4,076 円632 億円
神奈川の中学卒業者は 10 年で 1 割台半ば減る。ステップは通塾率の上昇と実績によるシェア増で、小中学生の在籍を 2 万 9 千人台から 2 万 9 千 5 百人あたりに保つ。授業料は物価を少し下回る 10 年 3 割増で、講師の賃金は物価並みに上がるため、営業利益率は今の 24% 弱から 21% へ下がる。会社の目標 20% 程度に近い水準だ。高校生部門は 6 千 5 百人、学童は 1 千 5 百人。本社と基幹システムの費用は物価で増える。配当性向は 5 割を目安にし、年によって自社株買いが加わる。利益は年 2% 台の伸びにとどまるが、事業は崩れない。
- 小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」):数量 29,500(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 178 億円・営業利益 51 億円。小中学生 29,500人・利益率 28.5%
- 高校生部門(大学受験コース):数量 6,500(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 28 億円・営業利益 6 億円。高校生 6,500人・利益率 21.5%
- 学童・保育部門(STEPキッズ):数量 1,500(期中平均の在籍児童数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。学童 1,500人・利益率 9%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)70 億円。全体の PER 17.06 倍、時価総額 623 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:県の中学卒業者は減るが、通塾率の上昇と実績によるシェア増が打ち消す。直近の実績と会社の目標利益率に最も近く、重みを最も厚く置く。
やや悲観 22% 無償化で私立へ流れ、競争で授業料が据え置かれる 10 年 利益 23 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,043 円317 億円
私立高校の授業料が実質無償になり、公立一本の受験をする家庭が減る。ステップの強みは公立トップ校への合格実績だが、母数が痩せる。湘南ゼミナールや臨海セミナー、個別指導の塾との取り合いで、授業料は物価に追いつかない。講師は正社員で育てる方針のため、賃金は物価どおり上がり、利益率は 17% 台まで下がる。小中学生は 2 万 6 千人に減り、校舎は余り始める。賃借の 109 校の家賃は売上が落ちても変わらない。学童は伸び悩み、基幹システムの費用は回収が遅れる。配当は続くが、利益に見合う額へ下がる。それでも自己資本比率は高く、財務が先に傷む筋書きではない。傷むのは、利益の伸びという前提のほうだ。県の公立中学の卒業者は 5 万人台へ減り、小学生の囲い込みだけでは穴を埋めきれない。
- 小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」):数量 26,000(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 150 億円・営業利益 37 億円。小中学生 26,000人・利益率 25%
- 高校生部門(大学受験コース):数量 5,600(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。高校生 5,600人・利益率 17%
- 学童・保育部門(STEPキッズ):数量 1,000(期中平均の在籍児童数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。学童 1,000人・利益率 4%
倍率:ROE 6.3% は k 7.25% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。授業料が据え置かれ、新しく投じるお金の稼ぎが弱いので、その約 8 割(10.5 倍)に置いた。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍にした。
確率:無償化の影響は 2026 年の中 3 の早期退会で目に見え始めた。少子化と競争が重なると起こりやすく、悲観側に厚めに置く。
悲観 10% 少子化と AI 学習に押され、地域塾の収益構造が崩れる 10 年 利益 11 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 833 円129 億円
神奈川の中学卒業者が減り続け、無償化で私立志向が定着する。さらに AI が個別の学習計画と演習を安く提供し、集団授業の価格が崩れる。授業料は物価の半分ほどしか上がらない。小中学生は 2 万 1 千人台に減り、高校生部門も 4 千人台に縮む。講師と校舎の固定費は急に減らせず、営業利益率は 1 割を切る。老朽化した校舎の更新と基幹システムの償却も重い。学童は赤字のままだ。ブランドと自前の土地は残るので事業は続くが、稼ぐ力は今の 3 分の 1 以下になる。余った現金は食われ、戻るはずの額が減る。配当は利益に合わせて切り下げられ、自社株買いも止まる。それでも自己資本比率は高く、倒れるわけではない。ただ、成長企業として評価されていた前提が外れ、地域の中堅の塾として残る姿になる。
- 小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」):数量 21,500(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 115 億円・営業利益 22 億円。小中学生 21,500人・利益率 19%
- 高校生部門(大学受験コース):数量 4,500(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。高校生 4,500人・利益率 10%
- 学童・保育部門(STEPキッズ):数量 600(期中平均の在籍児童数(人))× 価格 0.01(1 人当たり年間売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。学童 600人・利益率 -2%
倍率:ROE 3% は k 以下で、PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。構造的に稼げなくなる筋書きで、稼ぐ力(純利益 ÷ k)の約 7 割(9.3 倍)に置いた。帳簿の自己資本は床にせず、余った現金も半分(0.5 倍)に落とした。
