結論
早稲田学習研究会は、群馬・栃木・埼玉を中心に、66 の校舎で小中高生に受験の集団授業を行う塾だ。個別指導はあるが売上の 1 割弱で、フランチャイズ(加盟店)ではなく全部が直営である。筆者の結論は「割高」。事業は堅いが、10 年先の利益が今を下回ると見る。
強みは、郊外に 150〜200 坪の大型校舎を構え、正社員の教師が指導する体制だ。営業利益率は 20% 前後と、塾としては高い。配当性向は 68% で、累進配当を掲げ、創業者が 6 割超を持つ。
気になるのは AI である。生成 AI が解説と学習計画を安く出し、補習の一部を置き換える。少子化と重なり、生徒数は 10 年で 3 割ほど減ると置いた。
前期は決算期の変更で 14 か月の変則だった。売上 80 億円、営業利益 13 億円は 12 か月に直すと 68 億円と 11 億円にあたる。会社は今期、経常利益 34% 増を見込む。\n14 か月の数字は、12 か月に直して比べる必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「人の時間を売る事業が、10 年後も同じ値段で売れるか」を最も問う。
早稲田学習研究会の事業は、教師が教室で生徒に教える時間を売る。生成 AI は、この時間の一部を、安く、いつでも、個別に提供できる。受験の本番に向けた競争の場は残るが、補習の価格と回数は下がる。
この会社の長所は明らかだ。営業利益率 20% 前後、無借金、配当性向 7 割、創業者と株主の利害が揃っている。短所は、その利益を支える数量と価格が、10 年後に今より細る点である。
長く持つ株主として考えると、確かな堀(他社がまねできない強み)を見つけにくい。面倒見と合格実績の信頼は堀に近いが、AI が補習を安くする世界で、その信頼がどれだけ料金に反映されるかは読めない。読めない事業に高い値は払わない、というのが筆者の立場である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは三つの部門で、全部が直営の教室だ。
ゼミ部門は小中学生向けの集団指導で、41 校舎、売上の 4 分の 3。1 校舎あたり平均 500 人が通う大型の校舎で、群馬・栃木・埼玉に広がる。ハイ部門は高校生向けで 13 校舎、売上の 16%。ファースト個別は個別指導で 12 教室、小中高生が通う。
売上は授業料が中心で、期中平均の在籍生徒は 19,182 人。1 人あたり年 40 万円強の授業料になる。売上の地域は埼玉 40%、群馬 34%、栃木 19%。
講師は正社員が中心で、アルバイト中心の同業とは違う。教師の質が合格実績と評判を支える反面、人件費は固定費として重い。
従業員は 401 人、臨時雇用が年平均 705 人。平均年収は 614 万円。
新校舎は 2027 年 2 月から 2028 年 2 月にかけて埼玉と群馬に 5 つ開く計画で、投資は計 6 億円。
ゼミ部門の売上は、14 か月決算で 59.7 億円、ハイ部門は 13.0 億円だった。いずれも授業料収入が中心で、季節講習の売上も含む。売上総利益は 30 億円で、粗利率は 38% 弱になる。
優良さと弱いところ
優良さは「中の上」と見る。強みは、郊外の大型校舎と正社員教師による面倒見で、これが営業利益率 20% 前後を支えてきた。売上は 6 期連続で伸び、財務は自己資本比率 78% と堅い。現金は 32 億円あり、借入はない。
弱みは三つある。一つ目は地域で、売上の 9 割が北関東に集中する。二つ目は人で、創業者の会長に依存すると会社自身が書く。三つ目は競合の多さで、同じ地域に集団塾と個別指導が並び、値上げは物価に遅れる。
前期は営業利益率 16.6%で、会社の目標 18% に届かなかった。Web 広告と本社移転の先行投資が重かったと説明する。
経営の姿勢は、株主への還元に積極的だ。配当性向 68%、累進配当を掲げ、利益のほぼ全部を配当に回す。創業者が 6 割超を持つため、会社の利益が創業者の懐にも入る形で、少数株主と利害が揃っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
学習塾の市場は、子どもの数が減る一方で、1 人あたりの教育費が増える。群馬・栃木・埼玉の 15 歳人口も 10 年で 1 割強減る見込みで、生徒の母数は痩せる。通塾率の上昇と早期化が、それを一部補う。
逆風は、私立高校の授業料の実質無償化で、公立トップ校を狙う集団塾の母数が動くことだ。講師の確保も難しく、賃金の上昇が続く。
最も大きな変化は AI である。生成 AI は問題の解説と学習計画を安く出し、補習と個別の学習を置き換えはじめている。10 年のうちに、授業料を人の時間で売る事業の価格を押し下げると見るべきだ。受験の本番に向けた競争の場や、保護者が安心できる環境は、画面だけでは代われないが、通塾の頻度と回数は減るだろう。
競合は、早稲田アカデミー、東京個別指導学院、リソー教育、地域の集団塾と個別指導塾である。同じ地域に多数あり、郊外の大型校舎と正社員教師で差を付ける戦いになる。
受験の制度も変わりつつある。入試の方式が多様になり、学校ごとの対策の幅が広がっている。この面倒を見る力は、塾の価値として残るが、解説や演習の部分は AI が代替しやすい。
資本政策と M&A
