結論
デリバリーコンサルティングは、企業のデータ基盤整備、システム刷新、AI導入を支援する技術系コンサルティング会社である。筆者の結論は割高だ。事業の必要性は10年後も残るが、顧客が必要とするコンサルタントの作業時間まで残るとは限らない。今の株価には、利益回復が進み、かつ少数株主にもその果実が届くという期待が織り込まれている。
2026年7月期は売上高28.4億円、営業利益1.47億円となり、前年の不振から回復した。ただし、売上高は前期比3.7%増にとどまり、会社計画にも届かなかった。2022年7月期には営業利益率16.5%を記録したが、その後は2.4%、7.8%、1.9%、5.2%と大きく振れている。顧客のデジタル投資が拡大していても、案件の取り方と技術者の稼働率次第で利益が崩れる事業だ。
会社は2029年7月期に売上高50億円、営業利益5億円を目指す。日鉄ソリューションズとの資本業務提携や、アクセンチュアとの販売代理店契約は案件獲得の入口を広げる。しかし、人を増やして作業時間を販売する成長方式は、AIエージェントによって根本から変わりつつある。会社が構想する知識の再利用やAI導入支援は対抗策になるものの、成果報酬型サービスが既に大きな売上を生んでいるという金額の裏付けは確認できない。
救いは財務である。2026年7月期末の純現金は約10.6億円あり、資金繰りによる事業消滅の危険は低い。一方、上場後の配当実績はなく、蓄積された現金が少数株主にいつ戻るかは不確かだ。10年後の稼ぐ力、株式の希薄化、現金の戻り方を分けて考えると、現在の時価総額約18億円に対して十分な安全域は見いだせない。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主にとって、最初の問いはデータ活用の仕事が10年後に存在するかどうかである。答えは、おそらく存在する、だ。企業ごとに異なる古いシステムを整理し、経営上の責任を伴う判断を行い、新しい技術を現場に定着させる作業は簡単には消えない。しかし、その仕事から得られる利益の取り分が、現在と同じ企業に残るかは別の問題である。
この会社の知識は、技術者、顧客との関係、案件ごとの経験に分散している。優秀な人材の離職、顧客による内製化、大手元請けによる契約の取り込み、AIエージェントによる工数削減が同時に起きうる。ソフトウェアの独占的な利用権や規制上の独占を持つ企業と違い、利益を守るためには毎年、新しい案件を獲得し直す必要がある。この性質の事業では、過去の高いROEをそのまま将来の再投資利回りと考えるべきではない。
オーナー利益を考えるときには、利益から採用、教育、営業、技術更新の負担を忘れてはならない。これらは設備投資として計上されなくても、事業を維持するための実質的な再投資である。顧客の契約が成果報酬型に変わり、一度作った技術資産を複数の顧客に使えるなら、その投資の利回りは改善する。ただし、それを示す継続売上や利益率の実績が揃うまでは、高い成長価値を先払いしない。
純現金約10.6億円は、会社の安全性を支える本物の財産だ。しかし株主が直接その現金を引き出せるわけではなく、経営陣が採用や買収に使う可能性もある。しかも既存の新株予約権が行使されれば、現在の株主が持つ一株当たりの取り分は薄まる。堀がまだ十分に証明されず、利益率の振れが大きく、現金還元の規律も固まっていない会社には、見込利益を大幅に割り引いて評価する必要がある。筆者は現時点で、その条件を満たす安全域はないと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、企業がデータを集め、意味をそろえ、業務で使えるようにするまでを支援する仕事である。顧客は大企業や大手ITサービス会社であり、データ基盤の設計、システム移行、プロジェクトの進行管理、分析環境の導入、AIの業務定着などを請け負う。完成品のソフトを多数の企業に同じ形で販売するよりも、顧客ごとに専門家を投入して成果物を納める性格が強い。
2026年の事業説明資料では、基幹システムの刷新、PMOと呼ぶ大規模案件の推進・統制、データ活用、AIエージェントの実装支援などを掲げている。Snowflake、Tableau、Microsoft Azure、SAPなどの技術や製品を組み合わせ、顧客の既存システムと新しい仕組みを接続する。自社の診断手法や実装方法論にも価値はあるが、主要な基盤ソフトやクラウドそのものを所有しているわけではない。顧客が最終的な運用を内製化すれば、同社の継続的な作業時間は減りうる。
会社の開示は実質的に単一のコンサルティング事業であり、五つの提供サービス別の売上高、契約件数、平均単価は公表されていない。このため、数量の起点には、会社が公表した2026年7月期末の直接プロジェクトに携わるコンサルタント172人を用いる。全社売上高28.41億円を割ると、稼働枠1人年当たり売上は約1,652万円になる。これはライセンス販売や外注分を含む全社の実現売上を人数で割った代理指標であり、顧客に請求する厳密な人月単価ではない。