確率:少子化、無償化、AI 学習の 3 つが同時に重なる必要があり確率は低い。起これば自前の校舎と正社員の講師が固定費になって利益が大きく削られる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小中学生部門(高校受験の集団塾「STEP」)
小 5 から中 3 までを神奈川県内のスクールで教える集団塾。公立トップ校への合格実績が看板。
| 数量期中平均の在籍生徒数(人) | 価格1 人当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 28,787 | 0.00 | 134 | 41 |
| 10 年後 中立 | 29,500 | 0.01 | 178 | 51 |
取り方:2025/09 期の期中平均の在籍 28,787 人(有報)。小中学生部門の売上は開示されないため、全体の売上 158.5 億円から高校生部門と学童の推定を引いた 133.6 億円と置いた(1 人 46.4 万円)。セグメント利益は非開示で、全社の営業利益 37.8 億円に合うよう、本社・共通費 8.3 億円を別に引く前提の推定(利益率 31%)。数量は実質の生徒数、価格は 1 人当たりの売上で、授業料と講習費の改定で上がる。中立は物価より少し低い 10 年 1.30 倍。数量は実物(人)で、名目の市場の伸びからは置いていない。
高校生部門(大学受験コース)
高 1 から高 3 の大学受験。内部進学の生徒が中心で、スクール 15 校前後。
| 数量期中平均の在籍生徒数(人) | 価格1 人当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 6,339 | 0.00 | 21 | 5 |
| 10 年後 中立 | 6,500 | 0.00 | 28 | 6 |
取り方:期中平均の在籍 6,339 人(有報)。売上は小中より単価が低いとみて 1 人 33 万円と推定し 20.9 億円、利益率は 24% と推定(5.0 億円)。いずれも非開示の推定。中立の価格は 10 年 1.30 倍。数量は実物(人)。
学童・保育部門(STEPキッズ)
小 1 から小 4 の学童教室と企業主導型保育。5 教室目が 2025 年 3 月に開いた。
| 数量期中平均の在籍児童数(人) | 価格1 人当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 550 | 0.01 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.01 | 14 | 1 |
取り方:学童の売上は 4.0 億円と推定(期中平均およそ 550 人、600 名超の開示と 20.3% 増から逆算、1 人 73 万円)。立ち上げ段階で利益は損益ほぼゼロ(−0.3 億円と推定)。価格は 10 年 1.30 倍。数量は実物(人)。
リスクと懸念
私立高校の無償化と公立受験の母数
2026 年 4 月から私立高校の授業料が実質無償になった。公立トップ校を狙う家庭が減れば、ステップの看板である合格実績の値打ちが薄れる。上期には中 3 の早期退会がすでに増えた。影響は数年かけて出る。
少子化
神奈川の 15 歳人口は 2035 年に 6.4 万人まで減る見通しだ。10 年で 2 割近い縮小で、通塾率の上昇とシェア増で補えるかが利益の分かれ目になる。単一県に集中するため、他地域で穴を埋められない。
講師の確保と賃金
講師は正社員で育てる方針で、教務は 820 人。賃金は物価並みに上がり、採用競争も強い。授業料が追いつかなければ、利益率が削られる。固定費なので生徒が減っても人件費は減らない。
競合との合格実績の競争
湘南ゼミナールは約 100 校舎、臨海セミナーや早稲田アカデミーも神奈川に厚い。合格実績が落ちれば入会が減り、実績で選ぶ塾ほど落ち方が速い。
AI による個別学習
AI が学習計画や演習を安く提供すれば、集団授業と講習の価格が下がる恐れがある。10 年の悲観では授業料の伸びが物価の半分になる。ただし競争の場と保護者の安心は、画面だけでは置き換わりにくい。
基幹システムの再構築
基幹システムの開発が遅れ、稼働は 2026 年 9 月期以降に後ろ倒しになった。費用の上振れと、移行時の不具合による事務の混乱が起こりうる。
賃借校舎の固定費
167 校のうち 109 校は賃借で、家賃は生徒が減っても払う固定の約束になる。新リース会計基準で 2028 年 3 月期から BS に載るが、約束の重さは変わらない。
今後の分かれ目
- 2027 年春の公立高校入試で、中 3 の早期退会が一段と増える
- 無償化の影響が想定より大きく、やや悲観の確度が上がる。
- 県内の公立トップ校の合格者数で、他社との差が縮む
- 看板の強みが薄れ、中立から悲観寄りに動く。
- 小中学生の在籍が 3 万人を超え、授業料も上げられる
- 席の埋まりが続き、やや楽観の確度が上がる。
- 現金と債券を使った配当の引き上げや自社株買いの新しい枠が出る
- 現金の戻り方への不安が減り、余った現金の評価が確かになる。
- 基幹システムの再構築で費用の上振れや稼働の失敗が出る
- 利益率が数年削られる。短期の不調で、長期の筋書きは動かさない。
見ておくもの
- 神奈川県の公立中学の卒業者数と、公立高校の志願倍率
- 期中平均の在籍生徒数(小中学生・高校生部門)と中 3 の退会
- 県内トップ校の合格者数と他塾との差
- 営業利益率(会社の目標 20% 程度との差)
- 現金・投資有価証券の残高と、自社株買いの新しい枠
倍率と資本コストの決め方
まず神奈川の生徒数(実質)と 1 人当たり売上(名目)で 3 部門を積み、本社費用を物価で増やして営業利益を出した。純利益から自己資本を流し、ROE と資本コスト 7.25% から正当化 PER を出し、上限の 9 割前後に置いた。余った現金 70 億円は戻し方 1.0 で別に足した。今の株価と PER は倍率の根拠にしていない。同領域の早稲田アカデミー・リソー教育・ナガセと k は同じ 7.5%。ステップは財務が堅いが、k は借金の分で下げていない。新リース会計基準は、10 年後も家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→18.97 倍・やや楽観 PER 13.7→18.04 倍・中立 PER 13.4→17.06 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。