結論
武蔵野興業は、新宿三丁目の自社ビルの賃貸を柱に、新宿武蔵野館の映画興行と埼玉の自動車教習所を営む小さな会社だ。筆者の結論は「割高」である。今の時価総額は、稼ぐ力から出した10年後の価値を大きく上回る。本業が小さく、現金も社長の判断なしには株主に戻らないからだ。
直近の純利益が膨らんだのは、投資有価証券を売った一回きりの利益のせいだ。会社の今期予想は純利益が9割減る。本業の営業利益率は5%前後にすぎず、映画館のシネマカリテも2026年1月に閉じた。
支えになるのは、純現金と、帳簿より高いはずの新宿のビルだ。ただ、ビルの時価は開示から確かめられない。しかも社長が3割強を握り、配当は出していない。現金や含み益が少数株主に戻る道は細い。
9月には武蔵野ビルで火災が起き、新宿武蔵野館は当面休館になった。楽観でも今の値段を大きくは超えない。筆者は、ビルの再開発が実現する場合だけが今の値段を正当化すると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、問題は2つある。ひとつは、稼ぐ力が小さいことだ。営業利益は年1億円に届かず、資本コストを下回る資本効率の会社に、帳簿の自己資本をそのまま価値として認めることはできない。ためた利益は額面に満たない価値しか持たない。
もうひとつは、資本の使い道を決めるのが少数株主ではないことだ。現金9億円は時価総額の3割を超えるが、配当も自社株買いも出ていない。余った現金は、戻り方を半分に割って数える。
良い面もある。新宿の駅近のビルは、物価が上がる世界で実物資産として値が残りやすい。無借金で、悲観の筋書きでも倒産の心配は小さい。ただ、時価が開示から確認できず、含み益が少数株主に届く保証もない。
安全域はない。今の値段は、ビルの再開発という「条件つきの未来」を先取りしている。筆者なら、確認できる材料が増えるまで持ちたくない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は不動産だ。売上の4割強を占め、新宿の武蔵野ビルと野和ビルの賃貸、それに自由ケ丘土地興業の土地関係が中心になる。古い建物を長く持つため、減価償却が軽く、利益率は他の事業より高いと筆者は推定する。
映画事業は売上の3割強。新宿武蔵野館は2026年に創業100年を迎えた老舗のミニシアターで、子会社の武蔵野エンタテインメントが運営する。2012年に開いたシネマカリテは2026年1月に閉館した。客席を持つ事業は固定費が重く、客足が少し落ちるだけで赤字に傾く。
自動車教習は売上の2割強。埼玉県寄居町の指定教習所で、入所者数に料金を掛けた商売だ。18歳人口が細る地方の事業で、数量は静かに減っていく。反面、運転免許は生活に欠かせず、景気で大きくは振れない。
この3つは互いに関係が薄い。映画は話題作に左右され、教習は少子化に左右され、不動産は立地と空室に左右される。会社としての一貫した戦略は見えにくく、本社費が利益を削り、グループ全体で見ると、稼ぐ力は小さいままだ。映画と教習は規模が小さく、不動産の利益で穴を埋める形になっている。
優良さと弱いところ
優良とは言いにくい。堀と呼べるのは、新宿三丁目という立地を持つ不動産だけだ。立地は買い増せず、賃料は物価に連れて上げやすい。ただ、築年数の古いビルで、建て替えや大規模修繕の費用が先に待つ。
映画館に堀はない。作品は配給会社が決め、料金は競合のシネコンに挟まれる。ミニシアターは作品の選び方で客を集めてきたが、動画配信の広がりで客足は戻りきっていない。教習所も、近隣の教習所との競争と少子化に挟まれる。
資本効率は低い。10年の自己資本利益率の中央値は1.6%で、資本コストに遠く及ばない。無借金で純現金があり、財務は安定している。しかし現金は配当にも自社株買いにも回らず、溜まる一方だ。資本の使い道を決めるのは筆者の目には社長で、少数株主ではない。
人についての事実は、2023年3月時点で社長の河野義勝氏が持株の3割強を持つという公開情報にとどめる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
映画興行は、国内の観客数が人口とともに細る成熟市場だ。シネコンが客席の大半を握り、ミニシアターは作品の独自性で生き残ってきた。配信サービスが家庭に入ったことで、劇場に足を運ぶ理由は「大画面で見る価値のある作品」に絞られている。料金は物価並みに上げられるが、客数は実質で減る方向だ。
新宿のテナントビルは、需給が逼迫している。再開発が続くエリアで、駅近の小規模ビルは人気がある。賃料は物価に連れて上がりやすい。一方で、古いビルは耐震や設備更新の負担が重く、空室が出れば入れ替えの費用もかかる。
自動車教習は、18歳人口の減少に正面からさらされる。国内の指定教習所は数が多く、地方では統廃合が進む。免許取得の需要はなくならないが、実質の入所者数は10年で1〜2割落ちると筆者は見る。寄居町は埼玉県の北部で、車が生活の足になる地域だが、若い世代の数は確実に減っていく。
3つを足すと、市場全体の数量は横ばいから微減だ。物価で価格が上がる分だけ、売上は名目で伸びる。ただ、その伸びは人件費や修繕費の上昇に食われやすい。
資本政策と M&A
株主への還元は乏しい。直近の配当は出しておらず、今期予想も無配だ。自社株買いの実績も見当たらない。2026年3月期の純利益は投資有価証券の売却益で膨らんだが、現金はそのまま会社に残った。
