結論
ビケンテクノは、大阪に本社を置くビルメンテナンスの中堅だ。病院、ホテル、競馬場、食品工場の清掃と設備管理、警備を請け負い、ホテル 2 棟と賃貸の不動産も持つ。筆者の結論は「やや割安」である。本業の稼ぎは安定しているが、利益の 8 割を社内にため込み、そのお金が資本コストを下回る不動産やホテルに回る。
2026 年 3 月期は売上 365 億円、営業利益 21 億円だった。清掃の値上げが通り、不動産の売却も重なった。今期は 16 億円への減益を見込む。人件費の上昇が先に来て、値上げが後から追う形が続く。
10 年先も、ビルの清掃と管理は人の手が要る仕事として残る。最低賃金が上がるほど、委託の値段も上がる。人手を集められる会社だけが契約を増やせる時代で、外国人材を 400 人ほど雇う同社は有利な側にいる。
筆者が気にしているのは資本の使い方だ。配当性向は 2 割に届かず、自社株買いもない。創業家と関係先が 4 割超を握り、ためたお金の使い道を外の株主が変える手立ては乏しい。事業の価値は今の値段をやや上回るが、その差は株主の手に届きにくい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ビケンテクノの本業は悪くない。ビルの掃除は 10 年後も必ず要り、人手不足が値上げの追い風になる。顧客の現場に深く入り、契約は毎年更新される。オーナーとして持つなら、本業のビルメンテだけを持ちたい会社である。
問題は、本業の稼ぎがそのまま株主に来ないことだ。本業は資産を使わないので、稼いだ利益の多くは自由に使えるお金、つまりオーナー利益になる。ところが会社はそのお金を配らず、利回りの低い不動産とホテルに回してきた。資本コストを下回る投資を重ねれば、帳簿は太っても価値は育たない。
安全域は薄い。事業の価値は今の値段を少し上回るが、ためたお金を外の株主が引き出す手立てがない。創業家が資本の使い方を変えるか、非公開化を選ばない限り、その差は埋まりにくい。
筆者は、本業の価値を認めつつも、今の値段に大きな安全域があるとは見ない。
何で稼ぐ会社か
売上の 9 割近くをビルメンテナンスが稼ぐ。清掃、設備の保守、警備、受付をまとめて請け負い、毎月決まった額を受け取る継続契約が中心だ。顧客は病院、ホテル、オフィスビル、物流倉庫、データセンター、食品工場と幅広い。阪神と京都の競馬場の清掃も長く担い、開催日だけ働く登録の人を 1,300 人以上抱える。食品工場の洗浄と殺菌、研究所の実験動物の飼育といった、手間のかかる専門の仕事も手がける。
残りは 5 つの小さな事業だ。不動産は、自社で持つビルの賃貸と物件の売買で、簿価は 130 億円を超える。ホテルは東京の神田と沖縄の那覇に 1 棟ずつ持つ。ほかに介護の施設、ミスタードーナツなどのフランチャイズの店、病院の経営の助言、太陽光の発電がある。
稼ぎの源は単純だ。人を集め、育て、現場に送る。売上の多くは人件費として出ていき、残る利益は売上の 1 割ほどにとどまる。会社全体で常勤と臨時を合わせて 5,000 人を超える人が働き、その人の数が売上の天井を決める。
本社は大阪の吹田にあり、関西が地盤だ。東京、名古屋、九州にも拠点を置き、シンガポールにも現地の会社を持つ。
優良さと弱いところ
強みは、手間のかかる現場を長く任されていることだ。病院の清掃は感染の管理が要り、食品工場の洗浄は衛生の基準が厳しい。競馬場のように大勢の臨時の人を動かす現場もある。一度入れば、顧客は簡単には替えない。
弱さは 2 つある。第 1 に、業界の作り手が多すぎることだ。全国に数千社がひしめき、官公庁や大手のビルは入札で値段が決まる。ビケンテクノの規模は日本管財やイオンディライトの数分の 1 で、値段を自分で決める力は弱い。
第 2 に、資本の効率が低い。過去 10 年の ROE の中央値は 6.2% で、資本コストを下回る。本業のビルメンテは資産をあまり使わないが、利益を不動産とホテルに回してきたため、会社全体の稼ぐ力が薄まった。掲げる ROE 10% と営業利益率 10% には、どちらも遠い。
2024 年には、元社員がマンションの管理組合の財産を着服した事件も明るみに出た。現場を預かる会社として、管理の甘さは信用に響く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ビルメンテナンスは、景気に強いが伸びにくい業界だ。ビルがある限り掃除と点検は要り、契約は毎年ほぼ自動で更新される。景気の谷でも売上は 1〜2 割しか落ちない。その代わり、建物の数は大きく増えない。
業界の最大の論点は人手だ。清掃と警備の担い手は高齢化し、若い人は集まらない。最低賃金は年 3% 以上で上がり続ける。これは悪い話ばかりではない。人件費が上がれば、委託の値段も上がる。人を確保できない中小の会社が仕事を返し、人を集められる中堅以上に契約が寄っていく。ビケンテクノが外国人材を雇い、技能実習から特定技能へと受け入れを広げているのは、この流れに乗るためだ。