資本政策は、創業者が 6 割超を持つ会社の典型だ。配当は 14 か月で 2 回、性向は 68% で、累進配当を掲げる。自己株式の取得は 0.8 億円と小さい。現金は 32 億円で、借入はなく、新校舎の投資 6 億円は自己資金で賄える。
創業者の会長と資産管理会社が発行済株式の 62% 以上を持ち、親会社や関係会社はない。少数株主は経営を動かせないが、配当の厚さは創業者の利益とも重なる。
買収の実績はなく、成長は新校舎の出店で進める。数値の中期経営計画は示されていない。
株主優待は、200 株以上を 1 年以上持つ株主に QUO カードを贈る。株主数が不明で正確な費用は分からないが、年 1 億円には届かず、還元に数えても差は 1 ポイントに満たない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
郊外の大型校舎と正社員教師による面倒見は、アルバイト講師中心の個別指導塾にまねできない。営業利益率は 20% 前後で、6 期連続の増収が実績を裏づける。
AI は解説を安く出せても、生徒に勉強を続けさせる力は人が担う。受験の本番に向けた競争の場と、保護者が安心できる環境は、画面だけでは作れない。
配当性向は 68% で、累進配当を掲げる。無借金で現金が 32 億円あり、配当の原資は安定している。創業者が 6 割超を持ち、少数株主と利害が揃うため、還元の姿勢が変わりにくい。
埼玉の新校舎 5 か所が育てば、生徒数は少子化を補える。個別指導も伸ばせる。
会社は新校舎を埼玉に集中して出し、売上の 4 割を占める最大の地域で足場を固める。大型校舎は 1 校舎あたりの生徒数が多く、出店が当たれば利益率が高い。
ファースト個別は 12 教室と小さいが、1 人あたりの授業料は集団の 2 倍で、利益率の上積みになる。AI の補習と競合する部分は、人の付き添いを付けた形で差を付けられる。
慎重な見方
AI は補習と個別の学習を安く、いつでも出せる。授業料を人の時間で売る事業の型は、10 年で数量も価格も押される。人口の減りと重なり、生徒数は 3 割減ってもおかしくない。
コストは物価で上がる。正社員教師の人件費と大型校舎の家賃は固定費で、売上が減るほど利益率は削られる。前期は営業利益率が 16.6% と目標に届かず、先行投資の回収もまだ見えない。
売上の 9 割が北関東に集中し、創業者への依存を会社自身が認める。配当性向 68% は、利益が減れば減配に直結する。成長投資に回す余力も小さい。
私立高校の授業料の無償化で、公立トップ校を狙う集団塾の母数が動き、通塾の行き先も変わる。
加えて、AI の影響は一度に来ない。授業の回数が少しずつ減り、授業料の値上げが少しずつ通らなくなる形で現れる。気づいた時には固定費の重さで利益が大きく削られている。
また、14 か月決算の数字をそのまま見ると、売上が伸びたように見える。12 か月に直すと、前期より成長率は鈍く、利益率は目標に届いていない。
どちらに重みを置いたか
面倒見の強さと無借金の財務は評価するが、人の時間で売る事業の型への AI の影響を、数量と価格に反映した。確率は中立を厚くし、やや悲観と悲観で 4 割強に置いた。AI を自社の売り物にして売上が出ている開示はなく、楽観の生徒数も 1 倍を超えていない。
AI の影響は数量と価格に分けて置き、k と確率では重ねすぎなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 825 円83 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 437 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 717 円72 億円、今との差 −43.9%、 期待の年率 −0.1%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,588 円160 億円 | 892 円90 億円 | +93.9% | +6.8% | 149 円15 億円 |
| やや楽観 | 16% | 1,282 円129 億円 | 713 円72 億円 | +56.0% | +4.5% | 319 円32 億円 |
| 中立 | 36% | 1,009 円102 億円 | 485 円49 億円 | +16.8% | +1.6% | 538 円54 億円 |
| やや悲観 | 28% | 422 円43 億円 | 277 円28 億円 | −45.4% | −5.9% | 196 円20 億円 |
| 悲観 | 14% | 307 円31 億円 | 119 円12 億円 | −66.7% | −10.4% | 60 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 825 円83 億円 | 437 円44 億円 | −1.4% | −0.1% | 1,261 円127 億円 |
今の株価時価総額 1,279 円129 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 6% AI に代わられない面倒見で、通塾が減らない 利益 11 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,588 円160 億円