資本の動きは、グループの整理が中心だ。2025年4月に子会社の武蔵野エンタテインメントを完全子会社にした。2021年には、長く第2位の株主だったリサ・パートナーズとの資本・業務提携を解消している。2025年11月には福岡証券取引所にも上場した。
株式は10株を1株にまとめた後で約105万株しかなく、流動性は乏しい。TOBや非公開化の確率を、外部の試算は10年で2割強とみる。社長の持株が3割強あるため、買われるなら社長の意向が前提になる。
株主優待は映画鑑賞券で、会社の費用としては小さい。劇場に来た人の数を増やす販促の性格が強く、還元としては数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新宿三丁目の自社ビルは、帳簿に載る値段より、はるかに高い価値があるはずだ。1928年に建てた古いビルの簿価は低く、土地は取得時の値段のままだ。物価が上がり続ける世界では、立地を持つ実物資産の価値は名目で膨らむ。賃料も物価と同じ速さで上げられる。
純現金は9億円あり、無借金だ。映画館のシネマカリテを閉じ、赤字の源を断った。残る新宿武蔵野館は創業100年のブランドで、作品を選ぶ目で客を集める。教習所は地味だが、免許の需要はなくならず、現金を稼ぐ。
再開発が進む新宿で、ビルを建て替えるか、共同化に応じるか、売却すれば、含み益が一度に表に出る。会社は小さく、機動的に資産を動かせる強みもある。今の時価総額は自己資本の7割弱にすぎず、市場は資産を過小評価している。株価が低いままなら、非公開化の提案が出る可能性も残る。
ビル賃貸は景気の波が小さく、空室さえ埋まれば現金を着実に生む。映画と教習の赤字や低採算を、不動産が支える構図は、事業整理が進めば、むしろ利益率の改善に向かう。
慎重な見方
稼ぐ力が小さすぎる。営業利益は年1億円に届かず、今期予想はさらに小さい。直近の純利益は一回限りの売却益で、実力ではない。映画館は赤字傾向で、教習所は少子化で細る。不動産の利益を、本社費が食ってしまう。
ビルの含み益は、開示から確かめられない。1928年竣工のビルは耐震と設備の更新費が重く、2026年9月には7階で火災が起き、新宿武蔵野館が当面休館している。再開発を前提にした価値は、実現するまで絵に描いた餅だ。
さらに、社長が3割強を握るため、現金や含み益が少数株主に戻るとは限らない。配当は無く、自社株買いも無い。10年待っても、ためた現金は会社の中に残り続ける恐れが高い。
映画事業の整理も、教習所の再建も、道筋は示されていない。シネマカリテを閉じたことは、映画事業がそれだけ厳しいという証拠でもある。物価が上がれば、本社費や人件費も同じ速さで増える。資本効率が資本コストを下回る会社の現金は、額面より安く見るのが筋だ。新宿の立地への期待は分かるが、期待で利益は増えない。
どちらに重みを置いたか
不動産という実物資産の存在は否定しない。ただ、確かめられない含み益と、戻ってこない現金を理由に高い値段を払うのは難しい。稼ぐ力から出した価値は、今の時価総額の3割にも届かなかった。
確率は、中立と、やや悲観に重く置いた。ビルの再開発が実現する筋書きは、楽観として軽く残している。ただし、確率を大きく上げる材料は今のところ開示にない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,559 円16 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 101 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 773 円8 億円、今との差 −67.7%、 期待の年率 −3.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,269 円34 億円 | 287 円3 億円 | +48.5% | +4.0% | 284 円3 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,074 円22 億円 | 191 円2 億円 | −5.4% | −0.6% | 385 円4 億円 |
| 中立 | 40% | 1,501 円16 億円 | 96 円1 億円 | −33.3% | −4.0% | 639 円7 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,041 円11 億円 | 29 円0 億円 | −55.3% | −7.7% | 268 円3 億円 |
| 悲観 | 10% | 841 円9 億円 | 0 円0 億円 | −64.9% | −9.9% | 84 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,559 円16 億円 | 101 円1 億円 | −30.7% | −3.6% | 1,660 円17 億円 |
今の株価時価総額 2,395 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 新宿の再開発に乗り、賃貸の面積と賃料が伸びる 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,269 円34 億円