機械とロボットも効いてくる。床の清掃ロボット、遠隔の監視カメラ、設備の自動の点検は、少ない人で同じ広さを回すための道具になる。筆者はこれを脅威より追い風と見る。人の数で売上が決まる上限を、機械で少し押し上げられるからだ。事務と受付の一部は AI に置き換わるが、現場の体を使う仕事の芯は残る。
競合は日本管財、イオンディライト、ハリマビステム、東京美装など。大手は全国の大型ビルを束ね、中堅は地域と専門の現場で生きる。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、その割合は小さい。2026 年 3 月期の配当性向は 19%、自己資本に対する配当の比率は 1.2% にとどまる。自社株買いの実績はない。会社は「安定配当と内部留保の充実」を掲げる。
ためた利益の行き先は不動産とホテルだ。不動産の簿価は 130 億円を超え、ホテル 2 棟の資産も 40 億円ある。借入は 74 億円、現預金は 75 億円で、差し引きはほぼゼロだ。
株主の構成も効く。筆頭の東洋商事が 28%、創業者の名を冠した財団が 7%、取引先の持株会が 13% を持つ。創業家の梶山家が社長を出し、関係先と合わせて 4 割を超える。買収の提案が外から来ても、通る見込みは薄い。逆に、創業家が非公開化を選ぶ道は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
人手不足は、人を集められる会社にとって追い風だ。最低賃金が上がるたびに、委託の値段も上がる。中小の会社が人を集められずに仕事を返し、その契約が中堅に寄ってくる。ビケンテクノは外国人材を 400 人ほど雇い、受け入れの仕組みを持つ。2026 年 3 月期に清掃の値上げが通ったのは、その証拠だ。
顧客の顔ぶれもよい。病院、データセンター、食品工場、物流倉庫は、これから数が増えるか、衛生と安全の基準が上がる現場だ。手間のかかる専門の清掃は、値段で負けにくい。
資産も厚い。不動産の簿価は 130 億円を超え、賃料は物価とともに上がる。ホテルは訪日客の増加で稼働と単価が上がった。創業家が ROE 10% の目標に本気で向き合い、配当を増やせば、評価は一気に変わる。株価は純利益の 6 倍台で、事業の価値を下回っている。
10 年で見れば、清掃のロボットと遠隔の監視が 1 人あたりの売上を押し上げる。人の数の上限を、機械が少しずつ広げていく。
慎重な見方
利益をためて配らない会社は、帳簿が太るほど ROE が下がる。ビケンテクノの ROE は過去 10 年で一度も 9% に届いていない。配当性向 2 割の方針が続けば、10 年後の自己資本は今の 1.5 倍近くに膨らみ、ROE は 5% を割る。ためたお金は利回りの低い不動産とホテルに回り、株主の手には届かない。
本業の値決めも強くない。官公庁と大手のビルは入札で、作り手は全国に数千社ある。人件費の上昇は先に来て、値上げは後から追う。今期の減益見通しは、その時間差の表れだ。人を集められない年が続けば、契約を断るしかない。
管理の甘さも気になる。元社員による管理組合の財産の着服は、現場を預かる会社の信用を傷つけた。介護とフランチャイズは赤字が続き、撤退の判断も遅い。創業家が 4 割超を握り、外の株主が資本の使い方を変える手立てはない。
訪日客の波に乗ったホテルも、一度の感染症や円高で稼働は落ちる。本業の安定を、脇の事業が揺らす構図は変わらない。
どちらに重みを置いたか
本業の強さは本物で、人手不足の時代に値上げを通せる側にいる。ただ、ためたお金を配らない資本の使い方が、事業の価値を株主の価値に変える道をふさいでいる。確率は中立を中心に置き、資本の使い方が変わる楽観よりも、変わらない慎重な側をやや厚くした。配当の方針が変わるか、利益率が 2 期続けて上がるまでは、楽観の側に寄せる理由は弱い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,653 円200 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 392 円30 億円)。 今の値に割り戻すと 1,496 円113 億円、今との差 +32.5%、 期待の年率 +10.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,744 円358 億円 | 530 円40 億円 | +367.1% | +16.7% | 422 円32 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,794 円286 億円 | 464 円35 億円 | +277.2% | +14.2% | 937 円71 億円 |
| 中立 | 40% | 2,951 円223 億円 | 398 円30 億円 | +196.6% | +11.5% | 1,339 円101 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,024 円77 億円 | 345 円26 億円 | +21.2% | +1.9% | 274 円21 億円 |