営業面では、日鉄ソリューションズとの協業によって大手顧客への共同提案を増やし、アクセンチュアとの関係を通じてSAP関連の案件を狙う。2026年にはMicrosoftのData & AI分野のパートナー認定も取得した。こうした提携は小規模企業が単独では接触しにくい顧客への販路になる反面、大手企業が元請けとして顧客を握り、同社が実装の一部分を担当する場合は、価格交渉力を持ちにくい。誰が顧客との契約を握るかが、案件の数と利益率の両方を左右する。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、古い基幹システムから新しいデータ基盤まで扱い、設計から現場への定着まで伴走できる技術者の集団にある。2003年の設立以来、企業の複雑なシステムに向き合ってきた経験があり、2026年の資料では2018年8月以降の累計取引先が254社とされる。大学との共同研究によるデータ活用の診断手法もある。これらは提案の信用を高めるが、254社は累計であって現在の継続契約社数ではない。
長期の堀、つまり競争相手が容易には奪えない強みは、まだ広いとは言えない。法令上の独占的な許認可はなく、業界全体が必ず使う共同システムも所有していない。年間解約率の低さ、切り替えに年単位を要する独自基盤、繰り返し実現した値上げ率、独自データの蓄積収益についても、強い継続的優位を証明する数字は見つからない。特定案件で重要な協力会社であることと、会社全体が高い価格決定力を持つことは別だ。
資本効率も安定していない。過去にはROEが20%を超えた時期があったが、2025年7月期は約3%、2026年7月期も約10%である。人材採用や教育に先行して資金を投じても、顧客からの案件が予定どおり増えなければ稼働率が低下する。2026年7月期の営業利益改善は外注費の削減と稼働率の改善による部分が大きく、再投資の利回りが長年にわたり資本コストを上回るとまでは証明していない。
一方で、純現金が厚く、固定的な金融負債が小さい点は明確な長所だ。技術転換期に採用、教育、開発へ投資する時間を買える。しかし、人件費や都心のオフィス費用は案件が減った日に消えるわけではない。財務の強さは事業の存続可能性を高めるが、そのまま高い利益率や少数株主への還元を保証するものではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の企業向けIT・コンサルティング需要は、現時点では拡大市場である。IDCが2026年6月に示した予測では、国内のビジネスコンサルティングとITコンサルティングの合計支出額は2025年の約1兆4,554億円から2030年に約2兆2,897億円へ伸びる。ビジネスコンサルティング部分を差し引くと、ITコンサルティング部分は2025年約5,732億円、2030年約8,833億円となる。ただし、同社の売上にはシステム実装やライセンス関連も含まれるため、この分類と完全には一致しない。
同社の2026年売上28.4億円を2025年のITコンサルティング市場と単純比較すると約0.50%に相当する。これは市場での位置を知るための概算であり、同じ役務だけを取り出した厳密なシェアではない。競争相手にはアクセンチュア、PwCコンサルティング、野村総合研究所、日鉄ソリューションズなどがある。各社はコンサルティング以外の売上も大きく、同じ市場定義にそろえた会社別シェアは公表資料から確定できない。したがって、大手企業の全社売上をそのまま同社の市場シェアと比較することは避ける。
富士キメラ総研の2026年の調査では、国内DX関連投資は2030年度に10兆2,757億円まで拡大する見通しである。同時に、AIエージェント関連市場は9,950億円へ成長すると予測されている。需要の総額が増えることは確かに追い風だが、その支出が従来の人月契約に向かうとは限らない。AIソフトの利用料や自社内の自動化に支出が移れば、顧客が買う外部コンサルタントの作業時間は減る。
業界の構造変化は二つの方向に働く。SAPの旧製品からの移行、データの統合、規制対応や複雑な関係者調整では、当面、人による設計と責任の所在が必要だ。他方、調査、資料作成、プログラム生成、テスト、データ加工、業務マニュアル作成などはAIエージェントに置き換わりやすい。顧客が完成までに必要とする作業時間が減れば、同じ成果を納めても請求可能な人月は細る。
2030年までの市場予測を2036年まで機械的に延長することも危険である。AIによって新しい変革案件が生まれる一方、従来型の作業時間には価格と数量の両面から圧力がかかる。同社には大規模案件の元請けを増やし、知識を再利用できるサービスへ転換する余地があるものの、その成否は市場全体の成長率ではなく、継続契約、成果報酬、顧客当たり利益の実績で判断すべきだ。