新宿三丁目の再開発が進み、武蔵野ビルの上層階の映画用スペースの一部を貸店舗・オフィスに転換する。賃貸面積は1割強増え、賃料は物価を大きく上回って上がる。映画は新宿武蔵野館に絞って小さな黒字になり、教習所は入所者の減りを料金の改定で補う。本社費は物価並みに増えるが、賃貸の増収がそれを上回る。会社はこの時点で、新しい資産の使い道に踏み出すかどうかを問われる。営業利益は今の4倍近くに増え、ようやく一定の利益水準になる。10年間、火災や休館の影響を受けても、賃貸の安定が全体を支える。それでも自己資本の利回りは資本コストに届かず、倍率は限られる。
- 不動産:数量 6.8(賃貸可能面積(千㎡・推定))× 価格 1.63(1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 4 億円。6,800㎡、賃料は物価の1.34倍を上回る1.55倍、営業利益率33%
- 映画:数量 20.0(年間入場者数(万人・推定))× 価格 0.21(1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。20万人×1人あたり0.207億/万人(今の1.34倍)、利益率6%
- 自動車教習:数量 9.2(年間入所者数(百人・推定))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円/百人・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。920人×約44.1万円(今の1.34倍)、利益率10%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:古いビルの建て替え・共同化が実現し、賃料も物価を上回る必要がある。条件が多く、実現は低めの確率。10年国債3%の世界で金利が重く、開発の資金負担も大きい。
やや楽観 17% 賃貸が物価を少し上回って伸びる 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,074 円22 億円
ビルの賃料は物価を少し上回って上がり、空室もほとんど出ない。映画は新宿武蔵野館に絞って黒字を保ち、火災からの復旧後に客足も戻る。教習は少子化の影響が小さく、料金を毎年改めることで利益を守る。ただ再開発や売却は起きず、現金は会社に積み上がるだけだ。社長の資本政策も大きくは変わらない。営業利益は今の3倍近くに増えるが、規模が小さい分、資本の使い道が変わらない限り、評価の大きな上方修正は見込みにくい。株主にとっては、物価に連れて少しずつ増える利益を待つ10年になる。会社は社長の下で、これまでの路線を静かに続ける。
- 不動産:数量 5.8(賃貸可能面積(千㎡・推定))× 価格 1.49(1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 3 億円。5,800㎡、賃料1.42倍、利益率29%
- 映画:数量 24.0(年間入場者数(万人・推定))× 価格 0.21(1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。24万人×今の1.34倍、利益率4%
- 自動車教習:数量 9.0(年間入所者数(百人・推定))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円/百人・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。900人×今の1.34倍、利益率9%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 22 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新宿の賃料が物価を少し上回るのは自然な前提。ただ、小さな会社で再開発まではいかず、本社費も重い。
中立 40% 賃貸が柱のまま、映画と教習がじわじわ細る 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,501 円16 億円
賃貸面積は変わらず、賃料は物価並みに上がる。減価償却は取得当時の値段のままなので、ビルの利益率は物価で自動的に膨らむが、建て替えや大規模修繕の費用はいずれ必要になる。映画は新宿武蔵野館だけが残り、客数は今より2割減り、小さな黒字にとどまる。教習所は18歳人口の減少で入所者が1割減り、料金の上げでなんとか利益を保つ。本社費は物価で増え、営業利益は今の2倍弱にとどまる。映画や教習が赤字にならないかぎり、全体の利益の形は大きく変わらない。配当は小さく始まり、現金の多くは会社に残る。会社は普通に存続するが、特別な成長も大きな再編も起きない、地味な10年になる。
- 不動産:数量 5.5(賃貸可能面積(千㎡・推定))× 価格 1.41(1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。5,500㎡のまま、賃料は物価並みの1.34倍、利益率26%(減価償却は物価で増やさない)
- 映画:数量 22.0(年間入場者数(万人・推定))× 価格 0.21(1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。22万人×今の1.34倍(シネマカリテ閉館後の1館・火災休館の影響を織る)、利益率3%