| 悲観 | 10% | 532 円40 億円 | 199 円15 億円 | −35.3% | −4.3% | 73 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,653 円200 億円 | 392 円30 億円 | +169.7% | +10.4% | 3,045 円230 億円 |
今の株価時価総額 1,129 円85 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 人手不足を値上げに変え、資本の使い方も変わる 利益 26 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,744 円358 億円
人を集められない中小の会社から契約が流れ込み、ビルメンテの売上は人の数を超えて伸びる。外国人材と清掃ロボットで 1 人あたりの売上が上がり、値上げは物価を上回って通る。病院とデータセンターの専門の清掃が利益率を押し上げ、本業の利益率は 12% 台に乗る。ホテルは訪日客で稼働と単価が上がる。創業家は ROE 10% の目標に向けて配当を増やし、介護の赤字の事業から手を引く。会社全体の営業利益率は 7% 台に届き、過去最高を更新する。それでもためたお金の多さから、ROE は資本コストに届かない。人手の制約が強いほど、人を集められる会社の値打ちは上がるという見立てが、そのまま当たる形である。
- ビルメンテナンス:数量 4,600(現場で働く人(常勤換算・人、推定))× 価格 980(1 人あたりの年間売上(万円))→ 売上 451 億円・営業利益 56 億円。4,600 人(1.02 倍)× 980 万円(1.39 倍。値上げが物価を上回る)、利益率 12.5%
- 不動産:数量 134(不動産セグメントの資産(簿価・億円))× 価格 0.13(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる))→ 売上 17 億円・営業利益 6 億円。簿価 134 億円 × 0.13(賃料の値上げと売却)、利益率 32%
- ホテル:数量 85,000(販売した客室(室泊・年、推定))× 価格 1.80(1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。8.5 万室泊(1.05 倍)× 1.80 万円(1.49 倍。訪日客で単価が上がる)、利益率 35%
- 介護・フランチャイズ・その他:数量 40.0(事業所・店舗(か所、推定))× 価格 0.72(1 か所あたりの年間売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。40 か所 × 0.72 億円、黒字化 2%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価を上回って通り、創業家が還元を厚くする 2 つが重なる筋書き。過去 10 年で営業利益率 6% 超が無く、還元の方針も変わっていないので 8% とした。
やや楽観 22% 値上げが物価並みに通り、本業の利益率が少し上がる 利益 21 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,794 円286 億円
人手不足のなかで、ビケンテクノは外国人材の受け入れで人の数をほぼ保つ。値上げは物価並みに通り、機械の導入で 1 人あたりの売上も少し上がる。本業の利益率は 11.8% に上がる。ホテルは訪日客の増加で稼働が上がり、不動産は賃料の改定が進む。介護の赤字は縮み、会社全体の営業利益は 30 億円ほどになる。配当性向は 2 割前後のままで、ためたお金は新しい不動産と設備に回る。ROE は 6% 前後にとどまる。
本業は地味だが、毎年の更新で着実に稼ぐ。株主から見ると、利益の伸びはためたお金の重さで薄まる。
- ビルメンテナンス:数量 4,450(現場で働く人(常勤換算・人、推定))× 価格 960(1 人あたりの年間売上(万円))→ 売上 427 億円・営業利益 50 億円。4,450 人(0.99 倍)× 960 万円(1.36 倍)、利益率 11.8%
- 不動産:数量 134(不動産セグメントの資産(簿価・億円))× 価格 0.12(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。簿価 134 億円 × 0.12、利益率 31%
- ホテル:数量 84,000(販売した客室(室泊・年、推定))× 価格 1.72(1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み))→ 売上 14 億円・営業利益 5 億円。8.4 万室泊(1.04 倍)× 1.72 万円(1.42 倍)、利益率 32%