生徒数は少子化と AI の両方を受けながら、通塾率の上昇と埼玉の新校舎で今と同じ水準を保つ。授業料は物価並みに上がる。
正社員の教師が合格まで付き添う力が、画面の学習では代われない価値として評価される。営業利益率は 20% に乗る。
個別指導は 2 割増え、新しい稼ぎ口になる。営業利益は 15 億円ほどで、会社の今期予想と同じ水準である。ただ、AI の影響を軽く見た楽観の姿でもある。
これは、AI の影響が最も軽く、新校舎の出店も当たる姿である。会社の今期予想の達成を前提にしている。 個別指導を新しい柱に育て、授業料を物価並みに上げられる。AI の補習と競合する部分が小さく済む前提である。
- ゼミ(小中学生の集団指導):数量 15,556(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 69 億円・営業利益 14 億円。ゼミ 生徒数 1.00 倍・授業料 1.34 倍、利益率 20.0%
- ハイ(高校生の集団指導):数量 2,725(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。ハイ 生徒数 1.00 倍・授業料 1.34 倍、利益率 15.0%
- ファースト個別(個別指導):数量 1,081(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。個別 生徒数 1.20 倍・授業料 1.34 倍、利益率 18.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 160 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:郊外の大型校舎と正社員の教師体制が AI に勝つ筋書き。ただし AI を売り物にして売上が出ている開示はなく、生徒数は 1 倍を超えないので低く置いた。
やや楽観 16% AI の影響は限られ、生徒数の減りは人口並み 利益 9 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,282 円129 億円
生徒数は少子化の分、実質で 12% 減る。AI による個別学習は補習の一部を置き換えるが、集団授業と面倒見は残る。
授業料は物価並みに近く上がる。営業利益率は 18% 前後を保ち、営業利益は 12 億円ほど。
配当性向 7 割前後の累進配当は続くが、利益が減る分だけ増配は止まる。教師の賃金の上昇を授業料に移せるかが、この筋書きの分かれ目になる。
配当は性向 7 割を保つが、利益が減る分だけ増配は止まる。AI の代替が限定的で済むという前提の姿である。 個別指導が少し伸びて、集団の減りを補う。埼玉の新校舎は計画どおりに育ち、地域の偏りも少し和らぐ。
- ゼミ(小中学生の集団指導):数量 13,689(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 59 億円・営業利益 11 億円。ゼミ 生徒数 0.88 倍・授業料 1.32 倍、利益率 18.0%
- ハイ(高校生の集団指導):数量 2,398(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。ハイ 生徒数 0.88 倍・授業料 1.32 倍、利益率 13.5%
- ファースト個別(個別指導):数量 946(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。個別 生徒数 1.05 倍・授業料 1.32 倍、利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:少子化の分だけ生徒が減り、AI による置き換えは一部にとどまる筋書き。AI の代替を軽く見る姿で、2 割弱に置いた。
中立 36% 少子化と AI で生徒数は 3 割減る。授業料は物価に届かない 利益 6 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,009 円102 億円
生徒数は 10 年で実質 3 割ほど減る。人口の減りが 1 割強、AI による個別学習が残りを押し下げる。埼玉の新校舎は一部を補うが、全体を支えるほどではない。
授業料は物価の 10 年 1.34 倍に届かず、1.30 倍にとどまる。AI が補習の価格を下げ、競合も値上げに追随しないためだ。
教師の賃金と校舎の家賃は物価で上がる。固定費が重く、営業利益率は 14% に下がる。営業利益は 9 億円弱で、今の 8 割にとどまる。
配当性向 7 割の方針を守っても、増配は難しい。
会社の今期予想(営業利益 15 億円)は、この筋書きでは 10 年かけて 9 億円弱に戻る。埼玉の新校舎が増収に寄与するが、全体の流れを変えるには足りない。
- ゼミ(小中学生の集団指導):数量 11,200(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 48 億円・営業利益 7 億円。ゼミ 生徒数 0.72 倍・授業料 1.30 倍、利益率 14.0%
- ハイ(高校生の集団指導):数量 1,907(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。ハイ 生徒数 0.70 倍・授業料 1.30 倍、利益率 10.0%