- 自動車教習:数量 8.6(年間入所者数(百人・推定))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円/百人・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。860人(実質0.9倍)×今の1.34倍、利益率8%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)4 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:古いビルの賃貸は安定し、映画と教習は構造的に細る。社長が経営を握り、大きな再編が起きないという、いちばん起こりやすい形。
やや悲観 25% 空室と改修費で賃貸が弱り、映画は赤字になる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,041 円11 億円
古いビルの耐震・設備の改修費がかさみ、空室が出て賃料の上げも物価に追いつかない。映画は火災の休館と客足の戻りの悪さで赤字になる。教習は入所者が2割減る。本社費は物価で増え、営業利益は今よりわずかに高い程度にとどまる。現金は残るが、余った現金は谷で食われて今の0.75倍になる。会社は存続するが、価値は稼ぐ力ではほとんど出ず、資産の売却価値が実質の下値になる。映画の赤字は固定費の重さから続き、本社費の増加が利益を食う。新リース会計基準で数字の形は変わるが、中身の稼ぐ力は変わらない。株価は時価総額で見て、純現金と古いビルの値打ちの間をさまよう。
- 不動産:数量 5.2(賃貸可能面積(千㎡・推定))× 価格 1.26(1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。5,200㎡(空室増)、賃料1.20倍(物価より弱い)、利益率22%
- 映画:数量 17.0(年間入場者数(万人・推定))× 価格 0.21(1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。17万人×今の1.34倍、赤字3%
- 自動車教習:数量 7.8(年間入所者数(百人・推定))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円/百人・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。780人×今の1.34倍、利益率4%
倍率:事業の純利益が小さくROEはk8.25%を大きく下回り、稼ぐ力から出る価値は4億円ほどと低い。やや悲観は資産の売却価値(floor_assets_oku)が稼ぐ力を上回るため、そちらを床にした。
確率:古いビルの空室増と更新費は現実的。映画の赤字も、すでにカリテが閉じた事実から無理のない前提。
悲観 10% 映画館を閉じ、教習も縮み、ビルだけが残る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 841 円9 億円
火災を機に新宿武蔵野館を閉じ、映画事業から撤退する。教習所は入所者が4割減り、赤字に近づく。賃貸ビルは更新費がかさみ空室も出て、賃料は物価に追いつかない。営業利益は赤字になる。会社は事業を整理して賃貸と現金で食いつなぐ形になり、少数株主にとっては、資産を売って戻すか、そのまま塩漬けかを社長が決める状態が続く。株主にとっては、長く待たされる10年になる。教習所も撤退や売却の対象になり、少数株主への説明は乏しいままになる。会社は小さな賃貸会社として残り、現金も資産も、どう扱うかは社長の腹ひとつになる。
- 不動産:数量 4.5(賃貸可能面積(千㎡・推定))× 価格 1.16(1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 1 億円。4,500㎡(空室増)、賃料1.10倍、利益率18%
- 映画:数量 0.0(年間入場者数(万人・推定))× 価格 0.21(1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。映画事業から撤退
- 自動車教習:数量 6.0(年間入所者数(百人・推定))× 価格 0.44(1人あたり売上(億円/百人・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。600人×今の1.34倍、損益ゼロ
倍率:赤字なので稼ぐ力は使えず、売れる資産(floor_assets_oku)の床で見る。今の自己資本40億円に0.22倍を掛けた約9億円が、下の床の資産額と近い。
確率:映画館の恒久閉鎖と、教習所の入所者の急減、ビルの空室増が重なる複合。小さな会社では起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
不動産
新宿の武蔵野ビル・野和ビルなどの賃貸と土地関係。売上の約4割強を占める。