資本政策と M&A
2026年9月公表の成長計画では、2029年7月期の売上高50億円、営業利益5億円、営業利益率10%、コンサルタント270〜300人を目標とする。2026年7月期実績を起点とする売上高の年平均成長目標は20%以上だ。直近の2027年7月期会社予想は売上高30.4億円、営業利益1.69億円、純利益1.22億円である。一方、2026年の実績は従前の計画を下回り、採用したコンサルタント数も目標に届かなかった。
この中長期計画には、ROE、配当性向、DOE、総還元性向、自社株買い金額についての具体的な数字の約束はない。上場後の配当実績はなく、2027年7月期も無配予想である。過去5年に発行済株式の2%以上を減らす規模の継続的な自社株買いも確認できない。したがって、純利益が回復するだけでは株主への現金還元が増えるとは判断できない。
2025年9月には日鉄ソリューションズと資本業務提携を結び、同社が主要株主となった。これは既存株式の譲受けを伴う提携であり、発表済みのTOBや上場廃止計画ではない。会社はM&Aを追加的な成長手段として掲げているが、2026年の説明では案件の検討は進んだものの成約には至っていない。大型買収を成功した投資実績として評価する段階ではない。
余剰現金の扱いには慎重さが必要だ。上位10株主の保有比率は確認できる資料では合計約73%と高く、長期間配当も本格的な自己株取得も行われていないため、少数株主に帰属する現金の実現価値は帳簿額より割り引いて考える。さらに既存の新株予約権等による希薄化も無視できない。買収によって株主価値が高まる可能性はあるが、それを前提に現金を満額で評価する理由はまだない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本企業のシステム刷新とデータ統合には、実務上の深い知識が必要である。SAPの移行期限、古い基幹システムの刷新、AIを実際の業務に組み込む作業では、複数部門と複数ベンダーを調整しながら責任を持って進める専門家の価値が残る。デリバリーコンサルティングは20年以上の実装経験があり、単純な資料作成やプログラム記述だけを売る会社ではない。顧客企業がAIを導入するほど、その前提となるデータ品質と業務設計の支援が必要になる。
2025年の日鉄ソリューションズとの資本業務提携は、この小規模企業にとって大きな販売機会である。大手の顧客基盤にアクセスできれば、独力では取れなかった元請け案件や大規模データ基盤案件を獲得しうる。アクセンチュアとの販売代理店契約やMicrosoftの認定も信用力の補強になる。会社はAIエージェント関連の共同提案が進んでいることを明らかにしており、人材の専門性と販売網を掛け合わせる余地がある。
2026年の売上は計画未達だったが、外注費削減と稼働率の改善で営業利益は回復した。2022年には高い営業利益率を実現した実績もある。AIを使って技術者一人当たりの処理能力を高め、診断や実装の方法論を再利用できれば、将来は少人数でも一定の利益を維持できる。借金が少なく純現金が豊富なため、事業転換に必要な投資を継続できる点も強みである。
慎重な見方
最大の問題は、会社の成長計画がなおコンサルタント数の増加を中核に据えていることだ。AIエージェントは、従来なら数人が何週間もかけたデータ整理、分析、資料作成、開発補助、テストを大幅に短縮する可能性がある。顧客が成果を同じ価格で買い続ければ提供側の利益になるが、工数で料金を決める契約では節約された時間がそのまま売上減少につながる。会社が構想するAI関連サービスはあるものの、AIエージェントを独立した収益商品として販売した金額は開示されていない。
競争相手は同業の中小企業だけではない。アクセンチュア、PwC、日鉄ソリューションズ、野村総合研究所などの大手は、顧客との直接契約、採用能力、業界ごとの実績で優位に立つ。さらにMicrosoftやSAPなどの基盤提供者が、導入や運用の自動化を進める。デリバリーコンサルティングが協業によって案件を得ても、顧客と価格を決める立場を取れなければ利益は下請け側に残りにくい。
2026年7月期の売上成長は3.7%で、直近の会社計画にも届かなかった。営業利益率は過去数年で大きく変動し、四半期単位では赤字も出ている。採用した技術者がすぐに稼働しなければ人件費が先行し、顧客が一つ契約を減らしただけで利益が大きく落ちる。大株主の保有比率は高く、配当がないまま現金が積み上がっている。既存株主の取り分を薄める新株予約権まで考慮すると、財務の良さが株式の割安さに直結するとは言えない。
どちらに重みを置いたか