- ファースト個別(個別指導):数量 766(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。個別 生徒数 0.85 倍・授業料 1.30 倍、利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:少子化で 12%、AI による個別学習への置き換えで 2 割弱、あわせて生徒数が 3 割ほど減る標準的な姿。人月で売る事業の型(AI エージェント代替)に当てはめた。
やや悲観 28% AI 学習が定着し、集団授業の価格が崩れる 利益 3 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 422 円43 億円
生徒数は 4 割ほど減る。AI が解説と学習計画を安く出し、補習の需要が細る。集団授業の価格は物価に追いつかず、1.22 倍にとどまる。
校舎の家賃と正社員の人件費は下がらず、固定費の重さが利益を削る。営業利益率は 8% 台まで落ち、営業利益は 5 億円弱。
校舎の統廃合を進めるが、閉校の費用もかかる。配当性向 7 割を守れず、減配する。
埼玉の新校舎は思うように育たず、投資の回収が遅れる。創業者の持株が 6 割あり、経営の方針は変わらないが、減配は避けられない。 校舎の統廃合の費用が出て、純利益はさらに削られる。
- ゼミ(小中学生の集団指導):数量 9,645(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。ゼミ 生徒数 0.62 倍・授業料 1.22 倍、利益率 9.0%
- ハイ(高校生の集団指導):数量 1,635(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。ハイ 生徒数 0.60 倍・授業料 1.22 倍、利益率 6.0%
- ファースト個別(個別指導):数量 631(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。個別 生徒数 0.70 倍・授業料 1.22 倍、利益率 8.0%
倍率:ROE 3.6%。ROE が k 7.25% を下回り、g は名目 0%。式の正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍だが、利益の質が大きく落ちる筋書きなので約 7 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.3 倍・時価総額 32 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:AI による個別学習が受験の補習を安く提供し、生徒数が半分近くまで減る筋書き。AI エージェント代替と少子化が同時に進む。人月で売る事業の型の悲観側で、中立に近い厚みで置いた。
悲観 14% AI に生徒を奪われ、赤字が続く 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 307 円31 億円
構造的に負ける。AI の個別学習が受験の補習の標準になり、集団塾の生徒数は 55% 減る。授業料は物価に追いつかず、1.10 倍にとどまる。
売上は 33 億円と半分に縮むが、校舎と正社員の固定費は残る。営業損益は赤字で、純利益はほぼゼロ。
校舎の売却や閉校が続き、配当は大きく縮む。事業の稼ぎでは値が付かず、現金と校舎の売れる価値が値の支えになる。
創業者側が持株を売る動きや、TOB、事業の売却が議論される可能性もある。この姿でも、現金と校舎の売れる価値は残る。 校舎を閉じるたびに敷金の回収と人員整理の費用がかかり、損失が膨らむ。
- ゼミ(小中学生の集団指導):数量 7,000(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 25 億円・営業利益 −1 億円。ゼミ 生徒数 0.45 倍・授業料 1.10 倍、利益率 -3.0%
- ハイ(高校生の集団指導):数量 1,090(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.00(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。ハイ 生徒数 0.40 倍・授業料 1.10 倍、利益率 -8.0%
- ファースト個別(個別指導):数量 450(期中平均の在籍生徒数(人))× 価格 0.01(生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。個別 生徒数 0.50 倍・授業料 1.10 倍、利益率 -4.0%
倍率:構造的に優良でなくなった姿。純利益はほぼゼロで、稼ぐ力では値が付かず、売れる資産が床になる。減損で自己資本を 62 億円に落とし、PBR 0.50 倍で床の近くに置いた。
確率:構造的に負ける筋書き。売上は 10 年で半分前後に縮み、赤字になる。AI エージェント代替の悲観で、売上が半分前後に縮む型に当てはめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ゼミ(小中学生の集団指導)