| 数量賃貸可能面積(千㎡・推定) | 価格1千㎡あたりの年間賃料収入(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.5 | 1.05 | 6 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 1.41 | 8 | 2 |
取り方:売上5.79億円(開示)を、年間賃料 約10.5万円/㎡と仮定して面積約5,500㎡と推定した(面積は開示で確認できず推定)。営業利益は開示がなく、減価償却が軽い古いビルとして利益率を約3割と置いた(推定)。
映画
新宿武蔵野館の興行と配給。シネマカリテは2026年1月に閉館した。
| 数量年間入場者数(万人・推定) | 価格1人あたり売上(億円/万人・名目、売店を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.4 | 0.15 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 0.21 | 5 | 0 |
取り方:売上4.24億円(開示)を、1人あたり0.155万円(売店込み)で割って入場者数を約27万人と推定。カリテの赤字を含め営業損益は約-0.45億円と推定(セグメント利益は開示を確認できず)。
自動車教習
埼玉県寄居町の指定教習所(寄居武蔵野自動車教習所)。入所者数×料金。
| 数量年間入所者数(百人・推定) | 価格1人あたり売上(億円/百人・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.6 | 0.33 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.6 | 0.44 | 4 | 0 |
取り方:売上3.16億円(開示)を、教習料金 約33万円/人として入所者数を約960人と推定。営業利益は約9%と推定(開示で確認できず)。
リスクと懸念
稼ぐ力の弱さ
営業利益は年1億円に届かず、今期の会社予想はさらに小さい。本社費は物価で増え、売上が少し落ちるだけで赤字に傾く。資本効率が資本コストを下回る状態が続けば、時間がたつほど価値は削られる。
ビルの老朽化と火災
1928年竣工のビルは耐震や設備の更新費が重い。2026年9月23日には武蔵野ビル7階で火災が起き、新宿武蔵野館は当面休館になった。保険や復旧の費用、休館の長さは開示を待つしかない。
映画事業の構造的な縮小
シネマカリテを閉じたのは、映画事業の厳しさの表れだ。配信の広がりで客足は戻りきらず、客席を持つ固定費は重い。新宿武蔵野館に絞っても黒字を保てるとは限らない。
少子化による教習所の縮小
寄居町の教習所は18歳人口の減少に直接さらされる。地方の教習所は統廃合が進み、入所者の減りを料金の改定だけでは補いきれなくなる恐れがある。
少数株主に戻らない現金
社長の持株が3割強あり、配当は無く、自社株買いの実績も見当たらない。9億円の純現金は時価総額の3割を超えるが、株主に戻るかどうかは社長の判断にかかっている。
流動性の乏しさ
株数は約105万株で、日々の売買は薄い。福岡証券取引所への重複上場の効果は限られ、まとまった売買は値を動かす。非公開化の話が出ると、価格が一気に動く可能性もある。
今後の分かれ目
- 武蔵野ビルの建て替え・共同化・売却が正式に決まったら
- 楽観の確率を上げ、含み益の大きさと、少数株主への還元の方針を見直す。ここが価値を最も動かす分かれ目になる。
- 新宿武蔵野館が休館から再開し、客足が火災前の水準に戻ったら
- 映画の入場者を今より多く置き、やや悲観の確率を少し下げる。
- 賃貸等不動産の時価が開示され、簿価を大きく上回っていたら
- 悲観の床を上げ、資産面の評価を見直す。ただし含み益を利益と二重に数えないよう注意する。
- 配当の再開や自社株買いが発表されたら
- 現金の戻り方を0.5から上げ、余った現金の評価を引き上げる。
- 教習所の入所者数が急に減ったら
- 教習の数量を下げ、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 中間決算(2026年11月)での不動産・映画の損益と、火災に関する開示
- 賃貸等不動産の時価と、ビルの再開発・売却に関する開示
- 配当・自社株買いなど還元方針の変更
- 教習所の入所者数と映画の入場者数の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の純利益÷自己資本が資本コストを下回るため、1÷k(約12.5倍)を上限とする式から置いた。今の株価や過去のPER・PBRには寄せていない。今の時価総額は26億円で、中立の10年後の時価総額は13億円台と、今の値段を大きく下回る。これは今の株価が、確認できていない含み益や再開発を先に織り込んでいる結果で、数字合わせで寄せなかった。新リース会計基準(2028年3月期から)で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。ビルを自社で持つため影響は小さい。減価償却は物価で増やさず、取得当時の値段のままとした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→12.12 倍・やや楽観 PER 12→12.12 倍・中立 PER 11→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。