データ基盤の刷新という需要の持続性と、財務の安全性では強気の見方に十分な根拠がある。しかし、技術者の工数から生まれる売上が10年後も維持されるか、成果報酬への転換を誰が主導するかという点では慎重な見方が優勢だ。やや悲観と悲観の確率を合計40%、楽観とやや楽観を25%とした。下に寄せる理由は、2026年の計画未達、利益率の不安定さ、顧客集中、株主還元の実績不足である。AI代替による工数減少は主として数量と長期成長率に反映しており、確率や資本コストで同じリスクをさらに重ねて引いてはいない。総合的には割高との判断になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 373 円18 億円(+ 還元の換算額還元の合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 169 円8 億円、今との差 −53.4%、 期待の年率 +0.3%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 916 円44 億円 | 0 円0 億円 | +153.1% | +9.7% | 82 円4 億円 |
| やや楽観 | 16% | 580 円28 億円 | 0 円0 億円 | +60.3% | +4.8% | 93 円4 億円 |
| 中立 | 35% | 318 円15 億円 | 0 円0 億円 | −12.1% | −1.3% | 111 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 226 円11 億円 | 0 円0 億円 | −37.7% | −4.6% | 56 円3 億円 |
| 悲観 | 15% | 198 円10 億円 | 0 円0 億円 | −45.4% | −5.9% | 30 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 373 円18 億円 | 0 円0 億円 | +3.0% | +0.3% | 373 円18 億円 |
今の株価時価総額 362 円18 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 9% 案件を選別し、高付加価値の実装支援が残る 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 916 円44 億円
データ基盤刷新とAI実装の大型案件が続き、日鉄ソリューションズとの共同提案が安定した受注につながる。アクセンチュアとの協業もSAP関連の顧客への入口となり、元請けに近い立場で案件を獲得できるようになる。会社が蓄積した実装手法や大学との共同研究成果を繰り返し利用でき、技術者の教育と案件品質が改善する。
AIエージェントによって単純な実装工数は減るが、複雑な企業システムの設計、移行の責任、現場の運用定着では人の判断が残る。価格の引き上げと高い稼働率によって、実効稼働枠は現在並みを維持する。AIの利用が売上増を直接もたらすとは仮定せず、人月型として開示のない数量成長を織り込まない。
営業利益率は13%まで改善し、2022年の過去最高を下回るものの、近年と比べれば十分高い水準となる。大型の買収によらず、提携と知識の再利用によって利益を増やす。なお、株主還元方針が明文化されない場合は蓄積した利益が会社内に残り、現在の株主の取り分が新株予約権によって希薄化する点は、この成功シナリオでも残る。
- テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装:数量 172(年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量)× 価格 0.22(実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価)→ 売上 38 億円・営業利益 5 億円。数量は2026年の1.00倍、価格は1.326倍。成果報酬の売上金額が確認されないため、楽観でもAIを理由に数量を今より増やさない。
倍率:資本コストk8.25%、10年後ROE約9.54%、弱い堀による超過収益の残存割合1/3を考える。AIエージェント代替によりg_longを名目0%とするため、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=1÷0.0825=12.12倍となる。余剰現金6億円の税後利息0.084億円を純利益から控除し、現金には戻り方0.5を適用する。時価総額は(3.43−0.084)×12.121+6×0.5=約43.56億円。現在の株価や同業PERは根拠にしていない。
確率:大手との提携が実際の直接契約拡大につながり、少人数でも高い稼働率と専門性を維持する必要がある。現時点では価格決定力と継続収益の実績が十分でないため、成功の可能性は限定的に評価する。