- 介護・フランチャイズ・その他:数量 39.0(事業所・店舗(か所、推定))× 価格 0.70(1 か所あたりの年間売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。39 か所 × 0.70 億円、利益率 0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 259 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年 3 月期に値上げが通った実績があり、人手不足で中堅に契約が寄る流れも見える。資本の使い方は変わらない前提で 22% とした。
中立 40% 人は少し減るが値上げで補い、利益は名目で少し伸びる 利益 16 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,951 円223 億円
現場で働く人は高齢化で少しずつ減り、ビルメンテの人数は 1 割弱減る。それを値上げと機械の導入が補い、本業の売上は物価並みに伸びる。利益率は 11% 前後を保つ。不動産は売却をならすと賃料が中心になり、ホテルは訪日客で底堅い。介護とフランチャイズは小さな赤字が続く。会社全体の営業利益は 24 億円ほどで、今より少し多い。配当性向は 2 割前後のままで、自己資本は 1.5 倍近くに膨らむ。ROE は 5% を割り、資本コストとの差は開く。
株主から見れば、本業は物価並みに稼ぎ続けるが、その果実の大半は社内に残る筋書きである。
- ビルメンテナンス:数量 4,300(現場で働く人(常勤換算・人、推定))× 価格 945(1 人あたりの年間売上(万円))→ 売上 406 億円・営業利益 45 億円。4,300 人(0.96 倍。高齢化)× 945 万円(物価並み 1.34 倍)、利益率 11.0%
- 不動産:数量 134(不動産セグメントの資産(簿価・億円))× 価格 0.11(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる))→ 売上 15 億円・営業利益 4 億円。簿価 134 億円 × 0.11(売却をならし賃料中心、物価並み)、利益率 30%
- ホテル:数量 82,000(販売した客室(室泊・年、推定))× 価格 1.65(1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。8.2 万室泊(1.02 倍)× 1.65 万円(1.36 倍)、利益率 30%(償却は物価で増えない)
- 介護・フランチャイズ・その他:数量 38.0(事業所・店舗(か所、推定))× 価格 0.68(1 か所あたりの年間売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。38 か所 × 0.68 億円(1.34 倍)、利益率 −2%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手の制約と値上げの力、資本の使い方の重さが打ち消し合う落としどころとして 40% とした。
やや悲観 20% 人が集まらず契約を断り、値上げも追いつかない 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,024 円77 億円
清掃と警備の担い手が想定より速く減り、ビケンテクノは契約の一部を断る。外国人材の制度の見直しで受け入れも細る。人件費は毎年上がるのに、入札の案件では値上げが追いつかない。本業の利益率は 9.5% に下がる。ホテルは訪日客の伸びが止まり、稼働が落ちる。介護の赤字は広がる。会社全体の営業利益は 11 億円ほどに落ちる。配当は額を据え置き、ためたお金は使い道のないまま積もる。
経営は機械の導入で人の不足を補おうとするが、投資の負担が先に来て、利益の回復は遅れる。本業の価値は残るが、資本コストを稼げない会社として長く低く評価される。
- ビルメンテナンス:数量 4,000(現場で働く人(常勤換算・人、推定))× 価格 900(1 人あたりの年間売上(万円))→ 売上 360 億円・営業利益 34 億円。4,000 人(0.89 倍)× 900 万円(1.28 倍、物価に届かない)、利益率 9.5%
- 不動産:数量 134(不動産セグメントの資産(簿価・億円))× 価格 0.10(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる))→ 売上 13 億円・営業利益 3 億円。簿価 134 億円 × 0.10、利益率 25%
- ホテル:数量 75,000(販売した客室(室泊・年、推定))× 価格 1.50(1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。7.5 万室泊(0.93 倍)× 1.50 万円(1.24 倍)、利益率 20%