群馬・栃木・埼玉の郊外に大型校舎を構え、小中学生に高校受験の集団授業を行う。売上の 4 分の 3 を占める柱。
| 数量期中平均の在籍生徒数(人) | 価格生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 15,556 | 0.00 | 51 | 9 |
| 10 年後 中立 | 11,200 | 0.00 | 48 | 7 |
取り方:ゼミ部門の売上 59.7 億円(14 か月決算、有報)を 12 か月に直して 51.1 億円。平均在籍 15,556 人(開示)で割ると 1 人あたり年 32.9 万円。会社は単一セグメントで部門別の利益を開示しないため、営業利益は全社の 12 か月換算 11.3 億円を、ゼミ 17.5%・ハイ 13%・個別 15% の利益率と置いて配分した推定。
ハイ(高校生の集団指導)
高校生向けの大学受験の集団指導。13 校舎で、ゼミの卒業生が中心。
| 数量期中平均の在籍生徒数(人) | 価格生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2,725 | 0.00 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,907 | 0.01 | 10 | 1 |
取り方:ハイ部門の売上 13.0 億円を 12 か月に直して 11.1 億円。平均在籍 2,725 人(開示)で割ると 1 人あたり年 40.9 万円。営業利益は上の配分による推定。
ファースト個別(個別指導)
小中高生向けの個別指導。12 教室で、売上の 1 割弱。
| 数量期中平均の在籍生徒数(人) | 価格生徒1人あたり年間売上(億円、名目。12 か月に直した値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 901 | 0.01 | 6 | 1 |
| 10 年後 中立 | 766 | 0.01 | 7 | 1 |
取り方:個別指導部門の売上 6.8 億円を 12 か月に直して 5.9 億円。平均在籍 901 人(開示)で割ると 1 人あたり年 65.0 万円。営業利益は上の配分による推定。
リスクと懸念
AI エージェントによる代替
生成 AI が解説と学習計画を安く出し、補習と個別の学習が置き換わる。人の時間で売る型で、数量と授業料の両方が押される。中立で生徒数は 10 年で 3 割減ると置いた。
少子化と地域集中
売上の 9 割が群馬・埼玉・栃木に集中する。15 歳人口の減少と、私立高校の授業料の実質無償化による通塾先の変化が重なる。
固定費の重さ
正社員教師と大型校舎の家賃は固定費で、売上が減ると利益率が速く下がる。新校舎 5 か所の投資は計 6 億円で、立ち上げの赤字も出る。
創業者への依存
創業者の会長と資産管理会社が 62% 以上を持ち、会社自身も依存をリスクとして挙げる。持株の売却や承継の動きは株価に直接響く。
配当の持続性
配当性向 68% の累進配当は、利益が減ると維持が難しい。利益の波が、そのまま配当の波になる。
決算期の変更
前期は 14 か月決算で、前期比が使えない。12 か月への換算は筆者の推定で、会社の今期予想との比較には注意が要る。
今後の分かれ目
- 今期の営業利益が会社の見込み(15 億円前後)を下回ったら
- 先行投資の回収が遅れているとみて、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- ゼミ部門の在籍生徒数が 2 期続けて 1 割以上減ったら
- AI 学習への流出か少子化の加速とみて、数量の置き方を見直す。
- AI を活用した自社の新サービスで売上が開示されたら
- 売上の金額を確かめ、楽観の数量を 1 倍以上に見直す。
- 配当性向が 7 割を下回り、累進配当が見直されたら
- 還元の姿勢が変わったとみて、現金の戻り方を 0.5 に下げる。
- 創業者側の持株売却や TOB の発表があったら
- 買付価格と条件を、本質価値と比べて見直す。
見ておくもの
- ゼミ・ハイ部門の期中平均生徒数
- 営業利益率(目標 18%)
- 新校舎 5 か所の開校と立ち上がり
- 配当性向と累進配当の維持
- AI 関連サービスの売上開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は AI エージェント代替で g を名目 0% とし、正当化 PER = 1÷k = 11.8 倍を上限に、中立で約 8 割の 9.5 倍とした。同じ領域のステップ(13.4 倍)より低いのは、AI の置き換えを g に入れたため。AI の影響は数量・価格・k・確率・g の 5 か所に効くので、重ねすぎないよう、k の寿命と確率は表の範囲の中ほどにとどめた。今の株価は倍率の根拠にしていない。決算期変更の 14 か月は 12 か月に直して置いた。新リース会計基準の影響は、今の形にそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→13.79 倍・やや楽観 PER 11.8→13.79 倍・中立 PER 9.5→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。