やや楽観 16% 提携が成果を出し、利益率の回復が続く 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 580 円28 億円
国内企業の基幹システム刷新とデータ統合は続き、同社は大手企業との協業で安定した案件を確保する。日鉄ソリューションズとの提携は顧客紹介だけでなく共同実装にも発展し、データ分析と移行支援が主力となる。大学との共同研究やMicrosoftの認定は提案の信用を補うが、独占的な販売権に変わるわけではない。
AIによって資料作成や開発補助などの作業時間は短くなる。一方で、複数システムの接続、既存データの品質確認、業務部門との調整は残るため、実効稼働枠の減少は緩やかにとどまる。人材採用を過度に拡大せず、稼働率の高い専門家集団として運営することで、利益率は2026年を上回る。
営業利益率は9%台となり、会社が2029年の目標として掲げる10%に近い水準で安定する。元請け案件は増えるものの、大手との価格交渉力には限界があり、売上の急拡大までは実現しない。利益は内部に蓄積され、配当や自社株取得について数字の約束がない状況は続く。
- テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装:数量 153(年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量)× 価格 0.22(実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価)→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。数量は2026年の0.89倍、価格は約1.30倍。AI代替は進むが顧客との関係と実装の専門性が減少を緩和する。
倍率:ROEは約7.17%でk8.25%を下回る。将来の再投資が資本コストを十分に超えないため、PERの上限は利益を成長させずに回収する1÷k=12.12倍とする。AIエージェント代替に対応するg_longは0%であり、同じ理由による追加の倍率割引は行わない。時価総額は(2.10−0.084)×12.121+3.0=約27.44億円。
確率:専門性が高い案件を選別できれば人月需要の減少を緩和できる。ただし、人材採用と元請け化の両方に実行リスクがあり、過去の高収益期への完全回帰は前提にしない。
中立 35% 市場は成長するが、人月の販売量は縮小 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 318 円15 億円
国内のデータ基盤投資とAI導入需要は拡大するが、顧客企業はAIツールと内製化によって外部の実装工数を減らす。デリバリーコンサルティングは日鉄ソリューションズなどとの協業を続け、複雑なシステム移行や現場への導入支援で一定の地位を保つ。会社が2029年に掲げる成長目標は一時的には案件増加をもたらしうるが、2036年の人月需要を保証するものではない。
AIによるコード生成、調査、テスト、資料作成の自動化が進み、同じ成果に必要な実効稼働枠は現在の約65%となる。顧客の賃金や物価は上がるため単価も名目では上昇するが、その伸びは10年間の物価上昇をやや下回る。結果として市場全体が拡大しても、同社が販売できる従来型の工数は減る。IDCの市場予測をそのまま同社の数量成長に使わないことが、この筋書きの核心である。
会社は技術者数を需要に合わせて調整し、外注の抑制と知識の再利用で営業利益率を6%台に保つ。利益は残るものの、増配や自社株取得がないため自己資本が積み上がり、ROEは4%台へ低下する。余剰現金は事業の安全性に寄与するが、株主への戻り方は限定的である。持続性のある利益と高い成長価値を区別した場合の中心的な10年後の姿である。
- テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装:数量 112(年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量)× 価格 0.21(実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価)→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。数量は172人年の0.651倍で人月型の中立範囲0.55〜0.75倍内。単価は1.260倍で物価上昇1.344倍を下回る。
倍率:k8.25%、10年後ROE約4.40%で資本コストを下回るため、正当化PERの上限は1÷k=12.12倍となる。AIエージェント代替のg_longは名目0%であり、ROEの低下に対してさらに恣意的な倍率縮小は加えない。税後の余剰現金利息0.084億円を除いた事業の純利益0.976億円にPERを掛け、現金6億円の戻り方0.5を加える。時価総額は約14.83億円。