- 介護・フランチャイズ・その他:数量 34.0(事業所・店舗(か所、推定))× 価格 0.62(1 か所あたりの年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 −1 億円。34 か所 × 0.62 億円、利益率 −5%
倍率:ROE 2.4% が k を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て、1÷k の 12.5 倍の 6 割の 7.5 倍。
確率:今期の減益見通しは、人件費の上昇が値上げに先立つ時間差の表れで、それが長く続く筋書き。業界全体の人手の制約は強く、20% とした。
悲観 10% 人手の崩れと事故で信用を失い、赤字に転じる 利益 −6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 532 円40 億円
担い手の減少で、本業の現場を回せなくなる。大手のビルは日本管財やイオンディライトに束ねられ、ビケンテクノは入札で値下げを迫られる。管理組合の財産の着服のような事故が再び起き、病院やマンションの顧客が離れる。ホテルは訪日客の減少と修繕の費用で赤字に近づく。会社は介護とフランチャイズの撤退に追われ、全体の営業は赤字になる。配当は減り、株主に残るのは不動産とホテルの売れる価値が中心になる。
帳簿の自己資本は残っても、外の株主に届く価値はその一部にとどまる。創業家は会社を守るが、外の株主への還元は後回しになる。
- ビルメンテナンス:数量 3,600(現場で働く人(常勤換算・人、推定))× 価格 850(1 人あたりの年間売上(万円))→ 売上 306 億円・営業利益 18 億円。3,600 人(0.80 倍)× 850 万円(1.21 倍)、利益率 6%
- 不動産:数量 134(不動産セグメントの資産(簿価・億円))× 価格 0.08(資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる))→ 売上 11 億円・営業利益 2 億円。簿価 134 億円 × 0.08、利益率 15%
- ホテル:数量 65,000(販売した客室(室泊・年、推定))× 価格 1.35(1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。6.5 万室泊(0.81 倍)× 1.35 万円(1.11 倍)、利益率 5%
- 介護・フランチャイズ・その他:数量 30.0(事業所・店舗(か所、推定))× 価格 0.60(1 か所あたりの年間売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。30 か所 × 0.60 億円、利益率 −8%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は不動産とホテルの簿価の 7 割から純負債と撤退の費用を引き、創業家の支配で戻り方 0.5 を掛けた約 40 億円で、今の自己資本 229 億円の 0.175 倍。
確率:過去 20 年で赤字の期は無いが、営業利益率は 2011 年 3 月期に 1.5% まで下がった。人手の崩れと不祥事が重なる筋書きとして 10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビルメンテナンス
病院・ホテル・競馬場・オフィス・食品工場・データセンターの清掃、設備管理、警備、受付。継続契約が中心。
| 数量現場で働く人(常勤換算・人、推定) | 価格1 人あたりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,500 | 705 | 317 | 36 |
| 10 年後 中立 | 4,300 | 945 | 406 | 45 |
取り方:人数の開示は事業別に無いので推定。従業員 2,427 人と臨時 2,910 人(競馬場の登録を含む)のうちビルメンテに働く人を常勤換算で約 4,500 人、1 人あたり年 705 万円の売上と置いた(317 億円)。営業利益 36.3 億円はセグメント利益(全社費用 22.4 億円は調整に入れた)。AI エージェント代替は「現場の体」の行で、受付と管理の事務の部分だけを数量と k の寿命に入れた。
不動産
自社で持つビルの賃貸と、不動産の売買・仲介。
| 数量不動産セグメントの資産(簿価・億円) | 価格資産 1 億円あたりの年間売上(億円。賃料と売却。賃料は物価で上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 134 | 0.13 | 18 | 5 |
| 10 年後 中立 | 134 | 0.11 | 15 | 4 |