確率:国内のITコンサルティング市場自体は成長する一方、AIエージェントによって顧客が購入する実作業時間は減るとみる。会社の技術力と財務の強さを評価し、急速な事業消滅ではなく、縮小しながら利益を維持する筋書きを中心に据える。
やや悲観 25% 大手への依存とAIによる工数削減が進む 利益 1 億円 · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 226 円11 億円
大手コンサルティング会社とSIerがAIを活用して自社の実装能力を高め、デリバリーコンサルティングに外注していた作業の一部を取り込む。同社はデータ移行や顧客特有の業務調整で案件を保つが、直接契約の獲得は想定ほど進まない。日鉄ソリューションズとの提携は続いても、その顧客との取引条件を同社が主導できるとは限らない。
AIエージェントによる作業時間削減が進み、実効稼働枠は現在の55%程度になる。人材採用の削減によって費用を調整するが、経験豊かな技術者の維持、営業活動、オフィス費用には一定の固定負担が残る。単価の上昇率も物価に届かず、売上高は現在を大きく下回る。
営業利益は辛うじて黒字を保つ一方、ROEは資本コストを大幅に下回る。これまで蓄積した現金と売掛金が会社の存続を支えるが、経営陣が還元に踏み切らなければ少数株主の取り分は限定される。買収による事業転換も可能性としては残るものの、買収費用が利益を生むという確証がないため、追加の価値を見込まない。
- テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装:数量 94.6(年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量)× 価格 0.19(実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価)→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量は2026年の0.55倍、単価は約1.15倍。大手への依存が増し、物価上昇を十分に転嫁できない。
倍率:ROE約3.25%でk8.25%を下回るため、長期成長の超過価値は認めない。事業の純利益から余剰現金の税後利息0.084億円を控除した0.646億円を稼ぐ力とし、1÷kの12.12倍を掛ける。余剰現金6億円には戻り方0.5を適用する。稼ぐ力と現金の合計は約10.83億円であり、今の純現金約10.6億円をわずかに上回る。
確率:2026年の売上計画未達と利益率の不安定さは、案件を自社の裁量で積み上げられる力がまだ弱いことを示す。大手の価格交渉力や顧客の内製化が強まる筋書きには、相応の確率が必要だ。
悲観 15% 工数型の価値を失い、現金が価値の中心となる 利益 0 億円 · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 198 円10 億円
顧客企業は主要なデータ整備、テスト、資料作成、システム連携の多くをAIエージェントで処理するようになる。残る難しい案件は大手SIerや総合コンサルティング会社が直接獲得し、デリバリーコンサルティングが受注するのは限定された移行支援や人手の必要な作業だけとなる。長年の顧客関係は一部残るものの、新しい案件を継続的に獲得できる競争上の堀にはならない。
実効稼働枠は現在の4割程度に縮み、名目の実現単価もほぼ据え置かれる。人件費を削減しても、技術を更新するための費用、採用・教育、既存オフィスの費用が収益を圧迫する。顧客が選ぶ基盤もMicrosoftやSAPなどの標準機能へ集約され、独自の実装手法による差別化は弱まる。
2036年には営業赤字となり、事業そのものには高い継続価値を認められない。短期的な資金繰りの破綻ではなく、余った現金と回収可能な資産が株主価値の中心になる筋書きである。経営陣による損失事業への再投資や買収が続けば清算価値も減りうるが、現時点で予見できる資産の範囲を床とする。株主還元を期待できないため、10年間の配当・自己株式取得は見込まない。
- テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装:数量 70.0(年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量)× 価格 0.17(実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価)→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量は現在の0.407倍、名目単価は据え置き。AI代替と顧客の内製化で売上は半分を大きく下回り、固定費負担で赤字になる。
倍率:事業の純利益は赤字であり、PERでは継続価値を測れないため、純現金と回収可能な資産による床10.6億円を採用する。添付factsの基準期である2025年7月期末の自己資本11.1億円を悲観の床のPBRの分母にすると、10.6÷11.1=約0.955倍となる。2026年7月期末の更新値は自己資本約12.36億円だが、添付の基準期に対する倍率の検算は11.1億円で行う。将来の累積利益を含む2036年自己資本17.29億円に床のPBRを掛けず、過去の市場PBRも根拠としない。
確率:AIによる作業の自動化、顧客の内製化、大手による下請け機能の取り込みが同時に進む構造的な敗北を想定する。財務の厚さが直ちに経営危機を招く可能性を抑えるため、確率を過度に高くはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
テクノロジーコンサルティング・データ基盤実装
データ基盤構築、基幹システム刷新、PMO、AI導入・定着支援などの一体事業。会計上の単一セグメントに対応し、提供する五つのソリューションには売上高の個別開示がないため、根拠のない売上配分はしない。
| 数量年間の実効コンサルタント稼働枠(人年相当)。2026年7月期の直接プロジェクト従事者172人を起点にした代理数量 | 価格実効稼働枠1人年当たり全社売上高(億円、名目)。ライセンス・外注関連売上を含む混合単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 172 | 0.17 | 28 | 1 |
| 10 年後 中立 | 112 | 0.21 | 23 | 2 |
取り方:2026年9月14日の会社説明資料による2026年7月期実績は、売上高28.41億円、営業利益1.47億円、直接案件に携わるコンサルタント172人である。売上高28.41418億円÷172人=1人年約0.1652億円と計算した。期末人数で割っているため年間平均稼働人数や請求単価そのものではなく、案件稼働率、外注、仕入れライセンス等を含む実効売上指標である。IDCの2026年6月公表値から、2025年の国内ITコンサルティング市場はコンサルティング合計1兆4,554億円−ビジネスコンサルティング8,822億円=約5,732億円と推計できる。同社全売上高を比較した便宜的比率は約0.50%だが、会計上のサービス範囲が異なるため厳密なシェアではない。競合各社の同じ範囲の売上高は開示が揃わず、正確な会社別シェアは算定不能である。AIエージェント代替の型は、全体を人月・工数型として扱う。中立の数量は172人年×0.651=112人年、価格は0.1652億円×1.260=0.2082億円で、数量0.55〜0.75倍、価格は物価上昇1.34倍以下という制約を守る。2030年に向けた市場全体の拡大は会社の工数シェア維持を保証しない。
リスクと懸念
AIエージェント代替による人月収益の縮小
AIエージェントが調査、資料作成、プログラミング、テスト、データ加工を代替すると、顧客が必要とする外部作業時間が減る。会社が同じ品質の成果を短時間で納められても、契約が工数課金のままなら売上単価や請求時間が縮む。会社はAI関連コンサルティングの提供を掲げるが、成果報酬型・継続課金型のAIサービス売上を金額で確認できないため、現時点では主力事業を人月・工数型として評価する。
大口顧客への依存と契約上の立場
2026年7月期の開示では日鉄ソリューションズ、トランスコスモス、PwCコンサルティング向けの売上が大きく、三社合計で全社売上の約38%を占める。取引の継続は信用の証拠だが、少数の顧客による発注量や契約条件の変更が全社利益を左右する。大手との協業によって案件が増える一方、同社が価格を主導できない構造が固定されるおそれもある。
採用と稼働率のずれ
2026年の直接案件従事コンサルタントは172人で、会社が目指した185〜195人に届かなかった。採用人数を増やしても、その人材が請求可能な案件に就くまでには教育と営業の時間が必要になる。2026年の第4四半期には営業損失が発生しており、固定的な人件費を回収できない四半期には利益が急減する。2029年の大幅増員計画が利益成長につながるかは稼働率次第である。
独自製品と値上げ力の証拠不足
独自の診断方法や実装手法は評価できるが、顧客が他社に乗り換えられないことを示す解約率や、物価を上回る値上げの継続実績は確認できない。クラウドや基幹システムの主要基盤は他社製品である。AI機能が標準搭載されれば、従来は個別のコンサルティング案件だった仕事が製品の標準機能に取り込まれ、外部専門家が受け取る手数料は減りうる。
現金の資本配分と少数株主の取り分