取り方:賃貸と売買の内訳の開示は無い。セグメント資産 134 億円(簿価)を数量に、2026/03 期の売上 17.8 億円を割った 0.133 を単価にした。前期は売上 6.7 億円で、当期は物件の売却が乗っている。10 年の筋書きは売却をならし、賃料(物価で上がる)を中心に置く。
ホテル
東京の神田と沖縄の那覇の自社保有のホテル 2 棟。
| 数量販売した客室(室泊・年、推定) | 価格1 室泊あたりの売上(万円・料飲込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80,700 | 1.21 | 10 | 3 |
| 10 年後 中立 | 82,000 | 1.65 | 14 | 4 |
取り方:客室数の開示は無いので推定。2 棟で約 260 室、稼働 85% として年約 8 万 700 室泊、1 室泊あたり料飲込み約 1.2 万円と置いた(9.8 億円)。償却費 0.83 億円は取得時の値段のままで物価で増えない。
介護・フランチャイズ・その他
介護の施設、フランチャイズの店、病院の経営の助言、太陽光の発電、保育など。
| 数量事業所・店舗(か所、推定) | 価格1 か所あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.51 | 20 | −2 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 0.68 | 26 | −1 |
取り方:介護 8.4 億円・フランチャイズ 8.8 億円・その他 3.0 億円の合計。事業所と店舗を約 40 か所、1 か所あたり 0.5 億円と推定した。営業利益は介護の赤字 1.5 億円が中心。
リスクと懸念
人手の確保
清掃と警備の担い手は高齢化し、従業員の平均年齢は 52 歳を超える。人を集められなければ契約を断るしかなく、売上の天井が下がる。外国人材の制度が変われば、受け入れの道も細る。
人件費と値上げの時間差
最低賃金は年 3% 以上で上がるが、委託の値上げは契約の更新を待つ。入札の案件では値上げが通りにくい。今期の減益見通しは、この時間差が利益を削る典型だ。
ためて配らない資本政策
配当性向は 2 割に届かず、自社株買いもない。ためたお金が利回りの低い不動産とホテルに回れば、ROE はさらに下がる。創業家と関係先が 4 割超を握り、外の株主が方針を変える手立てはない。
現場の不祥事
2024 年に元社員によるマンションの管理組合の財産の着服が明るみに出た。現場を預かる会社として、管理の甘さは顧客の信用に直結する。同じような事故が続けば、契約の更新に響く。
ホテルと不動産の振れ
ホテル 2 棟は訪日客と国内の旅行の波を受け、不動産は売却の有無で利益が年ごとに大きく変わる。本業の安定を、この 2 つが揺らす。
AI エージェント代替
受付、管理の事務、巡回の一部は、AI と遠隔の監視カメラに置き換わる。清掃と設備の現場の体の仕事は残るが、事務の部分の契約額は細る。
今後の分かれ目
- 配当性向を 3 割以上に上げるか、自社株買いを始めたら
- ためたお金が株主に届く道が開く。戻り方を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 本業の利益率が 2 期続けて 12% を超えたら
- 値上げが物価を上回って定着した証拠として、中立の利益率を上に直す。
- 新しい不動産やホテルの取得を続けたら
- 低い利回りの資産に資本が回る流れが続くとみて、やや悲観に重みを移す。
- 現場の不祥事が再び起きたら
- 顧客の離反を見て、悲観の確率を上げる。
- 創業家が非公開化や株式の売却に動いたら
- 事業の価値が値段に出る筋書きとして、楽観側を見直す。
見ておくもの
- ビルメンテの売上と利益率(値上げの浸透)
- 従業員と外国人材の数
- 配当性向と自社株買いの方針
- 不動産とホテルの取得・売却
- 介護とフランチャイズの赤字の行方
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER 6 倍台を見ずに、ROE と k 8.0% から決めた。中立の ROE は 4.7% と k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍で、その 8 割。利益率は全社 5.1% で、過去 12 年の山 5.7% の内側。10 年で溜まる現金は、創業家の支配と低い配当性向から戻り方 0.5 で数える。不動産とホテルの稼ぎは利益に残すので、資産の価値は別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.9→12.5 倍・やや楽観 PER 11.2→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5%。同じ領域のハリマビステム(+0.25%)より、不動産の売却とホテルの稼働で利益が振れる分だけ 0.25% 重い。