純現金約10.6億円は時価総額に対して大きいが、長期にわたり配当がなく、大規模な自社株式取得も確認できない。経営陣が利益率の低い新規事業や買収に資金を投じれば、現金の額面がそのまま株主価値にはならない。上位株主への保有集中もあり、少数株主は現金の使い道を直接決められない。このため余剰現金の株主への戻り方を保守的に扱う。
新株予約権による希薄化
過去の有価証券報告書には行使価格の低い新株予約権が記載され、2026年7月期の決算でも希薄化後の一株利益は基本的一株利益を下回る。権利行使によって会社には払込金が入るが、現在の株主が将来の利益と現金を受け取る割合は減る。実際の行使、失効、追加付与を確認せずに現在の発行済株数だけで10年後の株主価値を評価すると、取り分を過大評価する危険がある。
今後の分かれ目
- AIエージェントの導入支援について、独立した売上高と継続契約額が開示され、既存の人月売上の減少を補う実績が続いたら
- 人月型から成果・継続収益型への転換を認め、その事業部分の数量、価格、g_longを再評価する。単なる受注件数や提案件数ではなく、売上と粗利益の金額を確認する。
- 2029年に売上高50億円・営業利益5億円という会社目標を達成し、案件の稼働率が高止まりしたら
- 元請け化と採用の実行力を再評価し、楽観側の確率と10年間の中間利益の積み上がりを見直す。ただし、2036年以降の人月需要を維持できるかは別に検証する。
- コンサルタント数が増えても、一人当たり売上高または粗利益が継続的に低下したら
- 顧客が購入する工数の減少と価格交渉力の弱さが表面化したと判断する。実効数量と営業利益率を下方修正し、やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 日鉄ソリューションズとの協業による売上が増えても、大口顧客三社への集中がさらに高まったら
- 販売網の拡大は評価するが、契約を主導する顧客への依存も強まる。価格決定力を引き上げず、取引条件変更による利益の振れを再評価する。
- 配当性向、DOE、総還元性向や具体的な自社株買いを会社が公表し、実行が複数年続いたら
- 現金の戻り方を再検討する。配当性向の実績が50%以上になるか、発行株式数が継続して減るなら、余剰現金の評価を0.5から0.75または1.0へ引き上げる余地がある。
- 追加のM&Aや株式報酬によって発行済株式数が大きく増えたら
- 買収した事業の利益と払込資本を会社全体の価値に加える一方、既存株主の取り分を新しい発行済株式数に合わせて計算し直す。買収額だけを成長の証拠とは扱わない。
見ておくもの
- 四半期ごとの売上高、売上総利益率、コンサルタント稼働率、期末の直接案件従事者数
- 直接案件従事者1人当たりの売上高と粗利益の推移
- 2027年7月期計画の売上高30.4億円、営業利益1.69億円の達成状況
- 2029年7月期の売上高50億円、営業利益5億円、コンサルタント270〜300人の達成状況
- 日鉄ソリューションズとの共同案件の実売上と、大口顧客別売上構成比
- AIエージェント関連事業の独立した売上高、契約単価、継続収益、顧客の解約率
- 純現金、配当・自己株式取得の実施、既存新株予約権の行使残高、発行済株式数
- 上場廃止・TOB・MBO・継続企業の前提に関する新しい開示
倍率と資本コストの決め方
現時点の基準株価373と株数4,838,198株から計算される時価総額は約18.05億円である。筋書きはこの時価総額から逆算せず、2026年7月期の実績であるコンサルタント172人、売上高28.41億円、営業利益1.47億円を起点にした。資料添付のbasis.fy_nowは2025/07を維持しつつ、財務の実績が更新済みであるため、セグメント、純現金、自己資本の起点には2026/07実績を用いた。株数は添付の基準を優先した。10年先の利益倍率はk8.25%とAIエージェント代替に対応するg_long0%から導き、現在や同業のPERを使用していない。株主の取り分には既存の新株予約権による希薄化を別途適用する。悲観の時価総額10.6億円は純現金を基礎とする床と一致し、床のPBR0.955は添付factsの基準期自己資本11.1億円に掛けている。2036年の積み上がった自己資本には掛けていない。全筋書きの純利益から自己資本への流れは、2026年の自己資本約12.36億円に10年間の累積利益と概算払込金を加え、現金還元を差し引いて整合させた。新リース会計基準で貸借対照表の表示が変わっても、実質的なオフィス費用を二重計上せず、営業利益は現行の費用計上にそろえて比較する。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%に、事業の質による0.75%を加える。β、時価総額の小ささ、個別の買収リスクを追加の上乗せには用いない。